日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での実話を基に、未知のウイルスに最前線で立ち向かった医師や看護師たちの闘いをオリジナル脚本で描いたドラマ。
2020年2月3日、乗客乗員3711名を乗せた豪華客船が横浜港に入港した。香港で下船した乗客1名に新型コロナウイルスの感染が確認されており、船内では100人以上が症状を訴えていた。日本には大規模なウイルス対応を専門とする機関がなく、災害医療専門の医療ボランティア的組織「DMAT」が急きょ出動することに。彼らは治療法不明のウイルスを相手に自らの命を危険にさらしながらも、乗客全員を下船させるまであきらめずに闘い続ける。
対策本部で指揮をとるDMAT指揮官・結城英晴を小栗旬、厚生労働省の役人・立松信貴を松坂桃李、現場で対応にあたるDMAT隊員・真田春人を池松壮亮、医師・仙道行義を窪塚洋介が演じ、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一が共演。「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」の増本淳プロデューサーが企画・脚本・プロデュースを手がけ、「生きてるだけで、愛。」の関根光才が監督を務めた。(映画.comより)
早いものであのコロナ禍から5年。コロナによって我々の生活スタイルも随分と変わりました。テレワークにオンラインミーティング、ウーバーイーツ等等きっと後年、コロナによって普及〜定着したなんて語られる事でしょう。コロナによってかどうかコンプライアンスも徹底され、芸能人の不祥事も厳しい扱いとなりましたよね、正直松本人志や中居正広が表舞台から姿を消す事になるなんて誰が想像出来た事でしょう。
なんて前置きはさておき、5年経った今だからこそなのか日本でのコロナ禍の発端となったダイヤモンドプリンセス号での事件を映像化。公開前には主演の小栗旬さんが中田敦彦さんとの対談がYouTubeにあがっており、興味深く視聴。
その上で6月18日にTジョイ出雲にて鑑賞して参りました。
ところで5年前の2月以前、コロナという病気が中国・武漢で拡大なんてニュースを耳にした時あなたはどう思いましたか?実は僕は全く他人事の様に捉えていました。というのも自分の世代だと心当たりがありそうですが、かつてSARSという病気が流行した事がありましたよね?メディアは大きく報じていましたが、我々の日常には何ら変化はなかったじゃないですか?コロナ禍当初も「どうせ大した事ないだろう?」なんて考えていました。しかし、ダイヤモンドプリンセス号での一件以降、緊急事態宣言が発令されたり志村けんさんや岡江久美子さんといった著名人がコロナで亡くなった事によってようやく事の深刻さを理解した感じです。当時も僕は変わらず映画館で映画を見ていましたが、日に日に映画館から人が消えていき、「ハーレイクインの覚醒」や「一度死んでみた」をガラガラの劇場で見たもの。程なくして映画館が休館になりましたからね。
そんなコロナを語る上でのダイヤモンドプリンセス号での内部、今作でほぼ初めて知ったのですが、それは正に阿鼻叫喚の修羅場だったのです。
そんな修羅場で懸命な治療に励んだのがDMATの面々。元々は阪神淡路大震災をきっかけに作られたそうですが、災害等の非常時に治療にあたる医師や看護師によるチーム。彼らも正に命懸けだったのです。というのがこれまで治療にあたった事のない新種のウイルスとの闘い。如何に医療のプロフェッショナル集団とは言えこれはあまりにも無謀かつ過酷なものなんですね。症例もなければそもそもこの時点ではコロナという病気自体が掴めない状況。身を預ける患者だってさぞ恐怖だった事でしょう。
その状況を実際現場での治療にかかった結城医師らの証言を元にドキュメンタリックでありながら、劇映画としてのエンタメ的アプローチも施しながら見せていくという一秒一秒目が離せない非常に濃い作品となっていました。
また、同時に当時のマスコミの報道姿勢への批判的視点での活写も盛り込まれていました。視聴率を第一に考えるテレビマンの悪しき体質。災難や不幸をも興味本位かつヒロイックに捉える果たしてこれは人の同義的に如何なものだろうという問題提起ですよね。かれこれ30年前・阪神淡路大震災発生時に上岡龍太郎さんと笑福亭鶴瓶さんが「パペポTV」で語っていた面白おかしく撮る様なヒューマニズムに欠ける報道姿勢ですが、悲しい事にこれ以後も東日本大地震、熊本地震、能登半島地震と見てきましたが、これは30年全く変わっていない。そしてこのコロナの時も然りでしたね。
何よりこれがタチ悪いのが最前線で治療に向かうDMATの面々への批判的なスタンスでの報道に国民のヘイト感情を煽るかの様な報道。結果、彼らはあらぬ差別にさらされる事になる悪質さをまざまざと見せられます。また彼らは医師や看護師であると同時に父であり母であり妻であり夫であるんですね。これが原因で子供がいじめられやしないか家族が風評被害にさらされて辛い思いをしないか、家族を持つ人であれば当然の感情ですよね。そして僕は思いましたよ。今の時代メディアだけではありませんよ。ネット、SNS等等あらゆる媒体から流れる情報。しっかりと精査した上で吸収出来ているだろうか。自分も発信する側だからこそよりその点を考えさせられましたね。
それにしても今作のキャストの皆さんホントに素晴らしかった!小栗旬、窪塚洋介、池松壮亮というDMATの面々。厚生労働省の役人を演じた松坂桃李、ダイヤモンドプリンセスのクルーを演じた森七菜。とりわけ松坂桃李の役人は何回目よ?記憶に新しいところだとドラマ「御上先生」がありますが。
またマスコミ側の人間としては光石研と桜井ユキ。どうしても我々はマスコミを批判的に捉えがちではありますが、彼らには彼らの考えがあり、そちらも反映されていましたね。
全ての日本人に見てほしい力作でした!
強くオススメします!