きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

イエスタデイ

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トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル監督と「ラブ・アクチュアリー」の脚本家リチャード・カーティスがタッグを組み、「ザ・ビートルズ」の名曲の数々に乗せて描くコメディドラマ。イギリスの小さな海辺の町で暮らすシンガーソングライターのジャックは、幼なじみの親友エリーから献身的に支えられているものの全く売れず、音楽で有名になる夢を諦めかけていた。そんなある日、世界規模の瞬間的な停電が発生し、ジャックは交通事故で昏睡状態に陥ってしまう。目を覚ますとそこは、史上最も有名なはずのバンド「ザ・ビートルズ」が存在しない世界になっていた。彼らの名曲を覚えているのは世界でただひとり、ジャックだけで……。イギリスの人気テレビドラマ「イーストエンダーズ」のヒメーシュ・パテルが主演を務め、「マンマ・ミーア! ヒア・ウィ・ゴー」のリリー・ジェームズ、「ゴーストバスターズ」のケイト・マッキノンが共演。シンガーソングライターのエド・シーランが本人役で出演する。
(映画.comより)

全国公開から遅れる事一ヶ月半。
ここ山陰でもようやく公開となり、11月30日に見て参りました。
ここ近年続いている有名アーティストの楽曲をふんだんに使った音楽映画。
アバ、クイーン、エルトン・ジョンに続いて遂に真打ち・ビートルズの登場か?…という感じですがこの作品が上記の作品と違うのは、ミュージカルでも伝記でもなく「もしもビートルズを自分以外の人達誰もが知らなかったら?」という架空の世界を描いたSF的要素が非常に強いというところ。
ビートルズと言えば世界中のミュージシャンに強い影響を与え続け、CDやレコードを所有していなくても一度はどこかで彼らの楽曲を耳にしているというスーパースターである事は言うまでもありません。
たからこそそのビートルズを皆が知らないという架空の世界は想像が尽きない無限の世界が広がるわけなんですよ。
だって考えてみて下さい。
例えば『イエスタデイ』の1フレーズを口づさむだけで皆が「えっ、何今の曲?聴いた事ないけどすげぇいい歌!」なんて事になるんだから。

で、それを映像で表現したのが本作ですが、いや~、面白かった!
そもそもの発想がユニークなのは言うまでもないです。
そしてそれが成立するのはやはりビートルズだからこそだと思うし、改めてビートルズの偉大さについて再確認するんですよ。
で、この映画、やはりユニークな発想の上に基づいているからコミカルな描写もふんだんに盛り込まれているんですね。
家族の前で『LET IT BE』を初めて演奏する場面なんかは割とベタな展開なんですけど、声に出して笑っちゃいました。
後、主人公のジャックとひょんな事から行動を共にする友人の空気の読めなさとかね。

で、脚本がリチャード・カーティスという事もあってラブコメに寄る傾向があります。
そのラブコメとして見た場合、あるテーマが浮かび上がってくるんですが、スターになって巨万の富と名声を得る事とこれまで不遇な時代も支えてくれた愛する人との暮らしのギャップ。
あれ、この構図どこかで見た事ある様な?
と、思い返してみたら今年初頭に扱った『アリー/スター誕生』のそれに近いなと。
音楽を作ってプレーする喜び→人々に音楽を届け感動させたいというピュアな想い→ブレイク後、音楽的マーケティングの理論が持ち込まれ第三者の手により作者本人の意とするイメージと違う操作をされていく。
そんな点も非常に共通する部分もありましたね。
それにしても今はこういう業界のウラ的なネタも堂々と盛り込まれる様な時代なんですね。
ミュージシャンは純粋に自分の想いを音楽にのせ、それを唄うもの。
しかし、それだけでは成功を収める事は出来ず、世に出る為には売れる為の音楽を生み出さないといけないわけです。
それをミュージシャン本人のみならず周囲のスタッフ等があの手この手の戦略に打って出るという事。
それを映画で見せるというのは我々が音楽業界のマーケティングという前提を知ってるからこそ作り手側も作品に仕上げる事が出来るというわけですな。

なんて少し話しが反れました。
それから本作の注目はエド・シーランですね。
本人役での出演ですが、登場する時はここぞとばかりに『SHAPE OF YOU』がかかります。
でもってエドよく出演引き受けたな~なんて描写もありまして、エドのレコード会社でエドとジャックのマネージャーをしている女性に「エドなんてあなた(ジャック)を売り出す為の踏み台に過ぎない」なんて言われてます。
エド、そこ怒っていいんじゃない?ww

それから音楽映画ですから、もちろんビートルズの楽曲の使われ方に触れないわけにはいきません。
とにかく矢継ぎ早に流れるビートルズナンバーの数々に気分は高まります。
それも雑なメドレーとかにするわけではなく、演奏技術も高いですし、ジャック役のヒメーシュ・パテルも上手いのでビートルズへの愛やリスペクトの精神が伝わります。
ボヘミアン・ラプソディ』でのライブエイド程の圧巻なシーンではありませんが、スタジアム規模でのライブシーンもあり、そこで演奏される『HEY JUDE』は見応えがあります。
そのシーンだけでもこの作品、音楽映画としての機能は十分果たしていると思います。

それから後半の展開も良かったですね。
誰もビートルズを知らない世界。
その中でさもオリジナル作の様にビートルズ楽曲を歌い、成功を手にするジャック。
「いつかバレるのではないか?」
そんな恐怖と焦燥に駆られる日々を過ごす中、ある人と出会い…。
その後は控えますが、見事なストーリー展開だし、帰着点もスマートでした。

コアなビートルズファンならまた違う視点になるのでしょうが、個人的には大変楽しく鑑賞出来ました。
是非劇場でご覧下さい!