きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

打ち上げ花火、 下から見るか?横から見るか?

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この夏は配給会社の期待を一身に受けるも、思う様な結果を残せなかった作品が目立つ年でもありました。

特に作年末から予告を流し続けポストジブリ(と言うかジブリそのもの)を印象付けさせた『メアリと魔女の花』(魔女ふたたび、のキャッチコピーを狙っていると言わずして何と言う)

そして公開時期といい予告編のビジュアルイメージといい第二の『君の名は。』として期待を煽った『打ち上げ花火 下から見るか? 横から見るか?』
川村元気プロデュース
岩井俊二原作
大根仁脚本(『モテキ』、『バクマン』)
新房昭之総監督(『化物語』、『魔法少女まどか☆マギカ』)
メインキャストには菅田将暉広瀬すずを起用と東宝の並々ならぬ気合いを感じさせます。

しかし、公開後はSNSでの悪評が広まり、思う様な興収は上がっていない様です。

さて、私ネットの評判に左右されてはならない、この目で確かめようと鑑賞して参りました。

まず、本作ですが、1993年にフジテレビ系列で放映されたドラマ『if ~もしも~』の「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」が原作でいわば本作はそのアニメ版という事になります。
ドラマ版は奥菜恵の瑞々しいピュアな演技が光り、同作をきっかけに岩井俊二は一躍ヒットメーカーの仲間入りを果たします。

ドラマ版の小学生設定を中学生に改変したのは気になりますが、基本的には原作に忠実な為、脚本自体は悪くはないです。

しかし、問題は映像的なインパクトが弱いというのか引き寄せるものがないんですよね。
引き合いに出すのは好きではないが、『君の名は。』のティアマト彗星にどれ程心を掴まれた事かって事ですよ。(RADWINPSの曲との相性が絶妙だった事もあるけど)
本作ではただ淡々と話しが展開されるのみでビジュアルインパクトが弱すぎるんですよね。
それが岩井俊二だからと一部のサブカル好きが言いそうではあるが、今作はエンタメ売りをしている以上、ライトな層に訴求出来る物を作るべきだと思います。
見せ場らしい見せ場がない事もないのですが、それが残念な作りになってしまっている事も言及しておきましょう。
ヒロイン・なずなが電車の中で唄い出すシーンがあります。
松田聖子の『瑠璃色の地球』という選曲は悪くないのだが、その曲に合わせお姫様ドレスを身にまとい馬車に乗るというシンデレラ描写がひどい。
制作者側の「ここらで見せ場を作っておこうか」感が透けて見えてしまいます。
その見せ場というものが受け手の脳裏に焼き付いて離れないインパクトのある物であれば言う事はありません。しかし、件の馬車はただひたすらに寒々しく残念な物でした。

⚪ 24年前のドラマを脱却出来ない映画版

本作のところどころで見られた「もしも~」という呼称や表記。
ドラマ版が『if ~もしも~』というドラマ番組内の短編であるのは前述の通りですが、本作はあくまで別物の映画版。
ドラマ版の小学生設定を中学生設定に変更するなどの差別化は図っているハズなのに何故中途半端にドラマ版要素を引きずるのか理解出来ません。
そもそも本作を初めて見る若い層は『if ~もしも~』というドラマ枠そのものを知らないでしょう。志村けんのバカ殿を『月曜ドラマランド 志村けんのバカ殿様』と表記する様なモノですよ。(分かりにくい例えですいません…)

⚪時代設定についての謎

物語の起点となる水泳の対決シーンで典道が祐介(宮野真守)に自分が勝てば『ONE PIECE 』の最新巻を買う様要求します。
しかし、その一方では同級生が「観月ありさ~!好きだ~‼」と叫ぶシーンがあります。
ん? ONE PIECE ? 観月ありさ
その二つのポップカルチャーが接するのは90年代後半~2000年代初頭?
いや、90年代後半の男子中学生が好きなアイコンは広末涼子であり、00年代前半ならあゆとかモー娘。だったのでは?
となると時代が合わないだろ?
もし90年代設定なら冒頭にテロップ表記をする等親切な提示があっても良いのですが?
更になずなが件の『瑠璃色の地球』を唄う際、「ママがよく唄う歌。松田…聖子?」と曲は知ってるが、松田聖子本人を知らないという口ぶり。
流石に聖子ちゃんカットの全盛期を知らずとも松田聖子という歌手名くらいは中学生でも知ってそうなものだが…。今以上に露出もあり、ヒット曲も出してる90年代設定なら尚更。

⚪ キャストについて

菅田将暉広瀬すずのキャスティングについてですが、やはり不満は残ります。
特に菅田将暉の演じる典道について。
菅田さん自体は若手の実力派として実写映画作品で見せる演技には定評があります。
しかし、声優に関してはどこかぎこちなく役に合っていない印象でした。
人気のあるキャストを起用したいのでしょうが、メインの二人は本職の声優をキャスティングし、菅田さんは同級生、広瀬さんは先生役等ゲスト起用くらいの方が良かったし、作品全体の印象も変わったのではないでしょうか?

ツッコミオンパレードになってしまいました。
個人的には実写でのリメイクを見たいと思いました。
しかし、あの当時の奥菜恵の様な逸材はなかなか居ないのでしょうか実現は難しいし、仮に出来ても中途半端な仕上がりになってしまうのかもしれませんね。