きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ノマドランド

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スリー・ビルボード」のオスカー女優フランシスマクドーマンドが主演を務め、アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービージェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作に、「ザ・ライダー」で高く評価された新鋭クロエ・ジャオ監督がメガホンをとった。ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。第77回ベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞、第45回トロント国際映画祭でも最高賞の観客賞を受賞するなど高い評価を獲得して賞レースを席巻。第93回アカデミー賞では計6部門でノミネートされ、作品、監督、主演女優賞の3部門を受賞した。
(映画.comより)

アカデミー賞受賞で話題の作品。
4月後半以降緊急事態宣言や都市部の映画館休館等の影響があり、予定されていた新作も相次いで公開延期となり、映画の興行全体が厳しい状況が続く中、本作がアカデミー受賞の話題と共に俄然注目が集まりました!
ジワジワ伸びて興行収入も10億円を超えるのでは?というのが僕の予想です。

さて、このところ洋の東西を問わず貧困を扱った作品が注目を集める傾向があります。
近年の作品だと日本の『万引き家族』、韓国の『パラサイト 半地下の家族』そしてこの『ノマドランド』。
そもそも映画という娯楽を享受出来る事自体、経済的にも精神的にも余裕があるからこそであり、こういったエンターテイメントを楽しむ背景には経済的に困窮してる人達が居るという実態を忘れてはならないわけです。

本作ではリーマンショックを機に仕事もなくなるばかりでなく、住んでいた家もそして街そのものも消滅してしまうというヘビーな状況からスタートしていきます。
もちろん本作の主人公である高齢女性・ファーンには何の落ち度もありません。
既に夫を亡くしており、決して裕福ではなくとも、ごくごく当たり前の日常生活を送っていた彼女がウォール街の狂乱によって人生を狂わされてしまったわけです。
かつては教職も勤め、真面目に生きてきた女性が住む家を失い、その日暮らしのノマドライフを送るまでのその過程をドキュメンタリックたっぷりに写し出していきます。
また、彼女はAmazonの配送現場で梱包の仕事に汗を流すのですが、経済的に余裕のある誰もが利用するAmazonそしてその創始者であるジェフ・ペゾス氏は世界の長者番付一位の大成功者。
その下ではファーンの様な労働者が安い賃金で単純作業に従事しているというリアルな現実もよくわかります。

言って見ればこういった格差社会の実態と問題を提起する作品なのですが、一方ではこのノマドライフを送る人々の気高い精神性や人々の心を豊かにするのは果たして資本主義社会が生み出したお金や物質的な物だけなのだろうか?と内面をフォーカスしていく様な作品でもありました。
ファーンはかつての教え子に「先生はホームレスになったの?」と心配されますが、「違う。ホームレスじゃなくてハウスレスよ。」と気丈に答えます。
それは決して虚勢を張った言葉ではありません。
ファーンは確かに落胆します。
しかし、この状況を受け入れてからはたくましく不要は物を処分して、自分に愛着ある物だけを残して路上の生活へと踏み出します。
すると彼女は自分と似た様な境遇に置かれている人々と出会い、コミュニティを形成して交流を図る様になります。
誰かに助言をしたり、助言を受けたり、余命僅かなノマドからはその人生観を聞き自らと重ね合わせ、またノマド男性とのちょっとしたロマンスだってあります。
ノマド生活に身を投じる前の彼女よりも人との結び付きが深まっていたりもするんですよね。
ここで僕が感じたのは資本主義社会の物質的豊かさからちょっと距離を置くと実は人間としての無垢な状態がそこにはあり、やがてそれが人との繋がりを生むのでは?と。
もちろん彼らは望んでその生活を送っているわけではないし、現実は映画の様に上手くいかない可能性の方が高い事もわかります。
社会的格差は是正されるべきだと思うし、本来は衣食住揃った健康で文化的な生活を誰もが送って然るべきだと思ってます。
だけど物質やお金をただハングリーに追い求めない生き方だってあるんじゃないかなと。
ファーンは崇高な精神性と学があるし、人間としての品もありました。
貧困の実態だけを見て彼女を不幸と定義するのではなく、彼女をはじめとしたノマド達の生き方から新たな価値観を見つける映画ではないかなと思いました。

尚、クロエ・ジャオ監督は本作では俳優ではなく、実際にその境遇に身を置く人達を使って撮影しています。
マクドーマンドもまた、彼らノマド達の社会に身を投じ、体当たりの演技を見せます。
だからこそこの映画はリアルであり、人々の言葉にも力が込められているんですね。
結果、多くの人々の胸を打ち、アカデミー賞受賞にまで繋がりました。
僕は本作を見て感じました。
今の生活は当たり前の様にあるものではないし、いつ社会からドロップアウトするのかわからない。
だけど心の豊かさはいつまでも保ち続けていたいと。
ファーンの生き方とアメリカの大自然が僕には眩しくそして清々しさを感じさせてくれました。
素敵な作品です。この機会に是非ご覧下さい!

るろうに剣心 最終章/The Final

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和月伸宏の人気コミックを佐藤健主演&大友啓史監督で実写映画化した大ヒットシリーズ「るろうに剣心」の完結編2部作の第1弾。原作では最後のエピソードとなる「人誅編」をベースに、剣心の十字傷の謎を知る上海マフィアの頭目・縁との戦いを描く。日本転覆を企てた志々雄真実との死闘を終えた剣心たちは、神谷道場で平穏な日々を送っていた。そんなある日、何者かが東京中心部を相次いで攻撃。やがて剣心は、ある理由から剣心に強烈な恨みを持つ上海の武器商人・縁との戦いに身を投じていく。キャストには緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優斎藤一役の江口洋介らおなじみの俳優陣が再結集。新たなメンバーとして、シリーズ史上最恐の敵となる縁役を新田真剣佑、かつての剣心の妻で、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった女性・雪代巴役を有村架純がそれぞれ演じる。
(映画.comより)

00年代以降の日本の映画シーンにおいてひとつのトレンドとなったのが、人気漫画の実写化です。
特に若い世代に人気の高い作品は知名度もあり、人気の若手俳優を起用し、話題性を集めるには持ってこいのコンテンツです。
しかし、この実写化が相次ぐと目も当てられない様なお粗末なものも生まれやすくこういった作品が公開される度にネットが荒れるという事象を招いてしまったのも事実です。
しかし、そんな実写化作品の中でも大成功を収め、シリーズ化も成し得た数少ない作品が『るろうに剣心』でした。
申し分のない見事なキャスティング・日本映画では類を見れない豪快なアクション等々がその大きな成功要因でしょう。
そしてこの実写版の『るろ剣』も今回がラスト。
最終章と銘打ち2部構成の前後編で公開です。

かつて幕末の世に「人斬り抜刀斎」として恐れられた伝説の剣客・緋村剣心
額の十字傷の謎に迫るつくりであり、また彼が何故人を殺める剣から人を守る剣へと切り替えたのかその変遷を辿りつつ、現れた剣心への復讐を胸に現れた男との対決をメインに。
涙あり手に汗握る怒涛の展開に決して飽きさせる事のない138分間でした。

これまでの三作でもそのアクションシーンには大きな定評がありました。
しかし、本作ではこれらを大きく上回る様な怒涛のアクションシーンに息をのみます。
佐藤健新田真剣佑の二大俳優がとにかく魅せる!
とりわけ真剣佑演じる縁の感情のぶつけ方からは気迫がひしひしと感じられ、その情念が剣心にぶつけられていきます。
とにかくカッコいいです!

そして劇中で明かされる悲劇的なエピソードが更に作品を盛り上げてくれてましたね。
そこに登場してくるのが有村架純演じる巴なのですが、彼女の存在が6月公開の『The Beginning 』で大きくクローズアップされていきます。

それから個人的にアクションが光っていたのは土屋太鳳演じる巻町操なんですよね。
土屋太鳳さんと言えば日体大をこの春卒業したというバリバリの肉体系女優なんですよね。
例えば映画だと『トリガール!』ドラマの『チア☆ダン』等スポーティーな作品でその身体能力を発揮していましたが、殺陣を伴う本格的なアクションと言えば『るろ剣』くらいですよね。
本作では彼女のアクティブな面が遺憾なく発揮されておりまして、かなり魅了されましたね。
惚れたはれたの恋愛映画よりもこういう作品にもっと出てほしいですね。これは綾瀬はるか然りなのですが。

ただ、一方で気になった部分もあるのでお伝えするとドラマパートの見せ方かな~なんて言うと偉そうですいません。
というのが、過去の剣心に因縁を持つヴィランが現れ、再び剣を振るう事になった剣心。
その死闘は前述の様に縁の情念とそれを迎え撃つ剣心の感情がスクリーンから溢れ出る様で見応え抜群です!
しかしその過程で本来『The Beginning 』で使うべきシーンを出しすぎたんじゃないかなと。
そもそも本作で『Beginning』より『Final』を先に公開したのにはやはり相応の理由があると思うんですよ。
人斬り抜刀斎と恐れられた緋村剣心の物語に落とし前をつけ、そして彼のそもそものエピソードを打ち出していくという狙いが。
これまでの前後編映画にはなかった試みだし、大友監督の斬新な発想力の賜であると確かに思います。
しかし、本作では次作のシーンはほどほどに…むしろぼんやりでも良かった様な気がするんですよね。
何なら有村架純の出演は次作まで取っておいてもよかったくらいですよ。
それが結構な尺を使って次作絡みのエピソードを盛り込んでくるもんだから見る側のハードルが上がるだけな気がするんですけどね。

なので次作は私もかなりハードルを高くして鑑賞する事になりそうです。

何てやや辛口な事も言いましたが、しかし全体的に復讐が如何に虚しくはかないものであるか、また人を殺めてきた剣心が人を救う事に生涯を捧ぐその贖罪と彼の人としての強さが盛り込まれた非常に見応えある最終章でした。

尚、本作ですが、これまでの劇場作品や原作を知らなくとも楽しめるつくりとなっていますので安心してご鑑賞下さい。

ムーラン

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美女と野獣」「アラジン」など往年の名作アニメの実写化を次々と成功させているディズニーが、愛する父の身代わりとなり、兵士として国の運命をかけた戦いに身を投じるヒロインを描いた1998年のディズニー・アニメ「ムーラン」を実写化。ヒロインのムーラン役には、「ザ・レジェンド」や「ドラゴン・キングダム」のリウ・イーフェイが抜てきされた。「ハンニバル・ライジング」「マイアミ・バイス」のコン・リー、「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」のドニー・イェン、「エクスペンダブルズ」シリーズのジェット・リーら、それぞれハリウッドでも活躍するアジア圏のスター俳優が共演。監督は、「クジラの島の少女」「スタンドアップ」などで知られるニュージーランド出身の女性監督ニキ・カーロ。Disney+で2020年9月4日から配信(追加料金が必要なプレミアアクセスで公開)。当初は劇場公開予定だったが、2020年の新型コロナウイルス感染拡大により劇場公開を断念し、Disney+での独占配信に切り替えられた。
(映画.comより)

今年のGWは遠方への外出も控え、映画と共に過ごしたわけですが、昨年からDisney+で配信されている『ムーラン』を結局今回に至るまで末鑑賞だったのでこれを機にとばかりに鑑賞。
Disney+は今年はじめに『ソウルフル・ワールド』を見る為に加入。
今後も劇場鑑賞と配信を同時に行うと発表しているディズニーですので、ちょくちょくお世話になる事かと思います。

近年相次いでいる90年代、ディズニー・ルネサンス時代のアニメ作品の実写化。
本作では98年の『ムーラン』が対象となりました。
美女と野獣』然り『アラジン』然り高いクオリティの実写化に成功してきたディズニーですので、本作もかなり期待を胸に鑑賞しました。
元々は2018年に公開が予定されていましたが、製作が遅れ2020年公開とアナウンス。
しかし、ご存知の様に新型コロナの影響もあって、ディズニーは延期を発表しかし遂には劇場公開を断念。
サブスクリプションサービスのディズニー+での有料配信へと舵を取り、以来『ソウルフル・ワールド』・『アーヤと龍の王国』とこのところの配信が続いているのは周知の通りです。

2010年代以降、ハリウッドにおけるアジア系の俳優の活躍が顕著となり、特に中国との合作も増える中、6世紀の漢詩を基にしたこの『ムーラン』の実写化には高い注目が集まっていました。
アニメ版のリメイクとして原作ファンからの期待も高かったし、物語が内包する政治的な側面やハリウッドでの古代中国の再現等のハードルの高さ、更には主演のリウ・イーヘェイのSNS上での香港民主化問題への発言等々波乱に次ぐ波乱で製作面内外でかなり大変な苦労があったわけです。

そんな波乱含みの本作ですが、映像面はさすがのディズニークオリティ。
古代中国の宮殿から村の様子、更には広大な戦場から湖に至るまでとにかく美しく目を見張るものがあります。
題材的に難しいかなとも思いましたが、ストーリーは至ってシンプル。
子供でも楽しめるし、『キングダム』等の作品が好きであればその世界観等にどっぷり浸れる事でしょう。
更にアクションシーンだって見応えたっぷり!
戦場での合戦は一定のクオリティ以上のものは保証します。
また、これまでのディズニールネサンス期の『美女と野獣』や『アラジン』と異なる点としては、ミュージカル要素の排除がひとつに挙げられます。
ディズニーと言えばそのストーリーに即した歌や踊りが定番ではありますが、この『ムーラン』実写版では大胆にもそのミュージカル要素はバッサリ排除しています。
しかし、その判断は賢明でムダが一切なく、ストーリーが一本軸で展開。
その結果、スッキリとしていて見やすくなった気がします。
ちなみに言っておきますが、僕はディズニーのミュージカルが嫌いなわけではなく、むしろ好きです。
ただ、この『ムーラン』の場合はない方が良かったかなと思ってます。
それから女性が主人公でしかも男社会に身を投じるわけですから、ロマンスの要素があってもおかしくはありません。
いや、むしろ欲張りな監督なら入れたくなるでしょう。
しかし、本作では男女の友情はあっても恋愛関係はない。
更にディズニー作品でよく見られるおちゃらけた要素もなし。
戦いを扱っている映画だからこそ、どこまでもクールに仕上がっていてその辺りは好感が持てます。

ただ、やはり気になってしまう部分もありますので、お伝えしておきますね。
中華圏の映像文化である武侠映画のスタイルを取っており、前述の様にそれは非常に見応えのある物となっています。
しかし、肉体を駆使したアクションはあまり見られず、気という非常にふわっとした概念で説明され、しかもその気そのものの言及がないからアクションからもたらされるカタルシスが生まれてこないんですよね。
更にマレフィセントを思わせる様な魔女が登場してくるのですが、彼女の目的もこれまでの経緯もあまり伝えられないので、ヴィランとしては非常に謎めいていてよくわからないし、彼女と手を組んでいたヴィランもまた失礼ながら小物感が払拭出来ず、ラストに戦った敵としては魅力に欠けるというのが正直なところです。
それからディズニーが最も伝えたかったであろうポイントとして、自立する女性像=プリンセスとしてのムーラン。
確かに勇敢なる男達を従え、前線で戦い皇帝の命を救った彼女は勇ましく、その姿はまるでジャンヌダルクの様だと言えましょう。
しかし、彼女は皇帝を頂点とする中央集権体制の軍事国家のひとつの駒であり、ラストもその中での出世に終わってしまった辺り、価値観を刷新するまでには至らないんですよね。
歴史的な背景があるとは言え、ディズニーが志向するリベラルが価値観とは合わない作品の様にも思えました。

とはいえ、ディズニー一流の映像美とストーリーの運び等は保証します。
是非ご覧下さい!

名探偵コナン 緋色の弾丸

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青山剛昌の人気コミックをアニメ化した大ヒットシリーズ「名探偵コナン」の劇場版24作目。世界最大のスポーツの祭典「WSG」と、世界初の「真空超伝導リニア」の開発という2つのキーワードを軸に、前代未聞の事件に挑む江戸川コナンの活躍を描く。FBI捜査官・赤井秀一が、シリーズ20作目「純黒の悪夢(ナイトメア)」以来に劇場版に登場。さらに、赤井の弟でプロ棋士の羽田秀吉、女子高生探偵の妹・世良真純、3人の母親で“領域外の妹”と名乗る謎の女性メアリーも登場し、“赤井ファミリー”が集結する。4年に一度開かれる世界最大のスポーツの祭典「WSG ワールド・スポーツ・ゲームス」が東京で開催され、その開会式にあわせ、最高時速1000キロを誇る世界初の「真空超電導リニア」を開発することが発表された。しかし、世界の注目を集める中、名だたる大会スポンサーが集うパーティ会場で突如事件が発生し、企業のトップが次々と拉致されてしまう。そして、その裏には事件を監視する赤井秀一と、彼の指令を待つFBIの姿があった。江戸川コナンは、今回の事件と、15年前にアメリカのボストンで起きた「WSG連続拉致事件」との関連性を疑うが……。
(映画.comより)

毎年この時期恒例の劇場版『名探偵コナン』。
しかし、昨年は新型コロナの影響により、公開が延期となり一年越しの公開となりました。
とりわけここ数年ファンから高い評価を受ける作品が続き、興行収入も右肩上がりとなっておりましたので、今回の一年越しでの封切りを首を長くして待っていた方も多い事でしょう。
僕もそんな一人です。

さて、本作の核となるのは赤井一家。
そして本作の公開を前にして2月にはこの赤井一家のあらましをまとめたテレビ版の総集編が『名探偵コナン 緋色の不在証明』として劇場公開されました。
あくまでテレビアニメを編集したものではあるのですが、それでも興行収入は12億円を突破し、改めてのコナン人気の高さを証明したのも記憶に新しいところです。
テレビアニメの総集編という事もあり、番組では取り上げませんでしたが、実際僕も鑑賞。
劇場版しかコナンを見ないという僕にとっては非常にわかりやすい内容でしっかり予習をした上で本作を鑑賞しました。

まず、冒頭のシーンからしてカッコいい!
「えっ、いつものあらすじ紹介とおなじみのあのフレーズ?」と言いたいところでしょうが、いやもちろんそのくだりありますよ。
今回はそこに至るまで結構引っ張るんですよ。
15年前にある事件からスタートします。
そしてこれこそが本作で起こる事件の引き金として後々明かされるのですが、これがね~かなり渋い雰囲気を醸し出しているんですよね。
ブルースハープを奏でながらニューヨークの街を走り回る被害者。
この街並みであったり挿入されるSE等がとにかくカッコいい!
近年では大人ファンが多いコナン。
さながらハリウッドのサスペンス映画を思わせるこの序盤のシーンで一気心を持ってかれちゃいましたね。
そしてこの緊迫感からいつものほのぼのシーンへと変わると「あっ、今俺はコナンの映画を見てたんだ」なんて気づかされる。
そしていつものお約束である阿笠博士のクイズに挑戦したり少年探偵団や蘭やその子のわちゃわちゃしてる感じを見ると和むわけですよ。

こうしたお馴染みの面々ももちろんですが、各キャラクターの表現もよくて、その魅力をしっかりと捉えている辺りも楽しめましたね。
とりわけ赤井一家集合となるとその辺りが非常に難しくなると思うんですよ。
如何に各々のキャラを活かすかそして持ち味を適材適所で表現させながら決してただのキャラ祭りの様に散漫にさせない。
その辺りかなり緻密な計算がされているなと本作では感じましたね。
特に前述の『緋色の不在証明』を見ていた事もあってよりキャラクターへの心が誘導されていきましたね…あ、ご安心下さい。
『緋色の不在証明』末見でも全然楽しめますよ。

で、キャラクターの配分と同時にストーリーの配分。
これまた絶妙でして、WSGと超真空電動リニアという2つの題材が軸となっています。
余計なお世話承知で一つに絞った方が良いのでは?なんて思ったのですが、ここはさすがの『名探偵コナン』ですよ。
決して散漫にならず上手くこの二つを結びつけておりまして、そこも脚本の妙とでも言いましょうか、唸らされましたね。
だけどこれが苦手な人も居るのかななんて事も思いましたね。
本作は割と賛否が分かれる内容となっている様でして、ネットのレビューを見てもこれまでにない程、意見が割れております。
詰め込み過ぎという批評も見受けられましたね。
僕は良かったんですけどね。

と、本作に関してはかなり個人的にはヒットしたのですが、最大のハマりポイントをお伝えするならば、それが終始だれさせない究極のジェットコースター映画だなと感じまして。

というのが前半はひたすら犯人を追うという展開で見ているこちらも一緒になんちゃって探偵をするわけですよ。
そしてこの犯人が明かされるまでの展開がひたすらスリリング。
その後、犯人が明かされてから。
そこがまたボルテージの上がる様なつくりなんですね。
お馴染みのカーチェイスもあるし、ひたすら話しにのめり込んでいく。
この渦中に前半部で張られた伏線の回収劇もあり、ただただ面白い!
そしてまさかの…なんて展開に。
とにかく見ている側もアドレナリン出まくりです。
犯人が明かされるまでを第一の、そこから展開される意外な事実の判明を第二とし、僕はこれを興奮の二段構えと称したいなと思いましたね。

そして主題歌である東京事変の『永遠の不在証明』が流れる辺りには僕は心の中でスタンディングオベーションをしていましたね。
椎名林檎さんの書くコナンくんの世界がたまらなく本作にピッタリでしたね!
これまで数々のアーティストが劇場版『名探偵コナン』の主題歌を担当してきましたが、僕が椎名林檎さんが好きという事を差し引いてもこれ程作品とハマった曲もなかったのでは、と感じました!

これは是非劇場で味わって頂きたいです!
オススメです!

騙し絵の牙

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「罪の声」などで知られる作家の塩田武士が大泉洋をイメージして主人公を「あてがき」した小説を、大泉の主演で映画化。出版業界を舞台に、廃刊の危機に立たされた雑誌編集長が、裏切りや陰謀が渦巻く中、起死回生のために大胆な奇策に打って出る姿を描く。「紙の月」「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督がメガホンをとり、松岡茉優佐藤浩市ら実力派キャストが共演する。出版不況の波にもまれる大手出版社「薫風社」では、創業一族の社長が急逝し、次期社長の座をめぐって権力争いが勃発。そんな中、専務の東松が進める大改革によって、売れない雑誌は次々と廃刊のピンチに陥る。カルチャー誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされるが……。
(映画.comより)

人を騙しちゃいけないよ。

なんて道徳的には最もな事なんだけどしかし、エンタメこと映画というコンテンツの上ではこれほどハマるものはないわけでして、我々見る側も悔しいけれだ映画に仕掛けられたトラップに次々と引っ掛かり騙されてしまう。
そして、騙された時に変に感じるあの爽快感…なんて言うと誤解されそうなので言っておきます。

ワタクシ、決して変態ではございません!

さてさて、本作『騙し絵の牙』はタイトルが示す様に徹底的に騙しにかかろうとしている。
過去、『コンフィデンスマンJP』でとことん騙されその都度、妙なエクスタシーを感じた(だから俺は変態じゃない!)私を本作ではどんな形で騙してくれるのか期待を胸に鑑賞して参りました!

本作の原作は昨年11月に映画化され、私も感動の涙を流したあの『罪の声』の塩田武士氏の小説。
『罪の声』とは打って変わって本作で感じたのは出版業界の『アウトレイジ』かはたまた『仁義なき戦い』。
表向きは編集者・記者等出版社の面々だが、彼らは常にナイフを携え、同じ出版社の他誌の面々をあの手この手で翻弄しては罠にはめ、落とし入れていく。

下世話を承知で言わせて頂くが、とにかくドス黒く人間の本能を剥き出しに他人を蹴落としていく様はエンタメとしては非常に盛り上がる。
だけど騙していたと思われていた人が実は違う誰かにはめられ、またこの醜悪なレースから脱落してしまう。
まぁ、因果応報とも言えるのだが、この作品ではそれを徹頭徹尾我々に見せつけまるでプロレスを見るかの様なスリルとエクスタシーを与える一方、実は見ていたこちらにもトラップを仕掛けてくる。
悔しいけれどもちろん騙される。
だけどそれが癖になる。
そして俺は気づきました。
こういう映画が好きな俺…やっぱり変態だ(笑)

まぁ、それが僕がこの映画を観た上での感想でしょうか。

それにしてもこの映画。
テーマとしては非常に露悪的なんだけど癖になるし、全体的に華やかです。
出版業界の裏側を一流作家や人気モデルそして彼らを動かす出版社の敏腕編集者等々を通じて普段馴染みのない出版業界を眺めるワクワク感もあったし、キャストの面々も超豪華。

探偵はBARにいる』、『新解釈 三國志』で人気の大泉洋
桐島、部活やめるってよ』、『ちはやふる』の松岡茉優
『ファースト・ラヴ』、『サイレント・トーキヨー』の中村倫也
『SUNNY 強い気持ち強い愛』、『映画 賭ケグルイ』の池田エライザ
『ドクター・デスの遺産』、『記憶にございません!』の木村佳乃
アウトレイジ』、『海賊とよばれた男』の國村隼
清須会議』、『Fukushima50』の佐藤浩市
等々思い付くままに代表作とキャストを挙げてみましたが、他にも斎藤工小林聡美、佐野史朗、リリー・フランキー等々とにかく豪華な面々が集結し、騙し騙されの応酬を繰り広げます。

また、一方では現代の出版業界の闇にも踏み込んでいましたね。
これは本だけではなく、音楽そして映画にも言える事ですが、かつては雑誌なら本屋・音楽ならCD屋さんでCDを購入、映画なら映画館またはレンタルDVD店といった具合に明確なソフトというものがありました。
しかし、近年では音楽はストリーミング配信・映画も配信が加速(映画館好きな私としては非常に由々しき問題なのですが)そして本や漫画だって電子書籍が普及して久しい状況です。
その中で既存の雑誌はどの様に戦うのかを速水が打ち出していくわけです。
読者に響く企画は何か?
旧態依然とした出版業界にメスを入れる速水のアクションというのは確かにスリリングでしたし、見応えがありました。
実はこの映画、騙し合いを軸にしたエンタメ作品ではあるものの、一方では出版を中心としたエンターテイメントの在り方を同時に問う様な作品ではないかなと思いました。

モンスターハンター

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2004年の第1作発売以降シリーズ累計6500万本を売り上げるカプコンの大ヒットゲームシリーズ「モンスターハンター」を、ハリウッドで実写映画化したアクションアドベンチャー。同じくカプコンの人気ゲームを原作に大ヒットを記録した「バイオハザード」シリーズの主演ミラ・ジョボビッチ&監督ポール・W・Sアンダーソンが再タッグを組んだ。エリート特殊部隊を率いる軍人アルテミスは砂漠を偵察中、突如発生した超巨大な砂嵐に襲われ、必死に逃げるものの一瞬にして巻き込まれてしまう。強烈な突風と激しい稲光の中で気を失ったアルテミスが目を覚ますと、そこは元いた場所とは違う見知らぬ異世界だった。その世界には近代兵器の通用しない巨大なモンスターが跋扈(ばっこ)し、そんなモンスターの狩猟を生業とするハンターがいた。アルテミスは元の世界に戻るため、次々と迫りくる巨大モンスターと激闘を繰り広げていく。「ワイルド・スピード SKY MISSION」などのハリウッド作品でも活躍するタイのアクション俳優トニー・ジャーや、「ヘルボーイ」のロン・パールマンが共演。日本からも山崎紘菜が参加し、ハリウッドデビューを飾った。
(映画.comより)

ゲームって皆さん、やります?
俺はね~、もう随分と長くゲームから離れてますよ。
最後にプレイしたのってDSの『ドラクエ9』だもん。
かれこれ12年前ですね。
そんな俺からすると『モンスターハンター』と聞いても「あっ、モンハンねモンハンハマる人はハマるよね~」と得意の知ったかが出るわけですが、全くゲームの世界観等々は知りません。
そんな僕が『モンハン』の映画を見るというのはなかなかの無謀なチャレンジ。
果たして楽しめるのか?

とはいえ、キャスト&監督が同じ(更に言えば夫婦の)『バイオハザード』シリーズは一通り見たしそれなりには楽しみましたからね。
今回も『バイオハザード』よろしく何も考える事なく鑑賞に臨みました。

結果から言えばCGやアクションその他ハリウッドの特撮技術をふんだんに盛り込んだシーンの数々は劇場で見てなんぼのもの!
『バイオ』の時もそうでしたが、ゲームを知らずともハリウッドの特撮大作として十分楽しめます。
それもそのハズ、監督のポール・W・Sアンダーソンは大のゲーム好きで『モンハン』の映画化は長い構想の元、製作に取り掛かり細部へも徹底的にこだわり抜いたそう。
ゲームをプレイする人なら大満足更にゲーム未体験の人にもまずは映画で『モンハン』の世界観を表現し、ゲームにも関心を持たせるべくと意欲的な姿勢で作り上げた様です。

それにしてもミラジョボヴィッチもゾンビの次はモンスターとアクティブに戦いますね~。
しかも旦那の趣味で(笑)
そう言えば『バイオハザード』のラスト作ではお二人の子供も出てましたっけ、壮大な家族ゲームですよ(笑)

また、日本人のキャストとして『チア☆ダン』・『ブレイブ 群青戦記』でお馴染みの山崎紘菜さんが出演。
つい先日、『ブレイブ』のレビューをしましたが、その時にアクションもイケる若手女優さんだけにこれからも色んな作品で見たいと僕は伝えました。
そんな僕の願いが届いたのか(そもそも元々本作に名前がクレジットされてましたけどね)早速登場!
しかもハリウッド作で!
TOHOシネマズの幕間にで出した頃から知ってるだけに嬉しいですね!
その他、日本のゲームが元となる為かアジア系の俳優さんが名を連ねたキャスティング。
数々の作品で鳴らした面々だけに見応えがあります。

ただ、本作に関しては僕がゲームをしないからというのを差し引いても色々言いたい事がありまして、まずは本筋に入るまでがやや長い。
確かに『モンハン』を知らない人に向けての設定や世界観の説明は大事だとは思いますが、にしてもなかなかストーリーが動き出さないんですよね。
正直、ここに尺を使うのであれば他に見せ場はあったんじゃないか?と思う程。
で、ストーリーという点で言えばこれがあってない様なものなんですよね。
主体的に見せるのはもちろん、モンスターとのバトル。
もちろんその方向性は間違ってはいませんが、だからといって脚本をおざなりにしていいというものではない。
どれだけ派手で心すく様な場面の数々に酔いしれる事が出来てもそればかり続くと飽きるというのが本音だし、特に僕みたいなゲーム末プレイの人に向けるのであれば尚更です。
確かにストーリーがあるにはあるのだけど、どこか取ってつけたもの感というのかな。
「映画としてまとめるならばストーリーも入れなきゃいけないよね、どうする?」という声から「後付け的にこんな設定にしてみました。」なんて声が聞こえてきそうでしたもん。

更には音楽にも物足りなさが否めなかったかな?
コレという映画を象徴する様な曲がなかったのは何とも残念。

監督は次作を作る気満々でそれを示唆するラストシーンではあったけど、これだと次作への期待値が上がらないという人が多いのではないでしょうか?

すみません、今回は辛口になってしまいましたが、しかし確かに監督からのゲームへの愛とかリスペクトの精神は感じましたし、圧倒的な映像体験はTVの画面からは出来ません。
そういったダイナミックな映像を楽しみたいという方にはオススメかもしれません。

奥様は、取り扱い注意

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綾瀬はるか西島秀俊が元特殊工作員と公安エリートの夫婦を演じた人気ドラマの劇場版。特殊工作員だった過去を持つ専業主婦の伊佐山菜美と、現役の公安警察であることを隠しながら菜美を監視するやさしい夫・伊佐山勇輝。半年前、ある出来事により菜美は記憶喪失になってしまい、2人は桜井久実と裕司に名前を変えて、小さな地方都市で新しい生活を始めていた。2人が新生活を送る珠海市では、新エネルギー源「メタンハイドレード」の発掘をめぐり、開発反対派と推進派の争いが激化していた。そんな中、新エネルギー源開発の裏でロシアと結託した国家レベルの陰謀が潜んでいる事実を公安が突き止める。勇輝が公安の協力者になるか特殊工作員だった妻を殺すかの選択を迫られる中、菜美は大きな事件へと巻き込まれていく。菜美役を綾瀬、勇輝役を西島が演じるほか、岡田健史、前田敦子鈴木浩介小日向文世らが脇を固める。監督は「カイジ ファイナルゲーム」の佐藤東弥
(映画.comより)

2017年に全10話のドラマとして放映されていた『奥様は、取り扱い注意』の劇場版。
当初は昨年6月に公開予定でしたが、やはり新型コロナの影響もあり、3月19日に満を持して公開スタートとなりました!
実を言うと普段ドラマを見ない私ですので、当然ドラマ版は末視聴。
しかし、ドラマ版のあらすじもあるし、映画自体が単体としても楽しめる内容なので十分楽しむ事が出来ました。

綾瀬はるかと言えば素は天然でおっとりとした印象がある一方、身体能力が高く日本でも屈指の動ける女優さんでもあるわけですが、本作ではスタントなしのキレッキレのアクションをこれでもか、とばかりに見せてくれます。
まず冒頭のシーンから彼女の白熱したアクションシーンを楽しむ事が出来、つかみはバッチリ!
それでいて専業主婦としてのどかな港町でのんびり暮らす姿もバッチリハマる。
まぁそこは『海街Diary』でのイメージが蘇り、彼女の二つの魅力をひとつの作品で楽しめる内容と言えるのかもしれません。

一方での夫・勇輝役の西島秀俊さん。
公安警察であるもその姿を明かさず菜美の良き旦那として彼女を支えるのですが、旦那としての勇輝と警察としての彼の表情の使い分けが非常に印象的で西島さんの役者としての妙を見る様です。

また、菜美のカウンセラーを前田敦子さんが演じていますが、彼女も謎の多い存在。
しかし、後半になるとその謎も明かされ、また作中においての菜美の心理描写をガイドするという役割も持ちます。

スパイと公安警察が夫婦という特殊な設定から産み出されるストーリー展開も楽しませてくれます。
その一方、新エネルギー源開発を近年の原子力発電等の問題のメタファーとして取り上げたり、政治家と暴力団・警察と暴力団の癒着等社会的な闇にも踏み込んだ社会派エンターテイメントとしての側面も見る事が出来ました。

いちドラマの劇場版として軽く見ていたところもありますが、実はなかなか深いなと感じた次第です。
ただ、この製作側の姿勢は良いものの、やや強引過ぎたきらいがあり、結果的に消化不良感が否めなかったのが残念なところ。
まずそもそも菜美が記憶喪失になった経緯にも無理があったけどストーリーの都合上、ある程度は仕方なかったのかなとそこは目を瞑りましょう(何様じゃ!)
ラストのシーンよ。
予告編でもよく目にした菜美の左胸に銃弾が撃ち抜かれるシーンね。
その後、彼女は断崖絶壁から海面へと投げ出されるのだが、その後何事もなく元気にしてるんですよ。
菜美は生身の人間じゃなく、サイボーグなんかいっ!
その昔、綾瀬はるかさんサイボーグの役もやってましたからね(笑)
それからこれはドラマ版を見ていた人の意見にあったのはドラマではレギュラーの様に出ていた主要なキャラクターがごっそり出ていなかったという事で。
この辺はドラマを見ていない僕が言うのも何ですが、ドラマを見ていた人へのサービスとして登場させていてもよかったかもしれないですね。
例え劇場版の重要な場面に関わらないとしても。

なんてドラマを見ていない癖に生意気言いましたが、でも綾瀬はるかの極上のアクションシーンは一見の価値はあります!
是非劇場でご覧下さい!