きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

母性

ベストセラー作家・湊かなえの同名小説を映画化し、戸田恵梨香永野芽郁が母娘役を演じたミステリードラマ。ある未解決事件の顛末を、“娘を愛せない母”と“母に愛されたい娘”それぞれの視点から振り返り、やがて真実にたどり着くまでを描き出す。
女子高生が自宅の庭で死亡する事件が起きた。発見したのは少女の母で、事故なのか自殺なのか真相は不明なまま。物語は、悲劇に至るまでの過去を母と娘のそれぞれの視点から振り返っていくが、同じ時間・同じ出来事を回想しているはずなのに、その内容は次第に食い違っていく。
語り手となる母のルミ子を戸田、娘の清佳を永野が演じ、ルミ子の実母を大地真央、義母を高畑淳子、ルミ子の夫を三浦誠己が演じる。「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「ヴァイブレータ」の廣木隆一監督がメガホンをとり、「ナラタージュ」の堀泉杏が脚本を担当。(映画・comより)

あの「告白」を超えた衝撃作!…なんて謳われれば見ないわけにはいかない湊かなえ原作の映画「母性」。そもそもこの「告白」なんですが、事故死と思われた娘の死は実は殺人事件では?と自分が受け持つ生徒であろうが何だろうがと無慈悲に復讐を遂げようとする女性教師に姿に戦慄を覚えたもの。そしてこの女性教師を演じたのが、松たか子さんでこれまでの彼女には見られなかった怪演が当時話題になりました。中島哲也監督にとっても非常に脂ののっていた時期でもあり、監督にとって最大のヒットとなり、代表作となりました。

そんな「告白」を超える…なんてハードル上げてもいいんですか?僕は映画にはうるさいですよ…なんてお前は何様だ?と指摘を受けたところで内容に踏み込んで参りましょう。

戸田恵梨香永野芽郁が親子って設定実は当初は無理があるんじゃない?なんて思ってました。比較的近年に朝ドラのヒロインを務めた二人。年齢も姉妹ならまだしも親子程年が離れてるわけじゃないですよね。例えば戸田恵梨香さんが相手との再婚相手で永野芽郁さんがその連れ子というならまだわかるんですよ。それが実の親子という設定ですからね。果たしてどういう事なんでしょう?

その答えは直接作品を見たらわかります。戸田恵梨香さんが20代からアラフォーに至るまでの年齢を演じているのですが、どちらにもハマるんですよね。お嬢様育ちの20代の女性にもなるし、結婚生活による心労から心身がやつれ切ってしまったアラフォー女性の悲哀も表現出来る。さすがは女優さんだなと見てて唸っちゃいましたね。

一方の永野芽郁さんの場合、作中のほとんどが女子高生として出ているのでそこに違和感がないのは言わずもがなですね。

で、そんな母と娘二人の視点で紡ぎ出されるスリリングなストーリーが本作最大の見所となります。一方の母親の主観で語られるストーリーと娘から見たそれでは同じ事象であってもまるっきり食い違っている。これは往々にして起こりうる事であって例え親子でも…いや、親子だからこそよりその食い違いを生むんだろうなと。そしてこの双方の思考の相違をエンターテイメントに仕立てる辺り湊かなえここにありと感じましたね。

で、この作品のテーマこれこそがタイトルそのもの母性なんですよ。母性ってすごい抽象的で説明が難しいじゃないですか?それを作品全体で問いかけているんですね。戸田恵梨香が演じた母親のルミ子。彼女の特徴としては彼女の母親つまりは永野芽郁ちゃんが演じていた清佳の祖母からの親離れが出来ていないんですね。母親を溺愛するあまり娘の清佳をも母親に認められる為の道具にしてしまう。それがいきすぎているから客観的に見れば毒親以外の何物でもないんですよね。

でもここで打ち出している事がありまして、それは母親である立場の女性だって誰かの娘であり、母としての面が勝るのか娘としてのそれが上回るのかというところ。後者の場合、それに翻弄されるのが我が子であり、ルミ子と清佳の場合それが極端に現されてしまったというこのなんですよ。

ところで本作を出掛けた廣木隆一監督。過去作としては「ストロボ・エッジ」や「PとJK」等のキラキラ映画に近年だと「ノイズ」や現在公開中の「あちらにいる鬼」や「月の満ち欠け」等作品の幅が非常に広いです。とりわけ「ノイズ」や本作等スリリングなサスペンスにも意欲的な姿勢なのが見てとれます。

ただ、個人的にどうしても気になってしまった台詞があります。戸田恵梨香演じるルリ子がとある場面で発したセリフに「子供なんてまた作ればいい」というものがありました。ルリ子が清佳に愛情が薄いという事を象徴する台詞だとは思いますが、これは子供の人権を軽視する発言だと思いますし、子供が産めない事に悩む女性やご夫婦への配慮に欠けるものだと抗議させて頂きます。

そんな違和感は感じましたが、全体を通して言えばハラハラさせるストーリー展開や伏線の張り方やその回収等は見応えありました。

母性とは何か?を強く問いかけるサスペンス作品。あなたも是非その目でご覧下さい!