人が乗り込み操縦する巨大ロボットのイェーガーと「KAIJU」と呼ばれる巨大モンスターの戦いを描いて話題となったSFアクション大作「パシフィック・リム」の続編。前作を手がけたギレルモ・デル・トロは製作にまわり、テレビシリーズ「Marvel デアデビル」などで知られるスティーブン・S・デナイトが長編映画初監督を務めた。前作でイドリス・エルバが演じたスタッカーの息子ジェイクが新たな主人公となり、前作から10年後、平穏が訪れたと思われた地球に再びKAIJUが現れたことをきっかけに、新世代のイェーガーに乗り込む若きパイロットたちの戦いを描いた。ジェイク役は「スター・ウォーズ フォースの覚醒」で一躍世界的に知られる存在となったジョン・ボイエガ。共演にスコット・イーストウッド、ジン・ティエン、前作から続投のチャーリー・デイ、菊地凛子ら。日本からは菊地のほか、新田真剣佑がパイロット訓練生のひとりとして登場する。自らの命と引き換えに人類を救った英雄スタッカーを父に持つジェイクは、父とは別の道を歩んでいたが、KAIJUに復讐心を燃やす少女アマーラと出会ったことをきっかけに、義姉である森マコと再会。マコの説得により、一度は辞めたイェーガーのパイロットに復帰することになるが……。
(映画・comより)
日本のお家芸とも言えるロボット、怪獣という特撮を見事ハリウッド流にブラッシュアップさせ映画ファンからも高い評価を得た前作『パシフィック・リム』。
あれから5年の時を経て公開された最新作『パシフィック・リム:アップライジング』。
前作で監督を努めたギレルモ・デル・トロは『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー作品賞を獲得したのも記憶に新しいですね。
デル・トロ自身はこの続編には意欲的だったそうですが、何やら大人の事情が絡み本作はスティーブン・S・デナイトにバトンタッチ。
デナイトは前作の踏襲という選択を外し、主要な登場人物も映像的な手法も変え、デナイト流にアップライジングしてアプローチしてきました。
その結果が前作のファンからは否定的に捉えられている様です。
果たしてどうなのでしょう?
2013年と言うと日本において言えばロボットや怪獣が登場する特撮的なアクション映画から距離のある時期だと思います。
昨年の『キングコング』や来月公開される『ランペイジ』など今でこそよく見られるジャンルではありますけどね。
2016年の『シン・ゴジラ』の大ヒットがいわゆる特撮系映画の分岐点になったと思います。
5年前後前だと安定したヒットとなっていたのはせいぜい『トランスフォーマー』シリーズくらいなものです。
しかし、ハリウッドで言えばこの『パシフィックリム』が劇的な変化を生み出したと言っても過言ではないでしょう。
イェーガーとKAIJUが対決という至ってシンプルな構造。
その上に『アルマゲドン』的な自己犠牲のスピリッツに登場人物が作り出すヒロイズム等などカタルシスが生まれるあらゆる要素が一本の作品に凝縮されておりました。
それが映画ファンの胸を打ったのは言うまでもないでしょう。
しかし、続編である本作はその世界観に捕らわれない自由な作りとなり、それに挑んだスピリッツは評価の出来るところではないでしょうか。
まず主要な人物をガラッと変え、若い世代をフォーカスした点。
それ自体は良いと思います。
ただ、スタッガーの息子・ジェイクという本作の主人公について。
前作でスタッガーの息子についての描写は一切ありません。
それが本作で降って沸いて出てきた様に現れ、ちゃっかり主人公になっちゃってるんです。
更に菊地凛子演じるマコ。
彼女は前作において非常に存在感がありました。
『パシフィック・リム』という作品においては彼女の存在を抜きにして語れない。
それほど魅力的なキャラクターでした。
そのマコはジェイクの義姉として登場するのです。
これまた説明もない唐突な設定。
前作でスタッガー、ジェイク、マコを結ぶエピソードがあれば良かったのですが。
あるいはせめて本作冒頭において三人のエピソードシーンを挿入しておけば違和感はなかったと思います。
更に勇敢な父を持つジェイクなのですが、冒頭では悪に手を染めるゴロツキと登場します。
それ自体は悪くないのですが、一連のワルエピソードには尺を使いすぎな感が否めないんですよね。
それから比較的前半ですが、とある人物を乗せたヘリコプターが落下するシーンについて。
ジェイクの乗ったイェーガーが助けだそうとするのですが、悲壮的な音楽を流すタイミング早すぎ(笑)
あれだとすぐ結末がわかってしまうじゃ~ん
次に富士山を目指し、日本へ上陸したKAIJUとイェーガーが格闘するシーン。
本作のハイライトでもあり最もエキサイトした場面でもあります。
ただ、この映画に限らずですがハリウッドにおける東京の描写ってどうにも紛い物くさくなるんですよね~。
最近の作品だと『ジオストーム』。
あれもなかなかひどかったですが、本作もまた然りです。
新宿の街に襲来したKAIJUに逃げまとう人々。
その様子がどこか滑稽に見えてしまう。
更に言えばその街の光景にも「日本舐めてんのか」と突っ込みたくなる描写がいくつか見られます。
浅草の雷門を思わせる様な提灯がビル街にデカデカと吊られていたりとか露骨に目につく「パチンコ」と書かれた大きな看板とか。
この人から見た日本とか東京ってそんなイメージなのですか?
本作は中国人キャストも存在感を発揮するし日本からも新田真剣佑がキャスティングされていたりガンダムも登場するなど東洋色が色濃く反映された作品ではあるのですが、描写の粗さが何とも残念でしたね。
それから前述のマコ然りですが、前作からの続投組の扱い方にも言及しておきたいです。
前作のイメージを崩し新しいものを生み出したいというのはわかりますが、前作からの登場人物のキャラクターや位置付けを崩し過ぎでした。
もちろん悪い意味で。
この様に前作が好きであればあるほどつつきたくなる様な続編でした。
しかし、イェーガー VS イェーガーという試みは斬新でなおかつ面白かった!
しかも対決したイェーガーの中味が⚪⚪というのも。
ネタバレになりますのでこの辺で。