藤原竜也と蜷川実花監督が初タッグを組み、平山夢明の小説「ダイナー」を映画化。元殺し屋の天才シェフ、ボンベロが店主をつとめる殺し屋専用の食堂「ダイナー」。日給30万円の怪しいアルバイトに手を出したばかりに闇の組織に身売りされてしまった少女オオバカナコは、ボンベロに買われウェイトレスとして働くことに。ボンベロが「王」として君臨するダイナーには、全身傷だらけの孤高の殺し屋スキンや、子どものような姿をしたサイコキラーのキッド、不気味なスペイン語を操る筋肉自慢の荒くれ者のブロら、ひと癖もふた癖もある殺し屋たちが次々とやって来て……。ダイナーの店主ボンベロ役を藤原、物語の鍵を握る少女オオバカナコ役を玉城ティナが演じるほか、窪田正孝、斎藤工、小栗旬、土屋アンナ、奥田瑛二ら豪華キャスト陣が殺し屋役で出演。
(映画.comより)
「俺は~~~ここの~~王だ!!砂糖の一粒までが~~俺に従う!!!」
藤原竜也演じるボンベロがこう高らかに謳う宣伝見たのは一度や二度ではありません。
で、その度にくせになり、気付けば一人で真似していたりもするww
でも実はこのセリフこそ本作でメガホンを撮った蜷川実花さんが劇場へ足を運んだ人達へ向けた挑戦状とも取れたのは僕だけでしょうか?
ならば受けて立とうとばかりに今週もワタクシ・きんこんが実際に見てメスを入れようではないか~!
父親譲りの類いまれなる才能と芸術性を発揮してきた写真家の蜷川実花さん。
彼女のこれまでの作品は07年の『さくらん』、12年の『ヘルタースケルター』があります。
いずれも色彩豊かな実花ワールドが全面に溢れ、特に女性からの支持が高いという印象があります。
そして本作は『ヘルタースケルター』から7年振りの新作。
随分と年数は空きましたが、9月には早くも『人間失格 太宰治と3人の女たち』の公開が控えています。
それに先立って公開された今回の『Diner ダイナー』ですが、公開前から件のセリフを発する藤原竜也の怪演と玉城ティナちゃんのメイド姿に萌えさせられながら楽しみにしていた作品です。
まず、結論から言うと今回も安定の蜷川実花ワールド。
鮮やかな色使いに目を奪われつつも、人間の刹那と背徳感を帯びさせそれでいて徹底的にエンタメ性を追及した作品でした。
本作はG指定となっています。
暴力やエロティシズム、サイケデリックを絵に描いた様な過激な作品でありながら小学生でも安心して見られるという事なのですが、これまでの蜷川実花作品と比べるとなるほど確かにソフトに抑えられていました。
彼女が得意とする官能や暴力、人間の堕落等の面は作中に盛り込まれてはいますが、それより優先したのがエンターテイメント性の追及だったのではないでしょうか。
それが本作では功奏して結果、殺し殺されの血みどろの世界であってもそこに娯楽性があり、後を引きずらない。
作品のタイプは違いますが、前々回同じ殺し屋が登場する映画で『ザ・ファブル』を取り上げました。
血なまぐさい殺しや暴力が描写される作品という意味で本作と共通するのですが、『ザ・ファブル』の場合、徹底したユーモアを本作では作品の色使いや或いは女子が好みそうな男の色気をふんだんに取り入れた殺し屋達の描写が残虐性をうまく浄化していた感があります。
それと本作を見て僕が感じたのは中島哲也的アプローチに近い演出がところどころに見受けられましたね。
とりわけ『告白』以降近年の中島哲也作で見る様な絶望の淵に立たされた登場人物とその当該人物にまとわりつく様な舞台演劇的な演出ですよね。
とりわけ冒頭の玉城ティナ演じるオオバカナコが自身の生い立ちを語る場面。
都会の雑踏の中、名前も知らない人達が通りすぎる。
その中でひとり立つひとりの若い女性。
彼女の目から見た雑踏の中の人々は何も残さない。
そんな人達の身体がのけぞる様に公転しようが彼女は何も変わらないし、生い立ちを敢えての舞台演劇的にして見せるのだって見る人に絶望と虚無感を生み出すのには非常に効果的な見せ方だったと思います。
それから消されてしまった歴代ウェイトレスなんかも中島さんがやりそう手法でした。
彼女達はどんな失態を犯してあの小さな額内に閉じ込められてしまったのかこちらの想像力を掻き立てられますが、本来消されてしまったハズなのにあの作中ではまるで生きているかの様に小さな額内で動き回るし、それがカナコの心にも語りかけたりするし。
そういえば窪田正孝演じるスキンが暴れまわった時、あのウェイトレスから血しぶき飛んでたよね?
既に死んでんじゃないの?と疑問を抱かせつつも最初こそ「こいつらいる?」なんて思ってましたが、いつの間にか癖になってた自分もいました(笑)
ちなみにこの歴代ウェイトレスの皆さん、そうそうたるメンバーで構成されていたりしますよ。
思えば本作のプロットとしては、現実世界において誰からも承認されない、誰からも必要とされないそんな登場人物が非現実的な奈落の世界へと突き落とされる。
その視点で言えばまさに藤原竜也がかつて出ていた『カイジ』と通じるものがありますよね。
地下王国からの脱出にもがいていた藤原竜也が今や殺し屋専用Dinerのシェフ(王)ですからww
全体的には非常に楽しめました!
これまでの蜷川実花作品全て見てきましたが、最高傑作かと思います!
ただ、それでも敢えて言うとしたらなんですが、後半殺し屋達の権力闘争やらが出てくるのですが、多分尺の関係でしょう。
やや急ぎすぎ感が否めなかったのとボスの死の真相とかがぼやけていた点。
その一方で蜷川実花流演出の花びら満開やらゴテゴテモリモリ極彩色で画面いっぱいとか宝塚的な男装の麗人登場!とか「あっ、この辺でスローモーション入れちゃおう!」とかこれが続くと少々お腹いっぱいなんだよなぁ。
いや、もちろんこれぞ蜷川実花の世界!ていうのはわかるけどもう少しサラッとやってくれた方が個人的には良かったかな?
でも、色の博物館とでも呼びたい鮮やかな映像体験は楽しめます!
皆さんも是非劇場でご覧下さい。