きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ムーラン

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美女と野獣」「アラジン」など往年の名作アニメの実写化を次々と成功させているディズニーが、愛する父の身代わりとなり、兵士として国の運命をかけた戦いに身を投じるヒロインを描いた1998年のディズニー・アニメ「ムーラン」を実写化。ヒロインのムーラン役には、「ザ・レジェンド」や「ドラゴン・キングダム」のリウ・イーフェイが抜てきされた。「ハンニバル・ライジング」「マイアミ・バイス」のコン・リー、「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」のドニー・イェン、「エクスペンダブルズ」シリーズのジェット・リーら、それぞれハリウッドでも活躍するアジア圏のスター俳優が共演。監督は、「クジラの島の少女」「スタンドアップ」などで知られるニュージーランド出身の女性監督ニキ・カーロ。Disney+で2020年9月4日から配信(追加料金が必要なプレミアアクセスで公開)。当初は劇場公開予定だったが、2020年の新型コロナウイルス感染拡大により劇場公開を断念し、Disney+での独占配信に切り替えられた。
(映画.comより)

今年のGWは遠方への外出も控え、映画と共に過ごしたわけですが、昨年からDisney+で配信されている『ムーラン』を結局今回に至るまで末鑑賞だったのでこれを機にとばかりに鑑賞。
Disney+は今年はじめに『ソウルフル・ワールド』を見る為に加入。
今後も劇場鑑賞と配信を同時に行うと発表しているディズニーですので、ちょくちょくお世話になる事かと思います。

近年相次いでいる90年代、ディズニー・ルネサンス時代のアニメ作品の実写化。
本作では98年の『ムーラン』が対象となりました。
美女と野獣』然り『アラジン』然り高いクオリティの実写化に成功してきたディズニーですので、本作もかなり期待を胸に鑑賞しました。
元々は2018年に公開が予定されていましたが、製作が遅れ2020年公開とアナウンス。
しかし、ご存知の様に新型コロナの影響もあって、ディズニーは延期を発表しかし遂には劇場公開を断念。
サブスクリプションサービスのディズニー+での有料配信へと舵を取り、以来『ソウルフル・ワールド』・『アーヤと龍の王国』とこのところの配信が続いているのは周知の通りです。

2010年代以降、ハリウッドにおけるアジア系の俳優の活躍が顕著となり、特に中国との合作も増える中、6世紀の漢詩を基にしたこの『ムーラン』の実写化には高い注目が集まっていました。
アニメ版のリメイクとして原作ファンからの期待も高かったし、物語が内包する政治的な側面やハリウッドでの古代中国の再現等のハードルの高さ、更には主演のリウ・イーヘェイのSNS上での香港民主化問題への発言等々波乱に次ぐ波乱で製作面内外でかなり大変な苦労があったわけです。

そんな波乱含みの本作ですが、映像面はさすがのディズニークオリティ。
古代中国の宮殿から村の様子、更には広大な戦場から湖に至るまでとにかく美しく目を見張るものがあります。
題材的に難しいかなとも思いましたが、ストーリーは至ってシンプル。
子供でも楽しめるし、『キングダム』等の作品が好きであればその世界観等にどっぷり浸れる事でしょう。
更にアクションシーンだって見応えたっぷり!
戦場での合戦は一定のクオリティ以上のものは保証します。
また、これまでのディズニールネサンス期の『美女と野獣』や『アラジン』と異なる点としては、ミュージカル要素の排除がひとつに挙げられます。
ディズニーと言えばそのストーリーに即した歌や踊りが定番ではありますが、この『ムーラン』実写版では大胆にもそのミュージカル要素はバッサリ排除しています。
しかし、その判断は賢明でムダが一切なく、ストーリーが一本軸で展開。
その結果、スッキリとしていて見やすくなった気がします。
ちなみに言っておきますが、僕はディズニーのミュージカルが嫌いなわけではなく、むしろ好きです。
ただ、この『ムーラン』の場合はない方が良かったかなと思ってます。
それから女性が主人公でしかも男社会に身を投じるわけですから、ロマンスの要素があってもおかしくはありません。
いや、むしろ欲張りな監督なら入れたくなるでしょう。
しかし、本作では男女の友情はあっても恋愛関係はない。
更にディズニー作品でよく見られるおちゃらけた要素もなし。
戦いを扱っている映画だからこそ、どこまでもクールに仕上がっていてその辺りは好感が持てます。

ただ、やはり気になってしまう部分もありますので、お伝えしておきますね。
中華圏の映像文化である武侠映画のスタイルを取っており、前述の様にそれは非常に見応えのある物となっています。
しかし、肉体を駆使したアクションはあまり見られず、気という非常にふわっとした概念で説明され、しかもその気そのものの言及がないからアクションからもたらされるカタルシスが生まれてこないんですよね。
更にマレフィセントを思わせる様な魔女が登場してくるのですが、彼女の目的もこれまでの経緯もあまり伝えられないので、ヴィランとしては非常に謎めいていてよくわからないし、彼女と手を組んでいたヴィランもまた失礼ながら小物感が払拭出来ず、ラストに戦った敵としては魅力に欠けるというのが正直なところです。
それからディズニーが最も伝えたかったであろうポイントとして、自立する女性像=プリンセスとしてのムーラン。
確かに勇敢なる男達を従え、前線で戦い皇帝の命を救った彼女は勇ましく、その姿はまるでジャンヌダルクの様だと言えましょう。
しかし、彼女は皇帝を頂点とする中央集権体制の軍事国家のひとつの駒であり、ラストもその中での出世に終わってしまった辺り、価値観を刷新するまでには至らないんですよね。
歴史的な背景があるとは言え、ディズニーが志向するリベラルが価値観とは合わない作品の様にも思えました。

とはいえ、ディズニー一流の映像美とストーリーの運び等は保証します。
是非ご覧下さい!