きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

DUNE/砂の惑星



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ブレードランナー2049」「メッセージ」のドゥニ・ビルヌーブ監督が、かつてデビッド・リンチ監督によって映画化もされたフランク・ハーバートSF小説の古典を新たに映画化したSFスペクタクルアドベンチャー。人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いていた西暦1万190年、1つの惑星を1つの大領家が治める厳格な身分制度が敷かれる中、レト・アトレイデス公爵は通称デューンと呼ばれる砂漠の惑星アラキスを治めることになった。アラキスは抗老化作用を持つ香料メランジの唯一の生産地であるため、アトレイデス家に莫大な利益をもたらすはずだった。しかし、デューンに乗り込んだレト公爵を待っていたのはメランジの採掘権を持つハルコンネン家と皇帝が結託した陰謀だった。やがてレト公爵は殺され、妻のジェシカと息子のポールも命を狙われることなる。主人公となるポール役を「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメが務めるほか、「スパイダーマン」シリーズのゼンデイヤ、「アクアマン」のジェイソン・モモアハビエル・バルデムジョシュ・ブローリンオスカー・アイザックレベッカ・ファーガソンら豪華キャストが集結した。

(映画・comより)

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』、『燃えよ剣』とこのところ、長尺の大作を扱う機会が多いですが、本作の上映時間は155分。「そんなに時間取れねぇよ〜」という方、何とか時間を作って下さい(笑)

さて、そんな超大作ですが、僕はこの映画に関してはとにかく予告編の映像に惹かれましたね〜!スケールの大きな砂漠その中で展開される圧倒的な映像表現。「むむっ、これは見ておきたい!」と。原作の小説も知らないし、1984年に製作された映画も見た事がない。しかし、一見の価値はあるかなと感じ、見て参りました!尚、お伝えすると概要にもあります様に遥か未来でのお話し。SFというジャンルになりますので限りなく『スター・ウォーズ』のそれを思わせるものがあります。しかし、『スター・ウォーズ』よりも本作の原作は古く『スター・ウォーズ』はかなりインスパイアされているそうです。他にも『アバター』更に日本では『風の谷のナウシカ』にもヒントを与えた作品との事。日本では知名度が低いのでそれらの事を頭に入れてから鑑賞すると良いかもしれません。

さて、今ではすっかりSFの監督として定着した感があるドゥニ・ビルヌーブ監督。『ブレードランナー』のリメイク『ブレードランナー2049』から早4年。前作が映画ファンから高い評価を受けてこのSFの古典名作をどの様に作り上げたのかが注目ポイントです。

はっきり言いますね。

本作ほど好き嫌いがはっきり分かれる作品もないのでは?というのが僕の印象です。というのがSFというジャンルに耐性がないとストーリーがさっぱり理解出来ない。ちんぷんかんぷんなまま二時間半ひたすら尿意と腰痛と戦うだけになってしまいます。そもそもこの映画ならではの専門用語が頻発するんですよ。更には惑星、人物、物理的な事象などなどに別名があってそれらの説明すらない。頭で整理している内に次の展開に進んでいたりして、置いてけぼりになってしまいます。いっそのこと、人物に関しては『アクアマン』、『グレイテスト・ショーマン』、『アメイジングスパイダーマン』みたいにしてくれりゃ覚えやすかったのに…てこれキャストの過去作か(笑)

更に言えば予告編で見たあのダイナミックな映像を期待して見たんだけど、ここに至るまでがまぁ、長い!

前半でこの作品の設定やら各キャラクターの説明シーンが続くんだけど、そこにメチャクチャ時間を割くんですよ、しかもこの辺り非常に淡々と進んでいき、テンポも悪い。いや、あの独特な間が良いという考え方もあるか。それでいて先述の様に設定を理解するのに脳内での整理が追いつかずで、途中で不覚にも眠くなってしまいました…。例えて言うならビジネス用語を羅列する意識高い系と会話をしていてマウントを取られてる気分?それが僕のイメージです(笑)

後、個人的に違和感を感じたのが何千年も先の未来の話しなのに戦い方が中世の騎士の様なナイフみたいな剣ってとこ。身につけてる鎧なんかも『ドラクエ』の鎖かたびらかっ?てくらい薄手なんですよ。身を守る気ねぇだろ?みたいなね(笑)そこはライトセーバーみたいなヤツ使お(笑)

でもね〜、中盤からは俄然引き込まれましたよ!予告編で見てた迫力ある映像ってここで用意されてたんだね!砂の惑星ですから、当然砂漠が舞台となるわけですが、この砂漠の映像が画面いっぱいに広がった時の高揚感は確かにありましたね。僕が好きな映画に『ハムナプトラ』というシリーズ作があります。エジプトの広大な砂漠を舞台に繰り広げるアクション作ですが、それを彷彿とさせてくれましたね。アクアマンやグレイテスト・ショーマンも見せ場がありましたよ、ってせめてキャスト名で言え(笑)あ、ジェイソン・モモアゼンデイヤレベッカ・フォーガソンね。それはそうとレベッカ・フォーガソン、年食ってる扱いひどくね。まず、主人公ポールのティモシー・シャラメの母親という役どころも違う様な…。

さて、これは私が感じた事。本作は何度も言う様に遥か未来の宇宙戦争を描いていますが、もっとミニマムな視点に変えると地球上での国と国の利権をかけた紛争をイメージしてみました。とりわけ砂漠を有する国という点で中東辺りの石油利権を取り巻くそれに近いかなと。惑星・アラキスで採取される香料のメランジこそまさに石油であり、ハルコンネン家と皇帝は中東諸国のテロリストはたまたアメリカ?まぁ、あくまで憶測に過ぎないのですが、そんな視点で見ると中東の国際情勢も見えてくる…かもしれない。あまり自信がありません(笑)

尚、本作は二部作となっており、次作も製作予定だそうです。はっきり言って本作だけ見ても不明点が多々あります。次作を見たらもしかしたら多少はわかってくるのでしょうか?

てな感じで非常にモヤッとした作品であるのは間違いありません!しかし、先述の様に広大な砂漠と迫力ある映像表現に関しては太鼓判を推します!

是非ご覧下さい!

燃えよ剣

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新選組副長・土方歳三の生涯を描き、過去に映画化、ドラマ化もされてきた司馬遼太郎歴史小説を、「関ヶ原」の原田眞人監督&岡田准一主演の再タッグで新たに映画化。江戸時代末期。黒船の来航により、外国から日本を守るため幕府の権力を回復させようとする佐幕派と、天皇を中心にした新政権を目指す討幕派の対立が深まりつつあった。武州多摩の農家に生まれた土方歳三は「武士になりたい」という思いで、近藤勇沖田総司ら同志とともに京都へ向かう。芹沢鴨を局長に、徳川幕府の後ろ盾で新選組を結成し、土方は「鬼の副長」と恐れられながら、討幕派の制圧のため京都の町で活躍を見せるが……。土方歳三役の岡田のほか、土方と生涯愛を貫くお雪役を柴咲コウ近藤勇役を鈴木亮平沖田総司役を山田涼介、芹沢鴨役を伊藤英明がそれぞれ演じる。

(映画.comより)

新選組。日本史の教科書にのる事はあまりないのですが、非常に人気の高い武士団であるのはご存知の通り。そもそも徳川幕府につき、戊辰戦争に散った彼らは何故ここまで人気が高いのでしょう。薩長を中心とした新政府側にとっては逆賊であり、何なら攘夷運動を取り締まっていた頃だってならず者の集団なんですよ。明治の後期に新選組の残党であった永倉新八が北海道・小樽の地元新聞に連載し、新選組の名誉回復に尽力したのを契機に以後、舞台・小説・映画に漫画とあらゆる媒体で新選組を題材にしたものが作られ幅広い世代に親しまれてきたわけですが、最大の功労者と言えば司馬遼太郎ではないでしょうか。そんな司馬遼太郎の原作『燃えよ剣』が遂に公開となりました。

原田眞人監督と言えばこれまで太平洋戦争終戦の日を扱った『日本のいちばん長い日』、更に天下分け目の関ヶ原の戦いを描いた司馬遼太郎原作『関ヶ原』等でメガホンを取ってきました。これらはいずれも日本の歴史においての転換期を描いた作品です。そして『燃えよ剣』。これまた幕末から明治へと移り変わる日本の大きな激動期を描いたものです。

そして主人公の土方歳三を演じたのは『関ヶ原』で石田三成を演じた岡田准一。この上ないキャスティングだと思います。面白いのは石田三成にしろ、土方歳三の居た新選組にしろ、勝者ではないところ。敗れた者の視点で描く幕末の一大エンターテイメントとなります。

近藤勇役は私的には『孤狼の血 LEVEL2』での怪演があまりに衝撃的かつ記憶にも新しい鈴木亮平さんです。鈴木亮平さんと言えば2018年の大河ドラマ西郷どん』で西郷隆盛を演じていました。西郷隆盛新選組では全く対極の位置にいた両者ですよ。その辺りはかなり葛藤があった様でその辺りはパンフレットでご本人のインタビューが掲載されています。しかし、そんな迷いはあったものの、結果としてここまでらしい近藤勇もない位見事に役にハマっていました!武骨な佇まいと胆力の強さ、今まで色んな俳優さんが演じてきた近藤勇の中でも個人的にはかなり好きな近藤勇像になりました!

沖田総司役は山田涼介。実際の沖田もかなりの美男子だが、剣術の腕前は光るものがあり、その一方で病弱で若くして亡くなってしまう。この映画における沖田では土方を兄の様に慕いつつしかし、池田屋事件の辺りから病に冒されそして病床に伏していく。イケメン剣士が大活躍するも次第に弱っていく過程を山田涼介の演技が見せてくれます。この辺りは女性の方は涙腺緩みやすいじゃないかな?

そして土方と恋仲になるお雪を柴咲コウが演じます。彼女は本作のメインキャスト中、唯一の架空のキャラクター。実を言うと僕は本作を見る前彼女のキャスティングに不安があったんですよ。と言うのが、『関ヶ原』の時の有村架純さんが演じたくのいちの存在。もちろん有村架純さんに非はないですが、戦国末期の男達の雌雄を賭けた決戦を中心に見たい僕としては、三成との恋愛エピソードやらがどうにもノイジーだったんですよ。しかもそこに尺をかなり使っていたのが引っかかってしまい、いまいちスッキリしなかったんですよ。それが本作の場合、そこまで悪くはない。土方を陰ながら支える一人の女性として柴咲コウさんが程良い形で存在感を出していたし、全体的にもバランス良かった。もしかしたら『関ヶ原』の時に私の様なガチな声があったのを受けて、原田監督もバランスを整えたのかな?なんて思ったりもします。

さて、新選組と言えばだんだら柄に「誠」の文字が入った揃いのユニフォーム。これまでの新選組をモチーフにした作品では必ずこの衣装が登場してきて我々もそれこそを新選組と認識していました。しかし、本作では一部を除いて黒を基調とした決して派手ではないが、落ち着いた色合いの着物と袴を着用しています。「こんなの新選組じゃない!」等と言うなかれ。実はこれにも理由があり、最近の研究では新選組の中でも芹沢鴨が件の衣装を考案し、芹沢の一派のみが着用していたのでは?とする説があり、そちらを採用したものだそうです。ふむふむ、なるほど。尚、本作での芹沢鴨伊藤英明さんが演じています。知性と狂気を秘めた芹沢を色気を交えながら好演しています。

それから僕は本作に関してはラストが素晴らしかったです!土方歳三は函館.五稜郭の戦いで戦死します。映画のネタバレではありません、歴史的事実です(笑)当然、そのシーンがラストにあるのですが、土方の死後の云々みたいなのは、映像面でもナレーションでも挿入されないんですよ。土方の亡骸を俯瞰ショットで捉え、終劇。余韻を残すでもなく、綺麗に幕を下ろす。僕の好きなエンドパターンですね。

さて、『関ヶ原』の時もそうでしたが、本作もある程度の歴史的知識を必要とします。ライトな人には不親切な作りと言えるかもしれませんが、これにも理由がある様です。原田監督が指摘するのは、最近の若い人はわからない事を調べるという事をしない。初めからわかりやすく作れば良いかもしれないが、調べるという行動を起こし欲しいと。なるほど、知的好奇心を刺激し、調べるという能動的なアクションへ導くという意味では理にかなった見せ方かもしれない。もっともその行動を引き起こす為にはそれに即したエンターテイメント性も必要であるが。

そんな事を思いながら劇場に後をしました。

神在月のこども

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毎年10月に全国の神々が出雲に集い、翌年の縁を結ぶ会議を行うという云われを題材に、神話の地・出雲を目指して駆ける少女の成長を描いたアニメーション映画。母を亡くした少女カンナは、大好きだった“走ること”と向き合えなくなり、鬱々とした毎日を過ごしていた。そんなある日、母の形見に触れたカンナの前に、神使の兎・シロが現れ、人々と神々の境界をまたぐ壮大な旅へと彼女を誘う。目指すのは、全国から神々が姿を消す神無月(10月)に神々を迎えてまつる“神在月”の出雲。鬼の少年・夜叉に行く手を阻まれながらも、自分を信じて走り続けるカンナだったが……。「朝が来る」などの女優・蒔田彩珠が主人公カンナの声を務め、神使の兎・シロを坂本真綾、鬼の少年・夜叉を入野自由と人気実力派声優が演じる。

(映画.comより)

まずはT-JOYいずもさん、試写会に招待してくれたスタッフさんへ。その節はありがとうございました!9月16日。全国公開へ先立っての試写会での鑑賞。素敵な時間を体験させて頂きました!

では僭越ながら『神在月のこども』のレビューをさせて頂きます。

全国の神様が出雲大社に集まりご縁を結ぶ会議を開く。これは山陰地方こと島根県に住んでいたら子供の頃から学校でも習うし、祖父や祖母からも教えてもらったもので大変馴染み深い題材です。なので我々からすると出雲の神話や逸話がどの様に作中に絡んでくるのか非常に期待が高まるわけです。そして全国に向けては出雲の神在月についての理解を深めて頂くのにこれ以上ない作品なんです。

まず、本作を見た上で感じたのはとにかく作画が美しい!それは冒頭でカンナがお母さんとかけっこをするシーンから感じました。森の中での母子のかけっこ。そこでの木々の揺れとか燦々と降り注ぐ陽射しの描写。更にはカンナの足に触れる草花の細かな揺れまで全てにおいてリアルであり、その場の空気や匂いまでがダイレクトに感じられる様です。その他東京での街の光景や学校での風景全てが写真の様なリアリティたっぷりの作画です。その他諏訪神社にしてもそうだし、ロードムービーならではのそれぞれの土地の光景も美しい!そして何と言っても出雲が近付くにつれ、我々の高揚感が高まっていくんですよ!県境にある標識にも馴染み深い。そしてやはり出雲大社の描写はとにかく美しい!神々しさが画面全体から感じられます!ここだけでも、十分見応えありますよ!

そしてストーリーですね。主人公のカンナの成長譚なのですが、お母さんとの死別に殻に篭る日々等正直前半は辛いです。しかし、これを乗り越える為に彼女は出雲へ行き、新しい自分を発見していくのですが、そこが見せてくれます。因幡の白兎よろしく神使の兎に導かれる道中で夜叉の少年と出会い、ただひたすらに出雲へ。その道程は決して平坦なものではありません。しかし、これを見続けるからこその感動を共感出来るんですよね!これは全国の子供達に是非見て頂きたい!

また、後半出雲でお母さんと再会してからのまさかの展開に目を見張りますね。直接的にはお伝え出来ませんが、あれ程優しかったお母さんの闇の部分が恐怖。そしてそこからのカンナの心の葛藤をフォーカスしていく等この辺りはやや暗めの展開。前半のお母さんとのエピソードやカンナのキャラクターを見てきた身としては辛くもなるのですが、この緩急の付け方等は目を見張るものがあり、個人的にはよかったと思います。

また、様々な神様が登場し、こういう辺りも是非楽しんで頂きたいなと思いました。とりわけ神谷明さんの演じていた大国主命が個人的には好きです!その他恵比寿様や諏訪神社竜神等日本の神様をフィーチャーしたファンタジーという発想の斬新さを楽しめる作品でしたね!その流れで言えば鬼の子である夜叉を仲間にするなんてのも良かったですね。夜叉って言うと恐ろしそうなんですが、キャラクターデザインが愛らしいんですよね。そしてそんな彼にも辛いエピソードが秘められていたりします。

試写会終了後はスタッフとの会話が「いや〜、良かった!」しか出て来なかったというボキャ貧ぶりですよ(笑)そして帰りの車中はひたすら僕は余韻に浸り、気持ちよく眠りにつきました。

出雲はもちろん、山陰在住の方は是非見て頂きたい作品です!オススメです!


…と締めたいところですが、すみません。ホントに良い映画ですが、それでも言いたいところはありまして、その辺突っ込ませて頂きますね。まずはお母さんと娘・カンナの絆のストーリーである事は重々承知ですが、お父さんの扱いが雑かな?と。何だったら少々邪魔者なくらいじゃない?と思います。思春期のカンナにとっての父親像を表す為に敢えてこの扱いにしたのかな?すいません、僕が男性だからこそこんな事思っちゃいました。すいません、敢えての不満点はそれくらいです。

そして僕からは以上です!後は皆さん、直接ご覧頂いて作品に浸ってもらえたらと思う次第です。

今度こそ…


オススメです!是非劇場でご覧下さい!

ブラック・ウィドウ

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解説

アベンジャーズ」シリーズをはじめとしたマーベル・シネマティック・ユニバースMCU)の各作品で活躍した、スカーレット・ヨハンソン演じるブラック・ウィドウが単独で主役を務めた作品で、孤高の暗殺者だったブラック・ウィドウがなぜアベンジャーズになったのか、知られざる物語が明らかにされる。物語の時代設定は「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」と「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」の間で、ブラック・ウィドウがアベンジャーズから離れていた時期に起こった出来事を描く。ブラック・ウィドウの前に突如現れた、“妹”エレーナ。姉妹は、自分たちを暗殺者に育てたスパイ組織「レッドルーム」の秘密を知ったことで命を狙われる。唯一の味方は、かつて組織が作り出した“偽りの家族”だけだった。しかし、その家族の再会によってレッドルームの恐るべき陰謀が動き出す。エレーナ役は「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」でアカデミー助演女優賞にノミネートされたフローレンス・ピュー。監督は、「ベルリン・シンドローム」のケイト・ショートランド

(映画.comより)

今年7月に劇場公開&Disney +チャンネルで有料配信が始まりました。ずっと気になっていたのですが、10月6日にプレミアアクセス期間が終了。見放題になったのを機にようやく鑑賞致しました。今やすっかりスカーレット・ヨハンソンの当たり役となった感のあるナターシャことブラック・ウィドウですが、今作が初の単独作。MCUシリーズでの代表的キャラクターでもあるので意外といや意外なのですが、後述しますが、何故もっと早く製作しなかったのかなんて歯痒い部分もあったりします。

さて、プレミアムアクセスが終了した10月6日。私はいの一番にDisney +を立ち上げ鑑賞!まず前半部ですが、一組の幸せそうな家族が登場します。一見、穏やかに見える光景から地獄の展開へ。この部分でナターシャは何故ブラックウィドウになるのか暗殺者へと変貌するその過程が明らかにされていくのです。レッドルームなるその組織でのトレーニングのシーンが映し出されるのですが、ここで印象的なのはヴィジュアル的な表現方法なんですね。サブリミナル的に挿入されるポップなアニメーション映像がひたすらに恐怖を与えてくれる。ここに身を投じる少女達のあまりに過酷な現実とこのアニメ画のギャップが生み出す視覚的絶望感の演出方法はこの冒頭部での最もインパクトの強い描写だったと思います。また、この一家が家を出て地獄への扉をこじ開けるその道中で流れるのがドン・マクレーンの『アメリカン・パイ』。後にマドンナもカバーした70'sの名曲ですが、この曲の歌詞に注目したいところ。曲のワンフレーズがこれから始まる地獄へと導くまるでそれを示唆するかの様に使われる辺りこの選曲センスと映像表現に目を見張るものがあります。

そして、20年の月日が流れた後、離れ離れになった姉妹の再会シーン。ブラックウィドウとかつての妹であったエレーナの涙の再会…とはならず壮絶なバトルシーン。スカヨハは言うに及ばずなのですが、エレーナの身体能力に目を見張ります。エレーナを演じたのは『ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語』のローレンス・ピュー。作品が作品だから当然なのですが、『若草物語』を見た時はここまでアクロバティックな動きを見せる女優さんだとはとても思えませんでしたね。ちなみにこの妹のエレーナ。キャラクター的にもいいんですよ。スタイリッシュで大人な姉のナターシャに比べてもっと今っぽいというか等身大の女子って感じなんですよね。ブラックウィドウの決めポーズいじりとか生意気なんだけど、それがまた愛らしいというか絶妙な妹感が出ていましたよ。

その後はこの姉妹が良い感じにバディとなり、レッドルームの闇を暴くべく奔走。その過程ではかつての偽りの父と母を探し出すという流れがあります。

さて、そんなブラック・ウィドウなのですが、この映画は家族をテーマにしている作品です。ナターシャとエレーナを中心としながら子供時代〜不遇の環境を経ての再会。20年の時は残酷でイケメンだった父親もサムいギャグとビールっ腹。更には髪もすっかり薄くなり、往時の面影は見事にない。お母さんの方は見た目には問題ないけれど飼ってるブタをアレしちゃうサイコっぷりを惜しげもなく見せてくれる。それでも姉妹達にとっては実の家族ではなくとも、家族の様な深い繋がりがあり、そして彼らが手を取り、共に戦っていく。

それにしても本作のヴィランはかなり胸糞悪いキャラクターでしたね。恐らくMCU作品でもダントツの鬼畜キャラでした(笑)目的の為なら何でもする。殺された自分の娘すらも悪事に利用する。更には多くの少女達を犠牲にし、殺戮マシーンへと変貌させるとんでもなくいけすかねぇ野郎でしたよ、こんちくしゅうは…言葉が悪くなりましたけど、そんくらい僕の感情が込められてると察して下さい。でもだからこそラストの展開がスカッとするんですよね。

さて、ブラック・ウィドウと言えば『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』で壮絶な最後を迎えました。そして本作のエンドロール後にその後の妹エレーナが登場してきます。そして次のフェーズへの展望も予兆させてくれます。そこで僕は思いました。ここまでの流れは全て彼女の生前の話しなんだよな〜。他のアイアンマン等は『アベンジャーズ』シリーズと並行して作られていたのに、何故ブラックウィドウはこのタイミングなんだよ〜と。確かに元々はヴィランとして登場したキャラではあるけど、『アベンジャーズ』では常に他のメンバーと一緒に最前線で戦ってきたじゃ〜ん!出来れば『エンドゲーム』までに本作を見ておきたかったな〜と。

でも!見て良かったですね!MCUならではの白熱したアクションシーンもさることながら音楽の使い方や映像の表現方法、映画全体のテンポやストーリーの展開どれを取ってもケチの付け所がない。満足してます!ただ、惜しむらくはこれを映画館のスクリーンで楽しめなかった事でしょうか。

話題は尽きませんが、そろそろお開き。オススメです!

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

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ジェームズ・ボンドの活躍を描く「007」シリーズ25作目。現役を退きジャマイカで穏やかな生活を送っていたボンドのもとに、CIA出身の旧友フェリックス・ライターが助けを求めにやってきたことから、平穏な日常は終わりを告げる。誘拐された科学者を救出するという任務に就いたボンドは、その過酷なミッションの中で、世界に脅威をもたらす最新技術を有した黒幕を追うことになるが……。ダニエル・クレイグが5度目のボンドを演じ、前作「007 スペクター」から引き続きレア・セドゥーベン・ウィショーナオミ・ハリスロリー・キニアレイフ・ファインズらが共演。新たに「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」のアナ・デ・アルマス、「キャプテン・マーベル」のラシャーナ・リンチらが出演し、「ボヘミアン・ラプソディ」のフレディ・マーキュリー役でアカデミー主演男優賞を受賞したラミ・マレックが悪役として登場する。監督は、「ビースト・オブ・ノー・ネーション」の日系アメリカ人キャリー・ジョージ・フクナガ。

(映画.comより)

当初の公開予定から一年半の延期。「ホントに公開されるの?」なんて不安もありましたが、遂に公開となりました!首を長くしていたファンもこれで溜飲が下がるというもの。そして満を持してと言う言葉がここまで似つかわしい作品もないのでは?という本作は長年ボンド役を務めてきたダニエル・クレイグにとって最後の作品。これまた想いの強い方も多いのではないでしょうか。そして上映時間はシリーズ最長の164分。主題歌はビリー・アイリッシュが担当等話題が尽きない作品となりました。

率直に言いましょう。長くシリーズの立役者であったダニエル・クレイグのボンドへの餞としてはこれ以上ない出来でした!ぶっちゃけ007シリーズにめちゃくちゃ愛着があるというわけではない僕が見ても最後は胸に込み上げるものがありました。ただ、映画全体としては突っ込みたい点もありますが、まぁここは後述致しましょう。

まずはこの映画…というか007シリーズならではというべきでしょうか、とにかくアクションが際立っていて映画館ならではの迫力は申し分無しです。その都度登場してくるガジェットを見てもワクワクするし、そうかと思えばヒヤッとさせる場面もふんだんにあります。僕の並びに座っていたおばちゃんいや失礼…ご婦人もその都度「うわっ!」とか「あ〜っ」なんて思わず声に出ちゃったんでしょうね。つまりはそれ位スリリングな映画体験が出来るんですね。

更には世界各地をまたに繰り広げるカーアクションのみならずバイクでのアクションシーンはアツいですね!イタリアの歴史的な街並の中、派手に立ち回るボンド。それが画面いっぱいに楽しめると「う〜ん、これぞ映画体験!」なんて唸ってましたね。もっとも僕の場合は口に出さず心で絶叫してましたけどね(笑)

で、ストーリーはというとまさかの007の2号が現れる等の面白ポイントはありますが、何と言っても家族のストーリーでもあるんですね。これまでボンドと言えばダンディズムな色気を振り撒きながら、若いボンドガールとのアバンチュールを楽しんできましたが、そんなボンドに家族が。という展開。

完全無欠なボンドが最も人間らしさを出したのがまさに本作だという事なんですね。正直あのボンドの手にウサギのぬいぐるみが掴まれるなんてこれまで有りましたでしょうか?そんな彼の姿は愛に満ちていて優しい父親そのものであり、だからこそラストのシーンでは思わず涙腺が緩んじゃうんですよ。

また、本作の悪役はあの『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックが起用されました!冷酷非道な殺人マシーンである彼の姿がフレディ・マーキュリーとあまりにかけ離れていたけど見事に悪役をこなしていましたね。

ただ、冒頭で触れたどうしても突っ込みたいポイントというのが彼のキャラクター性なんですよね。復讐に燃える殺人鬼ではあるものの、彼が何故その様になったのかの動機が見えてこなかったです。更には子供には優しいんだけどそこの理由もよくわからないんですよね。彼の生い立ちを見せながらうまく見ている人を納得させる様な描写があればより良かったと思います。

そして終盤です。ダニエル・クレイグボンド最後の勇姿へ導く描写。映画としての指摘点は確かにありましたけど、やっぱりこのシーンは泣ける。これはシリーズを見続けた人であれば色々と過去の思い出がフラッシュバックして涙なしでは見れなかったんじゃないですか?これまた自分が見た時の並びのお客さんの様子を伝えると先程お伝えしたご婦人の娘さんらしき女性の涙をすする音が聞こえてきましたよ。きっと親子揃って007が好きなんだろうなぁ。

で、エンドロールが流れても誰も席を立たないんですよ。でもその判断は結果として正解。最後に007シリーズの未来へ繋がるこれ以上ないメッセージが表示され、映画は終了しました。007はまだまだ終わらない。個人的には映像を見せるのではなく、シンプルにメッセージのみを映す手法は粋だなと思いました。

160分強という長尺ですっかり腰が痛くなりましたが(笑)一年半待った甲斐がありました。もっとも待ちたくて待ったわけではないですけどね。

ボンドの勇姿をこの目で見届けよ!

オススメです!


総理の夫

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ベストセラー作家・原田マハの小説「総理の夫 First Gentleman」を、田中圭中谷美紀の共演で映画化。妻が日本初の女性総理になったことで、自身も史上初のファーストジェントルマンとして担ぎ上げられてしまった鳥類学者の夫が、政界という未知の世界で奮闘する姿を描いた。少数野党の党首を務めている凛子と結婚10年目を迎えた鳥類学者の相馬日和は、ある朝、凛子から「もし私が総理大臣になったら何か不都合ある?」と意味深な話を投げかけられる。質問の意図を探ってもはぐらかされた日和は、そのまま野鳥観察の出張に出かけ、ろくに電波の届かない孤島で10日間を過ごす。しかし、その間に世間は激変。凛子が史上初の女性内閣総理大臣に選出されていた。そのことで自動的に史上初の「総理の夫」となった日和は、微力ながらも妻の夢を全力で応援しようと心に誓うが、予想だにしない激動の日々に巻き込まれていく。最愛の妻と過ごす時間もなくなり大騒動の毎日に振り回される日和を田中、愛する夫に支えられながら国の未来のため信念を貫く凛子を中谷が演じる。監督は「チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」「かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦」の河合勇人。 

(映画.comより)

自民党総裁選が加熱した9月23日公開。たまたま休日だったその日、僕は先週扱った『マスカレード・ナイト』と本作を二本鑑賞。番組でのレビュー用のブログ記事は総裁選の結果を待ってからと待機しておりました。というのも結果次第では本作が非常にタイムリーな映画になると思うし、喋る内容も変わってくるからです。結果はご存知の通り。どうやら日本初の女性首相の誕生はまだまだ先の話しかなと思いました。

しかしですよ!この映画で描かれているのは女性の総理大臣ではあるものの、主人公はその夫なんですね。もし日本で女性首相が誕生したらその夫は…という題材で120分が展開されるわけです。

総理大臣・相馬凛子を中谷美紀、そして主人公・日和を演じるのは田中圭、そして監督は『俺物語!』、『チア⭐︎ダン』、『かぐや様は告らせたい』の河合勇人監督がメガホンを取りました。

で、僕は思いました。河合監督と言えば上記の作品群でもわかる様に若者をターゲットにした青春映画や恋愛映画で名前を鳴らした方ですよ。更にはコメディをベースにした作品ですね。政治という題材との相性は果たして如何かな?と。予告編でもコメディ色が強いという印象でした。比較するイメージとしては三谷幸喜監督の『記憶にございません!』が念頭にはありました。

で、実際に始まってみると振り切ったコメディ…うん、いつもの河合監督節だ。更に言えばツッコミを入れたくなる様な強引な展開もあるし邦画が苦手な人が顔をしかめそうなわちゃわちゃ感もある。でも正直言えば『かぐや様は告らせたい』に比べたらマシかな?みたいな…。

ただ、こんなのはご愛嬌と私なんかは割り切って見るのですが、途中から流れが変わるんですよ。それは出産や育児、シングルマザーの仕事等女性特有の諸問題が打ち出されてからですね。中谷美紀さんが総理大臣を演じてはいるものの、作中での彼女の年齢がまだ若いという事もあって出産の壁が立ちはだかるんですよ。育休を取りたいけどその間の政務はどうするのか?という問題ですよね。また、貫地谷しほり演じる総理の元で働く女性はシングルマザーであり、政治に関わる社会では子育てと仕事の両立が難しいものとして立ちはだかったり。しっかりとコメディ然としつつも、社会問題を提起しているんですね。

それにしてもこの映画においては中谷美紀さんの存在感が圧倒的なんですよ!相馬凛子内閣組閣シーンでの大階段での彼女がめちゃくちゃキレイ!更に言えばカッコいいんですよ!中谷美紀さんの好きな役では『源氏物語 千年の謎』での紫式部なのですが、こういう聡明で凛とした佇まいの役がめっちゃ合う女優さんですよ。その一方では『嫌われ松子の一生』とか『自虐の唄』の様な薄幸な女性を演じてもハマりますしね。

一方の田中圭さんの一見頼りなさそうなんだけど専門分野にはめっぽう熱く、また妻凛子を尊敬しつつも、彼女を支える男性役も良かったです!

ただ、一方ではどうしても突っ込んでおきたい所はあるので触れておきます。

まずは野鳥観察の為に孤島に10日間滞在後、東京に戻ってから妻の総理就任を知るという辺り。そもそも孤島に出向く前日ゆっくりと妻と食事していたり、慌ただしさが全くないんですよ。そもそも10日後に総理大臣になる議員がそんなにのんびりも出来ないだろうし、さすがに選挙に出馬する事くらい政治に疎い人ましてや夫であれば知らないわけないだろ?

それから日和の実家って日本でも有数の大企業であり、つまりは大金持ちなんですよね。決して貧乏人のひがみを言うつもりはないけど、ここって非現実的かもしれないけど超絶庶民の家庭か思い切って『花より男子』のつくしちゃんくらいの極端な家庭状況にした方がストーリー的にギャップが生まれてより面白くなった、更に言えば見ている人の共感性も高かったんじゃないかな?

比較対象として『記憶にございません!』をあげましたけど、ギャグの運びや政治的な切り込み方、更にはストーリーの深み等はどうしても『記憶に…』に軍配が上がりますね。

ただ、青春題材以外の河合監督の作品としては粗があるものの、意欲的で楽しませて頂きました!

今後も様々な題材を映像に落とし込んでほしいなと思いました。

マスカレードナイト

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東野圭吾のベストセラー小説を木村拓哉長澤まさみの共演で映画化した「マスカレード・ホテル」のシリーズ第2弾。原作小説のシリーズ第3作をもとに、ホテル・コルテシア東京に再び潜入した刑事・新田浩介と優秀なホテルウーマン・山岸尚美が難事件に挑む姿を描く。警察に届いた1通の匿名ファックス。その内容は、都内マンションで起きた殺人事件の犯人が、大みそかにホテル・コルテシア東京で開催されるカウントダウンパーティ「マスカレード・ナイト」に現れるというものだった。パーティ当日、捜査のため再びフロントクラークとしてホテルに潜入した警視庁捜査一課の刑事・新田浩介は、コンシェルジュに昇進した山岸尚美の協力を得て捜査を進めていくが、500人の参加者は全員が仮装して顔を隠していた。限られた時間の中、素顔のわからない殺人犯を捕まえるべく奔走する彼らだったが……。前作に続き「HERO」の鈴木雅之監督がメガホンをとった。

(映画.comより)

テレビ局製作…なんて十把一絡げにするのはよくないかもしれませんが、テレビドラマの延長の様な映画には適さないTHE MOVIE的な商業映画があります。その代表格がフジテレビであって、コアな映画ファン程毛嫌いしてしまう様な作品が量産されてきたイメージがあります。しかし、2019年に公開された『マスカレード・ホテル』の印象は悪くなかったです。全てをホテルの内部という密室劇にする事で求心力がありましたし、そのホテルのラグジュアリーな雰囲気をスクリーンいっぱいに映し出し、効果的な劇板と共に映画的に贅沢な見せ方をしていて楽しませてくれました!

更にストーリーやキャストにしても『オリエンタル急行殺人事件』の様な華々しいキャストと手の込んだシナリオ運び等エンタメ性は非常に高かったです!フジテレビ所属の演出家にして『王様のレストラン』、『ショムニ』、『HERO』映画では『プリンセス・トヨトミ』や『本能寺ホテル』等を手掛けてきた鈴木雅之氏が監督という事でテレビ的な悪い癖が出てしまったのも否めないですが、全体を通じては悪くはなかったです。

そして今回、二年ぶりにあのコンビが帰ってきました!木村拓哉演じる潜入捜査官・新田浩介と長澤まさみ演じるホテル・コルシア東京のホテルウーマン山岸尚美。当初はギクシャクしていた二人が事件の究明に向け、協力する内にいつしか最高のバディになるそんな昔『HERO』で見た様な二人の関係性だけどお客様を誰よりも信じるホテルマンと常に疑いの目を向ける刑事というその対極にある職業の二人がバチンとハマっていく過程が楽しかったのですが、本作でももちろんその流れ。ホテル内にある理髪店を見た新田が髪を整えるくだりや相次ぐ「客ではなくお客様です。」のやり取りなんかは前作を見ていたらニヤリでしょう。更には前作にも出てたさんまさんの扱いとかもそうですね(笑)

そしてやはりホテルのロビーに見る華やかさもスクリーン映えするんですよね!三谷幸喜作の『THE有頂天ホテル』等もそうでしたが、ホテルって建物自体は見かけても宿泊する機会が少ない人には非日常的な空間なんですよね。そんなホテルにやってくる客…失礼、お客様の顔触れや人間模様等も盛り込まれていてそれぞれが豪華なキャストの面々によって演じられています。

そんなホテルを舞台に起こるミステリー。もちろんかこれが軸になってストーリーが展開するのは前作同様なのですが、前作ってぶっちゃけね犯人わかりやすかったんですよ。何だったらその人物が登場しただけで「あれ、もしかして?こいつ犯人じゃね?」みたいなね。豪華キャストの中、特別出演という形でフィーチャーして案の定その人が犯人、言わば「古畑任三郎」パターンですね。あくまで前作は顔見世興行的な形態だったのでそれで良かったですよ、むしろ木村拓哉さんとその犯人役の人の絡みが貴重だった感じですし。

で、本作はと言うとこれがガッツリ本格的推理サスペンスなんですよ。展開が読めない!とにかくね〜、怪しい人物がワッサワッサ出てくるんですよね!そこから更に登場人物が多いんで頭を整理する難易度も上がっていました!しかもその犯人には悲しいエピソードがあって…という東野圭吾原作ならではなんですが、こちらも現代の社会で議論となる様なテーマが含んでいます。

正直、サスペンスとしての完成度で言えば前作以上。作品としてのクオリティも高くなったと思います。更にアルゼンチンタンゴの舞踏シーンや更に前作を踏襲していますが、中世ヨーロッパの絵画を思わせるエンドでのアートワーク等品もあったし、オシャレ感もありました!

ただ、前作同様にやはりテレビドラマ的な癖が出ちゃいましたね。謎のピエロがフロントに現れた時の動揺ぶりとかホテルサイドと警察サイドそれぞれの違いを明確にする為、会議のシーンを比較的に映し出す等の良い面はありました。ただ、どうにも解せないのが、新田と山岸の二人が対峙した時に周囲に居たロビー客が一斉にその場を離れるだとかロビーや廊下で他の客…いや、お客様の耳に入るくらいの声で事件についてどうこう話すシーンはどうよ?潜入捜査の意味ねぇだろ?後、犯人キャッチの意外性はありましたが、やや唐突過ぎな感はありましたでしょうか?せめて当該人物にその動機に繋がるものを示唆してくれた方が良い伏線になったと思うんですけどね。

いやはや最後はツッコミ気味で終わりましたが、何度も言う様に前作以上に面白くなっています!

是非劇場でご覧下さい!