きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

七つの会議

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テレビドラマ化もされた池井戸潤の同名企業犯罪小説を、野村萬斎主演で映画化。中堅メーカー・東京建電の営業一課で万年係長の八角民夫は、いわゆる「ぐうたら社員」。トップセールスマンで、八角の年下である課長の坂戸からは、そのなまけぶりを叱責され、営業部長・北川誠が進める結果主義の方針の下、部員たちが必死で働く中、八角はひょうひょうとした毎日を送っていた。そんなある日、社内でパワハラ騒動が問題となり、坂戸に異動処分が下される。坂戸に代わって万年二番手に甘んじてきた原島が新しい課長として一課に着任するが、そこには想像を絶する秘密と闇が隠されていた。八角役を自身初のサラリーマン役となる萬斎が演じ、香川照之及川光博片岡愛之助音尾琢真立川談春北大路欣也といった池井戸ドラマ常連俳優が顔をそろえる。監督は「陸王」「下町ロケット」「半沢直樹」など、一連の池井戸ドラマの演出を手がけた福澤克雄
(映画.comより)

池井戸潤原作というとやはり窮地に追い込まれた企業戦士が上部の不正を暴いていくサラリーマン版水戸黄門の様な痛快な勧善懲悪モノというイメージがあります。
映画で言えば昨年6月に公開された『空飛ぶタイヤ』が記憶に新しいですね。
本作もやはり過去の池井戸作品を踏襲した様な作品なのでしょうか。
それでは、今回もいってみよう!!

まず、冒頭のシーン。
香川照之演じる営業部長・北川誠が部下を集め、叱責するところから始まります。
営業という仕事において売れる事こそ正義、売れない者は完膚なきまでに罵倒される。
結果の出せない営業二課課長の原島(及川光博)はケチョンケチョンに北川から恫喝に近い叱責を受けます。
ここなんかは見ているこちらにも緊張感が伝わってくる。
香川照之さんと及川光博さんの迫真の演技がよりその張りつめた空気感を作り出していたなと思います。
とりわけ香川さんの恫喝演技は迫力ありました。
個人的には『アウトレイジ』の様なヤクザ物で見たいなと思ったものです。

そんな中、いびきをかきながら写されるのが野村萬斎演じる八角民夫。
彼は社員からは皮肉を込めて、「居眠りハッカク」と呼ばれるぐうたら社員です。
名探偵コナン』には「眠りの小五郎」こと毛利小五郎なんてキャラクターが居ますが、このハッカク居眠りしながらも実はスゴいヤツなんて設定かなと想像していました。

ところが、そのハッカク。
全然スゴさを見せない。
ホントにぐうたらぐうたらしてるだけ(笑)
ま、ストーリーを追うごとにこのハッカクこと八角の人物像が浮かび上がってくるんですけどね。

それにしても、この前半部見て思った事。
ブラック会社そのものじゃん。俺は絶対ムリ~」て感じだったんですが、これがサラリーマン社会というものなんですか?
上司から無理難題なノルマを突き付けられ、それを達成するまでに靴の底をすりへらし、頭を下げ、理不尽な叱責にも耐える。
僕なんかはフリーランスで自由な働き方をしてるもんですから、全く異世界の光景を見ている様でした。
でも、この映画って社畜と呼ばれながらも、会社の為に粉骨砕身汗水垂らして働くサラリーマンにとっては痛快この上ない作品なんだろうなと思います。
事実、池井戸作品で『半沢直樹』が受けたのってそういう層の人達に見事刺さった感じでしたしね。

で、この作品を見て感じたのですが、今は働き方改革だなんだと言われて仕事ひとつ取っても多様化してる時代。
しかし、現実的には本作に出てくる様な売り上げを上げる為には手段を選ばない、サラリーマンは会社の為に尽くせとそんなスタンスの会社はごまんとあるわけであって決して綺麗事だけでは済まないのだと思います。
本作はそんな現代の会社組織へのアンチテーゼとして、問題を投げ掛けた。
そんな側面もあるのではないかと思っています。

そしてそれを会社という組織の中でうごめく人間達をフィーチャーしながら群像劇として描いていくのが印象的でした。
主要なキャストとしては前述の野村萬斎香川照之及川光博ほか片岡愛之助、藤森慎吾、音尾琢真、岡田浩暉、木下ほうか、橋爪功そして北大路欣也も登場する。
豪華な面々ですが、皆さん非常に濃い方々ばかり。
女性陣だと実質主役的な活躍を見せる朝倉あきにこちらは出演シーンの少ない吉田羊と土屋太鳳。
太鳳ちゃんではなく朝倉あきが目立つというなかなか思いきったキャスティング。(朝倉あきさんは良い女優さんですよ!)
オリラジ・藤森さんの配役なんかも良かったですね。
個人的に藤森さんのサラリーマン役と言えば『闇金ウシジマくん』が印象深いのですが、チャラ男キャラから脱してこういうインチキくさいサラリーマンをこれからも見たいと思いました。

それにしても組織のトップというとおしなべて汚いものですね。
いや、そういうキャラ付けをしないと話しが盛り上がらないし、スカッとしたいサラリーマンの皆様にとってはその方がカタルシスを生み出しやすいのでしょうね。

これまでの池井戸作品に見られた勧善懲悪なサラリーマン版水戸黄門観ももちろんありますし、それだけにとどまらない人間ドラマも見応えがありました。
野村萬斎さんのサラリーマン役というのも意外性があって面白かったです。

後、断言しておきます。
この映画、見終わった後、ドーナツが食べたくなりますよ!