きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

映画ドラえもん のび太の月面探査記

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国民的アニメ「ドラえもん」の長編劇場版シリーズ39作目。直木賞受賞作「鍵のない夢を見る」、ドラえもんひみつ道具を各章のタイトルに起用した「凍りのくじら」などで知られる人気作家の辻村深月が、映画脚本に初挑戦し、月面を舞台にドラえもんのび太たちの冒険を描いた。月面探査機がとらえた白い影がニュースとなり、それを「月のウサギだ」と主張したのび太は、周囲から笑われてしまう。そこで、ドラえもんひみつ道具「異説クラブメンバーズバッジ」を使い、月の裏側にウサギ王国を作ることにしたのび太。そんなある日、不思議な転校生の少年ルカが現れ、のび太たちと一緒にウサギ王国に行くことになるのだが……。監督は「映画ドラえもん」シリーズを手がけるのは3作目となる八鍬新之介。ゲスト声優に広瀬アリス柳楽優弥吉田鋼太郎ら。
(映画.comより)

毎年恒例・春の『ドラえもん』映画おひとり様鑑賞~!!
でもね、去年も書いたけど以前に比べて増えてきましたよ、大人お一人客。
というのも年々洗練されてきてるなと思うんですよ、内容が。
興行収入もここ数年右肩上がりを続け、去年の『のび太の宝島』は遂に興収50億円を突破しましたからね。
年間ベストテンの常連としてすっかり定着した感があります。
ただ、個人的な不満としてはありとあらゆる媒体での映画レビューなんかを見るのですが、「もっとみんなドラえもん語ろ」って思っちゃうんですよ。
ジブリやディズニー、イルミネーションなんかはがっつり語られるのに、ですよ。

そこが所詮子供向けという評価なんでしょうね。

ならば、というわけではワタクシが語らせて頂きます。
去年の『のび太の宝島』については私は川村元気脚本による冒険モノがわくわくさせ、大人も楽しませてくれる作品。
それでいてともすれば人間の誰もが持ち得る行き過ぎた暴走への警鐘も込めた作品であると評しました。

海洋アドベンチャーであった前作に対し、今作はSFベースで、普遍的なテーマを打ち出していく。
今作の主題として、まずは想像力の偉大さについて。
月にはウサギが居て、餅つきをしている。

子供の頃に聞いた夢のある創作話ですね。
でも、そこから想像していけばその可能性は無限大に広がっていく。
それを具現化したのが本作の世界です。
実際、ドラえもんも想像力の素晴らしさを訴えるシーンが登場してきます。

そしてもうひとつは友情です。
「勇気・友情・努力」という某少年漫画雑誌を思い出す様なフレーズが頭に浮かんできますが、友情の形だって色々あります。
その友情という普遍的なテーマに踏み込んで作中ではその在り方を示していく。
当然、対象は子供ですから見ている少年・少女達へのメッセージとしてドラえもんのび太らが展開するストーリーの中で見せていきます。


春休みに子供達に是非見てもらいたい様な教育的視点からも非常に推薦したい作品です。


しかし、ここからはあくまで個人的な意見です。
オッサン一人客の愚痴として捕らえて頂ければ幸いですが、実を言うと去年の『のび太の宝島』に比べると物足りないという感が否めなかったです。
もう少し言えば『宝島』が万人向けの作品であったのに対し、『月面探査記』は好き嫌いがはっきり別れるかなと感じました。
『宝島』は終始飽きさせない作り、更にテンポも良かったし、伏線の張り方からの帰着点も非常に良かった。
クイズ鳥の存在もユニークだったし、敵キャラの持つ悲哀そこから見ている人へ投げ掛けるメッセージ性もストレートに刺さるものでした。
しかし、この『月面探査記』に関して言えばまずは既視感たっぷりで過去の良作の良い所を繋いでいるだけの様に感じて少々疲れてしまったというのが本音です。
いや、確かに悪くはないんだけど、去年の様なワクワク感に欠けるかなぁ。
更に言えば今作は静と動の差が悪い方に際立ってしまった感が否めないです。
良く言えばメリハリがついてる。
悪く言えば面白い所とつまらない点の落差が大きい。
ま、そんな所も好き嫌いが別れる所以でもありますな。
それからこれも好みの問題かと思いますが、主題歌について。
去年の星野源の『ドラえもん』はあのキャッチーさが作品とも見事にマッチしていて、新たなドラえもんアンセムが生まれた感がありましたが、今年の主題歌。
いや、平井大さんの『THE GIFT』は良い曲だとは思いますが、去年の様なインパクトに欠けるかなぁ。
強調して言いますが、曲は良いですよ。

なんて事を書き連ねていてある事に気付きました。
もしや、これはスルメタイプかな?と。
音楽でもあるでしょ。
アルバムを一回聴いただけでは魅力に気づけないけど、何度か聴く内にしっくり来るという。
つまり、今年の『ドラえもん』。
二度・三度と見て新たな発見を見つけ出すうちに段々良く思えてくる作品なのかなと。
なので余裕があれば何度か見た方が良いのかもしれませんね。


以上、長年『ドラえもん』映画を見続けたオッサンの雑記でした。
それ故の厳しい見方だったと思います。


しかし、改めてお伝えします。
お子さんが見る上では何の問題もありません。
きっと楽しんで見る事でしょうし、むしろ見て欲しい春休み作品です。

是非、お子さんを連れて劇場でご鑑賞して下さい。

キャプテンマーベル

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マーベルコミックが生んだヒーローが結集する「アベンジャーズ」シリーズに連なる「マーベル・シネマティック・ユニバースMCU)」の一作で、MCUでは始めて女性ヒーローが単独で主役となったアクションエンタテインメント。アベンジャーズ結成以前の1990年代を舞台に、過去の記憶を失った女性ヒーロー、キャプテン・マーベルの戦いを描く。1995年、ロサンゼルスのビデオショップに空からひとりの女性が落ちてくる。彼女は驚異的な力を持っていたが、身に覚えのない記憶のフラッシュバックに悩まされていた。やがて、その記憶に隠された秘密を狙って正体不明の敵が姿を現し……。後にアベンジャーズ結成の立役者となるニック・フューリーも登場し、アベンジャーズ誕生のきっかけとなるヒーローの始まりが明らかにされる。「ルーム」でアカデミー主演女優賞を受賞したブリー・ラーソンキャプテン・マーベル役で主演。ニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソンのほか、ジュード・ロウらが共演。監督は、マーベル映画では初の女性監督となるアンナ・ボーデンと、ボーデンとともに「ハーフネルソン」などでコンビを組んできたライアン・フレック。
(映画.comより)

マーベル最新作は女性が主人公。
戦う女性なんて言うと『ワンダーウーマン』とか或いは先日取り上げた『アリータ :バトル・エンジェル』なんかが頭に浮かびますが、今作はもちろんそれらのヒロイン像とも全くだぶらないキャラクターです。
さて、マーベルと言えば気になるのが『アベンジャーズ』の最新作ですが、前作のエンドがあまりに衝撃的かつ絶望的でしたからね。
果たしてどうなるのか注目なのですが、この『キャプテンマーベル』は『アベンジャーズ』最新作を無見る上では必ず押さえておきたい一本。
果たしてこの作品から希望は差し込んでくるのでしょうか?

まずは予備知識なんですが、本作には明確な時代設定があります。
1995年。
日本では阪神淡路大震災が起き、オウム真理教による地下鉄サリン事件か世の中に衝撃を与え、明確に前時代と後の時代の分岐点となったあの時代。
よって当時のヒット曲が効果的に使われていたりします。
車の中からTLCの『WATER FALLS』が流れたり当時のオルタナティブロックが流れるとイチイチアガるのがこの俺でした。

そしてもうひとつ。
これは『アベンジャーズ』誕生前のストーリー。
だからサミュエル・L・ジャクソンが出てくると「あ~、アベンジャーズでお馴染みのサミュエル・L・ジャクソン出てんだ~、マーベルにはホントよく出るね~」なんて思わない様に(笑)
同一人物ですからっ!!
ただ、さすがに『アベンジャーズ』前というだけあって若い設定なんですよ、フューリーが。
ハリウッドの特殊メイクの技術ここにあり!とばかりに実際かなり若く見えるからフューリーと気づかなくても確かに無理はないかもですね。

で、内容に触れていくとこれまでのMCU作品とまた違うタイプの作品かなと感じました。
と言うのがアクションやら何やらのドンパチがこれまでの作品に比べるとやや控えめ。
むしろキャプテンマーベルの記憶のフラッシュバックとの対峙或いは自分探しの様相が強く、サスペンス要素の強い作品でした。
こうして彼女が向き合い、解き明かしていく謎がやがて一連のアベンジャーズの物語へと導かれていく。
まぁ、ざっとこんな感じです。
で、これまでと違うアプローチを取る事自体否定はしないけど、個人的には物足りなかったなという印象です。
マーベルのあの良くも悪くもド派手なアクションやらまぁ、少々大味ではあるんだけどテンポ良く、目まぐるしく展開していくあの話しの運びが好きな自分としては今作はところどころ飽きさせる様な流れがあり、のれなかったというのが本音です。
先日、『アリータ』の時にも触れたのですが、自分探し系のものってどうもね~無理くり作り出したシリアス感があり、苦手なんですよね~。

登場するキャラクターは良かったし、まさかの猫にあんな能力が?みたいな意外性は楽しめましたよ。(それにしても最近、猫が登場する映画多いよなぁ・笑)
もちろんMCUならではのエンドロール後の映像も『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』へ導いてくれる様な引きは強かったと思います。
だけど、何か惜しい!

まぁ、あくまで『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』の前座の様な位置付けかもしれないのですが、もうひと工夫欲しかったですね。
結局、僕がMCU作品に求めているものと本作のそれが合わなかっただけだとは思うので、後は皆さんの目で確かめて下さい。

それからMCU作品と言えば関連作は見た方が良いの?という件ですが、本作に関して言えば過去のMCU作品末見でも問題はないです。
ただ、見ておいた方が良いというのは確か。
フューリーが眼帯をつける理由も明かされるし、あの作品に繋がるのかな?と思わせるシーンも登場しますしね。

グリーンブック

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人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描き、第91回アカデミー作品賞を受賞したドラマ。1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。トニー役に「イースタン・プロミス」のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役に「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。トニー・リップ(本名トニー・バレロンガ)の実の息子であるニック・バレロンガが製作・脚本を手がけ、父とドクター・シャーリーの友情の物語を映画化した。監督は、「メリーに首ったけ」などコメディ映画を得意としてきたファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリー。アカデミー賞では全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞助演男優賞を受賞した。
(映画.comより)

まぁ、改めて言うまでもないですが、アカデミー作品賞受賞作品ですよ。
もうこれは観に行くべき作品です!
説明不要!
俺なんかが語らなくても色んな人の口から様々な評が出てるわけですし、今更語る必要なんてないわけですよ。
ただ、まぁ僕が見た印象って事で骨休めに目を通して頂けたら幸いです。

さて、この映画ですが、アカデミー作品賞という所で注目されていますが、もうひとつ見逃せないのが助演男優賞も受賞しています。
全編通して見ればわかりますが、この作品は黒人ピアニストのドクター・シャーリーと彼に雇われたイタリア人の運転手・トニー・リップの主従関係から発生した二人の友情を描いたいわゆるバディームービーなんです。
なので、そこだけ見たらこれ、どちらも出演って事でいいんじゃないの?て思うのですが、実はこれトニー・リップの息子が父親から聞いた話しをベースに脚本を書いてるし、なるほど確かにトニーの視点を中心に物語が展開されている。
黒人差別問題を軸にした話しなのでドクター・シャーリーこそが…と思いますが、そうではない。
僕はそこにこの作品の面白さがあるのではないかなと思います。

出演・トニー・リップを演じたヴィゴ・モーテンセンはこれまで『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ等でも存在感を放ってきた名優。
一方、ドクター・シャーリーを演じたマハーシャラ・アリは昨年は『ムーンライト』で主演男優賞を獲得。
現在公開中で前回紹介した『アリータ: バトル・エンジェル』ではダーティな役どころで出演しています。

アフリカから黒人が奴隷としてアメリカ大陸に連行されてから今年は400年となります。
黒人は長きに渡り、人として見なされず悲しい歴史を背に生きてきました。
少し世界史を勉強すればわかるのですが、今日に至る国際関係の分岐点はどこにあるかと言えば僕は大航海時代にあると思います。
未開拓の地へ踏み込み、そこに文明を築く。
その上で彼らは現地の人達を蹂躙し、やがて彼らを
奴隷という名の商品にしていく。
そして帝国主義の時代へと移行し、欧米各国はアジア・アフリカ・南米等の地で植民地支配を強めていく。
その歴史の過程で有色人種は差別の対象となっていくわけです。

本作の舞台となっているのは今から半世紀以上前の1960年代。
人種差別は元より南部に行けば人種隔離が公然と行われていました。
で、この作品のポイントとしてあげておきたいのが、ドクター・シャーリーが黒人のピアニストとして評価を受け、一定以上の成功を治めているという点。
例えば彼がピアニストといっても誰にも知られていない、音楽で生計を立てられない無名の人であったり、或いは一介の労働者だったとしたら、差別や迫害があまりに目に見える形であらわれていた事でしょう。
しかし、彼は豪華な家に住み、運転手を雇って車で移動する。
セレブ達の前で演奏をすれば拍手喝采を浴び、上流の人々との交遊関係もある。
一見すると非常に華々しいし、誰もが羨む生活を送っている。
だけどそれはピアニスト・ドクター・シャーリーとしてであって生身の人間としては他の黒人同様差別の対象となる描写が差別の実情をまざまざと写し出していきます。
どれだけ社会的成功をしようと大金持ちになろうと肌の色が黒ければ白人と対等の扱いは受けられない。
そしてそんな彼と行動を共にしたトニー・リップが元々は差別主義者であった点がこの作品のストーリーを生かしていました。
トニーの家に黒人が来る。妻は気を利かして飲み物を提供する。
黒人の来客が帰るや、彼らが口をつけたコップをすぐさまゴミ箱に捨てるという徹底ぶり。
しかし、ひょんな事でドクター・シャーリーの運転手として仕える事になり…てところですが、二人の人種の違いだけではなく、考え方や価値観の違いも面白かったです。
トニーは無知で粗暴、品のない言動もするのですが、日本の江戸っ子よろしく「俺ぁこまけぇこたぁ気にしねぇ主義なんだよ」と今にも言いそうな快活で竹を割った様な性格。
仁義を欠く事を許さない時には手も出やすいし、主人が招かれたパーティーで外で待たされたら他の運転手達を集めて賭け事に夢中になっちゃんだけど何故か憎めない。
一方のドクター・シャーリーは品行方正で教養もある。
ケンカっ早いトニーをいさめ、諭してみたり文才のないトニーの為に愛する妻の心を打つ手紙の書き方を教えてあげたりと色気や品を感じさせる人物です。
そんな二人がまるで息の合った漫才コンビの様な掛け合いで様々な問題にぶつかりながらも、解決していく内にお互いの理解が高まっていく非常に胸のすく様な作品でした。
で、個人的に好きなのが、トニーが次第に心の変化を見せ、時にシャーリーが受ける理不尽な扱いに感情を顕にさせたり、ツアー終了後、帰宅し親族のひとりが黒人差別発言をした時にピシャリと戒めるシーン。
元々レイシストであったトニーがシャーリーとのツアーを経て、人間的変化もっと言えば成長を感じさせる場面だったと思います。
また、シャーリーはシャーリーで黒人として肩身の狭い思いをしたが為に人との接触を避けてきたのですが、クリスマス・イブにある行動を取ります。 
人種や価値観がかけ離れた二人が出会った事で生まれた互いの人間的変化。
こういう作品を見る事で僕達も他者を認め、受け入れていく柔軟性が大事なんだなと思います。

ちなみに個人的にはこの作品全体を見て人間的に優れていたのはトニーの奥さんだなと思いました。
だってあの人だけですよ、はじめから変わっていなかったのは。
詳しく言いませんが、手紙のくだりだって。ね。

ちなみにこの映画見たらケンタッキーフライドチキンが食べたくなる事をつけ加えておきます(笑)

アリータ バトル・エンジェル

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木城ゆきとによる日本のSF漫画「銃夢(ガンム)」を、同作の映画化を長年にわたり熱望していたジェームズ・キャメロンの脚本・製作により、ハリウッドで実写映画化したアクション大作。監督は「シン・シティ」のロバート・ロドリゲス。主人公アリータ役は「メイズ・ランナー」シリーズのローサ・サラザールが務め、いずれもオスカー俳優であるクリストフ・ワルツジェニファー・コネリーマハーシャラ・アリが共演。数百年後の未来。スクラップの山の中から奇跡的に脳だけが無傷の状態で発見されたサイボーグの少女アリータは、サイバー医師のイド博士によって新たな体を与えられ、目を覚ます。しかし彼女は、自分の過去や今いる世界についてなど、一切の記憶が失われていた。やがてアリータは、自分が300年前に失われたはずの最終兵器として作られたことを知り、そんな兵器としての彼女を破壊するため、次々と凶悪な殺人サイボーグが送り込まれてくる。アリータは、あどけない少女の外見とは裏腹の驚異的な格闘スキルをもって、迫り来る敵たちを圧倒していくが……。
(映画.comより)

元々は2018年年末に公開予定だった本作。
当初の予定より約二ヶ月遅れての公開となりました。
まずは20世紀FOXによるファンファーレとロゴが登場。
ここは凝ってましたね。
お馴染みのファンファーレが鳴り終わると「20」が「26」に変わり、背景も荒廃した街へと変わる。
本作の舞台となる2563年・26世紀へと誘ってくれます。
思えばこの20世紀FOXのファンファーレについて言えば、あの『ボヘミアン・ラプソディ』ではブライアン・メイによる演奏からフレディの「ヘイヘイヘイヘイ~」の掛け声により気持ちを高めてくれたものですが、たかがロゴとファンファーレ・されどロゴとファンファーレ。
ここ最近は作品の世界観を投影されたものがよく作られるな~と感じた次第です。

さて、巨匠・ジェームズ・キャメロンか久しぶりに手掛けた事でも話題の本作。
元々は監督のロバート・ロドリゲスが日本で生まれた原作をジェームズ・キャメロンに見せたところ、作品を気に入り、本作の製作に踏み切ったとの事です。
あの3Dブームを生んだ2009年の『アバター』以来、久しぶりの作品とあって期待に胸を弾ませながら鑑賞して参りましたが、さてさてどうだったでしょう。

予告でも再三目にしてきたアリータの姿。
目の大きさやサイボーグ特有の肢体を持つ為、やや見た目は怖い。
しかし、それはあくまで始めだけ。
基本的にアリータを中心にストーリーが展開され、彼女がサイボーグでありながらまるで人間の女性の様に感情の機微が描かれるし、一人の男性と恋に堕ちる。
するとどうでしょう。
あれほど不気味にすら見えていた彼女が次第に可愛く映り、ややもすれば萌えさえもする。
そう、この映画。
アリータを愛でる事が出来るかどうかで楽しみ方がかなり変わってくる作品だと思います。
そして何よりこのアリータ自体はCGで作られているのですが、まるで実態が存在しているかの様にリアル。
アバターなんかでもそうですが、やはりこういった特異性のあるキャラクターに息吹を吹き掛け、見ている人へ愛着を持たせるのはキャメロンの真骨頂と思います。

そしてバトルシーンなんかは見応えバッチリ!
基本的には敵も含めて特異性強いキャラばかりなのですが、最新のVFXでもって終始飽きさせないアクションが続く。
また、サイバーな街並みやモーターボールなる本作特有のスポーツ等どれを取っても素晴らしい!
ただ、欲を言えば26世紀という『ドラえもん』がやって来た未来よりも遥か先の時代の話しの割に今の南米辺りにありそうな街が出てきたり統一感に欠ける感は否めなかったですね。
しかし、全体を通しての映像は美しいの一言に尽きます。
昨年『レディ・プレイヤー1』或いは一昨年『ドクター・ストレンジ』を見た時にも思ったのですが、いわゆるVRの世界を具現化した時の映像美に関して言えばハリウッドの凄さというのはとんでもないなと感じます。
日本の技術ではなかなかここまでの物は作れない。
だから日本ではSFは育たないんですね。
いや、手を出さない方が懸命です。
日本には日本の独自の映画文化があるわけだから。

で、とにかく映像面での素晴らしさには太鼓判を押したいところですが、個人的にこの映画が好きかどうかで言えばあまり好きにはなれなかったと言うのが正直な感想です。
いや、もっとはっきり言います。
のれませんでした。

と言うのがキャメロンならではでもあるのですか、大味過ぎる脚本がね~…。
いや、一応大筋としてアリータという少女サイボーグの成長の過程を見守るというのはわかるんですよ。
一人の戦士として覚醒し、戦う。
果てはこの打ちひしがれた時代の救世主になる様な話しかと言えばそうでもない。
何というかまとまりがないんですよ。
バトルもあれば、この映画特有の見慣れないスポーツで競ったり、恋愛もする。
しかも、恋愛の対象となる男の子は人間の青年なのにサイボーグになってしまうし。
ストーリーが散漫になり過ぎてついていけなかったです。
2~3回程うとうとしました。
で、ただでさえ話しが散漫な上に、アリータの記憶探しの話しも出てくる。
まぁ、百歩譲って恋仲の青年・ヒューゴとアリータの間に300年前何かしらの因果関係があったとかならまだいいんだけど全く関係がないんだよね。
更にラストの方では如何にも感動げなストーリーを盛り込んでこちらのご機嫌を伺うんだけどそれに至るまでの過程が支離滅裂なもんだから感動も出来ないし、その感動げなシーンが何とも大味なんですよね。
何とも残念な印象が拭えない。

最後にまとめます。
アリータは思ってた程、グロテスクな存在ではなく、見る毎に可愛く思えてきます。
そしてそんな彼女が少女から大人へ。
成長を見守る気持ちで鑑賞に臨みましょう。
キャメロン一流のアクションシーンやVFXは必見です!
僕はこの映画の価値はそこにあると思っています。
映画をストーリー重視で見る人にはあまりオススメ出来ないです。

今回は辛口になりましたが、あくまで僕の感想です。
皆さんの目で是非劇場鑑賞をして下さい。

翔んで埼玉

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パタリロ!」で知られる漫画家の魔夜峰央が1982年、当時自らも居を構えていた埼玉県を自虐的に描いたギャグ漫画として発表し、30年以上を経た2015年に復刊されるとSNSなどで反響を呼んだ「翔んで埼玉」を、二階堂ふみGACKTの主演で実写映画化。かつて東京都民からひどい迫害を受けた埼玉県民は、身を潜めてひっそりと暮らしていた。東京都知事の息子で、東京のトップ高校である白鵬堂学院の生徒会長を務める壇ノ浦百美は、ある日、アメリカ帰りで容姿端麗な謎の転校生・麻実麗と出会う。百美は麻実に淡い恋心を抱き、互いに惹かれあっていく。しかし、麻実が埼玉県出身であったという衝撃の事実を百美が知ってしまい、2人は東京と埼玉の県境で引き裂かれることとなってしまうが……。二階堂が男性である百美役をGACKTが麻実役をそれぞれ演じる。監督は「のだめカンタービレ」シリーズ、「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹
(映画.comより)

まずは私と埼玉県の結び付きを簡単に。
以前、東京足立区の北側に住んでました。
チャリで数分も行けば、川口市草加市
そして草加ではかなり短い期間ですが、仕事していた事もあります。
もし今、草加の駅前に行き、街をブラブラしようものなら大体の地理感覚は身に付いてます。
更に大学時代、友人が埼玉に住んでて遊びに行った事もあるなぁ。
そいつは東京の大学に通ってたんだけど池袋まで出てそこから山手線に乗り換えてキャンパスまで。
埼玉住まいの学生らしく遊びに出るのは池袋との事でした。
後、さいたまスーパーアリーナ椎名林檎のライブを見に行ったりしました。
つまり、埼玉には何度か足を運んでるし、それなりに(あくまでそれなりに)縁のある県なんですよね。
良い所ですよ~、埼玉。
草加せんべいはうまい!
でも、浅草の仲見世でしれっと東京土産として売られていたりして東京に取られちゃうのか?な代物なんですよね~。

今は埼玉からおよそ800km離れた島根でこのブログを通して好き勝手に映画を語ってるわけですが、
島根は埼玉より田舎だよ、近くに東京の様な大都会はない。でも出雲大社もあるし、宍道湖もある、お城もあれば海も山もある!世界遺産石見銀山もあるし、歴代で二人の総理大臣を排出しているんだぞ!
映画のネタにもなってたけど、巨乳の多さは埼玉より勝ってる(笑)
それに県庁所在地は漢字だぞ、恐れ入ったか、埼玉県人!

なんて埼玉をdisらせて頂きました。
前述の様に埼玉とは適度な縁があるから許してね(笑)

前置きが長くなりましたが、本題の映画『翔んで埼玉』です。
まぁ、埼玉を推してるわけだから当然ご当地映画です。
でも、これが単に埼玉のウリをどんどんプッシュしているわけではなく、むしろ超がつくほどの自虐ネタでもって埼玉県人がまるで戦前の共産主義者かはたまた江戸時代のキリシタンの如く大国・東京で迫害され、蹂躙されてしまう。
まぁ、これは原作者がこの作品を描いた時に埼玉在住でその埼玉をおもちゃに遊んでしまうという発想から生まれてるんですね。

そもそもの埼玉という成り立ちから始まるわけですが、1871年(明治4年)の廃藩置県までは現在の埼玉県、東京都、神奈川県東部は武蔵国だったわけです。
首都・東京は分離され、横浜は神奈川県に、そしておいしい所を全部持ってかれ、その余り物が埼玉県である旨の説明から入る辺りこの映画における埼玉県の認識が表明されるわけですよ。

そして、埼玉県の壮大な都市伝説がとある埼玉県の一家が乗る車から流れるラジオから聞こえてくる。
その都市伝説か本作のストーリーの核となる部分になるのです。

そしてそこで繰り広げられるのが前述の様なバーチャルな世界。
東京に入るには通行手形が必要で手形を持たず、入った場合は徹底的に弾圧を受けるというもの。
とある高貴な学校では江戸時代の士農工商はたまたインドのカースト制度を思わせる様な身分制度があり、同じ東京でも都市として成熟している場所に住んでいる者程、高いランクにつき、八王子等に住んでいれば校内での位置付けは低いと見なされる。
なんというヒエラルキー
しかし、不思議とそれが公然としたギャグとして成立してるので実際にその土地に住んでる人も不快にならない(恐らく)
その学校で生徒会長を務め、絶対的な君主として存在するのが檀ノ浦百美(二階堂ふみ)。
そして百美の前に現れるのがアメリカ帰りの帰国子女・麻実麗(Gackt)なのです。
そもそもこのキャスティングですよ、大体の実年齢40代半ばのGacktが高校生で、二階堂ふみが男子役。
いや~、なかなか無茶してる(笑)
ただ、ここでのGacktはかつて属していたMALICE MIZERの頃を思い出す様な風貌をしていて90年代のビジュアル系に愛着のある人ならば、そこに萌えちゃうかもしんないです。
他にも中尾彬伊勢谷友介ブラザートム麻生久美子島崎遥香京本政樹竹中直人等々豪華キャスト陣

で、舞台となる学校・白鵬堂学院というのが何でしょう。
ベルサイユのばら』的な、いわゆるステレオタイプで描く中世ヨーロッパ観とでも言うべきかな要は『パタリロ』的美意識を踏襲した様な世界なんですよね。
また、主たる二人が恋に堕ちるボーイズラブものでもある。
だけど、方一方は二階堂ふみなもんだからね。
一応、男子という役ではあるもののかなり可愛い。

そしてその後、展開されるのがライバル・千葉県との戦争。
これがまたね~、くだらないんだわ。
埼玉解放戦線 VS 千葉解放戦線というあたかも軍記モノを思わす様な壮大な名称でもって繰り広げられる。
何で戦うかと各県で生まれた有名人対決とかね。
「へ~、YOSHIKIって千葉県出身なんだ~」とか「反町隆史竹野内豊って二人共埼玉なんだ~」(言わずと知れた90年代に大ヒットしたあのドラマの二人ね)みたいに感心する反面、ネタ扱いされるゆうこりんと小島よしおに苦笑する(笑)
何てバカバカしいんだと思いつつ、楽しませてもらいました。

そして個人的に感じたのが東京に取り入る千葉県なんかは日本とアメリカの関係に似てるなと思いましたし、東京がこの千葉・埼玉戦争を政治利用しながら隣国・神奈川と手を組み、漁夫の利を得ようとするやり方なんかもアメリカっぽかった。
南関東という特定のエリアに限定させながら国際社会の縮図を写し出しているのかななんて思いました。
他にも千葉は海女さんが戦ったり、体の穴という穴にピーナッツを入れるという技があったり(笑)
神奈川県からは東京都知事崎陽軒の焼売が贈られたりします(うまいよねぇ、崎陽軒の焼売。)

そして後半のどんでん返しも楽しかったなぁ。
昔、筋肉少女帯に『日本印度化計画』って曲があったけどさぁ。
僕らが食べるガリ○リくんもよく行くファミリー○ートもお手軽に服を買えるし○むらも埼玉県の陰謀だったなんてね。

個人的に思ったのは同じ題材の関西編も見たいなと思ったなぁ。
大阪 VS 京都
大阪の援軍・和歌山と京都の援軍・滋賀。
近鉄とJRでどちらにもつけるので中立の奈良に阪神タイガース甲子園球場を大阪に貸しつつ、それ以外は一切関わらない兵庫みたいなね(笑)

とにもかくにも東京に近い関東南部でありながらこれというウリがない(ごめんなさい)埼玉県で遊びながら一級のコメディに仕上げる手腕は見事なモノ!
ラストで流れるはなわの「埼玉県の歌」も良い感じです♪

さぁ、キミも『翔んで埼玉』を見て埼玉県人ポーズを決めよう!

フォルトゥナの瞳

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他人の死が見えてしまうという不思議な力を持ってしまった青年が、最愛の女性の「死」に立ち向かう姿を描いた百田尚樹の同名小説を、神木隆之介有村架純の共演、「僕等がいた」「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の三木孝浩監督のメガホンで映画化。幼少期に飛行機事故で家族を失い、友人も恋人もなく仕事にのみ生きてきた木山慎一郎。しかし、慎一郎が「死を目前にした人間が透けて見える能力」=「フォルトゥナの瞳」を持っていることに気づいてしまったことから、生活が一変。なぜこのような力を持ってしまったのかを自問自答する苦悩の日々が続く。そんな日々の中で慎一郎は桐生葵という女性に出会い、互いに惹かれあった2人は幸せな日々を過ごす。慎一郎の孤独な人生に彩りを与えてくれた葵という存在。しかし、葵の身体が突然透け始めてしまう。慎一郎役を神木、葵役を有村がそれぞれ演じるほか、時任三郎斉藤由貴北村有起哉、志尊淳、DAIGO、松井愛莉らが脇を固める。
(映画.comより)

いわゆる恋愛映画というジャンルになる作品でしょうか。
しかし、同時に特殊能力系のSF要素の強い作品、一時藤原竜也がよくやってた様なタイプの作風でしょうか。
で、驚いたのが百田尚樹原作なんですね。
永遠の0』や『海賊とよばれた男』でお馴染みです。
まぁ、僕が無知なだけなんですが、百田尚樹さんて戦前~戦後を舞台にした男の一代記的な作品が多いじゃないですか。
現代を舞台にしたSF /恋愛モノというのは意外でした。
また、三木監督ですよね~。
僕等がいた』、『ぼくは明日、昨日の君とデートする』等々数々の恋愛映画で実績を作ってこられた監督です。
本作だってきっと期待を裏切る事はない。
そんな思いでこの映画を見てきました。

さて、どんな作品だったのでしょう。

フォルトゥナの瞳、これは死を目前にした人が透けて見えるという特殊能力です。
「こんな能力、間違ってもいらない」なんて僕は思ったのですが、それで終わらせては話しになりませんからね、続けます(笑)
ここで取り沙汰されるのはその特殊な能力を身につけてしまったが為に翻弄されてしまう男の姿です。
つまらない人生を送っていた一人の青年が、やがて一人の女性と出会い、恋に落ちる。
しかし、ある日彼女の手が透けて見える様になる。
つまり彼女の死が近づいている事を意味します。
彼は一体どの様な行動を示すのか?

で、この神木隆之介演じる木山慎一郎という青年なのですが、人に優しい好青年であるというのがポイントです。
携帯が壊れたのを機に携帯ショップへ行く。
そこに居たのが、有村架純演じる桐生葵。
その時、彼女の手が透けて見える事で彼女を助けだそうとします。 
この段階で二人はまだ付き合っていません。
あくまで携帯ショップの客と従業員。
葵に一目惚れしたというのもありますが、彼女を助ける為、木山は奔走します。
そして、彼が仕事上で世話になっている社長にも危機が訪れ、社長を守ろうとします。
と、こんな流れを見ていたら特殊能力を持ったが為に人の危機を救うヒーロー要素の強い映画だなと感じました。

そして、それによっての代償として自らの生命への危機が迫る事になる。
自らの身を第一に考えるか自らの命を賭して他人を救うのか。
彼自身の葛藤が非常にリアルに描かれていきます。
そして、彼が選んだ答えは…?

それが後半の展開になるのですが、なかなかの見せ場です!
しかも、その過程では変質者の様な扱いを受け、警察に追われたりもする。
それに命を救ったとしても、誰に感謝されるわけでもない。
それでも彼が出した答えには胸がすくわれます。
彼女の葵ちゃんを助けたい。
しかし、それだけではない。
寿命を全うせず、不慮の死を迎える人達を救う。
作風こそ違えど、百田尚樹原作の『永遠の0』での「自己犠牲」の崇高な精神がここでも継承されている事を感じました。

そしてさすがにここはネタバレさせるわけにはいきませんが、ラストの意外な展開と伏線回収は実に見事でした!
「こうきたかぁ!」と思わずうなっちゃいました!

ただ、惜しむらくは死を扱い、感動を呼び込むと謳った作品にしては、泣くまでのエモーショナルな感情は呼び寄せられませんでした。
作品内のテンポは良かったし、恋愛映画で鳴らしてきた三木孝浩監督ならではの効果的な演出等々見ていて飽きさせない作りにはなっていました。
しかし、本来最大の感情シーンと呼べる辺りでもかなりあっさりしてたし、そこがどうしても弱かった。
作品自体は良かったけど、そこがもったいなかったなぁ。
すいませんねぇ、過剰な演出だったら「お涙頂戴だ」「感動ポルノ」だとケチをつけ、逆にあっさりしてたら、「俺を泣かせろ!」だの。
あまのじゃくで面倒くさい客だなぁ、俺(笑)

後、木山のご意見番的存在として出てくる医者は何であんな偉そうなんだ問題とこの医者は何故足が不自由なんだ問題が解決しないまま、映画が終わってしまった事への不満はありますが、まぁそれはいいです。
他にも志尊淳演じる整備会社の同僚があっさり改心し過ぎ問題、有村架純演じる葵ちゃんが顧客データを元に木山に会いに行ってるけどそれ、やばくね?問題等々。
でも、そんな野暮な疑問を払拭させてくれる様な良作ではありました。

劇場版シティハンター 新宿プライベート・アイズ

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1980~90年代にテレビ放送された大ヒットアニメ「シティーハンター」の20年ぶりの新作となる長編アニメーション映画。新宿に事務所を構えるシティーハンター冴羽リョウと相棒・槇村香のもとに、何者かに襲われたというモデルの進藤亜衣がボディガードを依頼にやって来る。美女の依頼を快諾するリョウだったが、撮影スタジオで更衣室を覗いたりとやりたい放題。亜衣がキャンペーンモデルを務めるIT会社の社長・御国真司は香の幼なじみで、撮影現場で久々に再会した彼女をデートに誘う。一方、海坊主と美樹は新宿に傭兵が集結するという情報を入手するが、その傭兵たちはなぜか亜衣を狙っており……。声優陣にはリョウ役の神谷明、香役の伊倉一恵らオリジナルキャストが再結集。進藤亜衣役を女優の飯豊まりえ、御国真司役を人気声優の山寺宏一が担当するほか、お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実が特別出演。初代監督のこだま兼嗣が総監督を務め、「TM NETWORK」によるおなじみの主題歌「Get Wild」も起用。同じ北条原作の「キャッツ・アイ」からも主人公の来生三姉妹が登場する。
(映画.comより)

あの冴場撩が20年振りに帰ってきた!
80~90年代にかけて『週刊少年ジャンプ』に連載され、人気を博した北条司原作の漫画『シティハンター』。
1978年生まれの私にとってはちょうど世代ど真ん中!
『ジャンプ』の原作も読んでましたし、日曜7時に放映していたアニメも見ていました。
つまり、バリバリのシティハンター世代なのです!

で、この劇場版ですが、年齢層がとにかく高い(笑)
30~50代くらいで大体が一人客。
つまり我々世代のオッサンにとっては待ってました!と言わんばかりの劇場版であった事がうかがえます。

シティハンター』の魅力を端的に言えば「エロ・グロ・ナンセンス」ならぬ「エロ・ギャグ・シリアス」だと個人的には思ってるんですが、のっけからアゲテくれるんですよ!
ハードボイルドなアクション物と思わせるカッコいいオープニング。
しかし、しっかりと「もっこり」というフレーズでおとしてくれます(笑)
シティハンター』所見の人に「こういう作品ですよ」と短い時間で要約してくれてるかの様なオープニング。
アガルなぁ!

前半部はひたすらギャグの応酬。
冴場撩と槇村香による掛け合いが笑いを誘います。
そしてここで思うんですよ。
「ああ、これこれ!シティハンターってこんなんやったなぁ」って。
アニメを見たり、原作を読んでてもコミックスを買う程でもない、僕みたいなライトに好きってタイプだと20年も作品に触れていないと内容を忘れてしまうものです。
しかし、この前半部では子供時分に戻ったかの様に記憶がフラッシュバックしてくるんです!
あたかも昔の同級生と再会した気分。

そしてその後はお馴染みのシティハンターワールドに引き込まれていきます。
依頼人の美女が現れる→撩ちゃんスケベ心→香さんにハンマーでどつかれる→依頼を受ける→組織に近付く→アクション!
ざっくり言えばてな感じです(笑)

そしてご存知の方も多いでしょうが、新宿を舞台にしているこの『シティハンター』ですが、80年代当時の新宿ではなく、現代の新宿が舞台になっています。
駅の伝言板はなく、別の手段で伝言をしますし、外に出れば某映画館にゴジラが立っている。
昨年の『名探偵コナン劇場版』でも登場した、ドローンだって活躍する!

しかし、ノリはあくまでバブルの雰囲気だったりするのでそこを楽しみつつも気になったのであげておきます。
一例としてはエロに対する捉え方ですね。
近年、とんねるずが同性愛者をネタにしたコントをやってましたが、随分問題になりましたよね。
あの当時、僕は「え~っ?昔はフツーにやってたじゃん」って驚いたものです。
でも、昔だからこそ許されたんですよね。
この30年間で物事の価値観はガラッと変わりました。
「○○さんは結婚しないの?」なんて言えばセクハラになるし、命令口調で仕事の指示を出せばパワハラになる。
話しを戻しますが、『シティハンター』で言えば撩がギャグではあるものの、覗きをしようとする。
すっかり今の価値観で見ていた僕は「コレ、フツーに犯罪じゃん」って突っ込んでしまいました。
また、シティハンター世代と思われるお父さんと小学五年生くらいの女の子が見に来てたんですが、「えっ、これ大丈夫?」なんてヒヤヒヤしちゃいましたよ(笑)
そういえば80年代生まれのコンテンツで時代錯誤感のあった作品って最近見た様な…と思っていたら2016年の『さらば あぶない刑事』がありました。
『あぶ刑事』にしろこの『シティハンター』にしろ80sの空気感を懐かしみつつ、それを楽しむ作品かもしれませんね。

ギャグパートに登場してくるコミカルな演出もいちいち昭和感あるんですよね。
撩がハンマーで殴られた後の情けない顔をする横でトンボが飛んでるとかね、「お~いおいおい」言いながら号泣する海坊主とかね(笑)

そして本作の見所と言えばキャッツアイ登場!!ですよ。
それも意外な設定&登場の仕方です。
香さんと三姉妹の絡み「いつもこの格好なんですか?」なんて香さんの素朴な疑問ににやけてしまいます。
ただ、キャッツアイ登場シーンはかなり少ないです。
「正直、出す必要あった?」なんて声も聞こえてきそうですが、あくまでファンサービスです。
ちなみに杏里のあの曲はもちろんかかります。
しかし、惜しむらくは原曲ではないんですよね。
これは大人の事情かななんて察してしまいました。
更に言えばキャッツアイの衣装って当時としてはスタイリッシュなものだったんでしょうが、今は女芸人がネタで着るみたいな扱いですからね(笑)
そんなところにも隔世の感をおぼえた次第です。

そして、『シティハンター』と言えば音楽ですよ!
出るよ、出るよ名曲の数々。
PSY'S、コヒー、岡村ちゃんに小室さん。
そして何と言ってもエンディング曲は『GET WILD 』。
ぶっちゃけて言うとこれを聴きたいが為にこの映画を見た様なところがあります。
いや、僕以外でもこういう人は多かったと思いますよ。
だって誰一人席を立ちませんでしたよ。
しかもご丁寧に歌詞のテロップまで流してくれる。
何ならそこにいる皆で大合唱したかったですよ。
ボヘミアン・ラプソディ』の応援上映があるのなら『シティハンター』にだってあってもいいじゃないか!みたいなね(笑)
更にエンディングではTM NETWORKの『STILL LOVE HER 』も流れ、僕は気持ちよく劇場を後にしたのでした。

最後に本作公開にあたって冴場撩を演じた神谷明さんは20年前と変わる事なく同じメンバーと同作を作れた事を喜ぶコメントを出していらっしゃいました。
キャッツ・アイ』では藤田淑子さんが昨年末に亡くなられ、戸田恵子さんが一人二役でカバーしていらっしゃいました。
しかし、小学生時代に見たあの『シティハンター』を40歳になって見た時、当時の心境に戻った様な懐かしさもあり、新たな発見もあり。
改めて偉大な作品だなと思いました。
ありがとうシティハンター
またいつかこの目で見たいぜ!
アディオス!!