グラミー賞を5度受賞したイギリス出身の世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの自伝的映画。並外れた音楽の才能でまたたく間にスターへの階段を駆け上がっていった一方で、様々な困難や苦悩にも満ちたエルトン・ジョンの知られざる半生を、「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」や「ロケット・マン」など数々のヒット曲にのせたミュージカルシーンを交えて描いていく。イギリス郊外の町で両親の愛を得られずに育った少年レジナルド(レジー)・ドワイトは、唯一、音楽の才能には恵まれていた。やがてロックに傾倒し、ミュージシャンを目指すことを決意したレジーは、「エルトン・ジョン」という新たな名前で音楽活動を始める。そして、後に生涯の友となる作詞家バーニー・トーピンとの運命的な出会いをきっかけに、成功への道をひた走っていくが……。日本でも社会現象となった大ヒット作「ボヘミアン・ラプソディ」で、降板した監督に代わり映画を完成させたデクスター・フレッチャーがメガホンをとり、「キングスマン」シリーズのマシュー・ボーンが製作を担当。同じく「キングスマン」シリーズでブレイクしたタロン・エガートンがエルトン役を務め、吹き替えなしで歌唱シーンもこなした。エルトン・ジョン本人も製作総指揮に名を連ねている。
(映画.comより)
実は今年の夏に公開された作品の中でもとりわけ楽しみにしていたのがこの『ロケットマン』でした。
タイミング的にも『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットした後ですし、「二番煎じちゃうの?」という声があるのは確か。
でも同じ監督なんだからいいんじゃない?ていうのが個人的な考えです。
同時に同じ監督が今度はエルトン・ジョンを、となるとどうしても比較されてしまうのもまた事実。
この辺りどの様に作られているかチェックしましょう。
僕がこの映画を見るにあたって注目していたのは楽曲の使い方でした。
『ボヘミアン~』の場合、フレディマーキュリーがスターダムにのしあがるまでの過程をクイーンの名曲と共に作り上げていきました。
ライブシーンあり楽曲が生まれるまでのエピソードであったり。
そして数々のドラマの後に控えていたのがラストのライブエイドのシーン。
そこをゴールに見据えながらのフレディマーキュリー伝を楽曲を通じて楽しませてもらったものです。
そしてこの『ロケットマン』が同様の流れになるかと思えばさらにあらず。
確かに感動する様なライブシーンの挿入はありましたが、むしろ劇中のエルトンが前触れもなく急に唄い出すミュージカルの手法を取り入れていたのがやや意外でした。
有名アーティストの楽曲でミュージカルなんて言えば『マンマ・ミーア』のイメージが強いですが、あくまでこちらは伝記映画。
エルトンの半生に寄り添う名曲達を彼の一代記の印象的なシーンで流れる辺りこれまでの音楽系伝記映画との違いを感じます。
そしてもうひとつ。
『ボヘミアン~』がフレディの生涯を第三者の目線で見たストーリーとして展開されていたのに対し、本作はエルトン自身による語りがストーリーを構築していたのも特徴的です。
ステージを終え、派手な衣装を身にまとったエルトンが控室にて、彼のブレーンを集めた上で語られる彼の半生。
静寂な空間で一人だけ羽のついたステージ衣装のエルトンが静かに語り出すのは何だかシュールで思わず笑いそうになりましたが、そんな事はどうでもいいんですww
ストーリーテラーとして現れ、語られていくエルトン・ジョン物語に引き込まれていく事でしょう。
そんなエルトンを演じたのはタロン・エガートンなんですが、彼は何てエルトンと縁が深い事か。
彼の代表作と言えば『キングスマン』なんですが、思えばその『キングスマン』ではカメオ出演したエルトン本人を助け出すという役を演じていました。
また、イルミネーションアニメの『シング/SING』。
日本版ではスキマスイッチの大橋卓弥さんが担当していたゴリラのジョニーを演じていました。
そしてこのジョニーの歌唱曲がエルトン・ジョンの『I'M STILL STANDING』。
そう、『シング/SING』の中でエルトンの曲を歌っていたんてすね。
エルトン自身彼の歌唱力を非常に高く評価しているとの事。
エルトン自身もプロデューサーとなっているのがこの『ロケットマン』であり、そう考えるとタロン・エガートンがエルトン・ジョンを演じるというのはもはや必然的であったと言えるでしょう。
また、同じくプロデュースしたのはマシュー・ヴォーン。
これまでに『キック・アス』や『キングスマン』を製作監督してきた人、となれば全てが繋がってくる様ですね。
それから演出面で印象的だったのが、『CROCODILE ROCK』でのライブシーン。
エルトンも観客もふわっと宙に浮いてしまうという表現。
また、プールやスタジアム等でも映画ならではの魅せる仕掛けが盛り込まれていました。
考えてみたら『キングスマン』でもその映像的仕掛けでかなり楽しませてもらいましたからね。
そこにアーティストエルトン・ジョンがプロデュースするんだもの、並みの見せ方はしませんよ。
ただ、そのインパクトのある映像表現は時にエルトン自身の孤独な内面ともフィットしてくるんです。
両親に愛されなかった少年時代、同性愛者であるが故の苦悩と葛藤、彼がスーパースターになればなる程衣装もきらびやかにステージもゴージャスに変わっていく。
だけど誰にも理解されない孤独。
もっとも心に刺さったのは自分を捨てて出て行った実父にサインを頼まれるシーンですね。
その時のタロン・エガートン演じるエルトンの目が全てを物語っていましたね。
そんな物悲しさも含めて映画全体からエルトン・ジョンその人の生き方がミュージカルシーンと共に伝わってくる。
これまでエルトン・ジョンを聴いた事がないとか曲を知らないという人でもきっと楽しめる映画だと思います。
そしてこの映画を見た後に『キングスマン:ゴールデン・サークル』を見て頂きたい!
そこには活きたエルトン・ジョンが爆笑をかっさらいに来る姿を見せてくれてます。
タロン・エガートンとエルトン・ジョンの相性バッチリな共演も楽しめますからね。