きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

今夜、ロマンス劇場で

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綾瀬はるかと坂口健太郎が共演し、モノクロ映画の中のヒロインと現実世界の青年が織りなす切ない恋の行方を描いたファンタジックなラブストーリー。映画監督を目指す青年・健司はモノクロ映画のヒロインである美雪に心を奪われ、スクリーンの中の彼女に会うために映画館に通い続けていた。そんなある日、美雪が実体となって健司の前に現われる。モノクロ姿のままの彼女をカラフルな現実世界に案内するうち、健司と美雪は少しずつ惹かれ合っていく。しかし美雪には、人のぬくもりに触れると消えてしまうという秘密があった。「のだめカンタービレ」シリーズの武内英樹がメガホンをとり、「信長協奏曲」の宇山佳佑が脚本を担当。
(映画・com より)


正直、今ワタシはこの映画に熱烈的に感動しています!
『8年越しの花嫁』では涙が露程も落ちなかったというのに涙腺という名のダムから涙が大量に放水しました(笑)
というのも私が映画が好きだからこそこの映画が琴線に触れたのでしょうね。

本作鑑賞前の私自身の期待値はかなり低かったです。
綾瀬はるかが悪いわけではないですが、これまで綾瀬はるか主演映画ではかなり苦い思いをしてきましたからね。
ひみつのアッコちゃん』、『高台家の人々』など綾瀬爆弾によって粉砕されてしまった作品は枚挙にいとまがありません。
フジテレビ×綾瀬はるかといえば昨年はじめの『本能寺ホテル』があります。駄作ではないですが、人に勧めたくなる様な名作かといえばそうでもないですしね。
しかし、東宝→ワーナーへ配給会社を変えて挑んだ本作は私の予想の遥か上をいく素晴らしい作品でした!

恋愛映画には悲恋モノというカテゴリーがあります。
昨年公開された『昼顔』とか『ナラタージュ』の様な禁断の愛に待ち受ける悲劇もあれば死別する事によって生まれる悲恋などがあります。
また、最近では『ぼくは明日、昨日の君とデートする』に見られるファンタジー色を伴った作品も特徴的で本作も系統的にはファンタジー路線の悲恋モノと言えるでしょう。

さて、本作を鑑賞した上でまず感じたのは山崎貴作品を思わせる背景や手法が印象的でした。

本作の時代設定は昭和35年
ちょうど『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズと一致する時代とあってセットも昭和ノスタルジーを感じさせます。
とりわけ映画の撮影現場が舞台となってるだけあって京都の映画村の様なはたまた『蒲田行進曲』を思わせる様な作り込んだセットの数々にはとにかく目を奪われます。
また、周辺を通りすぎるエキストラの人々の衣装などもモダンで「色」を全面に押し出した作品らしく色彩豊かで視覚的にも楽しませてくれます。

そしてストーリーの展開の仕方として現代と当該の時代を結ぶ為に加藤剛演じるある老人が病室で石橋杏奈演じる看護師に当時の回想録を聞かせます。
この老人こそが本作の主人公・健司その人なのですが、最近では『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』でも見られた手法を取り入れています。
そしてこの現代から過去を回顧する手法。真っ先に浮かんだのは『永遠の0』でした。

続いて印象的だったのは綾瀬はるか演じるお姫様が登場した映画の扱い方でした。
全編モノクロで展開される旧き良き時代のコミカルタッチな映画。
当初は人々を楽しませてきたこの映画。
決して映画史に残る名作などではなく現代風に言えばB級映画として扱われる知る人ぞ知るマイナー作品でした。
やがて映写室の倉庫に眠り時が過ぎていきます。
その間に太平洋戦争を伝えるニュース音声が流れ、終戦~戦後~皇太子殿下ご成婚のニュースと時代の変遷を音声のみで伝えます。
そこからこの映画が1930年代~1940年代初頭に作られたものと予測させる演出は見事だなと感じました。

そして何と言ってもキャスト陣の見事な演技。
まず、綾瀬はるかの高飛車なお姫様。
綾瀬はるかといえば天然の不思議ちゃんなキャラがハマり役でこれまでもそんな彼女の魅力が存分に生かされる作品はありました。
しかし、本作ではお高く止まったお姫様。
高飛車なのに可愛らしい。
これまでと違うイメージですが、それが見事にぴったりで彼女の新境地を見た様な印象です。
本来の彼女が得意とするアクションシーンも見られます。

また、坂口健太郎といえば少し前ならスウィーツ映画の常連の様なイメージでしたが、より演技の引き出しを増やしたかの様な本作での役どころ。
奥手で純粋な映画の助監督を好演していました。
北村一輝演じる銀幕のスターが見事にコメディリリーフとして存在感を発揮。
華やかなスターなのにどこかマヌケでおいしい役どころ。
とりわけ歌舞伎スタイルで車を運転する姿のシュールさには吹いちゃいました(笑)

そんな笑いどころもきっちり押さえた本作最大の見せ場と言えば実在する人間と銀幕から表れた別次元の存在との間に立ちはだかる障害です。
好きなのに触れる事も出来ない二人。
超えたくても超えれない壁があるのです。
しかし、そのハードルを超えてしまったら最後、二人に待ち受けるのは永遠の別れなのです。
それが故に見ていてあまりにも切ないしやるせない気持ちになる。
ただただ胸が締め付けられ涙が止まりませんでした。

さて、本作は映画のヒロインに恋し続けた一人の青年の物語です。
自分の住む現実世界には彼に想いを寄せる女性だって居るのに(本田翼ちゃんの事です。)それでも尚、映画に登場するお姫様を一途に愛し続けるのです。
二次元のアニメキャラに萌えるオタクくんと本質的には何も変わりませんし、童貞のまま歳を重ねた男の悲話でもあります。
或いは本作に登場したお姫様そのものが彼の妄想だったのかもしれません。

しかし、そこに気持ち悪さはなく清々しいまでのピュアさに胸を打たれます。
前述の『ぼくは明日、昨日の君とデートする』にも似た青臭さ言い変えれば中二病的なものが瑞々しく見えるのかもしれません。
そういえば『君の名は。』もそうでしたね。
大人になり純粋さを失ってしまった人にこそ訴えかけるものがこの作品にはあります。
オススメです!(今年一番かも?)