きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

アイ.アム まきもと

「舞妓 Haaaan!!!」の水田伸生監督と阿部サダヲが4度目のタッグを組み、2013年製作のイギリス・イタリア合作映画「おみおくりの作法」を原作に描いたヒューマンドラマ。
小さな市役所で、人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」として働く牧本。故人の思いを大切にするあまり世間のルールより自分の考えを優先してしまい、周囲に迷惑をかけてばかりいた。そんなある日、新任局長・小野口が「おみおくり係」の廃止を決定。身寄りなく他界した老人・蕪木の埋葬が「おみおくり係」での最後の仕事となった牧本は、蕪木の身寄りを探すため彼の友人や知人を訪ね歩き、やがて蕪木の娘・塔子のもとにたどり着く。蕪木の知られざる思いとともに彼の人生をたどるうちに、牧本自身にも少しずつ変化が起こり始める。
共演は塔子役の満島ひかりのほか、宇崎竜童、松下洸平松尾スズキ宮沢りえ國村隼ら。(映画.comより)

阿部サダヲと言えばこれまで数々の作品主にコメディを中心に役者としての存在感を発揮してきました。どちらと言うとひょうきんで人当たりが良さそうな気さくなイメージが強い役柄が中心でしたが、記憶に新しい今年5月に公開された『死刑にいたる病』ではサイコな殺人犯を演じ、強いインパクトを与えました。私的にも同作は今年ベスト級の作品なんですが、それも阿部サダヲさんの怪演による物がかなり大きいと思います。

そんな阿部サダヲさんと『舞妓Haaaan!!!』や『謝罪の王様』等をヒットさせた水田伸生監督と久しぶりにタッグを組んで公開されたのが本作『アイ.アム まきもと』です。過去作を見ればそして予告編のイメージからするとやはりコメディかなと思っていたらそれがまさかまさかの良い裏切りを見せてくれました。

まず、阿部サダヲさんが今回演じた牧本という人物。とにかく真っ直ぐになると周りが見えなくなるそれでいてお人好しで本人に悪気はないけど周りに迷惑をかけてしまうタイプ。言葉を変えればイタい奴かもしれないんだけどとにかくピュアが故に…なんですよね。ストーリーの設定では出てこないけど恐らく童貞かなと思わせてしまうんだけどこれが阿部サダヲさんのキャラクターに見事ハマるんですよね。でも『死刑にいたる病』でのサイコパスイメージが強すぎるが為に妙に安心感を感じてしまいます。

で、そんな牧本なんですが、世間からズレててともすれば社会から孤立しそうなキャラなんだけど憎めない。迷惑を掛けられつつもほっとけない人物として割と彼に好意的な人達には恵まれています。だから映画の中では根っからの嫌なヤツは出ないんですよね。人情喜劇としてこれまでの水田×阿部サダヲ作品とは一線を画す様な作風となっています。

そしてこれが社会問題となっている孤独死というテーマと結びつき、感動的な流れに持ち込んでいきつつ牧本の身に降り掛かるまさかの展開が物語としての深みを生み出していたと思います。

正直『舞妓〜』とか『謝罪〜』のノリをイメージしていたからこれは予想外でしたね。水田監督なりの阿部サダヲを起用する上でのこれまでの作風との変化は上手く出来ていたと思います。

そして孤独死という重いテーマに関してもしっかりとメッセージを込めていましたね。

それは事情は事なれど孤独死をした人達にも人生でのドラマがあり、その人達が最も輝いていた時間を写真を通して写し出していた事ですね。ある人は社会的にも成功を治め眩しい程の笑顔を輝かせある人は自分の趣味を持ちその人なりの人生を謳歌していたりとか。

また、孤独死をした人の関係者の足跡を辿り、葬儀に参列してもらうべく牧本は奔走するのですが、故人の生涯がまるでピースを合わせ人生という名のパズルを完成させるかの展開には引き込まれていきましたね。

そして僕はこの映画を見て思った事があります。独身である僕は孤独死をする可能性は少なからずあります。だけどそれは既婚者でも同様であり、配偶者との離縁や死別等により孤独死を迎える事だってあるんですよね。

だけど孤独死というものが決して悪いというのではなく、その人がどの様に人生を生きたか或いは例え孤独死で亡くなったとしても、誰かの記憶に残り、その人達が死後に思い出して昔話をしてくれたり肉体を失くしても心に残ればそれでよいのではないかという事ですね。

とは言えそんなのは綺麗事かもしれません。実際に身寄りがなく親族からも見放された人達のリアルな現実もしっかりと写し出しており、そこは胸に突き刺さる様なものは感じました。

想像とは異なる割とシリアスだけどラストは感動的な作りそれでいて阿部サダヲらしさも楽しませて頂きました!

良作だとはっきり断言出来ます!

オススメです!

尚、阿部サダヲさんと言えば池井戸潤原作の『シャイロックの子供たち』が来年2月に公開が控えています。こちらも楽しみな作品です!