きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

映画ドラえもん のび太と空の理想郷

国民的アニメ「ドラえもん」の長編映画42作目。「リーガルハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなど数々のヒット作や、2023年放送の大河ドラマ「どうする家康」などで知られる人気脚本家の古沢良太が、映画「ドラえもん」の脚本を初めて手がけた。空に浮かぶ理想郷を舞台に、ドラえもんのび太たちが繰り広げる冒険を描く。
空に浮かぶ謎の三日月型の島を見つけたのび太は、ドラえもんたちと一緒にひみつ道具の飛行船「タイムツェッペリン」で、その島を目指して旅立つ。やがてたどり着いたその場所は、誰もがパーフェクトになれる夢のような楽園「パラダピア」だった。ドラえもんのび太たちは、そこで何もかも完璧なパーフェクトネコ型ロボットのソーニャと出会い、仲良くなる。しかし、その夢のような楽園には、大きな秘密が隠されていた。
パラダピアに暮らすパーフェクトネコ型ロボットのソーニャの声を、これが声優初挑戦となる「King & Prince」の永瀬廉が担当。そのほか、人気声優の井上麻里奈水瀬いのり、「南海キャンディーズ」の山里亮太、タレントの藤本美貴がゲスト出演。監督はテレビアニメ「ドラえもん」の演出を数多く手がける堂山卓見。(映画・comより)

ハイ、やってきました毎年恒例のドラえもん映画ですね。ドラえもんが公開されると春を実感するものです。

さて、毎年紹介しているドラえもん映画。今回のポイントは人気脚本家・古沢良太による脚本。「コンフィデンスマンJP」シリーズや「ミックス。」等映画でも数々の作品をヒットさせ、今年に入ってからは「レジェンド&バタフライ」が現在大ヒット中。大河ドラマ「どうする家康」も手掛けていたりと今最も脂ののった脚本家と言えるかもしれません。

そんな古沢良太ドラえもんがどんな化学反応を見せるのか?楽しみにして見て参りました。

3月9日の木曜日。エフエムいずもでの自分の担当番組終了後、T-JOY出雲のレイトショーで見て来ました。有難いのが土日の家族連れで賑わうシネコンにてオッさん一人のドラえもん映画の鑑賞はハードルが高いのですが、平日のレイトショー上映だとその辺りが全く気にならない。僕と同様に大人のドラえもん鑑賞に高いハードルを感じるそんな方々が数人。僕は彼らを勝手に同士だと思い、一緒に楽しんで参りました。

さて、これまでの古沢良太作品を知る人であれば作品を見る内に感じるであろう古沢良太節。

それは随所に盛り込まれたギャグ描写。最も映画ドラえもんにはこれまでもこういったユーモラスで笑いを誘うシーンはありましたが、今作ではそれがより顕著です。とは言えそこはドラえもん。「リーガルハイ」や「コンフィデンスマンJP」くらいギャグを推してくるとそれがくどくなってしまい、ともすればノイズになりかねないのですが、ドラえもんというアニメの特性への理解を示しながらも古沢良太風の描写を盛り込んでいたのが好感持てましたし、大人も子供も理解出来るソフトなギャグ描写となっていました。

また、このところのトレンドとなっているタイムリープという分かりやすいプロットと誰もが憧れる理想郷という世界への結びつき等も脚本としてきれいにまとまっていたと思います。

また、今作はリメイクではオリジナルという事で古沢さんのレトロ嗜好がツェッペリン号さながらの飛行船のデザインや19世紀のヨーロッパの街中を再現した様な飛行船内部の様式に現れていたと思います。

それから理想郷に住まう人々のパーフェクトっぷりからのび太達主要メンバーのそこでの変化がうまい振りとなり後のストーリーで活かされていました。

と、この様に実写畑の古沢良太脚本とドラえもんの相性は良かったと思います。

古沢良太さんがドラえもんへのリスペクトを込め、尚且つその世界観を崩さずに自身の個性をどの様に表すのかを追求したその答えを見させて頂いたというのが率直な印象です。

更には山場として理想郷でも成長出来ないのび太の姿を捉え、そこから風呂敷を広げていき本作のテーマへと導いていくストーリー運びもうまかったです。

そのテーマというのが個性の尊重ですね。もっともこういったテーマってそれこそ最近のディズニーでもよく見るし、新しいものではないかもしれません。だけどドラえもんというフィルターを使いながらうまく伝えていたし、子供達への教育的配慮もよく行き届いたものでした。

それは理想郷では誰もがパーフェクトになるんだけど、果たしてそれは人間にとっては果たして良しとするものなのかという点ですね。確かに誰もが非の打ちどころのない人間に憧れるし、そうありたいと努力をするかもしれない。一方、欠点とか弱点というのはその人にとってはマイナスなのかもしれないけど、でもそのマイナスだってその人をその人たらしめる個性なんだってメッセージなんですよね。

のび太ジャイアンスネ夫更にはしずかちゃんにだって欠点があるし、ドラえもんだってそう。だけどパーフェクトであれとその教育を行いその人の個性を潰す事は恐ろしい事ではないか?

誤解を恐れずに言いますが、今作での理想郷での教育方針や指導法って画一的で皆が優等生の様になる反面マインドコントロールにかかっているかの様な新興宗教のそれを思い出しましたもん。古沢さん、なんて残酷な描写を子供達に見せるんだと思う反面、こうした光景を写し出す事で人としてはある程度の猜疑心を抱く必要である事をしっかりと解いている様でもありました。

また、敵となるキャラクター。正直、ドラえもん映画の悪役ってこれまでにもかなり強烈な個性を持っていましたが、今作だとキャラとしての個性はやや弱目です。しかし、彼が何故闇落ちしていったのかのバックボーンはよく伝わりましたし、パーフェクトネコ型ロボットソーニャのバックボーンも共通したテーマが盛り込まれていました。ここでもやはり欠点と個性という点にクローズアップしてメッセージを突きつけていました。

クレヨンしんちゃん」の映画が大人への深いメッセージを投げかける様にドラえもんでもいよいよその傾向を強めてきたなと特に本作では感じました。

ただ、敵キャラのバックボーンから見る人の感情を刺激するという点ではやや弱かったなというのが個人的な感想としてはありまして、ここに関しては「鬼滅の刃」なんかはホントうまいですよね。

まぁ、古沢良太×ドラえもんという組み合わせは個人的には良く出来ていたなと思いますし、今後は「クレヨンしんちゃん」、「名探偵コナン」等他シリーズでも実現してもらえたらと思う所です。