きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

劇場版 SPY×FAMILY CODE:White

集英社の漫画アプリ「少年ジャンプ+」連載の同名コミックを原作とする人気テレビアニメ「SPY×FAMILY」の劇場版。スパイの父ロイド、殺し屋の母ヨル、超能力者の娘アーニャ、未来予知犬ボンドのフォージャー家が繰り広げる初めての家族旅行の行方を、原作者の遠藤達哉が監修・キャラクターデザイン原案を手がけオリジナルストーリーで描き出す。
西国(ウェスタリス)の凄腕スパイ「黄昏」ことロイド・フォージャーのもとに、進行中のオペレーション「梟(ストリクス)」の担当者を変更するとの指令が届く。一方、アーニャが通うイーデン校では、優勝者に「星(ステラ)」が授与されるという調理実習が実施されることに。ロイドは少しでもオペレーション「梟(ストリクス)」が進展していることを示し、現状の任務を継続できるよう交渉する材料にするため、どうにかアーニャに星を獲得してもらおうと考える。そこで、ロイドは調理実習の審査員長を務める校長の好物だというフリジス地方の伝統菓子を作ることをアーニャに提案。一家は本場の味を確かめるべく、フリジス地方へ旅行に出かけるが……。
テレビアニメ版監督の古橋一浩がアニメーションアドバイザー、テレビアニメ版助監督の片桐崇が監督を務める。(映画・comより)

この冬最大のヒット映画となっている「劇場版 SPY×FAMILY…」です。実は私の2024年最初の鑑賞作品でして1月3日に松江東宝5で見て参りました。

この「SPY×FAMILY」に関してですが、昨年12月22日の公開に合わせてこれまでのアニメ2シーズンを視聴。予習をしかとした上での鑑賞だったのですが、まずはこの「SPY×FAMILY」のアニメからお伝えしていきますね。

父はスパイ、母は殺し屋、娘が超能力者、飼い犬のボンドが未来を予知する事が出来るという疑似家族です。また娘アーニャが通うのはエリートが通うイーデン校という学校。基本その設定さえ押さえておけば理解出来るし、そもそもがこの辺りの説明は映画でもされますので初見でも楽しめるます。ただ僕はアニメの予習をしているのでこれまでのあらましを知っている分より深く楽しめました。なのでシーズン1だけでも見ておく事をオススメします。

そして劇場版となるのですが、完全なるオリジナルストーリーとなっていてフォージャー家の家族旅行からのアクション活劇となっています。ひょんな事から旅先で巻き込まれるアクシデントが軸となって家族が一致団結して奮闘する。

通常のアニメで見たギャグ多めのほのぼの展開からアクションに舵を切っていく辺りはイメージとしては映画クレヨンしんちゃんのそれに近いかもしれませんね。

とは言ってもアニメ版での良い意味でのゆるさやアーニャを中心としたギャグ描写も盛り沢山なのでアニメが好きな人の期待だって裏切らない程良いバランスだし劇場版ならではのスペシャル感もしっかり押さえています。

それにフォージャー家のキャラクターそれぞれに見せ場が用意されていましたね。ロイド、ヨル、ボンドもだけどなんと言ってもアーニャですね!これまでのアニメでもそうですが、如何にアーニャを可愛くそしてその天真爛漫さから笑いを誘わせるかがかなり凝っていましたね。近くに座っていた男の子からもよく笑いが出てましたもん。

その一方でロイドとヨル。疑似家族だけどヨルさんはヨルさんでかりそめであっても妻である事からの勘違い更には大人に向けたラブストーリー的な展開へと更にはアクション要素もかなり力が入っているなと感じました。

また、ゲスト声優である賀来賢人さんと中村倫也さんも個性的なキャラクターの配役でしたが、さすがと思わせる存在感。前回「ウィッシュ」の吹替版の福山さんにどうこう申し上げましたが、(福山さん自体は好きですよ!)このお二人に関しては全く素の部分を感じさせないキャラクターを活かした演技で良かったですね。(アニメの芸能人起用ってこういうところが悪い方向に向いてしまう場合が往々にしてあるんですよね。)

それからメレメレという実在しないお菓子がまぁ美味しそう!レシピがあれば作りたいなんて人も居るんじゃないですか?

ただ、全体的に悪くはなかったんですが、リピートしたくなるかと言うとこれが難しいんですよね。

というのがアクションシーンやロケーション等通常のアニメとの差別化を試みようとしてる面はありますし、家族愛をテーマにした良い作品だとは思いますが、カタルシスを得られにくいというのがあるんですよね。

泣ける場面があれば必ずしも良いとは断定はしませんが、ドラマティックな山場が用意されていても良かったんじゃないかと思うんですよね。ここ近年の興行収入100億円を超えるアニメ作品ってこの辺りを外さないんですよね。要は配信で良いと思わせない作り、更に言えばSNSでの口コミに繋がるかってトコロなんですよね。ここに関しては今作はやや弱かったかなというのが正直な感想です。ただ、「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」を基準にするからこんなうるさい事を言うのであって「クレヨンしんちゃん」や「ドラえもん」の様な季節恒例のシリーズ物にするのはありじゃないかなと思います。何よりこんな子うるさい映画好きのオッさんよりもお正月のファミリーを幸せにしてくれる映画とはなっていました。

僕もアーニャのキーチェーンを物販で購入しました。車につけています。

はい、というわけでSPY×FAMILY初の劇場版レビューは以上です。

今後のシリーズ化に期待したいなと思いました。

オススメです!

 

ウィッシュ

ウォルト・ディズニー・カンパニーの創立100周年を記念して製作された、ディズニーの長編アニメーション。新たなディズニー・ヒロインのアーシャを主人公に、魔法の王国の真実を知ってしまった彼女が起こす奇跡を描いたファンタジーミュージカル。
どんな願いもかなうと言われているロサス王国。魔法を操り国を治めるマグニフィコ王は、国民から慕われているが、お城で働く17歳のアーシャは、ある秘密を知ってしまう。それは、人々の願いがかなうかどうかを王が決めていること、王は国のためになる願いだけをかなえており、国民が王を信じてささげた願いのほとんどはかなえられることがないということだった。王国の秘密を知ってしまったアーシャは、王を信じて託した人々の願いを救いたいと、夜空の星に祈る。すると、空から魔法の力をもった願い星のスターが舞い降りてくる。スターの魔法によって話すことができるようになった子ヤギのバレンティノやスターとともに、アーシャはみんなの願いのために奮闘する。
監督は「アナと雪の女王」シリーズのクリス・バックと、「アナと雪の女王」や「ズートピア」などでストーリーアーティストを担当したファウン・ビーラスンソーン。脚本はクリス・バックとともに「アナと雪の女王」を手がけた、ディズニー・アニメーション・スタジオのクリエイティブ・オフィサーでもあるジェニファー・リー。音楽は、ジャスティン・ビーバーエド・シーランにも楽曲を提供しているソングライター兼アーティストのジュリア・マイケルズ。「ウエスト・サイド・ストーリー」でアカデミー助演女優賞を受賞したアリアナ・デボーズがアーシャ役の声優を務めた。日本語吹き替え版では、映画やドラマはもちろんミュージカル舞台でも活躍する生田絵梨花がアーシャ役を担当。(映画・comより)

2023年はウォルト・ディズニー社創立100周年。アニバーサリーイヤーらしく様々な作品や催しが展開されていったのはみなさんもよく知るところ。

そしてそんなアニバーサリーイヤーのラストに公開となったのがこの「ウィッシュ」です。同時上映となった短編「ワンス・アポン・スタジオ 100年の思い出」はディズニー100年歴史を彩った様々なキャラクターが登場して記念写真を撮るというもの。ミッキー&ミニーはもちろん「ズートピア」や「モアナ…」もちろん「アナ雪」からも「ズートピア」からも「アラジン」からもお馴染みのキャラクターが100周年をお祝いしています。歴代仮面ライダー集合とかプリキュアオールスターズみたいなあのキャラもあのキャラも続々登場というなかなか見応えのあるものとなっていました。

そしていよいよ本編の「ウィッシュ」です。12月20日松江東宝5にて吹替版を鑑賞。さてさてディズニーアニバーサリー作の出来は如何に?感想をお伝え致します。

前述の短編から始まり100周年のアニバーサリーに見る人の感情を載せた上で本編が始まりますが、作中でもやはり見られるのは過去のディズニー作品をペーソスに小ネタを随所に散りばめながら展開していくんですね。それはマグニフィコ王の「鏡よ鏡…」なんて自らのイケオジっぷりに酔うかの如くナルシストテイストたっぷりに白雪姫オマージュを出す他ディズニー作品に馴染みのある人ならば「おや、これは?」なんてその小ネタの数々を探して見るのが楽しい。そういったファン向けの作りが目を引きます。

その一方でこの近年でのディズニー的なプリンセスの新たな形を明確に打ち出してもいる。とりわけ押し付けのポリコレうざいと揶揄されたりもしがちですが、しかし明らかに女性はイケメンの王子様に守られる事が幸せなんていう旧来的な価値観ではなく自らが動きそして自らが運命を切り開いていくという受動的なものでは決してなく能動的なヒロイン像というものを見せている。

そして「リトル・マーメイド」のアリエルを黒人のキャストが演じた事もまた然りですが、今作の主人公・アーシャも有色のヒロインとなっています。そんな現代のディズニーヒロインそのものが向かい合うのが願いというテーマです。

どんな願いをも叶うというユートピアの様な国・それが今作の舞台となっているロサス王国。そんな国を治めるのがマグニフィコ王なんですね。アーシャはそんな王の元に行き、弟子になろうとします。しかし、やがてマグニフィコ王の暴走を目の当たりにしてしまうわけです。彼の暴走や野望を食い止めるべく彼女は7人の仲間そしてスターと共に協力しながら動いていく。言わばファンタジーの王道の様なストーリーですが、しかしこの願いというものの描き方が実にロジカルでありマグニフィコ王を単に己の野心の為に暴走する単純な悪役にしなかったのがひとつポイントです。

それは彼には彼なりの理念があるという事でして、願いというのは人々を前向きに人生を肯定的に生きる上での大事な活力になる一方、叶えられない願いを抱くのは逆にその人を不幸にしてしまうというならばその願いを自らが管理する事によってその負の側面を断ち切ろうという願いというものを逆説的なロジックで捉えた上で国の安寧をもたらそうというものです。そう考えると彼の思想にも一理ある気がしますし、彼とて初めは邪心等はなかったでしょう。しかし国を治める者としてのナショナリズムと元来のナルシシズムが悪い方向で結びつき誤った方向へ突き進んでしまう。なんでしょう。これは現実の国の指導者の悪例を作品で見せていた様な気がしたのは私でしょうか?

さて、私は吹替版で見ましたが、主要なキャストの演技に少し触れておきますね。

まずは主人公・アーシャの声を担当した生田絵梨花さん。実際にミュージカルの経験も豊富とあって歌唱シーンは見事なモノ!ディズニー作品との相性もバッチリでした!

一方、マグニフィコ王の声を担当したのは福山雅治さん。これまでの福山さんというと主人公もしくは主人公側の重要な役どころが多かったじゃないですか?アニメーションとは言え悪役のイメージは今までなかっただけに野心が暴走し破壊的なセリフを言っている福山さんは新鮮でした!

ただ福山さんの声ってやっぱり誰もの耳に焼き付いているじゃないですか?だから劇中でん?龍馬?とか湯川教授ばりに「実に面白い!」とか言ったりして古くはちいにいちゃんが頭によぎりといやそれが悪いという事ではないですが…まぁ、それだけ福山さんのイメージが浸透してるって事なんでしょうね。でも歌唱シーンはやっぱり流石でしたね!大物俳優であると同時にトップアーティストでもあるわけですからこういったミュージカル作品との親和性が高いって事なんでしょうね。

ディズニー100周年を飾る極上のエンターテイメント作品となっていました!

是非劇場でご覧下さい!

ウォンカとチョコレート工場のはじまり

ティム・バートン監督×ジョニー・デップ主演の大ヒット作「チャーリーとチョコレート工場」に登場した工場長ウィリー・ウォンカの始まりの物語を描くファンタジーアドベンチャー
純粋な心ときらめくイマジネーションを持ち、人びとを幸せにする「魔法のチョコレート」を作り出すチョコ職人のウィリー・ウォンカは、亡き母と約束した世界一のチョコレート店を開くという夢をかなえるため、一流のチョコ職人が集まるチョコレートの町へやってくる。ウォンカのチョコレートはまたたく間に評判となるが、町を牛耳る「チョコレート組合」からは、その才能を妬まれ目をつけられてしまう。さらに、とある因縁からウォンカを付け狙うウンパルンパというオレンジ色の小さな紳士も現れ、事態はますます面倒なことに。それでもウォンカは、町にチョコレート店を開くため奮闘する。
若き日のウィリー・ウォンカを「DUNE デューン 砂の惑星」「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメが演じた。「ラブ・アクチュアリー」の名優ヒュー・グラントウンパルンパを演じ、サリー・ホーキンスやオリビア・コールマン、ローワン・アトキンソンら演技派俳優が共演。監督は「パディントン」シリーズのポール・キング、製作は「ハリー・ポッター」シリーズのデビッド・ハイマン。(映画・comより)

番組始まって以来初の二本立てでお送りする今回の「きんこんのシネマ放談」。二本目は05年に公開され大ヒットとなった『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚となる今作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』です。先に紹介した『あの花が咲く丘で君にまた会えたら』と同日にMOVIX日吉津にて鑑賞。今作の方を先に見たのですが、『あの花が』で涙を流した後にハッピーな気持ちになる為に今作を見るなんて流れもいいかもしれませんね。

さて、まずは『チャーリーとチョコレート工場』ですよ。ティム・バートン×ジョニー・デップの組み合わせにより当時大ヒット。ティム・バートンによるカラフルかつ毒っ気たっぷりの世界観とジョニー・デップが放つウィリー・ウォンカの怪しげな雰囲気が何ともクセになり僕も大好きな作品です。

そしてあのウィリー・ウォンカはどの様にしてあの巨大なチョコレート工場のオーナーになったのかを描いているのが今作です。

クレジットにもある様にティム・バートンではなく『パディントン』シリーズのポール・キングが監督。『ハリーポッター』シリーズのプロデューサーであるデビッド・ハイマンが製作。そしてウィリー・ウォンカ役はハリウッドの若手人気俳優・ティモシー・シャラメ。つまり前日譚ではありますが、『チャーリーとチョコレート工場』とはキャストも製作陣も一新した別物と解釈して見る事をオススメします。

そんな今作ですが、ジョニー・デップのウォンカ像とは全く異なるティモシー・シャラメ流のウォンカを見せてくれました。毒っ気は全くなくチョコレートで人々を幸せにするいや出来る事を信じてどこまでも真っ直ぐな姿を見せてくれます。ジョニー・デップウォンカが父親に冷遇された為にその結果、ひん曲がった性格になっていたのに対し、シャラメウォンカはマザコン?いや、亡き母の思いを秘めながらチョコレートと向き合いそして自身の作ったチョコレートで皆を笑顔にするべく奔走する。なんて言うとジョニー・デップのウォンカが好きな人にはあの独特なブラック寄りのウォンカが好きだったのに〜なんて言われるかもですが、だから。別物として楽しみましょう。

そして「パディントン」シリーズで鳴らしたポール・キングならではのイギリス・ロンドンを思わせる街並みを背景に鮮やかな色彩とほんのちょっとのブラックユーモアも織り交ぜながらストーリーを転がしていく。

更に特徴的なのがミュージカルの体裁を取っており劇中ではストーリーに沿う形での歌曲が色を添えてくれます。とりわけ冒頭ではシャラメウォンカが軽やかに歌い街を闊歩するのですが、時間にして3〜4分程度。この間に彼の出自であったり現在置かれている状況を伝えてくれ、更には微かな希望すらも失っていく過程までを見せていきますが、この流れが絶妙。非常によく出来ていましたね。

そしてこれは『パディントン』がそうであった様に悪役とされるキャラクターがただ憎たらしいだけではなくどこか愛嬌があります。もちろんウォンカにとっては邪魔な存在だし、ひどい事もしている。警察署長や牧師といったいわゆる聖職者とされる人達も買収する姑息さがありますが、どこかマヌケな所があって憎めない。それでいてウォンカと共に酷い目に合わされてる人達が協力し合いながらしっかりと落とし前をつけてくれるんです。見ている人の溜飲を下げてくれますが、それすらもほっこりとさせてくれるんです。まぁ、この辺りはファミリー向けに作られているから悪役をあまりにも非道な連中にし過ぎない様な配慮があるかもしれませんね。

そして今お伝えした様な仲間達との逆転劇はとにかく見ていて痛快。ウォンカと彼らは望まぬ形で冷遇される境遇に追いやられるのですが、その状況を脱する為にそれぞれの知恵を出し合い持ち前の特技を活かしながらその状況を脱する為に動く。あそこまでの過酷さは出ませんが、ある意味『カイジ』の世界観に近いかもしれませんね。そしてそのきっかけとなるチョコレートにも様々な意味を持たせてくれていたし、時に現実世界での何かを表すメタファーにもなっていました。

それからヒュー・グラントによるウンパルンパのキャラクターも良かったですね!ロマンティックコメディの帝王として世界中の女性を虜にしたヒュー・グラントの新たな一面を見せてくれましたよ!今後もこういったコミカルなキャラクターとか悪役等も見てみたいですね。

そして牧師の役を演じていたのはローワン・アトキンソン。そう、あのMr.ビーンですよ!出番こそ少ないですが、強烈なインパクトを残してくれる。健在ぶりを証明していましたね。

それにしてもこの作品に出てくるチョコレートのまぁ美味しそうなコト!劇場によっては特典としてチョコレートが配られていたそうですよ、羨ましい!

ジョニー・デップのウォンカとは全く別のウィリー・ウォンカを演じたティモシー・シャラメMCUやDC等に代表されるヒーロー物には出ないと公言している様ですが、今後も彼のイメージに合ったキャラクターで様々な作品に出てもらいたいですね。差し当たっては3月に公開の『DUNE/砂の惑星』の続編を楽しみにしています。

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら

SNSを中心に話題を集めた汐見夏衛の同名ベストセラー小説を映画化し、戦時中の日本にタイムスリップした現代の女子高生と特攻隊員の青年の切ない恋の行方を描いたラブストーリー。
親にも学校にも不満を抱える高校生の百合は、進路をめぐって母親とケンカになり、家を飛び出して近所の防空壕跡で一夜を過ごす。翌朝、百合が目を覚ますと、そこは1945年6月の日本だった。通りがかりの青年・彰に助けられ、軍の指定食堂に連れて行かれた百合は、そこで女将のツルや勤労学生の千代、彰と同じ隊の石丸、板倉、寺岡、加藤らと出会う。彰の誠実さや優しさにひかれていく百合だったが、彼は特攻隊員で、間もなく命懸けで出撃する運命にあった。
NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の福原遥が百合役、「死刑にいたる病」の水上恒司が彰役で主演を務める。「光を追いかけて」の成田洋一が監督を務め、福山雅治が主題歌を担当。(映画・comより)

皆様明けましておめでとうございます。新年最初の「きんこんのシネマ放談」です。今年も新しい映画との出会いを楽しみにこの番組そしてこのコーナーをお送りしていきます。本年もよろしくお願い致します。

さて、2024年初のシネマ放談は原作がSNSで話題を読んだ「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」です。実は僕この作品ですが、正直なところ当初の鑑賞予定はありませんでした。戦争を題材にした純愛を描いたという内容が予告編が流れ泣けますよ〜と煽ってくる様な印象を受け故にあまり惹かれなかったというところでして…しかしこんな天邪鬼な私を叱りつけたいと今では猛省しています。

鑑賞日は公開から一週間経った12月17日の日曜日。今回もMOVIX日吉津。恋愛要素も強いとあって戦争映画ではあるものの若者の比率高め。一方で本来の?戦争映画の主要客層たる年配の方々の姿も多く幅広い層が関心を示している事がよくわかりました。

神風特攻隊。言うまでもありませんが、太平洋戦争(大東亜戦争)末期自らの身を挺し敵艦に突撃し犠牲になった方々でありその数は3800人以上とされています。私も靖國神社遊就館で特攻隊の方々が家族へ当てた手紙等を読み涙を流しまた英霊となった特攻隊員への感謝と黙祷を捧げ靖國神社を後にしました。

などと言うと明らかに勝ち目のない選局において国や軍部の誤った判断により犠牲になったんだと声を荒げる御仁も一定数居るかもしれません。

戦争映画の難しさってこの辺りの思想面にも踏み入れる事になるので万人を納得させる史観が描けない事にあると思うんです。

しかし今作はその辺りが非常にバランスが取れていて右派左派関わらずフラットな感覚で見る事が出来ると感じました。今後作られる戦争映画の良いお手本に仕上がっていたのではないでしょうか?

また、空襲の場面の生々しさもしっかりと撮られていましたね。例えばこれまでの戦争映画だと実際のモノクロの当時の映像で上空から捉えたB29が爆弾を落とす所であったりそのB29の操縦士目線で爆弾を落下させる等の場面をよく見てきました。しかし今作においては地上に居る庶民の目線なんですね。とりわけ2023年の日本からタイムスリップした現代の女子高生・百合にとっては日常の場面で命の危機に瀕するなんて事はそうそうないんですね。だからこその恐怖が彼女の目線がひしひしと伝わります。遠くの方から放たれる焼夷弾によって街が焦土と化していく。また逃げ遅れた人が容赦なく敵機の銃弾によって命を奪われる。それは大人も子供も関係なく無慈悲に焼かれてしまう。歴史の授業でしか戦争について理解し得ない彼女にとって如何に戦争が残酷でまた愚かな事であるかを感じる。それを彼女と同じ目線で見る我々も同様の思いを巡らせる。

それから踏み込んでいたのが特攻隊の死生観ですよね。明鏡止水の心境で若き彼らは零戦に乗り込み南方の海へ消えていった。果たしてこれは本当なのだろうか?もちろんそういう人だっていたかもしれない。だけど死ぬ事は怖いのは当然であってそれは彼らとて同じなんですよね。生きたいとか死にたくないなんて言うとこの時代の帝国軍人としては恥ずべき事。だけど現代に生きる百合の考えは今の時代だからこそかもしれないけど生きる事でお国の為になる事をする人も居るのであって。そしてこの場面が伏線となってラストの場面に生かされる脚本は秀逸でしたね。

また百合が恋する彰という若者は聡明である事がよくわかります。大学で哲学を学び作中でも哲学書を手にしていますが、こういう人は俯瞰で物事を捉え事の事象を言語化出来る能力が高いんですね。 現代的な考えを持ち、1945年6月以後の歴史を知る百合は戦争が終わる事、日本が負ける事を口にします。当然戦時下でこんな事を口にするのは許されません。警察官に目をつけられ叱責を受ける。彼女を守る彰は難を逃れた後に当該の警察官を悪くは言いません。悪いのはあの警官をあの様にさせた何かだと。その何かとは大きく言えば戦争でしょう。細かく言えば?軍部、政治家、財閥等の政商、戦意を高揚するメディア或いは対外的な米英中との外交?その全て?もし彰の様な青年が戦争を生き延びていたら戦後にひとかどの人物になっていたかもしれないし。実際にこういう人達も犠牲になっていたんでしょうね。

とこの様に当初考えていた以上に深い内容でした。

ただ一方では気になった点がなかったと言えば嘘になるのでそこに触れておきましょう。まず百合がタイムスリップした後の場面。明らかに服装が戦時中のそれではないのに誰も疑問を抱かないんだろうという点。

件の空襲の時に足を大けがしたであろう百合が次の場面では何事もなく歩いている点。

やはり空襲後に安否を気にかけていた松坂慶子演じるツルさんとの再会これまた何事もなかった様にしれっとしている所。

戦時下で仲良くなった同年代の千代のその後も見たかったし、賛否はあるかもしれないけど現代パートに戻ってから彼女と何かしらの因縁がある事が判明する等のエピソードがあればよりドラマチックになったかもしれないとまぁこれは個人の好みなんですけどね。

後、個人の好みついでに言えば物語の舞台が夏である事、終戦記念日の8月15日に合わせて夏に見たかったというのはあるかもです。

しかし、戦争についての深いメッセージやテーマが盛り込まれている所、一方で涙なしでは見る事の出来ない感動ストーリー。非常に質の高い作品でした!

オススメです!

 

映画 窓ぎわのトットちゃん

黒柳徹子が自身の子ども時代をつづった世界的ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」をアニメーション映画化。
好奇心旺盛でお話好きな小学1年生のトットちゃんは、落ち着きがないことを理由に学校を退学させられてしまう。東京・自由が丘にあるトモエ学園に通うことになったトットちゃんは、恩師となる小林校長先生と出会い、子どもの自主性を大切にする自由でユニークな校風のもとでのびのびと成長していく。
主人公トットちゃん役で子役の大野りりあな、トモエ学園の校長・小林先生役で役所広司、バイオリン奏者であるトットちゃんのパパ役で小栗旬、ママ役で杏、担任の大石先生役で滝沢カレンが声の出演。「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」シリーズなどの国民的アニメを世に送り出してきたシンエイ動画がアニメーション制作を手がけ、「映画ドラえもん」シリーズの八鍬新之介が監督を務める。(映画.comより)

1981年に刊行されベストセラーとなった黒柳徹子の自伝「窓ぎわのトットちゃん」。今年40年以上の時を経て続編も出版され、こちらも大ヒットとなっています。

私はというとそんな原作を読んだ事がなくてでも子供の頃からほぼお姿が変わらないそんな黒柳徹子さんはどんな子供時代を過ごしていたんだろう?そんな関心はあった為この映画の公開は楽しみにしていました。そして12月9日。公開週の週末に見て参りました。

まず感じたのが戦前の東京の街並みを再現した映像の美しさ。時代的には日中戦争が泥沼化し、いよいよ国民全体に戦争の影響が広まっていくそんな時期ではあるもののまだ街は華やかでカフェに行けば蓄音機から流行歌が流れるという庶民が束の間の平和を楽しんでいました。そんな中でトットちゃんは育っていくのですが、家庭も非常に裕福なのが伝わります。父はバイオリン奏者で母も戦前のモダンガールといった装いで「一杯のコーヒーから」が流れる喫茶店でお茶を嗜む。シェパードを飼っており、犬の名前がロッキー。戦前なのに洗濯機があり朝食はご飯に味噌汁ではなくトースターでパンを焼いて食べる生活。両親の職業や社会的な立場から西洋的な文化に触れていた事もあって両親の呼び方もパパ、ママ。徹子さんの生年月日から昭和15年頃と推測出来ますが、この時代でかなり先進的でかつ裕福な家庭環境だった事が伝わります。思えば「君たちはどう生きるか」も戦中の話しでかつ宮崎駿監督の幼少期を描いていましたが、あちらでもかなり裕福な家庭であった事がわかりましたよね。

しかし家庭が裕福だからといって学校では優遇されていたという事はなく学校では問題視されてしまい今の時代の小学校では考えられないのですが、退学になってしまいます。でもこの辺りもトットちゃんには悪気はないんですよね。蓋が開閉する机を面白がったり校外を練り歩くちんどん屋の行列が気になって騒いでしまったり。だけどそれが原因で他のクラスメイトにも飛び火して今で言う学級崩壊の様な形になってしまいその結果退学…なんて見るといいか悪いかは別に昔は学校側に力があって問題児とされる子は退学に出来ていたんだなと。

で、その結果通う事になったのがトモエ学園。ここからが本格的に今作のストーリーが動いていきます。

古い電車を改良した教室というユニークな形態のトモエ学園。そこにはトットちゃんと同年代の様々な事情を抱えた子供達が集まっています。そしてとにかく自由。国語なら国語、算数なら算数といった具合に決まった時間に皆で揃って授業ではなく子供達の自主性を尊重して好きな教科を自らが学ぶという形態。今の時代でもかなり珍しいと思うのですが、これを開戦前夜の東京で取り入れていた事の先進性から小林校長の教育方針に関心させられます。皆で一斉に取る昼食もそうだし今の時代だと問題になりそうですが、ロリコンショタコンの概念がない戦前だからこそ?の全裸でのプール等驚きの場面はありますが、皆楽しそうなんですね。

そんな環境の中、トットちゃんは泰明ちゃんという小児麻痺の男の子と仲良くなります。身体的に不自由な彼に対してもトットちゃんの無邪気さから彼に新しい世界を見せていきます。それは木登りをする事であったりどろんこになって遊ぶ事であったり。今作で最も心が揺れ動かされるのがこの一連の場面なんです。泰明ちゃんは運動会でもトットちゃんと二人三脚で走り腕相撲でもトットちゃんと競う。だけど病気があるからこその運命の残酷さも伴います。どろんこになって帰ってきた泰明ちゃんがお風呂からお母さんに謝る場面があります。そしてそれに対して涙する母親。このシーンは胸が締め付けられましたね。運動をしたり他の子の様にわんぱくに遊ぶ事が出来なかった我が子が服を汚して帰って来た事への母親としての嬉しさ。一方で差し迫る残酷な運命。それを悲観して堪らず溢れる涙。ここは僕も涙が止まりませんでした。そしてトットちゃんが見た夢そこからの流れ。この怒涛の号泣シーンはすごい辛かったですね。

また、先進的であり様々な事情から集まった子供達を馬鹿にする為やって来る悪ガキが出て来ます。いつの時代にも居ますが子供の残酷性を写す場面が今作にも出てくるんです。だけどそんな子らに対峙しながらトモエ学園の子供達が追い返す場面もそしてその声を校長室で肩を震わせながら耳にする小林校長の姿も目頭を熱くさせてくれました。

その後戦火が激しくなると共に離散するトモエ学園。最後の姿を見るのも辛くなりましたね。それだけこの作品は見る人をトモエ学園に引き込んでいったという事を強く感じましたね。

それにしても小林校長先生の様な教育者って今の時代にも求められる理想の教師ではないでしょうか?汲み取りの中に財布を落としたトットちゃんに決して声を荒げる事なく「元に戻しとけよ」と一言伝える姿、担任の大石先生が軽い気持ちで言った冗談で生徒を傷つけていないかを考え大石先生を叱るその優しさ。前述の悪ガキ達とのいざこざにだって子供の喧嘩に出る事なく校長室で悔しさを滲ませながら耐える姿。役所広司さんの名演もありますが、この先生の下で子供時代を過ごしていたらどれだけ豊かな心が育まれるかとか自分の子供はこういう先生の所で学んでほしいなんて思って見ていました。

とそんな小林校長の役所広司さん、小栗旬さん、杏さん、滝沢カレンこういった著名なキャスト陣ももちろんトットちゃんを演じた子役の大野りりあなちゃんキャストはホント素晴らしかったです!

この映画は是非見て頂きたい!心から思える作品です!強くオススメします!

翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

埼玉県の自虐ネタを詰め込んだ魔夜峰央のギャグ漫画を実写映画化して話題を呼び、興行収入37.6億円の大ヒットを記録した「翔んで埼玉」のシリーズ第2弾。主人公・麻実麗役のGACKT、壇ノ浦百美役の二階堂ふみが引き続き主演を務めた。
東京都民から迫害を受けていた埼玉県人は、麻実麗率いる埼玉解放戦線の活躍によって自由と平和を手に入れた。麗は「日本埼玉化計画」を推し進め、埼玉県人の心をひとつにするため、越谷に海を作ることを計画。そのために必要な白浜の美しい砂を求めて和歌山へと向かう。そこで麗は、関西にもひどい地域格差や通行手形制度が存在しているのを目の当たりにする。そして大阪のめぐらせた陰謀が、やがて日本全土を巻き込む東西対決へと発展していく。
前作で日本アカデミー賞の最優秀監督賞を受賞した武内英樹が引き続きメガホンをとり、脚本も同じく前作で日本アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞した徳永友一が担当。新キャストとして、通行手形制度撤廃に向けて滋賀県人たちを導く「滋賀のオスカル」こと桔梗魁を杏、関西を牛耳る冷酷無慈悲な大阪府知事・嘉祥寺晃を片岡愛之助が演じるほか、堀田真由、くっきー!(野性爆弾)、高橋メアリージュン津田篤宏(ダイアン)、天童よしみ藤原紀香川崎麻世和久井映見アキラ100%朝日奈央、戸塚純貴ら個性的な顔ぶれが続々と登場。(映画・comより)

あの壮大な茶番が4年振りに帰って来ました!埼玉をディスりにディスるも埼玉県人の広い心と脚本の面白さ等もあって日本中で大ヒットとなった1作目。待望の続編が遂に公開となりました!前作にドップリハマったこの私。公開日の11月23日。前回紹介した「首」に続けて見て参りました!MOVIX日吉津で見て来ましたが、話題作の公開初日かつ祝日という事もあってたくさんの方が来場してましたね。「首」が年齢層高めの圧倒的な男性率の高さであったのに対して老若男女バランスの取れた客層となっていました。

さて、前作は東京を中心とした首都圏でのヒエラルキーしかし神奈川県は横浜がある事でややお高い位置にあるという考慮から埼玉VS千葉の構図を非常に面白おかしく見せていました。

そして今作はその構図を今度は関西地方に移し地域ヒエラルキーをネタに2府4県のパワーバランスを見せながらストーリーを展開していきます。前作における東京つまりは絶対王者的な存在として大阪、神奈川県ポジションを神戸のある兵庫と京都を据えそして虐げられる奈良・和歌山そして滋賀を捉えていきます。で、この構図を見ると三県の人を敵に回すんじゃね?なんて肝を冷やしそうですが、この辺りはホントうまいんですよね。地元ならではのあるあるネタやマニアックな小ネタを取り入れる事によって思わずニヤリとさせてしまう。

僕なんかは滋賀の彦根でラジオをやってた時期がありましたが、滋賀のスーパーの平和堂を猛プッシュしてるところに顔がにやついちゃいましたね。でもロバのパンは京都じゃね?なんてツッコミも入れながら(笑)後、風が吹くだけで止まる湖西線とかね。これホントなんですよ。京都から彦根に通ってましたけど片道一時間くらいかかるんですね。結構遠いです。一年くらい通ってましたけど何度か風で停車なんてありましたもん。京都駅からの新快速でもありましたからね。で、とび太くんですよ。山陰地方で見かける事がないので補足的な説明をすると子供の飛び出し注意をドライバーに伝える為の人形型看板です。いがぐり頭に赤い服を着てるぱっと見クレヨンしんちゃんっぽいのが特徴です(笑)

他に和歌山に生息するパンダなんてアドベンチャーワールドのパンダじゃんとか関西でしかお見かけしない551がある時〜ない時〜のCM、僕の馴染み深い京都で言うと洛外以外は京都ちゃう!山科?滋賀やん!みたいな京都人意識ね。まぁそれで言うと伏見は宇治やんみたいなヤツね。はいここ京都ネタわかる人だけで盛り上がりましょ。

なんて具合にご当地ネタふんだんで関西に馴染みのある人ならかなりわかりみ深いんじゃないかな?尚、前述の様にたくさんのお客さんの中で僕は見てましたが、一人で終始ニヤリとしておりました。

更には食いだおれ人形とゆりやんによる「チャーリーとチョコレート工場」のウンパルンパパロディー等のネタも見ていて楽しかったですね!

とこの様に今回は関西ネタモリモリでとにかく楽しかったですね!

で、埼玉だってしっかりネタはあります。今回は‥というか今回も一連のストーリーを伝えるのは埼玉のFM局NACK5ですし僕はその存在すら知りませんでしたけど行田市にある田んぼアートとそれを展望する為のタワーが物語の鍵を握る重要なスポットとして出てくる。

それにしてもキャストはノリノリですね〜。Gacktさんや二階堂ふみちゃんはもちろん今作のキャストとしての杏さんに片岡愛之助さん、シリアスな作品にも存在を発揮する実力派なんだから仕事選んだ方が‥と老婆心ながらの感情を抱く反面ノリノリで演技をするお姿に楽しませてもらったり川崎麻世さん、本物の京都市長っぽいです‥。またコメディエンヌとしての藤原紀香さん‥ずっと芦屋か西宮のご出身だと思ってたんですが‥。野生爆弾のくっきーさんやアキラ100%さん(服着てます・笑)、ハイヒールのモモコ姉さん等芸人畑の皆さんも良い味出していましたね。

ちなみに今作で特にディスられていた滋賀県の知事さんはけしからん!と言いながらも顔がニヤニヤだったそうですよ(笑)で、こんなん見ると羨ましくないですか?

山陰なんてめちゃくちゃおいしい土地柄じゃないですか?この映画で言うところの都会指数の低さとかね。中国地方での位置付けと言い。広島が前作での東京・今作での大阪なら岡山が前作の神奈川.今作の京都、兵庫ならば島根と鳥取は?‥山口?う〜ん、こっち寄りじゃないすか?一緒にディスられましょ(笑)‥て山口の方ごめんなさい。下関のフグ食べたいです!

少なくとも僕は島根県人として喜んでディスられる覚悟はありますよ。山陰のマニアックな小ネタを盛り込んでくれるならばね。東映さんお願いします!

という事でオススメです!

北野武が構想に30年を費やして監督・脚本を手がけ、「本能寺の変」を題材に壮大なスケールで活写した戦国スペクタクル映画。武将や忍、芸人、農民らさまざまな人物の野望と策略が入り乱れる様を、バイオレンスと笑いを散りばめながら描き出す。
天下統一を目指す織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい攻防を繰り広げていた。そんな中、信長の家臣・荒木村重が謀反を起こして姿を消す。信長は明智光秀羽柴秀吉ら家臣たちを集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索命令を下す。秀吉は弟・秀長や軍師・黒田官兵衛らとともに策を練り、元忍の芸人・曽呂利新左衛門に村重を探すよう指示。実は秀吉はこの騒動に乗じて信長と光秀を陥れ、自ら天下を獲ろうと狙っていた。
北野監督がビートたけし名義で羽柴秀吉役を自ら務め、明智光秀西島秀俊織田信長加瀬亮黒田官兵衛浅野忠信羽柴秀長大森南朋、秀吉に憧れる農民・難波茂助を中村獅童が演じる。(映画・comより)

アウトレイジ最終章」以来の北野武監督の新作映画「首」。思えば私、この映画の公開発表から公開日をまさに首を長くして待ち侘びていました。そして11月23日の公開日。朝イチでMOVIX日吉津にて鑑賞。入場開始から本編の上映開始時間にも高まる期待感が抑えきれないといったところでして映画泥棒の映像が流れ「さぁ、いよいよだぁ!」と映画を見る僕にも気合いが入りまくり!

それではその映画の内容について触れていきましょう。まずこの映画にあたってお伝えするならば北野武監督が作る戦国モノ。「大河ドラマ等で描かれる戦国時代というのは綺麗にまとめ過ぎている」という事。戦国武将を英雄の様に描くし何なら男女のラブストーリーだってある。昨今は歴史好きな女子も多いしそうなると武将はイケメンであってほしいとか姫とのロマンスだって見たい。言わばそういうニーズに訴求しているのかもしれません。何より大河ドラマだと日曜の夜にNHKが放映するわけだからコンプライアンスに逸れる内容を流すわけにはいかない。そうなると必然的にマイルドな描写になるのは無理もない事でしょう。

しかしそこは北野武監督ですよ。リアルな戦国時代なんて斬って斬られての死と隣り合わせにある様な時代ですから生易しいものではない。更には戦国武将というのは男色の気があるというかむしろ男色が力を持つ者のステータスとされていた面もあるわけでしてその辺りもガッツリ踏み込んでいると公開前の会見でもお話しされていました。

まぁ、この時点でエログロバイオレンスな作品になっている事が事前に予想が出来ていました。そしてよく言われていましたね戦国版アウトレイジと。

この辺りは本編開始から比較的早い段階で出て来ました。それこそが加瀬亮演じる信長ですよ。思えば加瀬亮さんと言えば北野組参加前は素朴で真面目そうな好青年役のイメージが強かった俳優さんです。そんな加瀬亮さんのイメージを一変させたのが「アウトレイジ」シリーズでのインテリヤクザ・石原ですね。特に二作目である「アウトレイジ ビヨンド」でのいちびりぶりそしてピッチングマシーンの連投でボコボコにされて殺されるまでがワンセット。とにかくインパクトがありましたよね。この石原の死に方もそうだし1作目の椎名桔平演じる水野のラーメン屋店主のさいばしグサッからの包丁で指ストンまで等アウトレイジシリーズって凄惨なんだけどその後の流れもあって妙な緊張と緩和からくる笑いがアクセントになっていましたよね。

で信長が家臣の遠藤憲一演じる荒木村重の口に饅頭を詰め込みからの〜て流れは正にアウトレイジ的バイオレンスなんですよ。すっげぇ見ててヒリヒリするんですけどこれがクセになるんですよね。

他にも斬首シーンのエグさですよ。これは処刑であれ戦であれ人の首を刎ねる場面はとにかく容赦ない。ついさっきまで生きてた人が次の瞬間首から上があっという間に落とされるこれは名のある武将であれ庶民であれとにかく容赦ない。無慈悲に人が殺されていく。この映画では一体どれだけの死の場面があるんでしょうか?

更に合戦における死体の見せ方だって惨たらしいんですよね。顔に虫が群がるいや、そもそも顔だって原型留めてないし。

更には男色としての性描写もぬかりない。西島秀俊が演じていた明智光秀荒木村重、更には信長と森蘭丸といった具合に。特に後者の方は完全にレイプじゃん。

う〜ん、これが北野武監督による戦国時代か〜、こりゃ大河ドラマでは放送出来ねぇわな。

とここまでエログロバイオレンス面ばかり話して来ましたが、戦国時代ならではの武将同士の腹の探り合い等の知的戦略部分も描かれていましたね。そりゃ皆んな天下統一を目指して日々戦ってたわけですからこうもするわな。荒木村重明智光秀の場合だってそう。男同士の契りや友情よりも光秀が欲するのは天下であり裏切りその為には仲間を売るなんて事もあるよね。それに秀吉も軍師の黒田官兵衛なり弟の羽柴秀長なり更には噺家曽呂利新左衛門なりと周囲にブレーンをつけていても彼らとてあくまで政治的に利用するコマなのであって。

また、今作が持つ戦国時代らしいテーマというのがあってそれが下剋上なんですよね。今でいうパワハラ上司そのものの信長に何故秀吉や明智光秀荒木村重らは仕えるの?といったらこのパワハラ上司亡き後その座に就いてやろうと皆が虎視眈々と狙っていたわけだし、印象深かったのは本能寺の変での信長家臣の弥助ですよ。南蛮貿易の際にイタリア人宣教師・オルガンティノが連れていた黒人奴隷で信長が引き取り家臣にした人物です。「アウトレイジ」1作目の時の様にアフリカ系の俳優さんかと思ってましたけど日本人‥日本とアメリカのハーフなんですが副島淳さんという方が演じていました。で、この弥助が業火の本能寺で信長にまさかの行動を取るんですよね。史実では諸説ありますが、この弥助は本能寺の変まで信長と行動を共にするも生き延びその後の消息は不明とされています。この辺り監督流の下剋上へのロマンが反映された描写となっていたりで割と僕は好きですね。

さて、その後は史実通り山崎の戦い明智光秀は秀吉によって討たれます。この辺りの合戦シーン‥というか今作は全編に渡って合戦シーンが良いですが、ラストでのシーンにおいての秀吉の言動が全てを物語っています。それはこの映画で描かれた首の扱い方更には武将の首を刎ねて刎ねてのし上がる戦国時代や天下取りという物に対しての秀吉の姿を借りた北野武監督の結論の様な気がします。

以上が半年間待ち望んでいた北野武監督最新作『首』の私なりの感想です。再三お伝えした様に過激な場面が容赦なく写されます。グロに耐性のない方にはオススメしませんが、個人的には期待を裏切らない流石は北野武監督と大絶賛したくなる様な作品でした!

気になってたという方は是非劇場でご覧下さい!

それから最後に歴史好きな私から。織田信長っていうと破天荒な魔王というイメージ強いでしょ?近年の研究では我々が思ってるよりもバランスの取れた常識人だったそうですよ。