きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ワンダー 君は太陽

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全世界で800万部以上を売り上げたR・J・パラシオのベストセラー小説「ワンダー」を、「ウォールフラワー」のスティーブン・チョボウスキー監督・脚本で映画化したヒューマンドラマ。ごく普通の10歳の少年オギーは、生まれつきの障がいにより、人とは違う顔をもっていた。幼い頃からずっと母イザベルと自宅学習をしてきた彼は、小学5年生になって初めて学校へ通うことに。はじめのうちは同級生たちからじろじろ眺められたり避けられたりするオギーだったが、オギーの行動によって同級生たちは少しずつ変わっていく。「ルーム」で世界中から注目を集めた子役ジェイコブ・トレンブレイがオギー役を務め、「エリン・ブロコビッチ」のジュリア・ロバーツが母イザベル役、「ミッドナイト・イン・パリ」のオーウェン・ウィルソンが父ネート役をそれぞれ演じる。
(映画.com より)

公開時から気になっていた作品『ワンダー 君は太陽』。
遅ればせながらようやく見て参りました。
そもそも何故鑑賞する機会が遅くなってしまったかなのですが、近場のシネコンの上映回数に要因がありまして公開初日から一日三回のみの上映だったんですね。
で、初週は『空飛ぶタイヤ』の方を優先してしまったら何と翌週からレイト一回のみの上映に。
おいおい、そりゃないぜ~。

しかし夏の大作ラッシュが始まれば必然的に打ち切られるであろうとの予測からレイトショーにて鑑賞してきたという次第です。
観客は私を含めて三人のみという淋しい状況でしたが、お陰でゆったりと鑑賞する事が出来ました。

さて、そんな本作ですがマイノリティな存在に対して周囲がどの様に向き合うかを投げ掛ける非常にメッセージ性のある深い内容の作品でした。

本作の主人公であるオギー君。彼は生まれつきの障害により人と違う顔をしています。
そんな彼が生まれて初めて学校へ行き、そこからの彼の成長を描いていく作品ですが、その容姿から周囲からは好奇の目で見られたりいじめを受けたりします。
そしてそんな彼の悲痛さと彼と向き合う家族の姿が前半の中心となります。
実は私自身、自分のコンプレックスからくる周囲からのからかいやいじり、そこからくるいじめによって嫌な思いをした経験があります。
大人の目から見たら子供たちの社会は小さなもの。
その視点で子供に強い言葉を掛ける事もありますが、しかし皆さんの子供時分を思い出してみて下さい。
大人であれば自分が所属する例えば会社であれば会社の様なコミュニティに止まらずその他のコミュニティに属して社会活動は出来ます。(サークル活動、カルチャースクール、地域のボランティアなど)
しかし、10歳の少年にとってみれば自分の社会は学校にしかない子がほとんどです。
その社会で自分が否定されてしまったら全てが閉ざされてしまう絶望感にさいなまれてしまいます。 
いじめを苦に自殺するなんてニュースを見たら「何とかならなかったのか」「親や教師は何してた」とか無責任に言い放ったり中には「いじめる奴は悪いがいじめられる方も悪い」なんていう暴論を放つ輩も居ます。
しかし、当人にとってみればそこの世界しか現実は見えないものでもあります。
本作におけるオギー君の初登校の日の夜の表情などはまさにそれを訴えている様で身につまされる思いです。

しかし、そんなオギー君にも友達が出来る。
初めて出来た友達と仲良く下校するオギー君を見たジュリア・ロバーツ演じる母・イザベルの安堵の表情は同様の悩みを抱える母親の表情そのものだと思います。

さて、本作ですが予告を見ていたらあくまでこのオギー君を主人公にした少年の成長記的な話しだとばかり思っていました。
いや、もちろんそれはその通りなのですが、本作は彼ばかりでなく彼に関わる周辺の人物の心理的機微などを映し出したサイドストーリーも用意されたいわば群像劇でもあったのです。
オギーの親友・姉・姉の親友のストーリーがそれなのですが、各セクションでそれぞれの環境、心境、オギーに対しての目の向け方などがしっかりと語られていきます。
そしてそれぞれに表面的には見えない悩みを抱えています。
はじめは母親に仲良くしてあげなさいと言われてオギーに接していた友人は頭も良くユーモアセンスもあるオギーに一目置きはじめます。
しかし、クラスを牛耳る金持ちのガキ大将(って言い方古いかな??)の前では彼に同調し、オギーの陰口を叩く。
スクールカーストの壁を前にして自分を偽り友達を悪く言う。
年頃の少年・少女であればよくある話しです。
しかし、それをオギー本人に聞かれてしまいオギーを傷つけ距離を置かれる。
個人的にはどちらの経験もあるので両者の気持ちが痛い程わかってしまうんですよね。

一方、姉とその親友におけるサイドストーリーを見てみましょう。
数少ない姉の親友が高校デビューを機に違う友達とつるむ様になり姉にはそっけない態度を取られる。
それにより姉は学校に居場所がなくなり孤独を感じる事になる。
すぐに彼氏が出来たからまだ良いのですが、あのまま彼女が誰とも気を許せず淋しい高校生活を過ごしていたら?
考えただけでいたたまれない気持ちになります。

一方、姉の友人はと言うと家庭環境がよくなくオギーや姉の様な一家を羨ましく思い、偽りの自分を造り人気者になります。
それを後ろめたく思い、姉に冷たく接する様になる。
結局、思春期の些細な心の揺れがこの二人の友情にすれ違いを生じさせていたのです。
これまたこの二人の心境に寄り添う事が出来る。
特に女性の方であればかなり共感出来る描写なのではないでしょうか。

また、印象深いシーンとしてはオギーをいじめるボンボンの悪ガキです。
彼のいじめがエスカレートすると両親共々校長に呼び出しを受けるのですが、この両親というのがいわゆるモンスターペアレンツなんですよね。
とんでもない両親の元では歪んだ性格の子供が育っ。
それは万国共通の様ですね。

そしてオギーの人柄にひかれ、周囲の同級生達が集まり、絡んできた上級生と喧嘩した後の清々しいシーンなんかを見ると『スタンド・バイ・ミー』的な少年達の成長譚を見る様でした。

そしてラスト。
一年ですっかり成長し、周囲の人々に光を与えたオギーの姿が涙を誘います。
君は太陽」という副題の持つ意味がここで明らかにされます。

個人的にはこの映画。
文科省推薦で全国の小中学校で上映会を行なってほしいと思いました。
いじめ問題に向き合う意味でも障害者との向き合い方を学ぶ上でも友情を見つめ直す意味でも非常に意義のある作品だと思います。
もし、私が学校の先生だったら生徒にこの作品を見せてた事でしょう。
よくギターを弾いて生徒と歌を唄う先生居たでしょ?
あのノリです(笑)