きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~

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テレビアニメ化もされた赤坂アカの同名人気ラブコメ漫画を「King & Prince」の平野紫耀と橋本環奈の共演で実写映画化。将来を嘱望されたエリートたちが集まる私立・秀知院学園。全国模試上位常連の頭脳明晰な生徒会会長・白銀御行と、文武両道の大財閥令嬢で容姿端麗な生徒会副会長・四宮かぐやは互いに惹かれ合いながらも、高すぎるプライドが邪魔をして、それぞれが思いを告げることができずにいた。やがて、告白したほうが「負け」という謎の思考にとらわれるようになった御行とかぐやは、いかにして相手から告白されるかだけを考えるようになり、天才であることが邪魔をして恋愛に不器用な2人による高度な恋愛頭脳戦が展開する。監督は「俺物語!!」「ニセコイ」の河合勇人。ドラマ「海月姫」や映画「翔んで埼玉」の徳永友一が脚本を担当する。
(映画.comより)

毎回作品選びではそんなに迷わないけど今回は迷いました。
夏に公開された映画はひと通り見終わってますし、『ロケットマン』や『ワンス・アポン…』といった洋画も鑑賞済み。
限られた選択肢からの中だと正直、ラジオで映画番組なんかやってなかったらまずスルーしてた様な邦画コメディかアニメ。
ま、とりあえず動員ランキングで1位も取ったこの作品で落ち着いたわけですよ。
で、この『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』ですが、アニメでも人気の漫画が原作。
男女の恋愛を主軸に旬の若手俳優・アイドルを起用するいわゆるコアな映画ファンからは恋愛スイーツ映画と揶揄されるものですね。

で、結果から言うとそれなりに楽しめました。
でも肥えた目を持つ映画好きには決してオススメは出来ない様な内容でした。

本作の原作は一話完結型。
前後のストーリーが繋がってるわけではないので全くの末見であっても楽しめるわけです。
映画でももちろんその流れは踏襲され、原作でのストーリーを数珠繋ぎで100分ちょっとの時間に落とし込んでいます。
映画の尺自体もちょうどいいですしテンポは良い、一方ではそれによる難点もありますがそれは後述します。

アイドル映画としての側面で言えば平野君や環奈ちゃんの良い表情を写し出しているのでそれぞれのファンの方であるならば、きっと満足する事でしょう。
また、パロディもなかなかニヤリとさせるものがありまして、『ミッション・インポッシブル』や『2001年宇宙の旅』の様な映画オマージュもあるし、小田和正の『ラブストーリーは突然に』に限りなく近い音楽を流し『東京ラブストーリー』演出もあれば、『情熱大陸』パロディで笑いを取りにいく。
更にドクターヘリに「コードブルー」って書くのありかよ?みたいなね(笑)
監督こそ違いますが、『ヒロイン失格』なんかに共通するものがありますね。
スイーツ映画だけどコメディタッチでパロディやナンセンスなギャグがふんだんに盛り込まれていたり。
美男美女がかなりぶっ飛んだ演技をする等々。
更に福田雄一オマージュなのかコメディリリーフとして佐藤二朗さんも登場します。

そして河合勇人監督ならではの邪道的スイーツ映画が終始展開されていきますが、この河合監督。
『俺物語』や『チア・ダン』、『ニセコイ』等の作品を世に放ってきました。
いずれも若者向け映画という印象ですが、個人的には割と好きな監督です。
『俺物語』なんかは従来のスイーツ映画ではまず題材として扱われなかった硬派な男臭い番長タイプと美少女の恋愛模様という切り口が斬新であったし、スイーツ映画ではないが、『チア・ダン』はスポ根特有の泥臭い面も含ませつつ、夢に向かい汗を流す少女たちの軌跡を実に巧く打ち出していたと思います。
そんな河合監督だからこそこの作品、実は憚る反面楽しみにしていた面も実はあったんです。
前述の様にコンパクトにまとめていたし、福田雄一リスペクトなコメディパターンで笑いを誘ってくれたのは確かです。

ただ、あくまでこれは平野君や環奈ちゃんのファンであれば楽しめるけど、いち映画ファンの視点で見たら何とも評価が厳しくなる作品でした。
ある年代の人であればわかるでしょう『月曜ドラマランド』。
1980年代、時の人気アイドルが出演し、コントともドラマとも取れない学芸会の様なドラマ枠がありました。
子供時代の僕は大好きでよく見ていました。
家族揃って同じ楽しみを共有していたあの頃は二度と戻ってこない。
楽しかったな~、あの頃。

と、『月曜ドラマランド』を楽しく見れたのは当時小学校二年。
コロコロコミック』のギャグ漫画や『ハイスクール奇面組』で大笑い出来る感性があったからこそです!(あ、ちなみに『奇面組』は今見ても面白いです。。)
大人になり、映画鑑賞にお金が使える様になり、大スクリーンで映画を観た場合、『月曜ドラマランド』のノリを持ち込まれるのは何ともきついきつい。
ギャグのノリ自体は悪くないんだけど演出面でところどころ寒さを感じる。
カラスが鳴くとかね~、それこそ80年代のギャグ漫画から進歩してないんですよね。

で、福田雄一へのリスペクトが~なんて話しを先ほどしましたけど、橋本環奈ちゃんをヒロインに据えたり佐藤二朗さんを登場させたり作風は確かに福田さんっぽいんですよね。
でも、どうしても『銀魂』とか『斉木楠夫の災難』なんかに比べると物足りない。
福田作品の様にキレッキレじゃないんですよね。
唯一佐藤二朗さんだけがいつもの福田ノリで、確かに面白いんだけど活かしきれていない。
どころか面白いのに映画全体では滑ってるとか浮いてしまってるんですよ。
福田さんに寄せよう寄せようとして裏目に出たんじゃないかな。
で、後気になったのが、後半になればなるほど二人の恋愛云々はもはや関係なく『帝一の國』さながらに生徒会長選挙戦に話しがすり変わっていくところ。
まぁ、そこだけに限らないんだけどひとつの事案が解決しないまま話しが矢継ぎ早に展開するもんだからその消化不良感ったらないんですよね。
一話完結の原作ストーリーをあれやこれや詰め込みすぎて結果散漫になってしまったのは否めないですね。
察するにこの映画には最終的な映画的ゴールがないからなんですよね。
映画的ゴール。
わかりやすく言えば強大な敵と戦い勝つ、試合に勝って優勝、恋愛が成就する、誰かが死ぬ、等々目に見えてわかる象徴的な出来事ですね。
もちろんそれがない映画だってありますが、それはそれで綺麗にまとめあげるものです。
でもこの『かぐや様~』に関してはそのまとまりがうまく仕上げられていないからなのかどうも見終わった後もすっきりしない。
何だか事務的にキンプリの曲が流れて終わってたって感じなんですよね。
う~ん、何だか惜しい。
もっとうまく出来たハズなのに。

なんて今回は些か辛口なレビューになってしまいました。