きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

アウトレイジ 最終章

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遂に公開された最終章。私はこの『アウトレイジ』シリーズの大ファンです。今年の春から首を長くして公開を待ち望んでおり、10/7の公開初日に早速鑑賞。既に二回ほど見ております。

アウトレイジ』ファンとしての感想ですが

北野武監督一流のバイオレンス映画に相応しく、過激でマヌケな抗争劇は相変わらず。しかし、過去二作の様な斬新な暴力描写は控え目でやや物足りない感はありますが、ふんだんに盛り込まれたたけし流シュールギャグと西田敏行の本気な凄みとコメディセンスに脱帽しちゃいました。

まず、一回目鑑賞時は緊張感が半端なかったです。周りに本職っぽい方々が見に来てたので…という事でなく、作中から溢れてくる凄みですね。
黒塗りのBというドイツ車が走り、上部から捉えたアングルに重なる様に現れる『OUTRAGE 最終章』のタイトルバック。お馴染みの手法ですが、いつ見ても黒塗りベンツの持つ威圧感はインパクトがあります。
前作からの続投組・西田敏行塩見三省光石研、名高達夫らに加え、ピエール瀧大杉漣大森南朋岸部一徳池内博之原田泰造といった新たなキャストの面々も『アウトレイジ』ワールドの住人として迫力ある(ない人もいるけど・笑)演技を展開します。

新キャストで印象深いのはピエール瀧演じる花菱会の花田。
予告編でもよく目にした凄みのある表情とびっしり入った入れ墨。
本作ではかなり軸となる存在となるかと思いきや何ともヘタレな役どころでしたね。
ホステスにビンタをしボコボコにする様なクズでもあり首輪をつけながら子分を恫喝するマヌケなヤツです。さぞかし女の子にムチャなSMプレイを強要したんだろうなぁ(笑)
余談ですが、昔電気GROOVE好きでした。あの頃はこんなピエール瀧想像だにしませんでしたよ(笑)

花菱会会長・野村を演じた大杉漣
前会長の娘婿で元証券マンというヤクザとは無縁の世界から会長に担ぎ出された事もあって若頭の西野(西田敏行)にとっては面白くない存在です。
会長でありながら入れ墨すら入れていないという野村。身の丈に合わないポストに居るせいで虚勢で自らの存在感を見せつけようとする器の小さい人物なので人望もありません。『アウトレイジ ビヨンド』の石原(加瀬亮)の「野球やろっか」よろしくキャンプという斬新な殺人方法でアウトレイジ流の洗礼を受けます。

しかし、相変わらずシリアスな作品の中に盛り込まれた笑いのエッセンスが素晴らしい!
大友(ビートたけし)と舎弟の市川(大森南朋)が乗り込んでいくパーティー会場。
目的は野村の殺害なのですが(実際は野村はパーティーを欠席して殺害出来ずだが)そのパーティー会場は花菱会の組員の出所祝いパーティーが行われていました。
そのパーティーの名称が「河野直樹君を励ます会」。
ここ最近思い出しては一人でニヤニヤしてますよ。ヤクザな世界でこのネーミングはねぇだろ(笑)
で、笑いと言えば西田敏行演じる西野のマシンガン口撃。
「学校の先生に教えてもろたやろ?」「親からもらった指大事にせぇ」とか「中田くんに教えてもろたんやで~」とか凄みのある顔でセリフがマヌケなんですよ(笑)
そして極めつけは「迷惑もハローワークもあるかいっ!」です!
西田さん、西田局長…。めっちゃ楽しんでますよね?本気で笑い取りに来てません?
何でもかなりの部分がアドリブだったので大幅にカットもされたそうです。
未公開シーンで見たいっ!(笑)
一方の中田役の塩見さん。
ご病気もされたそうなので『ビヨンド』の本職としか思えない様なド迫力がすっかり陰を潜めてしまったのは残念。
しかし、相変わらずの西野とのコンビネーションは絶妙でした。

これまでの『アウトレイジ』シリーズで見られた目を覆いたくなる様な残虐さでありながらも笑いを誘ってしまうあの『アウトレイジ』感(笑)
前述の「キャンプ」と花田を殺害する際の「花火」が今回でのそれになるのですが、目にした時に思わず高揚する「ああ、これ。やっぱこういうのなくっちゃ」というあのテンションって『アウトレイジ』好きな人ならではの感情ですよね?
その昔、たけし軍団ダチョウ倶楽部がやってたあの「オヤクソク」に近いノリなんですよね?

ん?何か最近そんな事書いたな…と思ったら『キングスマン』だ。
コリン・ファースが教会で無慈悲に人を殺しまくるあの感じに近い!
前述のパーティー会場乱射はこの教会乱射のイメージにも近い!
たけし監督、もしや『キングスマン』を見てたのかな??

演出の面白さと言えば北野映画では欠かせない微妙な間と絶妙なカメラワークによって効果的に挿入される映像的描写。
例えば前述の花田が韓国のホステスが気に入らないと暴力を振るうシーン。
実際は殴るシーンはなく殴られた後、血だらけになりながらすすり泣く二人の韓国人ホステスを写し出すのですが、その光景って印象に残りやすいんですよ。
また、市川と釣りに出掛ける大友が苛立ち紛れに海へ向けて発泡するシーン。
大友達が立ち去った後、浮かんでくる血を流した太刀魚の死骸とか。
作中に特に大きな影響を与えるわけではない。しかし、それを挿入する事によって深いインパクトを与える描写。
1作目の歯医者で口中をぐちゃぐちゃにされた後の石橋蓮司を知ってる人なら思わずニヤリとしてしまう演出ではないでしょうか。

5年振りの『アウトレイジ』最新作にしてシリーズ最終章。
「バカヤロー」「コノヤロー」の応酬こそ少ないものの緊張と緩和という言葉がこれほどまでに合う作品もないと思います。
カタルシスを残した前作に対して驚く程余韻を残さずあっさりと完結します。
そこに北野監督らしい清々しさを与えてくれました。
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