きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ダンボ

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1941年製作のディズニー・アニメの古典的名作「ダンボ」を、「チャーリーとチョコレート工場」「アリス・イン・ワンダーランド」のティム・バートン監督のメガホンで実写化したファンタジーアドベンチャー。サーカス団に飼われ、大きな耳を使って空を飛ぶことができる小さなゾウの子ども「ダンボ」が、引き離された母親を助けるため、サーカス団の家族の力を借りて新たな一歩を踏み出す姿を描いた。出演は、サーカス団の元看板スターでダンボの世話係を任されるホルト役にコリン・ファレル、サーカス団の空中ブランコのスター、コレット役に「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」など近年のバートン作品に欠かせない存在となっているエバ・グリーン、ダンボを使って金儲けを企む企業家ヴァンデバー役に「スパイダーマン ホームカミング」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のマイケル・キートン
(映画.comより)

2月に公開された『メリーポピンズ リターンズ』に続き、ディズニーの古典的作品のリメイクで、オリジナルは1941年製作。
日本での公開は1954年。
ここまで古いとオリジナルを知らない人も多いでしょう。
ハイ、私も知りません。
しかし、パッケージ化はされてるのでビデオだDVD だでおうちで見たという人も居るかと思いますが、オリジナルはアニメーションです。

それを時を経て、実写でリメイク。
メガホンを取るのは奇才、ティム・バートンとあり期待が高まります。
チャーリーとチョコレート工場』、『アリス・イン・ワンダーランド』等々数々のヒット作を世に生み出したティム・バートンですが、好みがはっきりと別れる監督でしょう。
個人的には大好きです。
彼の作品の特徴なんですが、一見ポップで華やかなファンタジーなんだけどその実、毒気たっぷりで登場人物にも闇がある。

それって監督自身が幼少期から変わり者扱いされ、そんな自分の生い立ちが作品に反映されているとか?
前作『ミスペレグリンと奇妙なこどもたち』なんかでも思いましたが、阻害されるマイノリティなキャラクターの存在意義を見出だしていくそんな作風に魅かれるのは僕もまた変子扱いされて育ってきた故の共感性なのでしょうか。

そんなティム・バートン監督最新作『ダンボ』。
どんな作品だったのでしょうか。
今週もいってみよー!

時代は1919年。
活気溢れる駅に到着する蒸気機関車
ここには第一次世界大戦に服役していた本作の主人公であるコリン・ファレル演じるサーカスの人気団員・ホルトが居ます。
駅に降り立つホルトは彼の二人の子供に迎え入れられますが、子供達は大きなショックを受けます。
コリンは戦争により、左手を無くしてしまっていたのです。
まず、この冒頭シーンでは機関車の運転席から見た景色が印象に残りました。
レールの上を走る機関車。
躍動感ある光景でこれから始まる物語への期待感を煽ってくれるかの様。
それだけに父親の変わり果てた姿を見た子供たちとの対比が効果的に生まれてくる様。

そして本作の主な舞台となるサーカスの色彩なんかを見るとまさにティム・バートンワールドそのもの。
娯楽の少ない20世紀前半。
人々にとっての究極のエンターテイメントはサーカスであり、そのサーカスのステージはきらびやか。
だけど、その一方では醜い容姿の小像・ダンボはサーカスで曲芸が出来ず、人間達からは嘲笑され、罵倒を浴び、物を投げられる。
華やかさの中での悲哀を生み、そして人間達の醜さをまざまざと生み出す。
そしてジャンボジュニアがダンボと命名されるきっかけなんかを皮肉とユーモアを交えて写し出していくあたりティム・バートンの仕事らしさを感じさせてくれました。
そしてCGのダンボがまた、何とも愛らしいというかいじらしいというか。
失敗して人間達から罵倒を浴びせられている時の表情や母親像が売られていくシーンでの表情は身につまされます。
この映画を見ている子供達が悲しがるんだろうなぁと思いますよ。

で、サーカス団が舞台なのですが、この団員達もまた、個性の強い面々ばかり。
実生活では肩身の狭い思いをする彼らにとって最大限の魅力を発揮する場所がサーカス。
曲芸が出来なかったダンボだって腕を無くし、妻にも先立たれ、子供達とも心の距離があるホルトだってそう。
なんて見方してたら『グレイテスト・ショーマン』を思い出しましたね。
ただ、ダンボやホルトが中心になってしまう為、各々の魅力がうまく引き出せていなかったのは少々残念。
「THIS IS ME 」的価値観を彼らにも反映させてほしかったなんて言ったら欲張り過ぎなのでしょうか。

ダンボが光り輝く時と言えばやはり空を飛ぶ時となるのでしょうか。
ただ、元来のろまな亀(像だけど・笑)が空を飛ぶまでって意外と早いんですよね。
本作がダンボを取り巻く人間達を中心にしてるという点があるのでそうせざるを得なかったんでしょうけど。

で、その人間達というのがどいつもこいつも一癖二癖ある様な連中なんですよ。
ダンボを利用して儲けてやろうというのがわらわらと出てくるわけですからね。
その中での良心と言えるのが、ホルトとその二人の子供という事になります。

ダンボに目をつけ、サーカス団を乗っ取ろうと企む実業家が現れ、団員達の人員整理をするシーンなんかは現代社会の縮図と言いましょうか世間を賑わせたあの会社が脳裏によぎっちゃいました。
でも、綺麗な勧善懲悪でラストはなかなか胸のすく展開。
かなりシャレの効いたオチもありましたね。
で、そんな拝金主義の実業家ヴァンデヴァーをマイケル・キートンが担当しているのですが、彼と行動を共にしていたフランス生まれの空中ブランコ乗り・コレット
『ミスペレグリン』に続いてのバートン作品登場のエヴァ・グリーンが演じているのですが、僕ははじめ、彼女は善と悪で分ければ悪側の人だと思ってました。
ヴァンデヴァーと同行しているし、無愛想でしたしね。
ところが子供達の母親代わりになるかの様な慈愛に満ちたキャラクター。
良かったのはボルトと恋愛へ発展させなかった事。
その要素が加わると一気に作品の深みが薄れていきますね。

後、良かったのはダンボが悲痛な声を挙げたかと思いきや、猛獣の雄叫びと画面が変わり、続けざまに母親像・ジャンボの声に。
これはジャンボが売り払われたドリームランドの光景へと導かれていくのですが、後半の展開へ持っていくにはかなり効果的な演出だったと思います。


ダンボはジャンボを救出出きるのか?
そこは是非劇場でチェックして頂くとして、個人的にはかなり楽しめました!
欲を言えば、ティム・バートン特有の毒っ気が少し足りないかな?てところです。
ともあれ、ピュアな心を持った子供達、そして自分へ自信が持てないそんな大人達にもオススメしたい作品です。

是非、劇場でご覧下さい!