きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

コンフィデンスマンJP

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長澤まさみ東出昌大小日向文世が共演した人気テレビドラマ「コンフィデンスマンJP」の劇場版。天才的な知能を持つが詰めの甘いダー子と、彼女に振り回されてばかりのお人よしなボクちゃん、百戦錬磨のベテラン詐欺師のリチャードの3人の信用詐欺師は、香港マフィアの女帝ラン・リウが持つと言われる伝説のパープルダイヤを狙い、香港へ飛ぶ。3人がランに取り入るべく様々な策を講じる中、天才詐欺師ジェシーも彼女を狙っていることが判明。さらに以前ダー子たちに騙された日本のヤクザ・赤星の影もちらつきはじめ、事態は予測不可能な方向へ展開していく。テレビドラマ版でおなじみのキャストが再結集するほか、ラン役を竹内結子ジェシー役を三浦春馬、赤星役を江口洋介がそれぞれ演じる。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなどの脚本家・古沢良太がテレビドラマ版に引き続き脚本を担当。
(映画.comより)

人気ドラマの劇場版という事だとまず、ドラマを見た上で見るというのが前提としてあるでしょう。
まぁ、過去にも数々のヒットドラマが映画化され、その都度僕はひと通りドラマをDVDなりでチェックしてから劇場へ足を運んでいました。
記憶に新しいところだと昨年夏の『コードブルー』ですね。
実はワタクシ、その『コードブルー』。ドラマで放映されていた当時は全くの末見。
08年のシーズン1~2017年のシーズン3まで、間のスペシャル版も含めて二ヶ月がかりで見てから劇場へ行ったものです。

ところが今回はそんな予習は一切せず、飛び込みで鑑賞。
結果的にそれが良い方向に動いた事については後述致します。

予備知識のないところから鑑賞して果たしてどの様に心は動いたのでしょうか。
今週もいってみよう!

古沢良太脚本のものだと個人的に好きなのが『ミックス』です。
あの作品は男女混合の卓球競技ミックスを題材にしていつつ、実は人間の内面をうまくフォーカスしていました。
それは不器用な人間だからこそその不器用さを愛せよという点。
一見、ネガティブに思いがちな部分だけどそれも個性と認め、そしてより自分の内面を見つつ自分自身を好きになろう。
そんな 前向きさに溢れていた作品だと思います。

そして『コンフィデンスマンJP』にもそういった面があり、ドラマ版での第9話「スポーツ編」なんかはまさに『ミックス』イズムに溢れた話しだなと思います。(ちなみに本劇場版鑑賞後にドラマを見る)
そしてこの劇場版なんかで言えばまさにラン・リウ(竹内結子)なんかはそうでしたね。
一見、香港マフィアの女帝として君臨する裏社会のカリスマ然としつつ、彼女の生い立ちが明かされる辺りで彼女の真の姿が暴かれていく。
そして彼女もまた一人の女性であるというのが三浦春馬演じるジェシーとのロマンスであらわされていく。
いや、そもそもドラマ版最終回でのダー子、ボクちゃん、リチャードの生い立ちだってあれが真実であるならばかなり陰を背負いながらのコンフィデンスマン稼業となるではないか。

それからこの劇場版は「ロマンス編」とあるが、実はめっちゃロマンスロマンスしてるわけではないです。
確かに冒頭でのダー子と元カレとされるジェシーがベッドでいちゃつき、枕の羽が飛散するという一体いつの時代の映画だよ?とこっぱずかしくなるシーンには面食らいますが、それでも恋愛映画にはおとしこまない。
何故ならこれは詐欺師が主人公であり、時に恋愛すら欺瞞に満ちているというある種の皮肉めいたものも織り混ぜているから。
奇しくも長澤まさみさんが出ていた『50回目のファーストキス』という映画がありました。 
僕はあの映画を福田雄一流の恋愛スイーツ映画をギャグに転化させる事によって恋愛映画をたっぷり皮肉ったという点を大絶賛しました。(詳しくは過去のブログ記事を)
この『コンフィデンスマンJP』の場合、ロマンスを欺瞞にねじ込み、その心理的駆け引きすら華麗に弄ぶ一流の妙技だなと感じました。

また、『コンフィデンスマンJP』を見て感じたのは正義という概念の脆弱性ですね。
先日評した『アベンジャーズ エンドゲーム』では正義の概念について中東やはたまた20世紀前半の日本とアメリカの関係に触れながら解説しました。
その結果、正義という概念そのものが双方の理念とかイデオロギーを正義という言葉に置き換えてるだけであり、正義という言葉自体実態がないのでは?と話しましたね。
この『コンフィデンスマンJP』で言えば欺瞞が欺瞞を塗り替える騙し騙され合いの世界を描いているだけあって、正義という概念すら生まれないのです。
ダー子ら三人の目線が軸になり、騙すターゲットもひと癖もふた癖もある連中ばかりだからどうしてもダー子らに目が行きがちですが、そもそもこの人達詐欺師ですからね(笑)

その意味では海賊が主人公の『ONE PIECE』、泥棒が主人公の『ルパン』なんかを思い出しましたが、この場合、敵は海軍であったり警察であったりと本来の善悪論から逆転するというケースなので『コンフィデンスマンJP』とはまた違うかな?

で、僕がこの『コンフィデンスマンJP』で最も楽しめたのは後半のどんでん返し展開かな?
騙し騙されの応酬が作中で繰り返されるのですが、これは登場人物だけの話しではないんですよね?
これはドラマから見ている人にはお馴染みでこれを楽しみに見てる人が多いんだろうけど、何より騙されるのは見ているこちら側なんですよ。
僕が好きな映画で『イニシエーション・ラブ』(2015)という作品がありますし、記憶に新しい『カメラを止めるな』なんかもそうでしたが、見事なまでのスリリングな伏線回収劇。
この映画はボ~っと見ていてはいけません。
何なら答え合わせをする為に二回見に行ってもいいくらいです。
伏線を伏線と気付かせないサラッとした演出、そして畳み掛ける様な伏線回収は見応えありました。

そしてこの映画はエンドロールが終わってからもお楽しみがあります。
くれぐれもエンドロール中に席を立たない様に。

ドラマ末見で見たけどかえって楽しめたと思います。
ストーリーは初見でも十分理解出来ますし、かえってハードルが上がり過ぎず、適度な塩梅で見る事が出来ます。
そしてドラマを見ていたという人はドラマ版で登場したキャストが随所随所に登場するのでそれを見つけると「おっ!」てなるんじゃないですか。

劇場版で『コンフィデンスマンJP』にハマったワタクシ、その後はしかとドラマもチェックしましたよ。

いわゆるコアな映画ファンからは敬遠されるドラマ映画でしたが、個人的には満足度高めです!