電撃小説大賞を受賞した佐野徹夜の同名デビュー小説を永野芽郁と北村匠海の主演、「君の膵臓をたべたい」の月川翔監督のメガホンで映画化。高校生の岡田卓也が出会った同級生の渡良瀬まみずは、不治の病である発光病で入院生活を送っていた。細胞の異常によって皮膚が発光するその病気は、死が近づくにつれて光が強くなり、成人するまで生存した者はいない。卓也は、病院から外出が許されないまみずに代わり、彼女の願いを実行し、その感想を彼女に伝える「代行体験」を始め、まみずは卓也との代行体験を通し、人生の楽しみを覚える。次第に2人の距離は縮まっていくが、卓也とまみずは避けることができない死の恐怖に襲われる。まみず役を永野、卓也役を北村がそれぞれ演じる。
(映画.comより)
いわゆる悲恋モノと呼ばれるジャンル。
余命いくばくのない美女。
それによりそい健気に献身する男性という構図。
こと2000年代以降出てきては消え、出てきては消えしてきた分野の映画ですが、映画好きな人程このテの作品には辛口になる傾向があります。
ま、わからなくもない。
人の不幸を作品に盛り込み、如何にも泣ける映画ですよ~というキャッチコピーと泣きアピールの予告編で旬の若手俳優を起用し、全国の女子中高生を集めて手堅く興収10億円も稼げばOKなわけですもんね。
なんて冒頭からこの映画をディスる様な事を言いましたが、僕は否定するつもりはありません。
それがビジネスなんですから。
いや、そんな高尚な話しではなく要は内容がしっかりしていれば、なんですよ。
そういう意味では『君の膵臓をたべたい』という作品は良かった。
あの映画は病に冒された薄幸な女子高生を主人公に据えながらも決して重くさせ過ぎず、適度な塩梅での闘病生活を描き、そして死そのものをクローズアップさせるのではなく、その後の展開に力を入れ、そこから怒涛の涙腺崩壊モードへ持ち込んでいきました。
あの流れは素晴らしかったし、作品を作り出していく上でのカメラワークや全体の配色のバランス等どれを取っても素晴らしかった。
何より浜辺美波ちゃんをあそこまで魅力的に写し出し、この作品のヒロインとして申し分ない存在感を見ている人達に植え付けました。
作品全体が纏まってて良質な作品だったので女子中・高生のみならずあらゆる年齢層の心の琴線に触れ、それが35億円という興業成績に繋がったのだと思います。
と、このままだと『キミスイ』の短評になりそうなので、その『キミスイ』を大ヒットさせた月川翔監督最新作『君は月夜に光り輝く』についてお話しさせて頂きます。
実はこの映画を見るまでは不安もあったのです。
『キミスイ』ヒット以降、若年層へ向けた映画を次々と製作してきた月川監督ですが、なかなか『キミスイ』に匹敵する様な名作が誕生していません。
そして、ここにきて明らかに第二の『キミスイ』を狙った様な予告。
ただの二番煎じになりやしないか、劣化版『君の膵臓をたべたい』にならないか。
そんな不安ですね。
ヒロイン・渡良瀬まみずを演じるのは永野芽郁。
数々のヒット映画に出て、昨年は朝ドラ『半分、青い』のヒロインとなりその知名度も今や国民的。
朝ドラ後、初の大作映画出演です。
一方、岡田卓也役は北村匠海。
今年は『十二人の死にたい子供たち』でも存在感を放ち、何より月川監督作品だと件の『君の膵臓をたべたい』ですね。
彼にとっての出世作となったのは改めて語るまでもないでしょう。
この映画を見る上でのポイントを言うなら本来の余命を過ぎた病人なのに血色の良い永野芽郁ちゃんのわがままを許せるかどうかでかなり楽しみ方が変わっていくでしょう。
と、言うのがまみずと卓也はクラスメートとは言え、元々は接点のなかった二人。
それが何の因果か卓也がクラスメートが書いた寄せ書きを持っていく所からストーリーが始まっていきます。
余命僅かなまみずがやりたかった事を卓也に代行してもらうというのですが、何かこれに近い病弱な女性が無茶ぶりとも思えるお願いをするという展開最近見たなと思ったら『雪の華』なんかはそれに近かったですね。
あれは余命僅かなのに恋愛経験が全くない女性が男性に疑似恋愛を頼んでましたけどね。
また話が反れましたが、まみずが卓也にお願いする代行というのがもはや罰ゲームそのものなんですよね。
一人で遊園地に行かせたり、カフェで男子が頼むには憚れるパフェを頼ませたり、メイドカフェでメイドとして働かせて下さいと面接に行かせたり。
北村匠海くんがイケメンだからいいけどこれ、ブサメンがやってたらヤバいよね(笑)
しまいにはバンジージャンプさせるのが可愛く思えてくる。
それでも卓也は応じるわけですよ。
はい、そういう設定なんですが、大丈夫ですか?
人によってはぶちギレてもおかしくないシチュエーションですよww
ちなみにこれまでを見た私の感想「何じゃ、こりゃ?」でした(笑)
まみずの両親は離婚しているのですが、父親に会いに行って離婚した理由を聞いてくる依頼もありましたね。
ほんで、実際に及川光博演じる父親に会い、聞きに行くのですが、ベラベラ喋ってくれるんですよ、ミッチーが。
フツー、娘のクラスメートだか何だか知らないが、見ず知らずの高校生がフラフラやってきて、「離婚した理由を教えて下さい。」なんて言われたら「キミには関係ないだろ」て話しですよ。
そんな感じでとにかく突っ込みどころ満載でご都合主義モリモリなんですが、後半は良かったですよ。
これまた引き合いに出すけども『キミスイ』がそうだった様にゴリゴリの死にますよ~ハイ、泣いて下さいなんて感動の押し売りは決してしない。
サラッとしてるんだわ。
それでいてしっかり感情に訴えかけてくる様な作りをちゃんと見せてくれる。
そこは「キミスイ」クオリティがちゃんと継承されていて良かったですね。
前半で見せた「おいおい、それはねぇだろ」なんて事も忘れさせてくれる。
終わりよければ全て良し、ですな。
とにかく突っ込むところも多々ありますが、帰結点が満足度高めな作品でしたね。