きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

アキラとあきら

 

半沢直樹」シリーズなどで知られる人気作家・池井戸潤の同名小説を、竹内涼真横浜流星の主演で映画化。
父親の経営する町工場が倒産し過酷な幼少時代を過ごした山崎瑛と、大企業の御曹司だが次期社長の座を拒絶し血縁のしがらみに抗う階堂彬。同じ名前を持つ2人は運命に導かれるかのように、日本有数のメガバンクに同期入社する。人を救うバンカーになるという熱い理想を持つ山崎と、情を排して冷静に仕事をこなす階堂。正反対の信念を持つ2人は真っ向から対立し、ライバルとしてしのぎを削る。しかし山崎は、ある案件で自らの理想と信念を押し通した結果、左遷されてしまう。一方、順調に出世する階堂の前にも、親族同士の争いという試練が立ちはだかる。やがて、数千人の人生を左右する巨大な危機が到来し、山崎と階堂の人生が再び交差する。
監督は「思い、思われ、ふり、ふられ」「僕等がいた」の三木孝浩。(映画・comより)

先日取り上げた『TANG』を評した時にもお伝えした様にこれまで青春恋愛映画で結果を残してきた三木孝浩監督がこのところ恋愛映画以外の作品に取り組み相次いで公開となっています。今回は『半沢直樹』シリーズに『陸王』等映画では『空飛ぶタイヤ』、『七つの会議』等ヒット作を生み続ける池井戸潤作品『アキラとあきら』の映像化です。実は本作鑑賞前にこれまで数多くの池井戸潤作品に出演してきた今世間を賑わせているバイプレイヤー俳優が出てるのかと思ってましたが、どうやら本作には出演しておらず、ひと安心(いや、語る時に色々気を使いそうだからさ。)

で、池井戸潤作品と言えば現代の銀行や企業等を舞台に勧善懲悪の水戸黄門をやってしまうというザックリとしたイメージを言えばそんなところだし、弱気を助け強気を挫くという古からの手法ではあるものの、なんだかんだでこういう展開にカタルシスが生まれ、その結果数々の作品が多くのヒットの共感を集めヒットしてきたのですが、竹内涼真横浜流星というこの人気若手俳優が果たしてどの様に池井戸潤作品に溶け込んでいくのかを楽しみに鑑賞して参りました!

9月4日日曜日のMOVIX日吉津。まだまだ大ヒット中の『ONE PIECE FILM RED』のごった返す人並みを横目にいざ劇場へ!

これまでの池井戸潤作品との大きな違いがあります。銀行を舞台に更に苦境に立たされるネジ工場が翻弄される等これだけ見てたら『半沢直樹』なのですが、半沢直樹の様なアクの強いキャラクターも出てこないし、竹内涼真横浜流星も演技にクドさがない。境遇の違う同い年で同じアキラという名前の二人が同期入行した銀行で顔を合わせるそこからライバルとなる二人を軸とした銀行ビジネスストーリーであり、それぞれがどの様に逆境を乗り越えていくのかを描いた青春ビジネス映画の側面が非常に強いという印象を受けました。

そこはこれまで数々の青春映画をヒットさせてきた三木監督ならではの手腕が光ったなと思います。例えば『半沢直樹』を引き合いに出しますが、あの場合主人公である半沢が銀行内で或いははたまた政界でと不正を働く輩の巨悪を暴き出していく頭脳を使ったそれぞれのぶつかり合いが面白いわけじゃないですか。

本作に関して言うともっとシンプルなものでして、二人のあきらという名の若きバンカーがそれぞれの理念や仕事の捉え方更にはこれまでの境遇が醸成された人間性等等の内面にフォーカスしていきながら、それぞれの局面が展開されていく。そこには単純な是非の二元論では判断出来ないものがあるし、もはや見た人が各々の判断で双方の成長を見届けていく事になるかと思います。

でも池井戸潤作品のらしさはしっかり用意されていまして、これが後半に展開されるとある企業の再建劇なんですね。詳しくは言えませんが、一族経営ならではの脆さが浮き彫りになるのですが、竹内涼真演じる山崎瑛を中心にこれまでの伏線を巧みに回収していく様には池井戸作品的なカタルシスが生まれるかと思います。

それから個人的に印象的だったのは江口洋介演じる山崎の上司の姿。苦境に立たされる人を助けるべく動く山崎に彼は非常にシビアです。一見すると冷徹そのもので血も涙もない様に見えますが、バンカーとしては決して間違った考えではないんですよね。

弱者と言う言葉は好きではありませんが、いわゆる社会的弱者とされる人が懸命な努力も虚しく財産を失い家族とも別れるそんな事を考えると強者側ここでは銀行となりますが、シビアな対応で当該の弱者側が切り捨てられる。そうなると銀行側が責められる様なものですが、しかし銀行は銀行を守らなければならない。銀行を守るというのはそこで働く人達や家族、更には取引のある数多くの個人や企業を守る事でもあるんですよね。

この江口洋介演じる上司を悪く見せつつも現実の厳しさも盛り込み、社会派映画としてもしっかり機能しておりました。そしてこの上司が見せる人間的な優しさが後半に山崎への言葉で反映されていましたね。

また、横浜流星演じる階堂彬が山崎へ「お前は育ちが良いな」なんて言葉を投げ掛けます。大企業の御曹司として育った階堂が父親の工場倒産後、苦労を重ねた山崎にそんな事を言えばともすれば喧嘩を売ってんのかとも思ってしまいそうです。だけどそうではないんですよね。育ちが良い言い換えれば品の良さと呼べるかもしれません。決して裕福ではなかったものの、人間としての優しさと強さを持ちバンカーとしてどこまでも真っ直ぐで熱い山崎に階堂が同期として友達として送った言葉だと解釈しています。これは映画の中の話しだけではないですよね。

どれだけ金銭的に恵まれていようが普段の行いが粗雑で下品な人もいればお金持ちではなくとも人間として謙虚で礼儀を心得、誰に対しても親切で魅力的な人物。果たしてこれを品と呼ぶのかはわかりませんが、少なくとも僕はこういう人と仲良くなりたいし、品のある人だと思います。

果たして僕はどちらでしょう?…なんてリスナーに言わせる時点で上品ではないかもしれませんね。

なんてこの作品では見るべきポイントも満載で非常に魅力溢れる映画だったと思います。

正直、『TANG』は不完全燃焼でしたが、本作は満足でした!

是非劇場でご覧下さい!

異動辞令は音楽隊!

「ミッドナイトスワン」の内田英治監督が阿部寛を主演に迎えたヒューマンドラマ。警察音楽隊フラッシュモブ演奏に着想を得た内田監督が、最前線の刑事から警察音楽隊に異動させられた男の奮闘をオリジナル脚本で描き出す。
部下に厳しく、犯人逮捕のためなら手段を問わない捜査一課のベテラン刑事・成瀬司。高齢者を狙ったアポ電強盗事件を捜査する中で、令状も取らず強引な捜査を繰り返した結果、広報課内の音楽隊への異動を言い渡されてしまう。不本意ながらも音楽隊を訪れる成瀬だったが、そこにいたのは覇気のない隊員ばかりで……。
音楽隊のトランペット奏者・来島春子を清野菜名、サックス奏者・北村裕司を高杉真宙、捜査一課の若手刑事・坂本祥太を磯村勇斗が演じる。(映画・comより)

ハイ、今回は私の推薦作でございます。元々『アキラとあきら』を見る予定でしたが、時間が合わずこちらを鑑賞!その結果が大正解だったのでそこも含めてお伝えしていきます。

これまで数々の作品に出演してきた人気俳優・阿部寛。刑事から古代ローマ人とその振り幅は非常に広くシリアスもコメディも阿部寛色に染めていくそんなイメージがありますよね。

そんなアベちゃんこと阿部寛さんのドラムスティックを持った写真。絵になりませんか?カッコいいんだけど同時にシュールさも併せ持っていて思わず笑みがこぼれてきそうです。そんなイメージで本作を鑑賞したもんだからてっきりコメディ色全開の誰が見ても楽しめるエンターテイメント作品なのかなと思いました。

刑事から音楽隊への異動。そして音楽隊がメインになる事が鑑賞前から予想出来たので刑事のパートはそこそこに音楽隊の彼の動きを中心に追っていくものばかりだと思ってました。

ところがこれが良い意味で裏切られました。割と刑事パートに時間が割かれており、しかもその内容が濃いんですよね。巷を賑わすアポ電強盗という事件を軸に刑事・成瀬が後輩刑事・坂本とバディを組みながら事件の捜査に乗り出していく。一方で成瀬には高齢の母親と二人暮らしでその母親は認知症を患っている。別れた妻との間に出来た高校生の娘との関係もチグハグでどこまでも成瀬の不器用さが写し出されていく。

本作の主人公である成瀬という人物とそのバックボーンを映像で現しているのですが、一瞬作品を間違えたのかな?と思う程シリアスだったりするんですよね。

でもこれが後半との対比を考えた場合、良い見せ方だなと思うんですよ。いきなり冒頭からポップに作らないという『ミッドナイトスワン』を撮った監督なりのこだわりや工夫が感じられましたね。

そしてそんな前半から音楽隊へ入ってから。古〜い建物の中からやる気のない「パプリカ」の演奏が聴こえてくる辺りで刑事一筋でやってきた成瀬の不本意な心境とマッチしてくるんですよね。

案の定団員はと言うと気持ちはバラバラ。成瀬同様不本意にも音楽隊へ入隊させられてしまった人その反面音楽が好きでやる気に満ち溢れた人。例えば学生のバンドや軽音楽部だとまた違うと思うんですよ。皆音楽が好きで音を奏でたいという熱意で構成されるわけですから。警察の音楽隊という辞令によって所属が決定してしまう環境だからこそ運べる筋書きなんですよね。

成瀬だって当然、「何で俺が音楽なんか」と不満全開。だけど次第にドラムに魅了されのめり込んでいくんですよね。

とまぁこの流れは割とありがちだと思うんですよ。しかし、ここに至るまでにいくつかのターニングポイントがあるんですが、ここが非常によく見せてくれるんですよ。

そしてキーワードとして上がってくるのがセッションというワード。音楽隊ですから、当然一人で音楽を奏でるわけではありません。団員との呼吸が大事ですよね。そこで出てくるのが清野菜奈演じる女性団員・来島春子の存在です。刑事として第一線で活躍してきた成瀬は当初は楽団の練習場で悪態をつきます。そんな彼に対して不快感を示していたのが来島春子という女性。しかし、シングルマザーである彼女とバツイチで認知症の母親を介護する成瀬の間で共鳴感が生まれます。お互いの境遇からの共感性そこから音楽への取り組み方へと発展していくんですね。

また、一方で刑事パートで見せた事件の進展も同時進行で見せていく。しかもこれが音楽隊パートとの非常に巧みなストーリーの繋ぎ方や伏線の回収方等が映画的な盛り上がりを更に生み出していってるんですよ!ここの脚本は本当に見事でしたね!

ところで本作での演奏は全て演者が実演しています!成瀬つまりは阿部寛さんも初めてドラムを叩いたという事ですが、これがスゴい決まってるんですよ!とても初めてとは思えない!正直ポスターだけ見てたらカッコよさと面白さが共存している感がありましたが、本編でドラムを叩くシーンはカッコいいしかないですね!

それから清野菜奈さんのトランペットですね。彼女と言えば記憶に新しい『キングダム2 遥かなる大地へ』の好演が印象的だったし、10月には『耳をすませば』の公開が待機している今かなり勢いのある女優さんですが、演技だけではなく楽器の演奏も器用にこなしています。アクションもこなすし、出演作が増えるのも納得ですね!

さて、本作に関してはラストも良かったです。音楽隊の定期演奏会で大団円を迎えるわけですが、これまでのプロセスを見ているからこそこの演奏会にも特別な視線を注ぐ事になるんですよ。イメージとしては『チア☆ダン』で広瀬すずちゃん達が全米ダンス選手権で華麗なパフォーマンスを見届けたあの感覚に近いカタルシスを得られるかと思います。そして演奏が終わってから後日談的なエピソードを加える事なくすっきりと終わらせる辺りもスマートなエンドだったなと思いました。

久しぶりに邦画で当たり作品に出会えたなと思います!ホントに素晴らしい作品です!

是非ご覧下さい!

今夜、世界からこの恋が消えても

アイドルグループ「なにわ男子」の道枝駿佑と「思い、思われ、ふり、ふられ」の福本莉子を主演に、一条岬の同名恋愛小説を映画化。高校生の神谷透はクラスメイトに流されるまま、同級生の日野真織に嘘の告白をする。しかし彼女は「お互い本気で好きにならないこと」を条件にその告白を受け入れ、2人は付き合うことに。やがて真織は、自分が前向性健忘症で、夜に眠るとその日の出来事をすべて忘れてしまうことを透に打ち明ける。彼女は毎朝、前日の日記を読み返すことでどうにか記憶をつなぎ止めていた。透はそんな真織と1日限りの恋を積み重ねていくが……。「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」など数々の青春恋愛映画を手がけてきた三木孝浩監督がメガホンをとり、「君の膵臓をたべたい」の監督・月川翔と「明け方の若者たち」の監督・松本花奈が共同で脚本を担当。(映画・comより)

今年の夏は相次いでの監督作が公開となった三木孝浩監督。本来であれば『TANG』よりも前に鑑賞した方が良かったのかもしれませんが、興行成績も順調でレビューでの評価も高かったので、個人的に気になって鑑賞して参りました。

さて、『TANG』も『アキラとあきら』もこれまでの三木作品とはタイプの違う作風でしたが、三木監督と言えばやはり本作の様な青春恋愛映画のイメージが強いのは事実。

監督の本領発揮とばかりに若者に人気のキャストを配しての純愛映画として仕上がりも上々。

その辺りをお伝えしていきます。交通事故により前向性健忘症になってしまった少女・真織。眠ってしまうと起きた時にそれまでの記憶を一切失くしてしまう症状です。記憶に障害を持つ女性との恋愛と言えば福田雄一監督がリメイクした『50回目のファーストキス』という作品を思い出しますし、本作鑑賞中もやはり『50回目〜』と比較しながら、鑑賞しておりました。

その『50回目〜』との大きな違いを挙げるならば、重い題材でありながらも、コメディタッチな視点も織り交ぜながら割とポップに仕上げていた『50回目〜』に対し、真織の記憶を中心に据えながらも恋人となる透や親友や透の家族等の人物描写にも注力しており、群像劇要素を呈していたところでしょうか。

記憶に障害を持つ真織ではあるが、彼女に寄り添い見守る両親に恵まれた家庭に身を置く真織に対し、母親を早くに亡くし、家事などをしていた姉が家を離れ父親と二人で暮らす透。その父親だって小説家と自称するも文芸誌の新人賞にもかからない人物。はたから見るとどうやって生計を立てて透を学校へ通わせているのかと気になってしまう環境です。

そしてそんな二人を見守るもどこか置き去りにされてしまう心境にも苛まれる真織の親友・泉。

また、意外な形で再会を果たす透の姉・早苗。

こういった面々が織りなす人間模様がより作品に深みを与える印象でした。

そして軸となる真織と透の恋愛模様。記憶が失われるからこその恋愛の難しさ。しかし頭脳が覚えずとも身体が記憶するというこの仕組みを取り入れながら純愛ストーリーとしてのスムーズな展開や伏線の張り方等見所満載でした。

また、『君の膵臓をたべたい』の月川翔監督が脚本に携わっているとあって泉の初期段階での透への捉え方等が相通ずるものを感じました。

全く別作品ではあるもののキミスイイズムを感じるとでも言うべきでしょうかね。それが最も象徴的に現れたのは後半の怒涛の展開でした。

『君の膵臓をたべたい』を思い出して下さい。あの作品では浜辺美波演じるヒロインの少女が膵臓に病を抱えていました。そこからの悲恋と言うと病に蝕まれ命が尽きる彼女を誰もが想像したと思います。しかし、必ずしも余命通りに生命を全う出来るとは限らないという悲恋映画の概念を打ち破る様なドラスティックな展開に胸を撃ち抜かれる様な衝撃をおぼえた人は少なくないハズです。その意外性あるシナリオとストーリーの運び方の相乗効果が話題を呼んで当時大ヒットとなったわけです。

それが本作でも顕著でして、透と真織を中心にストーリーを追っていくわけですが、人間の本質的な面としてハンデを背負う者すなわち真織を特に注視すると思うんですよ。そしてある場面に到達すると不自然な描写が入り、そこに漂う違和感をおぼえるんですね。そしてそれに至るまでのストーリーが繰り広げられそれによってこの違和感が解消されるというもの。キミスイの時に見せた意外性溢れるトリックをここで仕掛けてきて以降の展開によって涙腺が刺激されていきます。この作りはホント見事だなと思うし、日本でこういうタイプの作品を撮らせたらやはり三木孝浩がその最筆頭に挙げられるんじゃないかなと思いました。

『TANG』を見た後だからこそ余計に感じましたが、同じ監督でもやはり得手不得手というのははっきり作品に反映されるんだなと感じた次第です。

それが興行成績にも現れてるのを見ると映画を見る人というのは正直なんだなと思います。僕も『TANG』と比較すると圧倒的に本作が勝るかなと感じます。

さてさて『アキラとあきら』は如何でしょうか?

ひと夏に同監督の作品が立て続けに公開されるのですが、比較をするとよくわかりますね、

TANG タング

日本でもベストセラーとなったイギリスの小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を、二宮和也主演で映画化。「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」「思い、思われ、ふり、ふられ」の三木孝浩が監督、ドラマ「恋はつづくよどこまでも」の金子ありさが脚本を手がけ、人生に迷うダメ男と記憶喪失のロボットが繰り広げる冒険を、日本版にアレンジして描く。
ある理由から、自分の夢も妻との未来も諦めてしまった春日井健。そんな彼の家の庭に、記憶を失ったロボットのタングが迷い込んでくる。時代遅れな旧式のタングを捨てようとする健だったが、タングが失った記憶には、世界を変えるほどの秘密が隠されていた。
健の妻を満島ひかり、健とタングを監視する謎の男を小手伸也、中国在住のロボット歴史学者奈緒が演じる。「STAND BY ME ドラえもん」などの「白組」がVFXを担当(映画・comより)

のっけからなんですが、アニメは別として実写邦画とSFって組み合わせはあまりよろしくないんですよね。ハリウッド映画の様なスペイシーなセットやCGの技術がやはり劣ってしまうという現実があり、宇宙を舞台にしたものとなるとやはり部が悪くなる。となればロボットと人間の交流モノならばどうだろう?『ベイマックス』的な設定ですよね。日本には『ドラえもん』という国民的猫型ロボットが居り、それならば?となりそうなものですが、ところが意外と映画では思い浮かばない。

そうなってくると本作の果たす役割が大きな物になりそうですが、果たして出来は如何なものでしょう?一抹の不安感と期待を胸に8月21日にMOVIX日吉津にて鑑賞して参りました。

これまで山崎貴監督等のVFXで鳴らしてきた白組がやはりVFXを担当。早速冒頭から現れます。一見すると都市部の郊外に見られる閑静な住宅街。しかし、上空をドローンが飛び交いそのドローンは配送用に使われている様です。この辺りから近未来の世界を舞台にしている様子が伝わってきます。その後もこういった近未来感が劇中で示されていきます。

本作の監督は三木孝浩監督。過去作には『僕は明日、昨日の君とデートする』、『思い、思われ、ふり、ふられ』、現在公開中の映画『今夜、世界から、この恋が消えても』等の若者をターゲットした純愛モノに強いイメージがあります。しかし、これらの作風を刷新する様に本作更には池井戸潤原作の『アキラとあきら』等このところ監督作品に変化が見てとれます。ところで『今夜世界からこの恋が消えても』と『アキラとあきら』そして本作『TANG タング』と今三木孝浩監督作品が同時に三本劇場公開されているんですよね。余計なお世話かもですが、時期を分散させてもよかった様な気がします。

で、話しを戻しますが、若者の純愛映画から一転しての冴えない男性とロボットの交流を描いた作品この振り幅に個人的に興味が尽きなかったのですが、果たして?

監督の意欲は十分伝わってきました。近年では『検察側の罪人』や『浅田家!』といった作品で一本気な性格での演技を見せてきたニノこと二宮和也を冴えないダメ男にしてみせるとかそんなダメ男と友情を育むこれまたポンコツロボットのタングのダメダメだからこその可愛さをうまく引き出していたりとかコメディリリーフとしてのかまいたちの二人の笑いを誘うやり取りに敵キャラとのアクション等等。三木監督の作品でスタンガンなんて物騒なものが出てきたのは今回が初めてだったのではないですか?青春映画とか恋愛映画では出せなかったあらゆる要素をここぞとばかりに出してきた辺りに監督の良い意味での自由さや遊び心が全開で楽しかったです。

ストーリーだって全年代が見てもわかりやすいし、商業映画的な文脈で捉えた場合、山崎貴監督や三池崇史監督に匹敵する様な大衆性が出せていたと思います。賛否は別としてですよ。案外恋愛映画以外もうまく撮る監督だなと思ったし、当人は案外こういうタイプの作品を実はやりたかったのかななんて思いました。

ただ、だからと言って映画的な満足感が得られたかどうかは別なんですよ。ところどころで粗が見えてしまいました。

タングの過去に迫っていくシーン等は悪くはなかったですよ。鈍臭いロボットがところどころで見る凄惨な場面は明らかに過去に起こった出来事を示唆するものでその真相に迫るまでを小出しに小出しに見せていくのは見ている人の好奇心を掻き立ててくれました。ただ、黒幕となる敵キャラがすぐわかっちゃったし、その人物の目論見なんかもいまひとつボヤっとしてて、わかりにくい。

更に満島ひかり演じる妻が夫のケンのダメっぷりにげんなりして離婚の危機なんてのはわかるんですが、彼女は仕事をしない夫に萎えていたのか?でも彼女は弁護士であり、収入の面では夫が専業主夫になっても養っていけるんですよね。一方で家事をしない事にも憤りを感じて、まぁ結局のところ仕事もしない、家事もしないゲームばかりしてるダメ夫に愛想が尽きてるって事か。わからなくはないけど、それでも夫にちゃんとしていてほしいと思うなら何なりと方法なり向き合い方がありそうなもんですけどね。

それからアクションシーンがどうにもテンポが悪い。監督にとっては不慣れなのかもしれないのですが、余計な間が生まれたり戦闘パターンがどうにも一辺倒であったりとぎこちなさが目についてしまうんですよね。だけど監督の意気込みは伝わったし、また別の作品で再挑戦してもらいたいですね!

…って何目線やねん!

 

 

バイオレンスアクション

橋本環奈が、ゆるふわの専門学生で凄腕の殺し屋という2つの顔を持つ主人公を演じたアクションエンタテインメント。小学館やわらかスピリッツ」連載の浅井蓮次と沢田新による人気コミックを実写映画化した。

ピンク髪のショートボブでゆるふわな雰囲気を漂わせる菊野ケイは、昼は日商簿記検定2級合格を目指して専門学校に通いながら、夜はアルバイトをするという日々を送っている。そのバイトとは指名制の殺し屋で、ケイはそこで指名ナンバーワンの実力を持つ凄腕の殺し屋だった。ある時、学校帰りのバスでビジネスマン風の青年テラノと出会ったケイは、胸が高鳴りながらも、そのままいつも通りバイト先へ。この日の依頼は、巨大なヤクザ組織を仕切る3代目組長から、ある人物を殺してほしいというものだった。そのターゲットとは抗争の渦中にいるヤクザの会計士の男で、その男こそ昼間のバスで出会ったテラノだった。

ケイ役を務める橋本を筆頭に、テラノ役の杉野遥亮、ケイに思いを寄せる同級生・渡辺役の鈴鹿央士ほか、馬場ふみか、森崎ウィン大東駿介太田夢莉佐藤二朗城田優高橋克典岡村隆史ら豪華キャストが個性的なキャラクターたちを演じる。メガホンをとったのは「おっさんずラブ」「極道主夫」などの人気作品を手がけてきた瑠東東一郎。(映画・comより)

いわゆるアイドル映画とされるカテゴリーがあります。人気アイドルを主演に据えての特に映画としての作品性やら芸術性なんてものを排除し、如何に主演のアイドルの魅力を引き出しエンターテイメントとしてしあげていくか。その多くは恋愛映画等で反映されるところなのですが、本作はバイオレンス要素たっぷりのアクション映画というのがポイントです。

銀魂』や『キングダム』、『かぐや様は告らせたい』といった作品で個性を放ってきたハシカンこと橋本環奈ちゃん単独主演となるとこれまたアクション要素強めだった2016年の『セーラー服と機関銃』以来。果たして出来は?

予告編やポスターのイメージからバイオレンスと謳いつつもかなりキャッチーな作品と想像していました。それは監督の過去作もそうですし、ハシカンを主演に据えるならシリアスなものよりコメディタッチの物が光るだろうなと考えていたからです。

実際そのイメージ通りの内容でした。とにかくコミカルだしテンポも良く、脇を固める豪華俳優陣もそのイメージにピッタリ!目指したモノとしては『キック・アス』であり、ハシカンをクロエ・モレッツに重ねたのではないでしょうか?監督が元々バラエティ畑の人というだけあってナインティナインの岡村さんの活かし方も心得ている様でした。比較対象としては『土竜の唄』が良いのかもしれませんが、三池崇史監督が岡村さんの活かし方に不慣れなのか変な間が生まれたりだとかちぐはぐになりがちなところ、コメディリリーフとしての岡村さんをおいしくいじる共演者とのやり取りが全体的に良いスピード感を与えていたと思います。

で、若手俳優が中心の中、畑は違えどキャリアはベテランの岡村さんがうまく回していた様な気がします。

そしてハシカンのキャラクターが絶妙な可愛さとカッコ良さを生み出していたと思います。特に本作の場合、普段は普通の専門学生一方ではバイトとして殺し屋をしているという二面性が大きなポイントとなってくるわけです。可愛さに偏るとヒットガールとしての個性が薄れ、カッコ良さに傾くと専門学生としての魅力にマイナスだったりする。その辺りのバランスが非常に取れていたなと思います。例えばこれが同年代の人気女優である広瀬すず永野芽郁浜辺美波であればどうだろう?もちろん彼女達には彼女達なりの魅力溢れるヒットガール像が見れたのかもしれませんが、可愛さとコミカルさそこにアクションも出来るアクティブさを兼ね備えたハシカンならではの本作における菊野ケイというキャラクターがこの映画で楽しめると思うんですよね。

で、若い女の子が主人公であればロマンス的な事も?…なんてありそうですが、もちろんあるんですよあるんだけどそこに大きな主張がないんですよね。メインとなるのは裏組織の権力闘争やお互いの潰し合いそこに翻弄されるヒットガールのケイというこの軸から大きくブレない。だからそういう意味ではこの映画って可愛い女の子を主人公にしつつも割と男性向けの要素が強いかもしれません。

ただこういっちゃなんだけどもう少しバイオレンス要素強めてもよかったかななんて思うんですよ。PG12指定ではあるもののR15指定にしてそれこそ『孤狼の血』並みに…とまでは言わないまでも『ザ・ファブル』くらいまでは攻める事出来たんじゃないかな?なんて思うんですよ。

なんて言えばアイドル映画なんだからそこまでグロくしなくても…と言われそうですが、いやいやだからこそ。最近は見る方の目も肥えていて既視感ある様なありきたりな描写ではインパクトを感じなくなってるんですよね。ハシカン主演のポップなアイドル映画と思いきや…みたいな意外性があった方が映画そのものにボリュームを与えるんじゃないかな?興行成績の不振ぶりはこんな所にあるのではと厳しい事を言いました。

また、ケイという女の子のバックボーンを深掘りするシーンがあっても良かったのではないでしょうか。日商簿記検定合格して何をしたいのかもわからないし、そもそも何故ヒットガールをしているのかとかその身体能力の高さについてとかこれらが一切明かされないからすごいモヤッとして終わるんですよね。

ただ、何の予備知識もなく楽しめるので比較的ハードルの低い作品だと思います。

是非ご覧下さい!

ONE PIECE FILM RED

2022年7月で連載開始25周年となる大ヒットコミック「ONE PIECE」の劇場版アニメ。長編劇場版通算15作目で、原作者の尾田栄一郎が総合プロデューサーを務める“FILMシリーズ”としては、2016年公開の「ONE PIECE FILM GOLD」以来4作目。

素性を隠したまま発信される歌声が「別次元」と評され、世界でもっとも愛される歌手ウタが、初めて公の前に姿を現すライブが開催されることになった。そのことに色めき立つ海賊たちと、目を光らせる海軍。ルフィ率いる麦わらの一味は、何も知らずに、ただ彼女の歌声を楽しみに会場にやってきた。世界中から集まったファンが会場を埋め尽くし、いよいよ待望の歌声が響き渡ろうとしている。しかし、ウタが「シャンクスの娘」であるという事実が明らかになったことから、事態は大きく動き出していく。

ウタ役は声を声優の名塚佳織、歌唱を歌手のAdoが担当する。監督は「コードギアス」シリーズや「プラテネス」などで知られる谷口悟朗。「ジャンプ・スーパー・アニメツアー‘98」内で上映された「ONE PIECE」初のアニメ作品「ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック」で監督デビューした谷口監督が、それ以来に「ONE PIECE」作品を手がけた。(映画・comより)

週刊少年ジャンプ』での連載は25周年、コミックスは100巻を超えるもはや国民的とも人気漫画『ONE PIECE』の劇場版15作目そして『ONE PIECE film』と冠した作品としては2016年の『ONE PIECE film GOLD』以来となる最新作。ここ近年は『鬼滅の刃』とか『呪術廻戦』と言ったジャンプ作品が社会現象的大ヒットとなり、やや押されていた感があった『ONE PIECE』ですが、「いやいや、王者は俺様だ!」とばかりに貫禄の大ヒットとなっています!実は私は公開初日の8月6日、MOVIX日吉津で見てきましたが、午前の回も午後の回もほぼ満席。辛うじて取れた座席も前列から二列目。スクリーンを見上げる様な態勢で鑑賞して参りました!だって『ONE PIECE』の映画だもん、初日に見たかったんだよ!

では内容に触れていきましょう!冒頭から『ONE PIECE』らしくないスタートに圧倒!というのがね〜、もはや音楽映画とかミュージカルなんですよ!『ONE PIECE』的ラ・ラ・ランド?はたまたグレイテスト・ショーマン?いや、シングかも?みたいなね(笑)いや、これネタでも何でもなくマジな話しなんですよ!というのが本作の核となるキャラクター・ウタの存在ですね!予告編でも幾度となく見た人は多いと思いますが、人気アーティストのAdoさんがウタに扮しているんですよ。公開前から耳にしていた『新時代』や『私は最強!』はもちろん、劇中に一体何曲彼女の曲が流れた事でしょう。『竜とそばかすの姫』のベルもそうでしたが、もはやMVの領域ですね!中田ヤスタカ秦基博等著名なプロデューサーやアーティストが楽曲を手掛けており、サウンドトラックを聴きたくなるくらい音楽を全面的にプッシュしてる感じでした!

そしてそれもあってか音楽を軸にしたテーマが打ち出されているんですよ!それは音楽の力で人を幸せにする事です!我々の多くは日常的な趣味として音楽を聴きます。好きなアーティストが居てそのアーティストのライブに足を運ぶ事もあるでしょう。今やストリーミング配信が当たり前の時代にあってそんな中でもCDを買ったり僕の様にレコードを手にする、なんて人も居ます。そもそも我々は何故音楽を聴くのでしょう?それはある時には心を穏やかにする為、またある時は己を鼓舞する為、音楽からエネルギーを吸収したりとかその動機は様々です。でも総じて言えば感情を揺さぶり動かす為と言えるのではないでしょうか。

そしてその音楽を提供する音楽家やミュージシャン、歌手、パフォーマー、プロデューサー等のクリエイターは一人でも多くの人にその感動を、と日夜楽曲の製作に表現にと努力を重ねるわけじゃないですか?「音楽の力でみんなを幸せにしたい!」この思いは全ての表現者に共通するものではないでしょうか?そしてファンもまた彼らの曲や歌詞やパフォーマンスに共鳴してその音楽と共に日常を過ごすわけです。大好きなアーティストの曲はいつまでも聴いていたいし、その世界に永遠に浸っていたい。そんな願望はファン心理としては自然な事かもしれない。でもそれって実は大きなズレであると言う事。みんな仕事や学校、家事に育児等等与えられた日常的生活を送っているからこそその休息としての音楽が意味を持つんですよね。一枚のアルバムは長くても70分程度、ライブ・コンサートの時間は二時間くらい。その限られた時間に没頭してこその音楽時間であるという事なんですよ。そして表現者サイドとしては自身の最大限のパフォーマンスを披露するのは勿論なんだけどファンの私生活を奪う様な事があってはならない。そんな音楽と生活という我々エンタメを享受する人への大きなテーマが印象に残りました。

と、ホントに今回の『ONE PIECE』は割とガチ目な音楽映画してましたよ!

でも忘れちゃいけない『ONE PIECE』らしさ!それはやはりバトルシーンですよ!今回はシャンクス登場というのが大きなウリでもあるのですが、やっぱりカッコいいシャンクス!ルフィとの共闘なんて『ONE PIECE』劇場版の真骨頂とも言える胸アツシーンですよ!しかもそこに流れる『新時代』と『ウィーアー!』のマッシュアップですね!血湧き肉躍るバトル描写は「やっぱONE PIECEはこうでなくっちゃ!」と俄然アガるアガる!

そしてシャンクスとウタの関係性から広げたストーリーも胸を打つものでした。詳しくは話せませんが、ウタの現在のスタンスと過去のそれでは180度違うんですよね。一体彼女に何があったんだ?と終始気になるのですが、それが明かされた時の感涙必至なストーリー展開ですね!いや〜、久しぶりに映画見て涙が流れました。相変わらずの尾田栄一郎先生の見せ方のうまさに唸らされました!

音楽・バトル・ストーリー全てにおいて少なくとも近年の『ONE PIECE』映画の中ではかなりの名作になったのではないでしょうか?個人的には大変満足しています!

是非劇場でご覧下さい!

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

現代によみがえった恐竜たちの姿をリアルかつスリリングに描いて人気を集めるメガヒット作「ジュラシック・パーク」シリーズの最終章。2015年の「ジュラシック・ワールド」でメガホンをとったコリン・トレボロウが再び監督に復帰し、シリーズ生みの親であるスティーブン・スピルバーグが引き続き製作総指揮を担当。「ジュラシック・ワールド」シリーズの主演クリス・プラットブライス・ダラス・ハワードに加え、「ジュラシック・パーク」初期3作で中心となったサム・ニールローラ・ダーンジェフ・ゴールドブラムが演じる3人の博士もカムバックする。ジュラシック・ワールドのあった島、イスラ・ヌブラルが噴火で壊滅し、救出された恐竜たちが世界中へ解き放たれて4年。人類はいまだ恐竜との安全な共存の道を見いだせずにいる。恐竜の保護活動を続けるオーウェンとクレアは、ジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの亡き娘から作られたクローンの少女、メイジーを守りながら、人里離れた山小屋で暮らしていた。そんなある日、オーウェンは子どもをつれたブルーと再会。しかし、その子どもが何者かによって誘拐されてしまい、オーウェンはクレアとともに救出に向かう。一方、ある目的で恐竜の研究をしている巨大バイオテクノロジー企業のバイオシンを追っていたサトラー博士のもとには、グラント博士が駆け付け、彼らはマルコム博士にも協力を求める。(映画.comより)

93年に映画史に大きく名前を残す事となった『ジュラシック・パーク』世界中で大ヒットとなり、シリーズは3作製作されました。そして時を経て2015年。スピルバーグ監督が製作総指揮に回ってスタートしたのが『ジュラシック・ワールド』。『ジュラシック』シリーズのブランド力もあってか同シリーズも特大ヒットとなり、2015年の1作目は日本国内の年間興行収入ランキングでもトップとなりました。そして遂にこの『ジュラシックワールド』も完結編。監督と脚本には、コレン・トレヴォロウが新シリーズ1作目から復帰。その1作目目から見続けた僕は期待を胸に8月3日、T-JOY出雲にて鑑賞して参りました!

これが完結編という事でジュラシックワールドに端を発するシリーズを通して描かれた一連の騒動に終止符を打たせないといけないわけです。広げた風呂敷をどの様に畳んでいくのかを我々は見届けるわけですが、これはなかなか至難の業なんですよ。まず、本作の冒頭部分から恐竜達が世界中に散らばり、自然の中で生きている状況。つまりはジュラシックワールドがなくとも自らの力で十分暮らしていけてるんですよ。

また、そんな恐竜達を利用して闇取引をしようとするヤツまでいるし、恐竜も人間もカオス状態。ここまでの流れだとフィールドが広がって奥行きを感じる事が出来るだけど他方ではこれまでの限定的な空間での話しではない分、回収が難しくなってくるという事なんです。

でもこれが楽しいんですよ!マルタ島ではワイスピよろしくチェイスシーンやアクションもふんだんだし、インディ・ジョーンズさながらのアドベンチャー要素も更には世界各地を写し出す事で観光映画要素も引き出せば007的なスパイアクションの様な流れも?…なんて聞いたら「いや、あれもこれもと入れたら全体的に中途半端になって結局大味なハリウッドアクションで終始してしまうんじゃないの?」という指摘がありそうなもの。しかし、案ずるなかれ。確かにごった煮感は否めないかもしれませんが、要所要所での見せ場がしっかりと機能していたので全く退屈はさせません。むしろ、夏休みシーズンだからこそこういった豪快なシーンがふんだんに盛り込まれたハリウッド大作は映画館で体の底から感じてほしいものですよ。

そして話しの主眼となっている部分。これは本作のみではなく、シリーズ共通のテーマなんですが、人間が最先端の技術でもって遺伝子操作をしたり、生き物を蘇らせたり、生み出したりする事に対しての警鐘。キリスト教的史観で言えば神の如き行いを許していいものかという事ですね。

その象徴として出て来るのがクローンの少女・メイジーです。彼女はクローンとして生を受けるのですが、人間の頭脳を持ち、感情もまた人間のそれなのです。14歳になった彼女は自分の親、ここでは母親になるのですが、その母親探しすなわち本当の自分は何者なのかそして何の為に生を受けたのか自分のルーツを辿る物語が大きく映し出されていきます。しかし、そんな彼女もやがて…というのが映像に現れるのですがそこは是非あなたの目で直接ご覧下さい!

さて、そんな本作ですが、壮大な風呂敷の回収はどうだったのか、なんですがこれははっきり言って評価が分かれるところだと思います。前述の様にメイジーの自分探しストーリーやハリウッド一流のアクションやトリッキーな仕掛け等あらゆる要素を詰め込んだ結果、二時間半の超大作となりました。その都度その都度での繋ぎ目はご都合主義、まぁ決してスマートなものではなかったかもしれません。

だけど僕は悪くは言いたくないんですよ。単にミーハーな映画好きと言われればそれまでかもしれませんが、世界各地で暴れ回る恐竜達や派手なアクション等にしかと興奮させられたんですよ。イナゴの群れの動きのグロいけど見入ってしまうポイントも良かったし、そのイナゴから問いかけるテーマの見せ方だって悪くはなかった。

また全体のテーマである人間の領域を超えた所業への着地は驚きや斬新さは確かになかったけどなるほどと思えました。

完結編だからこそのカタルシスを期待していた部分、大きな感動がなく肩透かしを食らった事は事実です。だけど夏休みならではの家族・友人・カップルでワイワイ見る作品として僕はオススメ出来ます!

是非、劇場でご覧下さい!