「リメンバー・ミー」「トイ・ストーリー4」のピクサー・アニメーションによる長編作品。亡くなった父親にもう一度会いたいと願う兄弟が、魔法によって半分だけ復活した父親を完全によみがえらせるため奮闘する姿を描いた。かつては魔法に満ちていたが、科学技術の進歩にともない魔法が忘れ去られてしまった世界。家族思いで優しいが、なにをやってもうまくいかない少年イアンには、隠れた魔法の才能があった。そんなイアンの願いは、自分が生まれる前に亡くなってしまった父親に一目会うこと。16歳の誕生日に、亡き父が母に託した魔法の杖とともに、「父を24時間だけよみがえらせる魔法」を書かれた手紙を手にしたイアンは、早速その魔法を試すが失敗。父を半分だけの姿で復活させてしまう。イアンは好奇心旺盛な兄バーリーとともに、父を完全によみがえらせる魔法を探す旅に出るが……。監督は「モンスターズ・ユニバーシティ」を手がけたダン・スキャンロン。
(映画.comより)
今年三月の公開予定から延期を経て満を持して公開となったピクサーの最新作。
個人的にもかなり期待をしていました。
しかし、興行的には奮わない様子。
その要因は、キャラクターデザイン?魔法という題材?
考えれば考える程「?」がつきまわるわけですが、しかし『リメンバー・ミー』を好きな映画のひとつとして挙げるであろうワタクシとしては無視する事が出来ず、見て来ました。
しかし、客席もやはりと言うべきか僕を含めて二人のみ。
平日の昼間とは言え、淋しかったな~。
では中身に触れていきましょう。
本作は題材としては魔法でありその力でもって予告編でも流れていた様に亡くなったお父さんを生き返らせようというストーリーではあるものの、二人の兄弟の物語。
一人っ子だとなかなかわからない所でしょうが、兄弟姉妹の関係性とは不思議なもの。
好む好まざるに関わらず同じ親から生まれた事により、関係性が生まれる存在。
思考や好みが違うなんてのもザラだし、違う人生を歩んでいく。
数年に一度しか顔を合わせなくとも、精神的な面での繋がりは強く、ともすれば親よりも人生を共にする時間も長くなる。
僕も4つ上に兄が居りますが、生まれた時からその存在はあり、兄弟の存在を強く意識する事もそうそうなかったなぁ。
そしてこの映画を見る事で改めて兄弟の存在を強く意識した次第です。
この映画に登場するイアンとバーリー。
二人共キャラクター的には大きく違うんですね。
かたや中二病全開でちょっとイタイ奴な兄とコミュ障で友達をパーティーを誘うのも憚れるイアン。
キャラは違えど、共通して言える事。
二人共完璧じゃないどちらかと言えば非社会的。
て、そんな二人が亡き父を魔法で蘇らせる為に冒険に出るというもの。
そして彼らの前に待ち構える困難を乗り越え、人間的にも成長を見せていくという展開。
まぁ、目新しさには欠けるかもしれないですが、兄弟とは何かを訴える作りとなっています。
途中で登場するキャラクターが可愛かったり、ピクサーならではの遊び心にも満ちて退屈しない内容です。
また、魔法世界と現代的な世界を並行させながらのクリエイターの想像力が産み出した世界観も見所だし、『ズートピア』的な差別問題にも踏み込んだ描写等さすがのピクサークオリティは保証されているなとは思いました。
しかし、すみませんここからは個人的な感想ですが、前述の「退屈しない」という表現にあらわれている様にホントに退屈しないんですよ。
でも、そこから先の感情が揺さぶられない。
本作の兄弟とテーマ的には似ている家族を題材にした『リメンバー・ミー』の様なメキシカンな音楽と共に加速させていったあのエモーショナルな激情・昨年の『トイ・ストーリー4』の様に過去と未来の断絶から生まれるメランコリックな心情もちろんこれらの作品以外にも僕はピクサー作品には常に心の揺さぶりを感じてきました。
しかし、本作にはそこまでの熱い感情が生まれないんですよね。
それは何故かグラフィック等諸々にはこれまでのピクサークオリティはあるものの、肝心のストーリーが平坦なんですよね。
確かに子供が見てもわかりやすいかもしれない。
しかし、それはこれまでの作品だってそうだったし、そこに加えられるカタルシスが大人・子供それぞれの心に訴えかけてきたわけじゃないですか。
本作はそこが徹底的に欠如している為、ともすれば一流のシェフが作る高野豆腐みたいにおいしいんだけどそれは求めてないみたいになっちゃうんですよね(笑)
日本版の主題歌であるスキマスイッチの『全力少年』の歌詞と二人の兄弟の姿は確かにマッチしていた。
ディズニー作品とタイアップ曲の選曲センスはいつも絶妙だなとは感じますが、肝心のストーリーがあっさりしてるからこの主題歌も余韻を残さないのが、何とももったいないなと感じました。
面白かった。
でもあとひと工夫欲しかったなというのが全体を通しての僕の感想ですかね。
何目線だ~と言われそうですが、これも僕のピクサーへの愛があればこそとご理解頂ければ幸いです。
でも、何度も映画自体のクオリティは非常に高いので決して見て損はありません!
是非劇場でご覧下さい!