きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ラーヤと龍の王国

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龍の王国を舞台に少女の戦いと成長を描くディズニーの長編アニメーション。聖なる龍たちに守られた王国。人びとが平和に暮らすその王国を邪悪な悪魔が襲った。龍たちは自らを犠牲に王国を守ったが、残された人びとは信じる心を失っていった。500年の時が経ち、王国をふたたび魔物が襲う。聖なる龍の力が宿るという「龍の石」の守護者一族の娘ラーヤは、王国に平和を取り戻すため、姿を消した最後の龍の力をよみがえらせる旅に出る。監督はアカデミー長編アニメーション賞を受賞したディズニーアニメ「ベイマックス」のドン・ホールと、実写映画「ブラインドスポッティング」のカルロス・ロペス・エストラーダ。2021年3月5日から劇場公開と同時にDisney+でも配信(追加料金が必要なプレミアアクセスで公開)。劇場では短編「あの頃をもう一度」が同時上映される。
(映画.comより)


今年一月に取り上げた『ソウルフル・ワールド』以来のDisney+からの配信鑑賞のレビューです。
ディズニーの待機作でも劇場公開と同時配信という形態がしばらくは続く様ですね。
本来の劇場鑑賞をしたいという思いはありつつも、しかし大好きなディズニーの作品とあれば今後も配信をチェックし続けるかと思います。

さて、『アナと雪の女王2』以来のディズニー長編アニメーションである本作。
遅ればせながら私もこのGW中に鑑賞しました。

映画を観ながら早々に感じた事をお伝えすれば、まずこれまでのディズニーアニメにあった物語の延長にあった音楽面の強調がない事。
ディズニーといえばファンタジー作であっても歌詞とストーリーを連動させた歌唱シーン、何ならミュージカルだっていう常識があるかと思いますが、本作では全くありません。
その代わり、主人公のラーヤが世界を順に巡っていく冒険の過程を主としています。
道中、仲間達を集めパーティーを組み、数々の試練を乗り越えていくという『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』等に見られる極めてRPG的な世界観に胸が踊ります。

また、ディズニーでよくある魔法等の特殊能力も、本作のプリンセスであるラーヤにはそもそも備わっておらず、伝説の剣の様なファンタジー的武器もない。
あくまで肉体の鍛練と技の修練が織り成す武道が戦闘の主となっているんですね。

更にこれまでのディズニープリンセスにはお決まりの恋愛要素もなく、ともすればイケメン男子だって登場しないんですよね。
仲間にするキャラクターだって少年に赤ちゃん・力自慢の大男等々ですよ。
キラキラのドレスとか女の子が憧れるアイテムだって一切登場しない。
そもそもラーヤは極めて人間的な造形となっていてむしろこれが最終的な物語のテーマへと繋がっていくんですね。
これまで見られた様な王族の娘等々プリンセスでも何でもなく一人の人間。
身分制度や階級の概念ではなくヒューマンテイストに比重を置いたという辺りは今っぽいのかもしれません。

とこうした辺りこれまでのディズニーイメージから脱却するかの様な試みを感じましたね。
とりわけ多様性を求められる時代だからこそそれを敏感に感じとり作品に落とし込んだ様な気がします。

で、これがかなり楽しいんですよ!
その最たる要因としてはやはり仲間の存在でしょうか。
最初に龍のシスーと出会うのですが、このシスーがまたいいんですよ。
龍=ドラゴンと言うと僕はどうしても『ドラゴンボール』の神龍の様なイメージを描くのですが、あんな仰々しいものではなく、メチャクチャかわいい。
ちょっぴりどんくさくてまぬけなんだけど愛嬌があるし憎めない。
それに何より人を信じる事に是とするピュアな心の持ち主なんですよね。
そこから個性豊かな仲間達と巻き起こす大冒険となるのですが、3DCGの描写には目を見張るそれは街の光景であったり人々の表情であったりするのですが、何と言っても水の流れですよね。
もはや実写ばりのレベルです!

テーマとしては分かりやすく言えば人との信用・信頼そこからの融和でしょうか。
主人公・ラーヤはあるきっかけから人を信用しない性格になります。
ところが龍のシスーは人の心へ一片もの猜疑心を抱かず、その結果大変な目にも遭ってしまいます。
それでもピュアなシスーは信じる事をやめない。
ラーヤはその信じる気持ちを取り戻せるか。
そのプロセスが描かれ、ラストのシーンへと導かれていきます。
人を信じる事が必ずしも正しいとは言えません。
作中においてもラーヤ・シスー共に信じて騙される描写はあるわけですし、現実世界はもっと複雑だし、信じる事によって人生を狂わせる人が居るのも事実。
それを考えると僕も100%この映画の主張が正しいものとも思えませんが、ただ疑い過ぎて自分の視野を狭めたり他者との交流を断絶してしまうのも悲しい事かもしれません。
この映画では信じる事の美しさを解くと同時に人々の心の在り方を問う様な内容でした。

そして僕は思いました。
確かに綺麗事かもしれないが、誰しもがピュアな心を思いだし、融和を図っていけば世の中もっと豊かになるのではないかと。
そして本作の主人公が特別秀でた能力があるわけでもなく、裕福な環境にあるわけでもない最大の理由。
それは世の中を変えるのは決して特別な力を有する人だけではないという事。
凡庸とされかねない人や動物にだって役割があって彼らが力を合わせれば大きな動きを起こせるのだ、と。
ディズニーが示した新しい時代へ投じる一本。
僕は自信を持ってオススメします!