きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

劇場版ポケットモンスター みんなの物語

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人気アニメ「ポケットモンスター」シリーズの劇場版第21作。前年公開の「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」から始まった、サトシとピカチュウの新しい冒険を描き、今作には伝説のポケモン「ルギア」が登場。1年に一度の祭りでルギアから恵みの風がもたらされる街フウラシティを舞台に、新しい仲間たちとの物語が紡がれる。1年に一度の風祭りの最終日に、ルギアからの恵みの風がもらえるというフラウシティ。偶然、祭りに参加していたサトシとピカチュウは、リサ、カガチ、トリト、ヒスイ、ラルゴという5人の仲間と出会う。それぞれが悩みを抱え、パートナーのポケモンと一歩を踏み出せずにいる5人との出会いが、運命の歯車を回し始める。芦田愛菜川栄李奈濱田岳大倉孝二野沢雅子のほか、シリーズおなじみの中川翔子山寺宏一がゲスト出演する。
(映画.com より)

ここに来て何故ポケモン

て話しですが、実はワタクシお恥ずかしながらゲームで『ポケットモンスター』なるものをした事がありません。
早い話し世代ではないんですね。
なのでゲームにおいてのポケモンのシステムやら何やらと言うのがわからないです。
そんな私にとって転機となった作品が昨年の『劇場版ポケットモンスター キミにきめた』でした。
アニメの『ポケモン』一作目のリメイクという事でシリーズ末見でも楽しめる内容と聞き、見に行ったらそれがね~、メッチャ良かったんですよ。
泣きこそしませんでしたが、ウルっときたしバトルシーンなんかも熱かった!
いや~、所詮子供向けなんて舐めてましたよ。

そして一年後。再び最新作が公開され見て参りました。
夏休みに入る前の平日に鑑賞してきたのですが、圧倒的に大人が多かった。
ドラえもん』や『しんちゃん』を見た時もそうでしたが、大人達…いや、大きなお友達のみんなは鑑賞するタイミングを心得てらっしゃるのですね。
最近ではそんな大きなお友達の為にレイトショーもあるくらいですから。

さて、本作ですがサトシとピカチュウが主人公であるのは言うまでもないのですが、様々なオリジナルキャラクターが登場し、それぞれに見せ場がある言わば彼ら一人一人が主人公とも言える群像劇となっていました。
しかもみんなそれぞれに色んなコンプレックスを抱え、それに対峙しながらポケモン達と行動を共にし成長をしていく。
虚言癖のあるオッサンに人前で喋るのが苦手な青年、ポケモン嫌いとうそぶく偏屈者のばあさんに陸上に打ち込むも挫折を味わった少女。
年齢も性別もバラバラだが、彼らそれぞれに抱えたドラマがあり、ポケモンを通じてひとつになる。
先日評した『ワンダー 君は太陽』ではオギーという少年を軸に彼の周囲の人々の内面を映し出したのが印象的でしたが、本作ではポケモンを通して登場人物達のヒューマンな部分をフォーカスしていく。 
実に見事なストーリー展開だったと思います。

そしてそれぞれのキャラクターを演じたゲスト声優の面々が素晴らしい!
とりわけ印象深かったのが女子高生のリサを演じた川栄李奈
病気の弟の為にポケモンを探しに行くもポケモンに対して無知が故にカガチの嘘にあっさり騙されて無駄骨を折らされるハメになる。
しかし、彼女には打ち込んできた陸上で挫折を味わった経験がありました。
一見、派手そうな外見とは裏腹に繊細な面を持つ少女を好演していました。
それから野沢雅子さん演じるヒスイという老婆は存在感を放っていましたね。
悟空のイメージがあまりに強い野沢さんですが、おばあさんの役もまたよくハマるものでして、『ONE
PIECE 』のDr.くれはが特に印象深いです。
本作では偏屈な老婆・ヒスイを演じていらっしゃいましたが、ラストに近づくにつれ、このおばあちゃんの活躍に目が離せなくなります。
山寺宏一さんが担当したオリバー市長も印象に残るキャラクターでした。
古今東西あらゆる映画作品において

権力=悪の象徴

という描かれ方はよくされるものです。
しかし、こと本作においてこの市長はサトシ達と手を取り町に起こった混乱を鎮める為に尽力します。 
ジュラシック・ワールド』と近いタイミングで見たせいかどうしても欲にまみれた権力者を思い出してしまったのですが、善人権力者というキャラクターが妙に新鮮でした。

この様に登場するキャラクターや演じられた皆さんいずれも素晴らしかったと思います。

しかし、昨年の『キミにきめた』と比較するのは酷ですが、思いの外淡々としていたのが強いて言えばの不満点です。
山場がなかったわけではないですが、盛り上がりに欠けてしまったのは、否めないですね。
アベンジャーズ』におけるサノスという強大なヴィラン(敵)がいれば…いやいやあんな半端ないのじゃなくてもいいから特徴的な敵キャラがいてほしかったかな~。

ポルノグラフィティのエンディング後には来年の予告が流れました。
かなり騒然としてましたよ。
劇場を後にしてからもその会話をしてる人もいました。

ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』。
去年から見始めた自分にとっては「へ~」くらいの感覚でしたが、初期からのファンにとってこれは大事件の様ですね。

ジュラシック・ワールド 炎の王国

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シリーズ14年ぶりの新作として2015年に公開され、記録的な大ヒットとなった「ジュラシック・ワールド」の続編。前作でハイブリッド恐竜のインドミナス・レックスとT-REXが激闘を繰り広げ崩壊したテーマパーク「ジュラシック・ワールド」を有したイスラ・ヌブラル島に、火山の大噴火の兆候が表れ、恐竜たちの生死を自然に委ねるか、あるいは危険を冒してでも救い出すか、人間たちは判断を迫られていた。そんな中、恐竜行動学のエキスパートのオーウェンはテーマパークの運営責任者だったクレアとともに、恐竜たちを救うべく行動を開始するが、その矢先に島の火山で大噴火が発生する。恐竜と心を通わせるオーウェンを演じるクリス・プラット、クレア役のブラウス・ダラス・ハワードらメインキャストが続投。監督は前作のコリン・トレボロウに代わり、「永遠のこどもたち」「インポッシブル」などで注目されたスペインの出身のJ・A・バヨナが新たに務める。
(映画.comより)

いや~、スゴいスゴいと後100回くらいは言いたいのですが、それではレビューになりませんので作品についてより詳しく見て参りましょう!

前作では圧倒的なCG技術等を駆使し、日本国内において2015年度の興行収入1位となる大ヒットとなりました。

スティーブンスピルバーグが監督をつとめた『ジュラシック・パーク』公開から22年経ち今なお多くのフォロワーに支持され圧倒的な存在感を見せつけた作品の続編とあれば見逃さないわけにはいきません。
前作に続き、スピルバーグは製作総指揮に回り、J.A.バヨナという43歳の若手監督がメガホンを取りました。

まぁ、しつこい様ですがとにかくスゴいんですよ、この映画。
恐竜達が画面狭しととにかく暴れまわる。
圧倒的なスケールで展開されるのでとにかく息つくいとまも与えません。
そしてただ暴れて迫力あって「すげぇ!」だけじゃないんですよね。
クリス・プラット演じるオーウェンが手なづけるブルーがかわいいんですよ。
いや、見た目はめっちゃいかついんですよ。
だけどオーウェンと接する時に萌えちゃいます(笑)
恐竜が暴れまわるシーンに関して言えば本作はイスラ・ヌブラル島でのドタバタだけではないんですよね。
まさか、「こんな所に恐竜くる~?」と思わせるまさかの場所に入り込んでくるんですよ。
とりわけ後半部になるとそれがより際立つのですが、何と人間が住む屋敷に入ってくるんですよ。
そしてそれがまた妙にリアルで恐怖感が増す。
ホラー的な演出も加わるのでお子様と見る場合は要注意ですよ(笑)

また、恐竜を金儲けの道具にすべくハントに精を出す人間達が何とも醜い存在として登場してきます。
軽いネタバレになりますが、恐竜たちをオークションにかける悪徳な富豪が登場します。
しかし、獰猛な恐竜達に追われ、潰され粉砕される。
このシーンって妙にスカッとするんですよね。
でも、コレって資本主義への警鐘でもあり、我々強欲な人間に向けて発せられたメッセージでもあります。
「よっしゃ、行け!やっちまえ~!」なんて見てたそこのあなた!
あなたは大丈夫ですか?

メッセージ性と言う意味で本作に盛り込まれていたのは生物の生命とその倫理観というところでしょうか?
クローンという言葉を耳にする機会は多いかと思います。
本作において言えば人間の手によって恐竜を蘇らせたり或いは本作に登場するあるキャラクター。
実はそれこそがクローンなのです。
そしてそれを軸としてクローンというものの存在について考える展開となります。
そもそも宗教的な観点で言えば森羅万象あらゆる生きとし生ける者の生命というのは神の手によって作り出されると考えられています。
人間の手によって生命を生み出すという行為は(人為的な性的行為という意味ではなく)神への冒涜でもあるのです。
その様な暴挙をどの様に捕らえるかが象徴的に描かれています。
とある知人の話しによれば今後の技術が進化すると己の意に沿う様な子供を作りたい、そう考えた時にデザイナーズベイビーを作るという技術が開発されているとかいないとかという話しです。
しかし、倫理的な問題から実現は難しいとの見解ですし、本作のテーマに沿って考えると決して許されない事であると言えますね。
話しを本作に戻しましょう。
そんな普遍的なテーマをストーリーテラーの様に解説してくれる人物が登場します。
さらに、1・2作目にも登場していたマルコム博士。
彼は複雑系理論の数学者で、自らの立場から、人間は自ら生み出した一見万能に見える科学技術をもってしても、自然を完全に制御することはできない。たとえ恐竜がどうなろうと、人知を超えた領域であるので放っておくべきである主張するのです。
この博士の存在が作品において非常に説得力のある存在として機能しており、このシリーズ全体を文明的に批判をする上でもまた作中のご意見番的存在としても存在感がありました。    

ストーリー全体としてはしっかりと前半後半で分けられておりました。
所見の人でも比較的容易に鑑賞出来るシンプルな話しの運び方だったと思います。

ヌラブル島を舞台に、迫りくる噴火と溶岩の危機から逃れるべく、ノアの方舟よろしく恐竜救出を目指すのが前半。
強欲な人間達の魔の手にかかりながらも人間達の逆襲ののろしを下ろし人間達と戦う、そしてそんな恐竜達を救出すべくオーウェンらが立ち上がる、そんな後半パート。
一見チグハグに見えなくもないですが、ラストに全てが結び付いていく絶妙な脚本となっています。

実にダイナミックなシーンの連発で夏の大作にふさわしい映画であると同時に深いテーマも盛り込まれた作品でした。

この夏、恐竜達が繰り広げる一大スペクタクル。
是非あなたも劇場でご覧下さい!

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

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「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」に続く「スター・ウォーズ」シリーズの知られざる物語を明らかにするアナザーストーリー第2弾で、ハリソン・フォードが演じたシリーズ屈指の人気キャラクター、ハン・ソロの若き日の姿を描くSFアドベンチャー。シリーズ第1作「スター・ウォーズ 新たなる希望」でルークやレイアと出会う前のハン・ソロが、アウトローながら内に秘めた正義感で数々の試練に立ち向かっていく姿を描く。若き日のハン・ソロに扮したのは、「ヘイル、シーザー!」で注目された新星オールデン・エアエンライク。同じく若き日の悪友ランド・カルリジアンをドナルド・グローバーが演じ、エミリア・クラーク、ウッディ・ハレルソンらが共演。ハン・ソロの無二の相棒となるチューバッカも登場する。「ダ・ヴィンチ・コード」などで知られるベテランのロン・ハワード監督がメガホンをとった。
(映画.com より)


ダ・ヴィンチ・コード』『バック・ドラフト』などで知られるロン・ハワード監督。
最近では興行的なヒットにこそ至りませんでしたが、ビートルズドキュメンタリー映画も製作しました。
スターウォーズ』シリーズ生みの親であるジョージ・ルーカスとは長年の親交がある大ベテランです。そしてハン・ソロの若き姿を演じたのは、オールデン・エアエンライクとヒロインのキーラを演じたエミリア・クラーク。どちらも日本ではまだそこまで名前が売れていない期待の新人です。
ハンソロ=ハリソン・フォードというイメージが強いわけですからこの若き新人オールデン・エアエンライクにとってはかなりのプレッシャーがあった事でしょう。
また、ハン・ソロの師匠的な役割として登場するベケットを、『スリー・ビルボード』等に出演したウディ・ハレルソンが担当しています。

さて、『スターウォーズ』シリーズがディズニー配給となり久しいですが、2015年の『フォースの覚醒』から始まる三部作。
その間にスピンオフシリーズを展開するというのがディズニー流の興行スタイルの様です。
2016年末に公開された『ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリー』のヒットが記憶に新しいところですが、本作はその『ローグ・ワン』に続くスピンオフという事なのですが、何やら北米では興行的に振るわないとか?
日本でも当初の期待よりかなり低めの興行成績との事。
その原因は一体何なのではないでしょうか?

まずひとつに考えられるのが、シリーズの矢継ぎ早に次々と公開されていくそのペース。
こと洋画においては公開されれば必ず大ヒットが約束されるシリーズ物があります。
パイレーツ・オブ・カリビアン』、『ハリー・ポッター』、そして公開間もない『ジュラシック・ワールド』等など。
これらのブランド力の強い洋画作品の公開ペースを考えてみて下さい。
数年に一度のペースでまるで大物アーティストのアルバムリリースくらい(と言えば大袈裟なくらいアルバム出さない人もいますけど・笑)
ある程度の期間を置いてからの公開ですね。
ところがここ最近の『スターウォーズ』シリーズはと言うと本編とスピンオフの公開タイミングが早すぎてみんな疲れてきてるのではないでしょうか?

そして二つ目なんですがこれが相当ダメージがありました。
それは『最後のジェダイ』の失敗。
このブログでも評しましたので詳しくはそちらを見て頂くとして作品の出来が悪いと次作へ与える悪い影響というのは拭えない部分です。 
まぁ、私のみならずですが、『最後のジェダイ』に失望した人が『スターウォーズ』シリーズに辟易してしまい結果、スピンオフを含めた新作の鑑賞の足が遠のいてしまう。
ごくごく自然な事だと思います。

で、実際にそんなマイナスなインフォメーションを耳にした状態で鑑賞した本作。
如何なるものであったかですが、いちハリウッドのアクション/SF大作として見た場合は及第点。
しかし、『スターウォーズ』の名前を冠した作品として見た場合は残念な作品と言う印象でした。

そもそも本作はハン・ソロという人物をクローズアップしたシリーズ通して初の人物伝です。
その意味ではハン・ソロという名前の由来であったりチューバッカとの出会いであったりミレニアム・ファルコン号へ乗るまでの過程であったり私の様に『スターウォーズ』をあまり知らない人にとってはわかりやすく描かれていたと思います。
また、コアな『スターウォーズ』ファンにとってはハン・ソロにまつわるあれこれを再確認するという意味でもよく出来た作品だったと思います。
旧き良き西部劇をベースにしながら繰り広げられるアクション活劇。
スターウォーズ』名物とも言えるライトセーバーこそ登場しませんが、アクションシーンなどはなかなか見ごたえがあったと思います。

ところでこの映画、元々は違う監督がメガホンを取る予定たったというのはご存知の方も多いと思います。
当初は『LEGO ムービー』のフィル・ロード&クリス・ミラーという40代前半の若手コンビが監督を務める予定だったんですが、ディズニーサイドとの方向性の違いなどもありふたりは監督を降板。
結果としてふたりは製作総指揮に回り、そして名匠ロン・ハワードへと監督のバトンが渡される事となりました。
そしてロン・ハワード監督の元、幾度とない録り直しの末、完成したのが本作です。

結果的には無理な冒険に走らず手堅くまとめられたのでこれはこれでよかったと思います。
無難に面白いし無難に丁寧。
だからアメリカの興行不振という前情報を念頭に鑑賞すると「あれ、意外と悪くないじゃん」という心境に行き着く。
だからボロクソに批判してやろうなんて気にならなくなる。(別に批判をしたくてこのブログやってるわけじゃないですが)
だけどそれがまた不満なんですよ~(めんどくさい奴やのぉ~)
無難過ぎて平均点の以上にも以下にもならない。
一周して面白くないという評価に至るんですよね~。

とりわけ突っ込んでおきたいのはキーラなんですが、彼女の存在は若きハン・ソロにとっては大切な人物です。
しかし、やんごとなき事情によりしばし離れ離れになりますが再会してからの描写が弱いんですよね。 
いや、それだけならまだいいです。(いや、よくないけど)
どうも次作へ引っ張ろうとするあざとい見せ方をするのでそこに潔さを感じない。
きちっと本作で締めるところは締めて欲しかったし、結局そういうところがディズニーへの『スターウォーズ』不信へ繋がっていくのではないでしょうか?
途中までは悪くなかったですが、そこで萎えてしまいました。

個人的には『スターウォーズ』シリーズはスピンオフも含めてしばらく空白の期間を設けてそして数年後にまた素晴らしいスペクタクル作品を見せてほしいと思います。

なんて思っていたら今作の興行不振を受けスピンオフ作品の公開を見合わせるとかどうとか?
賢明な判断だとは思いますが果たしてどうなる事でしょう? 

ワンダー 君は太陽

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全世界で800万部以上を売り上げたR・J・パラシオのベストセラー小説「ワンダー」を、「ウォールフラワー」のスティーブン・チョボウスキー監督・脚本で映画化したヒューマンドラマ。ごく普通の10歳の少年オギーは、生まれつきの障がいにより、人とは違う顔をもっていた。幼い頃からずっと母イザベルと自宅学習をしてきた彼は、小学5年生になって初めて学校へ通うことに。はじめのうちは同級生たちからじろじろ眺められたり避けられたりするオギーだったが、オギーの行動によって同級生たちは少しずつ変わっていく。「ルーム」で世界中から注目を集めた子役ジェイコブ・トレンブレイがオギー役を務め、「エリン・ブロコビッチ」のジュリア・ロバーツが母イザベル役、「ミッドナイト・イン・パリ」のオーウェン・ウィルソンが父ネート役をそれぞれ演じる。
(映画.com より)

公開時から気になっていた作品『ワンダー 君は太陽』。
遅ればせながらようやく見て参りました。
そもそも何故鑑賞する機会が遅くなってしまったかなのですが、近場のシネコンの上映回数に要因がありまして公開初日から一日三回のみの上映だったんですね。
で、初週は『空飛ぶタイヤ』の方を優先してしまったら何と翌週からレイト一回のみの上映に。
おいおい、そりゃないぜ~。

しかし夏の大作ラッシュが始まれば必然的に打ち切られるであろうとの予測からレイトショーにて鑑賞してきたという次第です。
観客は私を含めて三人のみという淋しい状況でしたが、お陰でゆったりと鑑賞する事が出来ました。

さて、そんな本作ですがマイノリティな存在に対して周囲がどの様に向き合うかを投げ掛ける非常にメッセージ性のある深い内容の作品でした。

本作の主人公であるオギー君。彼は生まれつきの障害により人と違う顔をしています。
そんな彼が生まれて初めて学校へ行き、そこからの彼の成長を描いていく作品ですが、その容姿から周囲からは好奇の目で見られたりいじめを受けたりします。
そしてそんな彼の悲痛さと彼と向き合う家族の姿が前半の中心となります。
実は私自身、自分のコンプレックスからくる周囲からのからかいやいじり、そこからくるいじめによって嫌な思いをした経験があります。
大人の目から見たら子供たちの社会は小さなもの。
その視点で子供に強い言葉を掛ける事もありますが、しかし皆さんの子供時分を思い出してみて下さい。
大人であれば自分が所属する例えば会社であれば会社の様なコミュニティに止まらずその他のコミュニティに属して社会活動は出来ます。(サークル活動、カルチャースクール、地域のボランティアなど)
しかし、10歳の少年にとってみれば自分の社会は学校にしかない子がほとんどです。
その社会で自分が否定されてしまったら全てが閉ざされてしまう絶望感にさいなまれてしまいます。 
いじめを苦に自殺するなんてニュースを見たら「何とかならなかったのか」「親や教師は何してた」とか無責任に言い放ったり中には「いじめる奴は悪いがいじめられる方も悪い」なんていう暴論を放つ輩も居ます。
しかし、当人にとってみればそこの世界しか現実は見えないものでもあります。
本作におけるオギー君の初登校の日の夜の表情などはまさにそれを訴えている様で身につまされる思いです。

しかし、そんなオギー君にも友達が出来る。
初めて出来た友達と仲良く下校するオギー君を見たジュリア・ロバーツ演じる母・イザベルの安堵の表情は同様の悩みを抱える母親の表情そのものだと思います。

さて、本作ですが予告を見ていたらあくまでこのオギー君を主人公にした少年の成長記的な話しだとばかり思っていました。
いや、もちろんそれはその通りなのですが、本作は彼ばかりでなく彼に関わる周辺の人物の心理的機微などを映し出したサイドストーリーも用意されたいわば群像劇でもあったのです。
オギーの親友・姉・姉の親友のストーリーがそれなのですが、各セクションでそれぞれの環境、心境、オギーに対しての目の向け方などがしっかりと語られていきます。
そしてそれぞれに表面的には見えない悩みを抱えています。
はじめは母親に仲良くしてあげなさいと言われてオギーに接していた友人は頭も良くユーモアセンスもあるオギーに一目置きはじめます。
しかし、クラスを牛耳る金持ちのガキ大将(って言い方古いかな??)の前では彼に同調し、オギーの陰口を叩く。
スクールカーストの壁を前にして自分を偽り友達を悪く言う。
年頃の少年・少女であればよくある話しです。
しかし、それをオギー本人に聞かれてしまいオギーを傷つけ距離を置かれる。
個人的にはどちらの経験もあるので両者の気持ちが痛い程わかってしまうんですよね。

一方、姉とその親友におけるサイドストーリーを見てみましょう。
数少ない姉の親友が高校デビューを機に違う友達とつるむ様になり姉にはそっけない態度を取られる。
それにより姉は学校に居場所がなくなり孤独を感じる事になる。
すぐに彼氏が出来たからまだ良いのですが、あのまま彼女が誰とも気を許せず淋しい高校生活を過ごしていたら?
考えただけでいたたまれない気持ちになります。

一方、姉の友人はと言うと家庭環境がよくなくオギーや姉の様な一家を羨ましく思い、偽りの自分を造り人気者になります。
それを後ろめたく思い、姉に冷たく接する様になる。
結局、思春期の些細な心の揺れがこの二人の友情にすれ違いを生じさせていたのです。
これまたこの二人の心境に寄り添う事が出来る。
特に女性の方であればかなり共感出来る描写なのではないでしょうか。

また、印象深いシーンとしてはオギーをいじめるボンボンの悪ガキです。
彼のいじめがエスカレートすると両親共々校長に呼び出しを受けるのですが、この両親というのがいわゆるモンスターペアレンツなんですよね。
とんでもない両親の元では歪んだ性格の子供が育っ。
それは万国共通の様ですね。

そしてオギーの人柄にひかれ、周囲の同級生達が集まり、絡んできた上級生と喧嘩した後の清々しいシーンなんかを見ると『スタンド・バイ・ミー』的な少年達の成長譚を見る様でした。

そしてラスト。
一年ですっかり成長し、周囲の人々に光を与えたオギーの姿が涙を誘います。
君は太陽」という副題の持つ意味がここで明らかにされます。

個人的にはこの映画。
文科省推薦で全国の小中学校で上映会を行なってほしいと思いました。
いじめ問題に向き合う意味でも障害者との向き合い方を学ぶ上でも友情を見つめ直す意味でも非常に意義のある作品だと思います。
もし、私が学校の先生だったら生徒にこの作品を見せてた事でしょう。
よくギターを弾いて生徒と歌を唄う先生居たでしょ?
あのノリです(笑) 

50回目のファーストキス

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アダム・サンドラードリュー・バリモア主演による2004年のハリウッド映画「50回目のファースト・キス」を、山田孝之長澤まさみ共演でリメイクしたラブコメディ。ハワイ、オアフ島でツアーガイドとして働きながら天文学の研究をしているプレイボーイの大輔は、地元の魅力的な女性・瑠衣とカフェで出会う。2人はすぐに意気投合するが、翌朝になると、瑠衣は大輔についての記憶を完全に失っていた。瑠衣は過去の事故の後遺症のため、新しい記憶が一晩でリセットされる障害を抱えているのだ。そんな瑠衣に本気で恋をした大輔は、彼女が自分を忘れるたびにさまざまな手で口説き落とし、毎日恋に落ちて毎日ファーストキスを繰り返すが……。「銀魂」をはじめコメディ作品で手腕を振るってきた福田雄一が監督・脚本を手がけ、ラブストーリーに挑戦。オリジナル版の舞台でもあるハワイでオールロケを敢行した。
(映画.com より)

興行収入38億円を記録し昨年度の邦画実写1位の大ヒットとなった『銀魂』。
続編もいよいよ来月公開され、期待が高まる福田雄一監督。
6月初週に公開され、『万引き家族』・『空飛ぶタイヤ』というヒット作がひしめく映画ランキングにおいて大きく順位を下げる事なく着実に興収を伸ばしているのが本作・『50回目のファーストキス』です。
いわゆる純愛系のラブストーリーでこのテの作品は普段はあまり見る事がないのですが、先日鑑賞して参りました。
鑑賞動機としては他に見る作品がなかったから…てのは事実ですが(事実かいっ!!)それ以上に『勇者ヨシヒコ』シリーズの福田雄一監督がメガホンを撮ったラブストーリーという題材に魅かれました。

するとどうでしょう。
こちらの予想の遥か上をいく爆笑コントではないですか!!
福田監督の笑いへの貪欲さ感服致します。

主演は『勇者ヨシヒコ』シリーズで福田組の常連でもある山田孝之さん。
このところの彼と言えばこのヨシヒコシリーズしかり『闇金ウシジマくん』の丑嶋社長然りキャラクター要素の強い役柄を演じて来られました。
変わって本作ではハワイで現地ガイドのバイトをしながら天文学の研究に没頭する研究者という等身大の青年役。
プレイボーイで女性に不自由しない彼がはじめて純な一目惚れをする。
そんな男性を演じます。
山田孝之の純愛物と言えば『電車男』(05)が真っ先に浮かびましたが『電車男』さながらのピュアな演技が久しくウシジマくん慣れしてしまっていたので妙に新鮮でした。

一方、ヒロインを演じたのが長澤まさみさん。
昨年の『銀魂』で福田組初参加となりコミカルな演技で新たな魅力を発揮したのは記憶に新しいですね。
今年公開された『嘘を愛する女』では大人の女性といった印象でしたが、本作ではあの『モテキ』(2011)再来か?と思わせる男であれば惚れないヤツはいない魅力的なヒロインを演じていました。
モテキ』との対比で言えば『モテキ』のヒロイン像は男が確実に翻弄されてしまうでもこんなコにだったら騙されてもいいと思わせる小悪魔的な女性であったのに対しこの『50回目のファーストキス』だと難病を抱える女性という設定ゆえにでしょう守ってあげたいと思わせるヒロイン像で長澤まさみの演技力に感服するのみです。

ムロツヨシ佐藤二朗という福田組には欠かせない面々も相変わらずの協力な個性。
そしてほぼアドリブと思わせるキレの良いコミカルなセリフの数々には笑いなくして見る事が出来ません。
とりわけムロツヨシさんなんて先日見た『空飛ぶタイヤ』との対比に思わずにやついてしまいます。
そして本作のキャスト尽にあってMVP を贈りたいと思わせる最強のコメディアンっぷりを見せたのが太賀くんでした。
空前絶後のあの芸人さんを彷彿とさせる服装で繰り広げるおばかキャラがたまりませんでした。
今回彼は長澤まさみ演じるヒロイン・留依の弟役にしてゲイというキャラクターでしたが、父親役の佐藤二朗さんのツッコミも相まって絶妙な存在感を見せてくれます。

この様に登場するキャストは非常に振りきっておバカをやってくれるので終始飽きさせません。ふと我に返ると「あれ?これって恋愛映画だよな?」なんて自問自答をしてしまう自分が居ました。

やはり福田監督にはブレがありませんでした。

この様にとにかく笑えるコメディ映画である事は間違いありません。

肝心の恋愛要素はと言うと、これがまた泣けるんですよ。
記憶障害という難病に冒されたヒロインと一途に彼女を思い続ける青年。
障害があるからこそのやりきれなさは見る者の心情に訴え掛けてくるので後半の展開は涙腺が決壊するのを自ら実感する事になるでしょう。
ここまで泣いた邦画は久しぶりです。
今夜、ロマンス劇場で』以来かな。

そういえば記憶障害を題材にした恋愛映画と言えば『8年越しの花嫁』という作品がありましたね。
今年初頭に同作を評しましたので詳しくはそちらを読んで頂くとしてあの作品で私は泣く事はありませんでした。
作品自体は良かったし、佐藤健・土屋太鳳らキャスト陣の演技は胸を打つものがありました。
しかし、何故に涙腺が崩壊される事なく淡々と鑑賞する事が出来たのか。
思うに全面的に感動を押しすぎた点にあるのではないかと分析しています。
感動ポルノとまでは言いませんが、あまりに泣き要素を押し過ぎるとこちらも構えて見る事になります。
一方、前述の『今夜、ロマンス劇場で』然りこの『50回目のファーストキス』しかりそこまでの泣きをプッシュしていない。
いち娯楽作品でありその延長線上に感動要素がある。
見る側のハードルも良い意味で下がるので絶好の視聴体勢で鑑賞する事が出来るのです。

それにしても福田雄一監督の引き出しの多さには脱帽するところですが、本作に関して言えばアメリカの恋愛映画を下敷きにしながらも日本のスウィーツ映画を皮肉るという狙いがあったのではないかと考えています。
最近でこそ映画を鑑賞する側の目も肥えたのか興行面ではことごとく失敗している若い女性をのみ対象にした様な恋愛映画。いわゆるスウィーツと揶揄されるタイプの作品ですね。
一時期は金脈を掘り起こしたかの様に各配給会社が製作し続けたスウィーツ映画。
スウィーツ映画そのものを否定するつもりはありません。
若手俳優育成の場でもあるし壁ドンなるブームも生み出して社会的な影響力もありました。
それに私自身純粋に楽しめた作品もありました。
しかしおしなべて陳腐な作品群で映画ファンからそっぽを向かれるタイプの映画でもあります。
福田監督が今この作品を製作した背景にはこのスウィーツを思いのままおちょくりつつも見た後には満足の得られる物を作ろうという心意気があったのではないかなと思います。
福田流のギャグをふんだんに盛り込み、コメディとしてもしっかり完成された内容にしつつも嫌みなくさらっと泣かせる展開に運んでいく。
スウィーツブーム時、『女子ーズ』や『変態仮面』等一部のマニアにしか支持を受けなかった福田雄一監督が『銀魂』で天下を取り、スウィーツ風コメディをもヒットさせる事により遂にはスウィーツというジャンルすらも掌握した。
これはまさに福田雄一下剋上劇と言える作品でしょう。


  

空飛ぶタイヤ

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テレビドラマ化もされた池井戸潤の同名ベストセラー小説を、長瀬智也主演で新たに映画化。ある日トラックの事故により、1人の主婦が亡くなった。事故を起こした運送会社社長、赤松徳郎が警察から聞かされたのは、走行中のトラックからタイヤが突然外れたという耳を疑う事実だった。整備不良を疑われ、世間からもバッシングを受ける中、トラックの構造自体の欠陥に気づいた赤松は、製造元であるホープ自動車に再調査を要求する。しかし、なかなか調査が進展を見せないことに苛立った赤松は、自ら調査を開始。そこで赤松は大企業によるリコール隠しの現実を知ることとなる。長瀬が主人公の赤松役を演じる。監督は「超高速!参勤交代」シリーズの本木克英。
(映画.com より)

記憶にある方も多いでしょう。
某企業のリコール隠し事件。
大手企業の隠蔽体質を浮き彫りにし、社会的なバッシングも相当なものでした。
本作はその事件を題材に「半沢直樹」等で知られる池井戸潤が書き下ろした同名小説の映像化作品です。
タイプは違いますが、前回の『万引き家族』同様現代社会に潜む問題にメスを入れた社会派作品です。

実を言うと私、このテの作品というとどうも身構えてしまうんですよ。
一昨年の『64』前・後編なんかはその典型例でして小難しい専門用語を羅列される作品。
そういったものに触れてしまうと少しでもこちらの気が抜けようものならさあ大変。
ストーリーがさくさくと展開されるわきちんと理解できないわで整理が出来ない。
気付けばおいてけぼりを食らうなんて事がよくあります。
ま、早い話し「僕ちゃん頭悪いです」(笑)のカミングアウトなのですがww

しかし、そこは池井戸潤作品。
これまで数々の社会派作品ドラマのヒットを生んできたのですが、その最大の要因としては難しい題材を非常にわかりやすく一般視聴者の目線に合わせる事だと思います。

本作で言えば整備不良を疑われた赤松運送と製造元のホープ自動車
中小企業 VS 巨大企業。
この構図さえ押さえておけば間違いありません。

本来、組織としての経済力、人員、規模など全てにおいて勝ってあまりある巨大企業・ホープ自動車
しかし、不正を暴くためまた濡れ衣を晴らす為に戦う赤松運送。
ホープ自動車はあの手この手を使い赤松運送の調査を阻みます。
しかし、赤松運送の若き社長・赤松徳郎は従業員や家族の為、戦います。

その赤松徳郎を演じるのは長瀬智也
正直、このキャスティングには不安があったのは事実です。
長瀬君と言えばクドカン作品で見るコミカルでおバカなキャラクターのイメージが強すぎたので骨太な企業家の印象がなかったんですよね。
佐藤浩市中井貴一堤真一クラスのキャリアと貫禄のある役者さんが演じた方が良いのでは?なんて思っていたのですが、そんな私の不安を一蹴する演技でこの気骨溢れる社長を好演していました。

対するホープ自動車からはディーン・フジオカ演じる販売部カスタマー戦略課課長・沢田悠太なる人物。
当初は赤松の訴えを相手にもしなかったこの沢田ですが、赤松と対峙する事により変化が見られます。
ドライでクールなビジネスマンが見せる人間味に魅了される人も多いでしょう。

ホープ自動車サイドで光った存在と言えば岸部一徳演じる常務取締役の狩野という男。
これがまた何とも憎たらしく腐った性根の人物です。
岸部一徳さんと言えば『アウトレイジ 最終章』でも一癖も二癖もあるヤクザを演じていらっしゃいましたけど、こういう役が何ともハマる!
う~ん、憎たらしい~(誉め言葉です)

また、いつものコミカル演技を封印して真面目な役どころで出演されたムロツヨシさん、『コードブルー』でのチャラい医者とは打って変わって妻を亡くし、悲痛な想いをぶつける被害者の夫を演じた浅利陽介さんなどキャスト陣は充実してました。

ただ、どうも気になったのが高橋一生
いや、高橋一生さんの演技自体はよかったですよ。

上の写真を見て頂いたらわかる様に長瀬智也ディーン・フジオカ、そして高橋一生と前面に出ています。
これだけ見たらこの三人を軸にストーリーが展開されると誰しも思うハズです。
ところが実際の出演時間は友情出演と呼んでもいい程少ないです。
高橋一生さんの女性ファンはガッカリかもですよ。

それから本作の冒頭では登場人物を紹介するテロップが表記されます。
それ自体は悪くないのですが、何故か小池栄子演じる週刊誌の記者には表記されないんです。
彼女は本作において重要な役割を果すのですが、何故彼女の紹介テロップは表記されなかったのでしょうか?

それからこれはあくまで私の個人的要望なのですが、今作のはじまりとなったのはタイヤの脱輪事故です。
この事故を起こした当事者であるドライバーの視点がもっと描かれていればと思いました。
前半は確かによく登場します。
この事故がトラウマになり出社拒否を起こすなど。
赤松社長もその様子を見て彼の名誉を晴らす為にもと立ち上がるシーンもあります。
しかし、後半になるとこのドライバーの存在がまるでストーリーから置き去られてしまっかの様に出なくなるんですよね。
巨大権力と戦い掴んだ勝利は何も赤松社長や家族、名のある従業員たちだけのものではないハズです。
このドライバーがどういう表情で勝利の光景を目の当たりにしていたか。
そういう描写はほしかったですね。

なんていつもの様にケチつける所はつけさせて頂きましたが、不正を悪徳企業の責任者は裁きを受け弱小であっても信念を貫き通せばその行いは報われる。
健全たる社会の構図をクリアに映し出す勧善懲悪なストーリー展開なのでラストは溜飲が下がる事間違いなし!
若い人にも是非見て頂きたい作品です。

万引き家族

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三度目の殺人」「海街diary」の是枝裕和監督が、家族ぐるみで軽犯罪を重ねる一家の姿を通して、人と人とのつながりを描いたヒューマンドラマ。2018年・第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画としては1997年の「うなぎ」以来21年ぶりとなる、最高賞のパルムドールを受賞した。東京の下町。高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、社会の底辺にいるような一家だったが、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることに。そして、ある事件をきっかけに仲の良かった家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密や願いが明らかになっていく。息子とともに万引きを繰り返す父親・治にリリー・フランキー、初枝役に樹木希林と是枝組常連のキャストに加え、信江役の安藤サクラ、信江の妹・亜紀役の松岡茉優らが是枝作品に初参加した。
(映画.com より)

カンヌ国際映画祭最高賞パルムドール受賞。
連日報道されていたので映画ファン以外でもその名前を知ってるであろう今最も多くの人に見られている日本映画・『万引き家族』。
あのケイト・ブランシェットも大絶賛してました。
興行収入も早くも17億円を突破(6月17日現在)し、見事二週連続で動員ランキング一位となっています。

そんな社会的関心も高い本作ですが、6月8日の公開初日に見て参りました。
さすがに注目度の高い作品とあって公開初日とは言え、平日昼間の劇場は老若男女問わず多くの観客で埋め尽くされていました。

万引き家族
そのタイトルから「犯罪を助長するのか」とかそういう意見を目にしたりします。
まぁ、それ自体を否定するつもりはないですが、もっと深い部分に目を向けなさいよと言いたい。

万引きという行為。
それ自体は勿論犯罪であり、法の上においては裁かれなければならない。

しかし、この映画を通すと話しはそんな単純なものではないというのがよく理解出来ます。

この映画でも盛り込まれているのですが、窃盗・幼児虐待やネグレクトの問題・年金不正受給。
テレビのニュースやワイドショーなどでこういった問題が報道されると我々は一様に眉をひそめ怒り哀しみ憤り「許せない」「とんでもない」中には「こんな奴は死刑だ」なんて糾弾したりします。
そりゃ法律という正論に基づいて考えれば断罪されて然るべき事です。
ただ、罪を犯す側の目線に立てばこんな基準になるのかと考えさせられるケースもある。
本作で是枝監督はその視点に基づいてストーリーを展開していくので見ている側は一気に彼らの持つ視点に合わせていく事になります。
そもそもですが、是枝監督を本作の製作へ駆り立てたきっかけというのが年金の不正受給、そしてそのニュースを見るにつけ糾弾する大衆。
中にはそうでもしなければ生活が成り立たない家庭がいる現実があるのにその部分にはなかなか目が向かない。
ワイドショーの報道なんて年金を不正受給していたという事象しか取り上げないから大衆の心理が傾いてしまうのはやむを得ない。
しかし、それが結果として弱い者たちが夕暮れさらに弱い者を叩く。
そんな世の中になってしまうのです。
そしてそんな世の中の矛盾点を抽出し、ひとつの作品に仕上げていったのが本作なのです。

本作において言えば実は冒頭では子供に万引きをさせるダメな父親・治(リリー・フランキー)に眉をひそめてしまいます。
「こいつ仕事しねぇのかよ!」そんな事を考えてしまった自分がいたのも事実です。
しかし、彼が建設現場で働き妻がクリーニング屋でパートしてるとわかるとまた考え方も変わります。
彼らは仕事をしていたのです。
しかし、それでも自分たちの稼ぎだけでは生活が成り立たない。
それが格差社会でもあるのです。
そして彼らの雇用形態、日雇い派遣やパートタイムという非正規雇用の脆さなどについても本作では描かれていましたね。
派遣労働者は現場で怪我でもしようものなら詰んでしまう。
パート労働者は人員削減の憂き目に合えば従いそれによって詰む。
今の非正規雇用における実態をまざまざと映し出す作品でもありました。


善悪の基準についてを委ねるシーンとして印象深いものとしてはネグレクトを受ける幼女を治が家に連れ帰り家族として育てる事になります。
そして実の家族同様に彼女に接していく事によって彼女は自分の居場所を作っていきます。
彼女にとっては実の家族の元で暮らすよりは幸せに見えるのですが、しかし言うまでもなく如何なる事情があるとは言えよそ様の娘を勝手に連れ出していけばそれは誘拐です。

そこで初めて我々に向けての問題提起がなされます。
後半の展開からはまさにその問題を我々はどの様に解釈するのかが問われていき、是枝監督からの宿題に我々は思いを巡らせていく事でしょう。

さて、そんな本作ですが特徴的なポイントをいくつか押さえておきましょう。

何と言っても本作はキャスト陣の演技が見ごたえあります。
リリー・フランキーはじめ安藤サクラ、松岡栞優、樹木希林などいわゆる東京下町の決して人の目には届かない低所得層一家の雰囲気を見事に表していました。
二人の子役の心理的機微を表す演技も見事でした。
更に彼らが暮らす家の作りが独特な雰囲気を醸し出していましたね。
部屋の中もそう、お風呂もそう。
めちゃくちゃ汚ないんですよ。
だけどそれがかなりリアリティあるんですよね。
カメラワークひとつ取っても暗めに撮ってあり、その暗さが家族の暮らす家と絶妙に相まっていてあたかも実在する家族の姿を追ったドキュメンタリーを見ているかの様でした。
彼らが食べる食事もまた然りで決しておいしそうだとは思えない料理でありながらそれがめっちゃうまそうに見えてくる。
お肉屋さんで買ったコロッケをインスタント麺に入れて食べたくなる事間違いなしですよ(笑)

決して裕福ではない家族のリアルを追求して作られた事が伺える『万引き家族』。
見てスッキリする映画ではありません。
しかし、見た人誰もが現実と向き合いそして社会に潜むあらゆる問題に対して一考の機を得る作品となっています。
今の時代にこそ多くの人に見て頂きたい。
そんな一本です。
あなたも是非劇場でご覧下さい。