きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

マチネの終わりに

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東京、パリ、ニューヨークを舞台に音楽家とジャーナリストの愛の物語を描いた芥川賞作家・平野啓一郎の同名ベストセラー小説を福山雅治石田ゆり子主演で映画化。パリでの公演を終えた世界的なクラシックギタリストの蒔野聡史は、パリの通信社に勤務するジャーナリストの小峰洋子と出会う。2人は出会った瞬間から惹かれ合い、心を通わせていくが、洋子には婚約者である新藤の存在があった。そのことを知りながらも、自身の思いを抑えきれない蒔野は洋子へ愛を告げる。しかし、40代の2人をとりまくさまざまな現実を前に、蒔野と洋子の思いはすれ違っていく……。蒔野役を福山、洋子役を石田がそれぞれ演じ、伊勢谷友介桜井ユキ木南晴夏風吹ジュン板谷由夏古谷一行らが脇を固める。監督は「容疑者Xの献身」「昼顔」の西谷弘。
(映画.comより)

まずこの映画を語る前にお伝えしておきます。
これは男性である僕が見た感想であるという事。
というのもこの映画、女性向きです。
更に言えば仕事、恋、家庭等々人生の経験を重ねてきた大人の女性にこそ刺さる作品ではないかと思います。
実際、僕は11月9日にMOVIX日吉津で鑑賞してきたのですが、女性客がほとんど。
男性はカップルで彼女と或いは奥さんの付き合いでといった感じで男性一人客なんて僕を含めて数名のみ。
上映前にはフロアで試写会に参加した人の感想なんかも目にしたのですが、そこでもやはり女性のもののみ。
「音楽が素晴らしい」、「福山さんがカッコいい」、その中に「女性のための映画です!」なんてありましたからね。

で、男性の僕。
この映画からまず目についたのは福山雅治演じる蒔野という男性のクラシックギター奏者としての生きざまから入りましたね。
若い頃からギター奏者としての名を馳せ、その世界で成功を治めるわけですが、それが故の苦悩や葛藤といった描写が印象的でした。
若い頃は天才の名をほしいままに世に才能を問うも、円熟期を超えるとやがて訪れる己の才能と世が求めるものとのジレンマ。
そして象徴的とも言えるシーンが劇中には現れるのですが、若手ギタリストと対面した時に言われる一言。
「あなたの事は知ってます。」

「ずっと憧れでした」でも「尊敬しています」でもただ知っていると告げられるのみ。
そこにはリスペクトも畏敬の想いすらもない。
それを告げられた蒔野は表現者としての影響力を自らに問うあまりスランプに陥ってしまう。
これをエンターテイメントの世界で長く活躍する福山さんが演じるからこそよりリアリティーを感じるんですよね。
福山さんの話しをしましたので、そのまま続けますが、僕はこの作品においては福山雅治の表現力の多彩さが存分に詰まった作品だと感じました。
ギタリスト蒔野ではなく福山雅治という表現者が見事にオーバーラップしているなと感じるのはステージに立つ蒔野、スタッフとのやり取りでウィットに富んだ会話で笑いを取る蒔野がミュージシャンとして数々のヒット曲を生み、深夜放送から火がつき、当代きってのラジオパーソナリティーにもなった福山さんの生の姿そのものであり、福山雅治のドキュメンタリーを見ているかの様でした。
で、ラジオの福山さんに絡めた事を言えば声色の使い分けも素晴らしいです。
イケメンでありイケボでもあって。
そりゃ女性も惚れるわ(笑)

で、一方の石田ゆり子さんも良かった。
最近、『記憶にございません!』を見ましたけど、あの作品では黒田総理の記憶喪失に気付かない妻・サトコを演じ絶妙な間でのツッコミを展開し、コメディエンヌとしての才能を存分に楽しませて頂きました。
こちらの『マチネの終わりに』では全く対照的な演技で魅了させてくれるんです。
いつも憂いや陰を持ちながら、如何にも幸が薄そうな表情なんだけど、そんな彼女がある時にはっきりとした笑顔を作るんです。
その笑顔がたまらなくくるおしいものだから見ている人の涙腺を刺激してくるんですよね。

そんな二人が紡ぎ出すラブストリーなのですが、思えばこういう大人の恋愛映画って洋邦問わず久しくなかったですよね。
しかも不倫モノではなく純愛モノとなるとね。
十代を対象とした恋愛映画は確かによく見かけるものです。
そしてその十代の恋愛映画との違いを打ち出すのであれば、それは「深み」ではないでしょうか。
失うものがない若い頃であればど~んと恋にぶつかっていける。
当たって砕けろ精神で好きになっちゃえばただ一直線に恋に突き進んでいけるもの。
ところが40を超えた大人ともなればおいそれとそれが出来なくなる。
自分が培ってきた仕事や人間関係その他があって恋への足が重くなる。
でも、それでも踏み出してみたら?
 
この映画では二人の出逢いそして恋慕を募らせる度、いくつもの障害が二人の恋路を阻んでいきます。
ギタリスト、ジャーナリストというそれぞれの仕事や婚約者の存在、ニュース映像でもよく見た大事件、第三者の存在等々。
それを乗り越えながら二人は結ばれるのか?
大人へ向けたビターな恋愛映画の世界が展開されています。
そしてそれに寄り添う様に流れるクラシックギターによる楽曲の数々、さりげなく施される映像的演出等々全てが作品を作り上げていると思います。

なんて肯定的にお話しはしてきましたが、実は僕はこの映画、そこまで楽しめなかったんですよ。
僕が映画に求めるものと違うアプローチで構成されている点、僕が男性であるという点もありますが、最大の要因としては僕の大人としての未成熟さかなと感じ恥じています。
僕がこの映画の深みは味わいを感じられるにはまだまだ経験が足りないのでしょう。

あなたはこの映画、楽しめますか?

なんて言うとまるで大人としての経験値の試金石の様な作品かと思われそうですが、確かにそういう側面はあります。
しかし、作品の世界観や映像や音楽の演出等々は見応えあると思います。

ちなみに私、後半の流れは『ラ・ラ・ランド』に近いなと感じました。