きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

映画 窓ぎわのトットちゃん

黒柳徹子が自身の子ども時代をつづった世界的ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」をアニメーション映画化。
好奇心旺盛でお話好きな小学1年生のトットちゃんは、落ち着きがないことを理由に学校を退学させられてしまう。東京・自由が丘にあるトモエ学園に通うことになったトットちゃんは、恩師となる小林校長先生と出会い、子どもの自主性を大切にする自由でユニークな校風のもとでのびのびと成長していく。
主人公トットちゃん役で子役の大野りりあな、トモエ学園の校長・小林先生役で役所広司、バイオリン奏者であるトットちゃんのパパ役で小栗旬、ママ役で杏、担任の大石先生役で滝沢カレンが声の出演。「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」シリーズなどの国民的アニメを世に送り出してきたシンエイ動画がアニメーション制作を手がけ、「映画ドラえもん」シリーズの八鍬新之介が監督を務める。(映画.comより)

1981年に刊行されベストセラーとなった黒柳徹子の自伝「窓ぎわのトットちゃん」。今年40年以上の時を経て続編も出版され、こちらも大ヒットとなっています。

私はというとそんな原作を読んだ事がなくてでも子供の頃からほぼお姿が変わらないそんな黒柳徹子さんはどんな子供時代を過ごしていたんだろう?そんな関心はあった為この映画の公開は楽しみにしていました。そして12月9日。公開週の週末に見て参りました。

まず感じたのが戦前の東京の街並みを再現した映像の美しさ。時代的には日中戦争が泥沼化し、いよいよ国民全体に戦争の影響が広まっていくそんな時期ではあるもののまだ街は華やかでカフェに行けば蓄音機から流行歌が流れるという庶民が束の間の平和を楽しんでいました。そんな中でトットちゃんは育っていくのですが、家庭も非常に裕福なのが伝わります。父はバイオリン奏者で母も戦前のモダンガールといった装いで「一杯のコーヒーから」が流れる喫茶店でお茶を嗜む。シェパードを飼っており、犬の名前がロッキー。戦前なのに洗濯機があり朝食はご飯に味噌汁ではなくトースターでパンを焼いて食べる生活。両親の職業や社会的な立場から西洋的な文化に触れていた事もあって両親の呼び方もパパ、ママ。徹子さんの生年月日から昭和15年頃と推測出来ますが、この時代でかなり先進的でかつ裕福な家庭環境だった事が伝わります。思えば「君たちはどう生きるか」も戦中の話しでかつ宮崎駿監督の幼少期を描いていましたが、あちらでもかなり裕福な家庭であった事がわかりましたよね。

しかし家庭が裕福だからといって学校では優遇されていたという事はなく学校では問題視されてしまい今の時代の小学校では考えられないのですが、退学になってしまいます。でもこの辺りもトットちゃんには悪気はないんですよね。蓋が開閉する机を面白がったり校外を練り歩くちんどん屋の行列が気になって騒いでしまったり。だけどそれが原因で他のクラスメイトにも飛び火して今で言う学級崩壊の様な形になってしまいその結果退学…なんて見るといいか悪いかは別に昔は学校側に力があって問題児とされる子は退学に出来ていたんだなと。

で、その結果通う事になったのがトモエ学園。ここからが本格的に今作のストーリーが動いていきます。

古い電車を改良した教室というユニークな形態のトモエ学園。そこにはトットちゃんと同年代の様々な事情を抱えた子供達が集まっています。そしてとにかく自由。国語なら国語、算数なら算数といった具合に決まった時間に皆で揃って授業ではなく子供達の自主性を尊重して好きな教科を自らが学ぶという形態。今の時代でもかなり珍しいと思うのですが、これを開戦前夜の東京で取り入れていた事の先進性から小林校長の教育方針に関心させられます。皆で一斉に取る昼食もそうだし今の時代だと問題になりそうですが、ロリコンショタコンの概念がない戦前だからこそ?の全裸でのプール等驚きの場面はありますが、皆楽しそうなんですね。

そんな環境の中、トットちゃんは泰明ちゃんという小児麻痺の男の子と仲良くなります。身体的に不自由な彼に対してもトットちゃんの無邪気さから彼に新しい世界を見せていきます。それは木登りをする事であったりどろんこになって遊ぶ事であったり。今作で最も心が揺れ動かされるのがこの一連の場面なんです。泰明ちゃんは運動会でもトットちゃんと二人三脚で走り腕相撲でもトットちゃんと競う。だけど病気があるからこその運命の残酷さも伴います。どろんこになって帰ってきた泰明ちゃんがお風呂からお母さんに謝る場面があります。そしてそれに対して涙する母親。このシーンは胸が締め付けられましたね。運動をしたり他の子の様にわんぱくに遊ぶ事が出来なかった我が子が服を汚して帰って来た事への母親としての嬉しさ。一方で差し迫る残酷な運命。それを悲観して堪らず溢れる涙。ここは僕も涙が止まりませんでした。そしてトットちゃんが見た夢そこからの流れ。この怒涛の号泣シーンはすごい辛かったですね。

また、先進的であり様々な事情から集まった子供達を馬鹿にする為やって来る悪ガキが出て来ます。いつの時代にも居ますが子供の残酷性を写す場面が今作にも出てくるんです。だけどそんな子らに対峙しながらトモエ学園の子供達が追い返す場面もそしてその声を校長室で肩を震わせながら耳にする小林校長の姿も目頭を熱くさせてくれました。

その後戦火が激しくなると共に離散するトモエ学園。最後の姿を見るのも辛くなりましたね。それだけこの作品は見る人をトモエ学園に引き込んでいったという事を強く感じましたね。

それにしても小林校長先生の様な教育者って今の時代にも求められる理想の教師ではないでしょうか?汲み取りの中に財布を落としたトットちゃんに決して声を荒げる事なく「元に戻しとけよ」と一言伝える姿、担任の大石先生が軽い気持ちで言った冗談で生徒を傷つけていないかを考え大石先生を叱るその優しさ。前述の悪ガキ達とのいざこざにだって子供の喧嘩に出る事なく校長室で悔しさを滲ませながら耐える姿。役所広司さんの名演もありますが、この先生の下で子供時代を過ごしていたらどれだけ豊かな心が育まれるかとか自分の子供はこういう先生の所で学んでほしいなんて思って見ていました。

とそんな小林校長の役所広司さん、小栗旬さん、杏さん、滝沢カレンこういった著名なキャスト陣ももちろんトットちゃんを演じた子役の大野りりあなちゃんキャストはホント素晴らしかったです!

この映画は是非見て頂きたい!心から思える作品です!強くオススメします!