きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ノイズ

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筒井哲也の同名コミックを、「デスノート」シリーズで共演した藤原竜也松山ケンイチの主演で実写映画化したサスペンス。時代に取り残され過疎化に苦しむ孤島・猪狩島。島の青年・泉圭太が生産を始めた黒イチジクが高く評価されたことで、島には地方創生推進特別交付金5億円の支給がほぼ決まり、島民たちに希望の兆しが見えていた。しかし、小御坂睦雄という男の登場によって、島の平和な日常が一変する。小御坂の不審な言動に違和感を覚えた圭太と幼なじみの猟師・田辺純、新米警察官の守屋真一郎の3人は小御坂を追い詰めていくが、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう。3人はこの殺人を隠すことを決意するが、実は小御坂は元受刑者のサイコキラーであり、小御坂の足取りを追って警察がやってきたことで、静かな島は騒然とする。泉圭太役を藤原、田辺純役を松山がそれぞれ演じる。監督は「ヴァイヴレータ」の廣木隆一。(映画・comより)

デスノート』の二人が15年振りに共演!…とここが大きな話題になっていますが、予告編で見た時からゾワゾワッと怖そうだけど面白そうと私はかなり期待してました。そして2月2日。FMいずもでの担当番組を終えた後、T-JOY出雲へ車を走らせ鑑賞。昨年末から始まった水曜のサービスデーの恩恵を受け、割安で見て来ましたよ!

さて、『デスノート』のキラこと藤原竜也さんとLこと松山ケンイチさん。かつてはライバルだった二人が今回は殺人事件の共犯者に。更にこの二人に加え、神木隆之介さんが加わり、スリリングなクライムサスペンスが展開されるわけです。他藤原竜也演じる和泉圭太の妻を演じるのは黒木華さん更には永瀬正敏さん、柄本明さん、鶴田真由さん、余貴美子さん等等がキャストに名を連ねます。

まず、冒頭。穏やかな島のシーンから始まります。島中に流れる有線放送とイチジク畑、島民皆が顔見知りという小さな島ならではののどかな光景が画面に広がります。しかし、これがやがてノイズの挿入により、均衡が大きく崩れていきます。このノイズというのが一人の青年であり、件の三人が殺めてしまう人物。

この何が恐ろしいかって当該の三人の生活のみならずあらゆる場面でその醜悪な部分が浮き彫りになってしまうんですよね。それは島民の生活、島民達のパーソナルな部分から町長の心の闇等。軽い犯罪ひとつ起きなかった平和でのんびりした島を一夜にして一変させてしまうその過程があまりに恐ろしくリアリティたっぷりに映し出されていました。

また、主要な三人の心理的描写も三者三様であり、見応えがありました。まず、和圭太。彼の育てるイチジクはテレビ等でも取り上げられ、猪狩島の特産品として注目を集めます。そして圭太は島の希望の光。誰もが彼に期待し、島では常に話題の中心。そんな彼は警察の捜査が入っても毅然とした振る舞い。刑事にご自慢のイチジクを差し出す余裕ぶりです。続いて松山ケンイチ演じる田辺純。圭太とは幼馴染で大人になっても近所に住む飲み友達として交友。彼もまた、警察なんて何のその。二人とも事件の首謀者とは思えない程の落ち着きっぷりですよ。まるでかつての『デスノート』でのキラとLそのものです。

ただ、神木くんの演じた真一郎は違うんですよね。彼が他の二人と立場が違うのは警察官である事。子供の頃から島の駐在所で治安を守るのに憧れ、先輩の駐在さんからの引き継ぎでも重要な事を言われてたんですよ。そんな彼だからこその使命感や正義感がある。しかし、その一方では殺人を犯した友達を守る為に事件に加担もしてしまう。良心の呵責と正義感のせめぎ合いが彼を追い詰めていく過程が神木くんの真に迫る演技で見ている人の感情も揺さぶられていきます。だからこそ彼が最後に取る行動に胸が詰まる思いを誰もがするのではないでしょうか。

他、本作の面白さと言えばサスペンスのスリリングさをカメラの長回しによってうまく引き出していた点でしょうか。肝心なシーンでは思わず引き込まれ、先の展開を焦ってしまうもの。しかし、これが撮影技法が攻を奏してよりスリリングによりインパクトを与える展開に引きずり込んでいき映画としての面白さをより高めていたと思います。

また、ところどころでのちょっとしたシーンも良かったです。割と前半の方ですが、圭太が妻と娘と一緒におにぎりを食べるシーンがあるんですね。口に物をほおばりながら喋るのはお行儀が良くないし、今の時勢だとナイーブになるかもしれませんが、おにぎりを口に会話をするシーンがあるんですよ。喋ってるニュアンスは伝わるけど言語化すると何言ってるのかわからないんですね。これは物語としてはよろしくないのかもしれませんが、個人的には好印象な場面です。作業をした後に妻と娘がおにぎりを持って来てくれたら嬉しいもんですよ。思わず会話をしたくなるというもの。だけど何言ってるかわからないなんてのは当たり前の話しであってこのシーンはその意味ではめちゃ自然でリアリティがあるんですよ。ストーリーとして綺麗にまとめたいのであればこういうシーンは入れないと思うんですが、敢えて挿入するという辺りに監督のこだわりかななんて思いましたね。

また、圭太が育てるイチジクに関してですが、中を割ると見た目がグロテスク。これを強調する場面もありましたが、実はこのイチジクこそが本作のストーリー全体の核となってる部分でして、一見平和そうな島。そこで起こった殺人事件・排他的な島民・数年前に世間を騒がせた某議員を思わせるパワハラ町長・利権を得る為には平然と他人を売る同町長の醜悪さ等等本作で描かれる暗部こそまさにこのイチジクが象徴している様です。

そしてラスト。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、『コンフィデンスマンJP』を思わせる様なトリッキーなシーンも惹きつけられました。ただ、正直言うと読めた所もあるんですけどね…。

とまだまだ語りたい所はありますが、お時間です。非常に見応えのある面白い作品でした!

オススメです!