きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ミラベルと魔法だらけの家

f:id:shimatte60:20211202162058j:plain

ディズニー・アニメーション・スタジオによる長編アニメーションで、南米コロンビアを舞台に、魔法にあふれた家に暮らす少女ミラベルの活躍を描いたミュージカルファンタジー。コロンビアの奥地にたたずむ、魔法に包まれた不思議な家。そこに暮らすマドリガル家の子どもたちは、ひとりひとりが異なるユニークな「魔法の才能(ギフト)」を家から与えられていた。しかし、そのうちの1人、ミラベルにだけは、何の力も与えられていなかった。力を持たずとも家族の一員として幸せな生活を過ごしていたミラベル。ある時、彼らの住む魔法の家が危険にさらされていることを知った彼女は、家族を救うために立ち上がることを決意する。監督は「ズートピア」のバイロン・ハワードとジャレッド・ブッシュ。ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」や「ハミルトン」でトニー賞グラミー賞など数々の賞を受賞しているリン=マニュエル・ミランダが音楽を担当。(映画・comより)

久しぶりのディズニー作品です!思えばこの一年以上に渡り、ディズニー本社が配信に力を入れる様になり、新作であっても大々的な劇場公開に踏み切らない興行が続いておりました。ディズニー系列のマーベル作がここにきて相次いでの新作劇場公開が続き、遂にディズニー本家もといったところ。配信より劇場派の私としては、何とかこの形態、保ってもらいたいと思ってます。

さて、久々に見たディズニーの作品。ここ近年におけるディズニー作品と言えばポップな作風の中にも社会性や多様性を問う様な内容が多かった印象。その最たる作品としては2016年の『ズートピア』が挙げられるでしょう。動物達が暮らす街でのバディモノのエンタメ作品でありながら、人種差別に対するメッセージを内包した素晴らしい映画でした!

そして『ズートピア』を手掛けた監督が本作で描いたのは家族の在り方でした。思えば『リメンバー・ミー』(2018)では南米メキシコを舞台に亡くなったご先祖様と現生に生きる人々との魂の結び付きや心の繋がりをテーマにしていました。その意味では家族の話しではありましたが、本作は特殊な力を持ち、街の人からも一目置かれている一家しかしその中でその能力を有さない少女を主人公にしたストーリーつまりは持たざる者の成長譚と言えるでしょう。

家族・親族全てが魔法を使える中、何故か魔法を扱えない少女・ミラベル。そのコンプレックスを抱えながらも自らの道を切り開き、家族のピンチを救う。まぁ、ベタと言えばベタなんですが、そこは腐ってもディズニー。あのテこのテの仕掛けを用意して楽しませてくれます。例えば家族の能力が一人一人違うんですね。巨大な建物等を動かしたり、花を出してみたり、変装が得意な人もいる。そしてそれぞれのキャラクターに合わせた部屋の内装はユニークでしたね。また、履物が目の前にひょいっと現れて履かせてくれたり床板がカタカタとまるで会話をしている様にミラベルの言葉に反応したり。これを見るだけでもかなりワクワクさせてくれますよ。

また、意地悪そうに見えるおばあちゃんだって過去のエピソードを深掘りしていくと悲劇的な過去があったりとストーリーの組み立てなんかもよく出来ていたなと思います。

そしてミュージカル映画ですから、当然音楽にも力が入っています!南米が舞台ですから、『リメンバー・ミー』に通ずる様な軽快なラテンのサウンドが心弾ませてくれます。日本版の主題歌がナオトインティライミなんですが、こちらもバッチリハマってましたね。

以上の様にトータルバランスが整っていて誰が見ても楽しめる内容かなと思います。

また、マドリガル家とミラベルの立ち位置って例えば実社会に置き換えて見ても誰しもが実感出来る内容かなと思いました。我々人間は当然ながら魔法は使えません。例えばこの魔法を個人の能力と置き換えてみてはどうでしょう?勉強やスポーツの優劣、仕事の能力、学歴や職業、社会的地位等ですね。マドリガル家は街では有名な魔法一家。その中で魔法が扱えないミラベル。つまりは地元では有名なエリート一家。しかし、勉強が出来ずいわゆる落ちこぼれの末っ子という見方ですよね。自分に置き換えた話しをしますが、我が家は祖父の代までは地元では知られた教員家庭。親族も高い学歴のいわゆるエリート層。兄貴も薬剤師をしていて、そんな中での俺ですよ(笑)元々は大の勉強嫌いでスポーツも苦手。両親は僕の教育にかなり頭を抱えたハズですよ。ミラベルの場合は家庭内でもかなり浮いた存在。「あなたは何もしなくていいのよ」なんて言われたりするんだけどこれって傷つくんだよね。「自分だって役に立ちたい」「認められたい!」って思うんだけどそれがかなわなかったりする。でも、最終的な話しをすると必要ない人間なんて居なくて必ず誰もが持ってる力がある。それを活かす環境に巡り会えれば誰だって輝けるんだって事なんですよ。ミラベルだってそう。魔法は使えずとも家族を危機から救い、そして家族をひとつにしたのは他ならぬ彼女の行動あってこそなんですよね。今回もまた、肯定的なメッセージが込められていて非常に深い内容だったと思います。

最後に言うならば全体的にはうまくまとまっていて良かったんだけど、『ズートピア』の時に感じた様な感動や興奮には及ばなかったかなというのが個人的な印象としてはあります。こう言っちゃなんですが、意外性に乏しく無難なディズニー作品のひとつで終わってしまった感が否めません。ストーリーにもっと起伏があれば良かったと思うし、ミュージカルシーンにも映画ならではのダイナミックさがあと少し加えられていたらより強く心に響いた作品だったかなと思いました。

しかし、一定以上の映画としての楽しさは保証します!

オススメです!