きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)2021

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国民的アニメ「ドラえもん」の長編映画41作目。1985年に公開されたシリーズ6作目「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」のリメイク。夏休みのある日、のび太が拾った小さなロケットの中から、手のひらサイズの宇宙人パピが現れる。パピは、宇宙の彼方の小さな星、ピリカ星の大統領で、反乱軍から逃れて地球にやってきたという。スモールライトで自分たちも小さくなり、パピと一緒に時間を過ごすのび太ドラえもんたち。しかし、パピを追って地球にやってきた宇宙戦艦が、パピを捕らえるためのび太たちにも攻撃を仕掛けてくる。責任を感じたパピは、ひとり反乱軍に立ち向かおうとするが……。監督は「ケロロ軍曹」劇場版シリーズなどを手がけ、「映画ドラえもん のび太の月面探査記」では演出を担当した山口晋。脚本に「さよなら、ティラノ」「サイダーのように言葉が湧き上がる」「交響詩篇エウレカセブン」などアニメ作品を多数手がける佐藤大。(映画・comより)

『映画ドラえもん』が春休みに帰って来ました!というのも2020年はコロナ禍にて通常3月公開が公開延期。結果、『のび太の新恐竜』は異例の8月公開となり、更には昨年も3月に緊急事態宣言と重なり、結果一年の延期そしてようやくこの3月5日に封切りとあいなりました。なので『ドラえもん』が春休み映画として公開されるのは2019年の『のび太の月面探査記』以来、3年振りとなるわけです。髭男の『Universe』も遂に『ドラえもん』映画の主題歌としての役割を果たす時が来ましたね!

で、一年の延期を受けての本作は1985年に公開された『のび太の宇宙小戦争』のリメイク。それに合わせるかの様にアマゾンプライムビデオで過去40作のドラえもん映画が配信となったのでまずは大山のぶ代時代のオリジナル更には子供の頃に読んでた『大長編ドラえもん』にも目を通した上、リメイク版を鑑賞しました。

平日のMOVIX日吉津。春休みが始まる前の3月7日に鑑賞しましたが、割と大人単独のお客さんも居ましたよ。

水田わさびドラえもんに代わり、これまでリメイク版とオリジナル脚本がバランスよく公開されてきました。リメイク版で言えば80年代のドラえもん映画初期作を中心に手掛けられてきました。オリジナル版を下敷きとしてその都度現代的な形でブラッシュアップされ、子供のみならず大人達のハートもキャッチしてきました。

そして本作はこれまでのリメイク版の頂点に達したかの如く映画としてのクオリティが高まっていたのが僕の印象としてはあります。というのが白熱するバトルシーン等がSFアニメとしての精度の高さを誇示するかの様なスケールでした!小さな惑星を舞台に繰り広げるスペイシーな世界観は決して子供向けであると侮ってはいけない完成度。『ガンダム』等で育った男の子的ハートをこの上なくキャッチしたものだったのではないでしょうか。

また、オリジナルと比べると改変ポイントがこれまで以上に多かったのが僕の印象。例えばスネ夫の自宅の庭で作るジオラマセットにはドラえもんも参加してるし、オリジナルでは後から加入する出来杉君が初めから参加している。オリジナルではジャイアンスネ夫から除け者にされたのび太ドラえもんに泣きついて秘密道具を使ったジオラマを作成、その際静香ちゃんを誘うのだが、のび太の目指すべき作品と全く異なり、意見の違いに翻弄されるなんてシーンもありましたが、そちらもなく更にはウサギのぬいぐるみにまたがってスネ夫組の撮影に写り込むパピというくだりもなかった更にはこれは時代の違いを最も表すものとして静香ちゃんの入浴シーンの生々しさでしょうかね。牛乳風呂の下りはありましたけどね(笑)更には一人のレジスタンスがギターを取り出し、武田鉄矢の名曲『少年期』を歌うのもなかったです。また、オリジナルには居なかったパピの姉も登場するしロコロコの饒舌多弁振りはオリジナルには劣ってしまう。

そういう点で言えばオリジナルに思い入れの強い人だと不満を漏らす人が多いのも事実でしょうか。特に『少年期』に関してはわからなくもないですね。

ただ、これらの改変点に関して言えば現代的な解釈で全く異なる『小宇宙戦争』像を作りたいという制作側の心意気を感じますし、何なら『少年期』が別の挿入歌になる辺りだって全くタイプの違うアーティストを起用するのではなく、武田鉄矢さんのイメージを崩し過ぎない程度のフォーキーな人選、ビリーバンバンにしていたのは案外悪くなかったという印象です。

さて、この作品。注目して頂きたいのがスネ夫の存在なんですよね。ひょんな事から巻き込まれた宇宙戦争において彼は他のメンバーと明らかに違う心情を吐露し、遂には置かれた局面から逃げ出すシーンがあります。でもこれってスネ夫が臆病なわけじゃなくて人間としていや、10歳の子供として当たり前なんですよね。秘密道具を駆使するドラえもん、普段はパッとしないけどいざと言う時には勇気を持って立ち向かうのび太、粗暴なイメージはあるけど仲間想いで熱い男のジャイアン、女子力高いのにアクティブに戦う静香ちゃんと比べるとスネ夫は至ってノーマルな思考を持った少年なんです。だからこそ戦争なんて怖いに決まってるし、逃げ出すのは当然。この辺り見ると『ONE PIECE』のウソップとキャラ的な位置付けが近いんですよね。そんなスネ夫の姿は自分と重ね合わせて応援したくなります。

それから本作は皮肉な事に世界的な激変を迎える今の状況にリアルな内容。それはロシアのウクライナ侵攻にそれなんですよね。ピリカ星で起こっている独裁者の侵略に連日ニュースで報道される情景が重なってしまうのは無理のない話しです。あくまで西側諸国の視点による戦争の捉え方ではあるものの、独裁者を倒すもの。それは民が団結し、行動を起こす事。ドラえもん達は彼らの為にきっかけを作る役割を果たします。現実の世界でも戦争は絶対にあってはならないと私も思いますし、この映画の様に勧善懲悪を理想的な形で実現させるには難しい問題もある事はわかっています。決してプロパガンダ的映画なのではありませんが、奇しくもこのタイミングで本作の公開が重なってしまった事は多くの人が本作を目に止め、意識を高めた上で行動を起こしていく契機になれば、なんて事を思いました。

恐らく本作公開が今回の世界的有事と重ならなければこの様な捉え方はしなかったかもしれませんが、今の状況と本作の内容があまりにもリンクしていると感じた所です。

親子で見て戦争について話し合うのも勿論、大人一人での鑑賞もきっと刺さるものがあるかと思います。

是非ご覧下さい!