きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

もしも徳川家康が総理大臣になったら

2021年に出版され大ヒットを記録した同名ビジネス小説を原作に、AIで復活した偉人たちによる最強ヒーロー内閣の活躍を描いたコメディ映画。
コロナ禍の2020年、首相官邸クラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活させて最強の内閣をつくることに。江戸幕府を作った伝説の男・徳川家康を総理大臣に据え、織田信長豊臣秀吉といった偉人たちが集結した夢のような内閣が誕生する。その圧倒的なカリスマ性と実行力に日本中が熱狂する中、アナウンサー志望の新人テレビ局員・西村理沙はスクープを狙い、政府のスポークスマンを務める坂本龍馬に接近するが……。
主人公のテレビ記者・理沙を浜辺美波内閣官房長官坂本龍馬赤楚衛二内閣総理大臣徳川家康野村萬斎経済産業大臣織田信長GACKT財務大臣豊臣秀吉竹中直人がそれぞれ演じる。「テルマエ・ロマエ」の武内英樹監督がメガホンをとり、「翔んで埼玉」でも武内監督と組んだ徳永友一が脚本を担当。(映画・comより)

2020年コロナ禍初年。その翌年に出版され話題となったビジネス小説「もしも徳川家康が総理大臣になったら」。僕もその当時読んで歴史上の人物を集めてコロナ対策をしたらこうも革新的なものになるのかと楽しく読ませて頂きました。

その小説の映画とあって公開決定後から公開を楽しみにしていた作品です。もちろん公開初日の7月26日にMOVIX日吉津にて鑑賞。その後、松江東宝5で8月1日のファーストデーで二回目を見ております。

さてさて歴史上の偉人達がAIで甦り、現代の日本で内閣を組閣。徳川家康を総理大臣に据え、官房長官坂本龍馬、他織田信長豊臣秀吉聖徳太子紫式部北条政子足利義満徳川綱吉徳川吉宗と誰もが知る面々を錚々たる俳優陣が扮し、政務を執り行う。言ってみれば荒唐無稽ではあるが、フィクションだからこそその世界が繰り広げられていくのです。

豪華絢爛な偉人内閣は非常に絵になる。まずは組閣後のレッドカーペットに映る内閣の面々には映画映えします。

そんな内閣の面々の仕事振りがまた見ていて斬新かつ大胆…龍馬官房長官のロックダウンを皮切りに秀吉は全国民に一人当たり50万円の給付金(やってほしかった!)、口座を持たない人には直接役所に取りに来る様にというアナログ振り。もし不正を働く物にはお仕置きを!ではその給付金の補填は?国債で賄うといずれは国民に負担がくるのでと企業のトップに負担の要請。ここでは信長が動き、比叡山焼き討ちの件を持ち出しながら出資させる。現代では脅迫なのでは?そこもうまくやるんですね。

なかなか強引ではありますが、しかしこれが功を奏して日本はコロナ禍を更には不況をも脱した事で支持率は急上昇するという流れです。

もしかしたら今の実際の日本の政治だってこれくらい大胆にした方がいいのでは?なんて思わせてくれる説得力があるんですよね。

また、ちょいちょいぶっ込んでくるパロディも楽しい!当初は偉人内閣に懐疑的な国民の描写。動画配信者は明らかにひろゆきさんだし、小籔さんが演じていた情報番組のキャスターは宮根さんがモデルですよね。また、紫式部源氏物語の読み聞かせでは某予備校のマドンナ先生と林先生がミックスされていたし、北条政子徹子の部屋を臆面もなくパロる。信長の三密を避けようのCMは公共広告機構のそれだし。大の大人が本気で遊んでる感じが見ていて楽しかったですね。

それから大河ドラマに結びつける辺りもニヤリとしました。源氏物語が大ヒットして大河ドラマ「光る君へ」が放送とか選択を迫られた家康に「どうする?家康」って言いたいだけやろ?と僕の頭の中で浜田雅功さんの声が聞こえました。そもそもキャスティングが大河だしね。竹中直人さんの秀吉とか土方歳三山本耕史さんが演じてるし。

そうそう、土方歳三で言えば龍馬と新選組が共闘するという史実ではあり得ない光景が見れたのもこの映画ならではですね。

また、それぞれの偉人の性格も我々が認識する偉業や逸話、性格とうまく絡めてありました。例えば10人の話しを一斉に聞き取ったという逸話を持つ聖徳太子番記者の質問攻めに的確に回答。金閣寺を建てた足利義満は二言目に「金」じゃだし。秀吉は総理である家康よりもまずは信長。そしてこれが後々大きな歪みを生んでしまいあわや本能寺の変が?…なんて事にもなるのですが。

また、三人の徳川が出てきますが、綱吉と吉宗は家康を「大権現様!」と崇拝。

で、坂本龍馬と徳川家の因縁もうまくプログラミング。薩長を結びつけ幕府を倒す中心となった龍馬は徳川家からは憎まれて然るべきところですが、その感情を排除する事で円滑な行政が担えるというわけです。

前半はこの偉人内閣の政務と国民の反応を捉えるも、中盤は大きな展開を迎えるんですね。

それは信長の人気からくる内閣内部の亀裂ですね。泣くまで待とうの家康では泣かぬなら殺してしまえの信長の豪快さとカリスマ性が支持を集め更には秀吉が不穏な動きを見せるんですね。それこそが前述の本能寺の変の再来になるのですが、明智光秀ではなく秀吉黒幕説?ここはなかなか見応えがあります!

変わって終盤。ここでは家康が願う現代の日本人へのメッセージが光ります!選挙の投票率の低さ、国より個を考える我々への痛烈なメッセージが野村萬斎節とも言える狂言ならしの大演説が繰り広げられます。

これまでのコメディ一色の様相からここではかなり真摯な真面目な内容となっている。と言っても保守寄りの右に偏ったスピーチではなく遥か昔に生きた安寧の世を築く為に戦に明け暮れた先人から未来を生きる我々に向けたズッシリと突き刺さるものです。

我々は自らが住む国の事、故郷の事をどれだけ考えているだろうか?政治には無関心、投票に行かない人だっている。政治に意識を向けるというのは我々の事はもちろん、子供・孫、果てはここに登場した偉人の目から見た未来。すなわち数百年先の子孫の事を考えるという事でもあるのではないか。

そして選挙で選出された議員は議会で居眠りする始末。そんな議員を信長は一喝しましたよね。

「目を覚ませぇ!」と。これまで色んな人が織田信長を演じてきましたが、Gacktさんの信長めちゃカッコよかったです!

作品全体的にはとても楽しめましたが、欲を言えば三英傑を中心にし過ぎだったかな?もっと他のキャラクターにも見せ場が欲しかったな。それから浜辺美波演じる理沙が龍馬の婚約者・さなに似ているという設定でしたが、それをもっと活かして欲しかったな。例えば回想シーンを設けるとかね。浜辺美波ちゃんの和服姿を見たかった!…てのもあるけどストーリーにより深みが出せたのではないかなと思います。

なんて最後は注文を入れましたが、少なくとも二回見に行くくらいには良かったです!

オススメします!

是非劇場でご覧下さい!