1997年に放送開始され映画版も大ヒットを記録したテレビドラマ「踊る大捜査線」シリーズで柳葉敏郎が演じる人気キャラクター、室井慎次を主人公に描く映画2部作の前編。
これまで現場の捜査員のために戦い続け、警察の組織改革に挑むなど波乱に満ちた警察人生を歩んできた室井慎次。27年前に青島と交わした約束を果たせなかったことを悔やむ彼は、警察を辞めて故郷・秋田へ帰り、「事件の被害者家族・加害者家族を支援したい」との思いから、少年たちと穏やかに暮らしていた。ある日、室井の前に謎の少女が現れる。彼女の来訪とともに他殺と思われる死体が見つかり、室井はその第一発見者となってしまう。その少女・日向杏は、かつて湾岸署が逮捕した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だった。
室井役の柳葉敏郎、新城賢太郎役の筧利夫、沖田仁美役の真矢ミキらおなじみのキャストに加え、日向杏を演じる福本莉子や、齋藤潤、松下洸平ら新たなキャストも出演。スタッフ陣もプロデュースの亀山千広、脚本の君塚良一、監督の本広克行ら「踊る大捜査線」シリーズを支えてきたメンバーが再結集した。(映画.comより)
あの室井慎次が帰って来ました!これは言うまでもなくあの踊るレジェンド12年振りの新作としてでして、かつて踊るシリーズが好きだった僕としては何とも嬉しいニュースでした!
それにしても二部作で公開とはこの二重のサプライズでしたね!
それに合わせての地上波放送もありましたが、僕はスマホでTVerにてドラマをそしてU-NEXTから映画の全作(スピンオフ二作を除く)を試聴。
ただ、不安もありまして、THE MOVIEの3作目と4作目となる「THE FINAL」が当時劇場で見に行きましたが、何とも残念な出来だったんですよ。今回改めて見返しましたが、やはりというべきか二作目までの濃度の高い内容から一気に薄まってしまったのを改めて感じました。
そして一抹の不安と高い期待を胸に10月12日にMOVIX日吉津で鑑賞。公開直後の土曜日。たくさんの人で賑わっていましたね。
さて、ご存知の様に今作では織田裕二はクレジットされていません。あくまで室井さんの話しとなる為、主演は柳葉敏郎。しかも既に警察を離れていて郷里の秋田でスローライフを送っています。
なので室井さんのイメージとして誰もが描く黒のロングコートに険しい表情の室井さんではなく、長靴を履き、農作業に勤しむそして二人の子供と秋田犬と共に暮らす穏やかな姿が印象的です。
かつての室井さんではなく、今の室井さんは見かけも違うし、表情もかつての様な険しさは感じられません。
なので見ている内に柳葉敏郎主演の全く踊るとは関係ない映画を見ているのかと錯覚。何なら朝ドラ「ブギウギ」の福来スズ子の父親役のイメージに近いギバちゃんなのです。
で、そんな踊るシリーズである事を忘れそうになる良いタイミングでかつての同僚が現れたり、20年前のレインボーブリッジの話しに過去のシリーズからの懐かしいシーンが挿入される事で「お、そうだったこの人は室井さんだった」なんて思い出す、そんな繰り返しでした。
それにしても姿は変われど柳葉さんはかっこいいですね。古民家でいろりを囲み、子供達と鍋を囲む姿、秋田犬を撫でる姿、夜にはウイスキーを飲む姿。どれも様になります。
と穏やかな暮らしをする中に現れたのが「踊るTHE MOVIE」での小泉今日子による怪演でインパクトを与えた日向真奈美の娘である日向杏がやってきます。福本莉子が演じる杏ですが、彼女も彼女でシリアルキラーの血を引いてるとあって一見穏やかしかしその一方で見せるサイコパスっぷりが顔を覗かせるとなるほど確かに不気味だ。「ディア・ファミリー」では余命いくばくもない女性を演じていましたが、全くタイプの違うキャラクターです。また、彼女が紹介されるにあたって日向真奈美の「踊るTHE MOVIE」1作目の場面も映されましたが、僕は公開当時に映画館で見ていないのでスクリーンに映される彼女の姿に興奮しちゃいましたね。
また、二人の子供にまつわる背景も映されましたが、ここで久しぶりに黒のロングコートに身を包む場面があります。子供は「スーツ似合うね。」なんて言ってましたが、いやいやおじさん達は室井さんのこのスタイルにこそ馴染みがあるんだよ。
そしてところどころで事件に絡むシークエンスがありますが、その都度室井さんの表情に緊張感が走る。そう、往年のシリーズで見てきたあの表情に一瞬で変わるんですね。ああ、俺達の知ってる室井さんはまだまだ健在なんだと安堵感をおぼえます。
さて、この作品では田舎の閉鎖的な様子が映されます。室井さんの場合は東京の警察で出世コースを歩んだエリートではありますが、元々は柳葉さん同様に秋田の出身。なのでUターンなんですね。しかし、村人は完全に彼をよそ者として敬遠しています。矢本悠馬が演じる村の駐在は警察官だからこそ室井のキャリアに憧れ、リスペクトしているのですけどね。田舎ってこんなに陰湿なんだろうか、僕もUターンですけど幸いな事にここで描かれる様な冷遇は受けた事はないですけどね。これは東北地方だからこそなのかな?
でここで思ったのが、矢本悠馬が演じるこの警官がずっと標準語なんですよね。その土地に根差した駐在さんなら方言が出た方がよりリアルだと思うのは僕だけかな?
さて、今作は二部作の全編。ラストに出てきたスッキリ!なあの人の存在も気になるし、室井さんの戦闘服であるあのロングコートがあんな事に…そこから後編へと導入させていくという理想的な全編のラストでした。
これまで踊るシリーズ全く見ていなくても鑑賞に問題はないのかという点を最後にお伝えしておきます。
ストーリー自体は未見でも問題ない。全くの一見さんお断りというわけではありません。
しかし、ところどころで出てくる小ネタや「室井さんお久しぶりです!」と出てくるキャラクター等等は過去作を見ればより理解出来るし、深く作品を楽しむ事が出来ます。
ただ、ドラマも映画も…となると時間も労力もかかります。さらっと「THE MOVIE」の1作目と2作目抑えておけば十分でしょう。
洋梨のくだりとかかまたとかレインボーブリッジ封鎖云々はこの辺りで出てきます。
と一言アドバイスをお伝えして、まずは全編のレビューを終わります。
後編となる「室井慎次 生き続ける者」の公開を待ちましょう!