きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

思い、思われ、ふり、ふられ

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ストロボ・エッジ」「アオハライド」で人気の漫画家・咲坂伊緒による人気青春恋愛コミックを浜辺美波北村匠海福本莉子赤楚衛二のキャストで実写映画化。恋愛には積極的で社交的だが不器用な性格の朱里。夢見がちで恋愛には消極的、自分に自信が持てない由奈。そして、朱里の義理の弟の理央と由奈の幼なじみの和臣。同じ学校に通う高校1年生の4人は同じマンションに暮らしていた。憧れ、片思い、ある秘密……4人の四者四様のさまざまな思いがすれ違いながら交差していく。「君の膵臓をたべたい」やアニメ「HELLO WORLD」でも共演してきた浜辺と北村が朱里役と理央役を務め、由奈役を福本、和臣役を赤楚がそれぞれ演じる。監督は「アオハライド」「フォルトゥナの瞳」など数々の青春・恋愛映画を手がける三木孝浩。
(映画.comより)

恋愛映画…いや、別に苦手というわけではないですが、これまであまり積極的には扱ってきませんでしたよね。
というのが、いわゆるスイーツと揶揄される事も多いこのジャンルってどれも似たり寄ったりな感があってやや鑑賞意欲が削がれるというきらいがありまして、ついスルーしてしまうんですよね。
でも今週に関しては選択肢が限られていたというのと浜辺美波ちゃんが出てるからまぁ見るかくらいのスタンスで鑑賞に臨んだわけです。
久しぶりに浜辺美波ちゃんをスクリーンで眺める贅沢良いね~なんてワクワク感を抱き、見たはいいものの、前半は正直物足りなさに襲われたというのが正直なところ。
ただ、中盤以降流れが変わってからというものの一気に引き込まれていきましたね。
というのがこの作品。
前述のいわゆるスイーツ系恋愛映画とは違い、話しがそう単純にはならないんです。
もっともそこはタイトルが既にそれを表してるし、原作を知ってる方からすると今更何言ってんだ?と突っ込まれそうですが。
恋愛というのは決して一筋縄ではいかないもの。
いや、確かにそうだ!
その通り!
でこの単純ならざる恋愛模様を四人の高校生が映画の中で複雑に絡み交差させ、ストーリーを展開していく。
ストーリーの舞台設定、彼らの相関図、それぞれ恋愛感情等は脳内で整理しながらストーリーを追っていくという恋愛映画でありながらサスペンスを見ている様な思考力が問われている様でした。
そしてその中で並行していく様に複雑な家庭事情や高校生らしい将来への不安等々が盛り込まれるというつくりはよく出来ているなと感じたものです。

で、この映画。
僕の様に恋愛映画を避けがちなちょい濃い目の映画ファンにも見て頂きたいなという点がありまして、それは三木孝浩監督の映画愛が伺えるんですよ。
それは技術的な面が云々とかではなく、単純に映画ファンの心理をくすぐる描写やキャストのセリフ等です。
『マッドマックス』と言えば…「怒りのデスロード」、字幕か吹き替えならもちろん字幕とか(私も断然字幕です。)
『アバウトタイム』を薦めるシーンもあれば、部屋には『ボーンアイデンティティ』や『8マイル』のポスターが貼ってあったりとか。
他にも映画ファンが見たら笑みが浮かびそうな小ネタがところどころ出てくるあたり監督のこだわりが感じられます。
きっとこの映画にはこの作品…なんて考えながらセレクトしてるんだろうなぁ。
僕が気付かなかっただけで撮影的な技法等でも何かの映画のオマージュとかってのもありそうですね。

で、本作の注目ポイントとしてはやはり浜辺美波北村匠海というキミスイコンビの再共演というところでしょうか。
この二人のブレイクのきっかけが2017年の『君の膵臓をたべたい』である事は言わずもがなですが、あの当時はまだ認知度も低く、小栗旬北川景子というビッグネームを配し、大ヒットとなりました。(もちろん『キミスイ』のヒットはキャストはもちろん、脚本も素晴らしかったのは言うまでもありませんが。)
その後、二人は大ブレイクし、現在の活躍があります。
役者として成長を遂げた二人が再会し、どんな世界を見せてくれるかを是非ご覧頂きたいと思います。
浜辺美波ちゃんは『キミスイ』後は『センセイ君主』でぶっ飛んだコメディ演技に挑戦したり『賭ケグルイ』・『屍人荘の殺人』ではかなりトリッキーな役で登場したりとありましたが、本作では『キミスイ』以来のナチュラルな彼女を楽しむ事が出来ます。
と、キミスイコンビに目が行きがちですが、福本莉子赤楚衛二の若手二人の存在も光っております。
福本莉子さんが演じた由奈。
彼女は元々は引っ込み思案で内気な女の子。
しかし、恋をする事によって自信を深め、変わっていくその過程を瑞々しく演じていました。
今後は『映像研には手を出すな!』の出演も控えています。
注目の女優さんですね。
赤楚衛二さんは本作で初めて知りましたが、『仮面ライダーBe the one』の俳優さんとの事。
彼が演じた和臣は映画好きで前述の映画ネタも彼から繰り出されるもの。
映画監督になりたいと思いつつも踏み出せないもどかしさを表現していた演技が印象的でした。

最後にこの映画から浮かび上がるひとつのテーマについて触れておきます。
ここではない、どこかへ」…なんていうとGLAYの曲名みたいですが(笑)
それぞれの登場人物が今置かれている状況や環境。
そこから離れた時にどんな景色が見え、どんな感情を抱くのか。
それは彼ら自身の物語でのテーマでもある見ている人へ投げ掛けてくるメッセージの様でもあります。
あなたも是非作品を鑑賞し、感じ取って下さい。
そしてそれを考えながら髭男の主題歌に耳を傾けて下さい。
劇場を後にして見える景色が違っている…はず?