きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

孤狼の血

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広島の架空都市・呉原を舞台に描き、「警察小説×『仁義なき戦い』」と評された柚月裕子の同名小説を役所広司松坂桃李江口洋介らの出演で映画化。「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌監督がメガホンをとった。昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島・呉原で地場の暴力団・尾谷組と新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の加古村組の抗争がくすぶり始める中、加古村組関連の金融会社社員が失踪する。所轄署に配属となった新人刑事・日岡秀一は、暴力団との癒着を噂されるベテラン刑事・大上章吾とともに事件の捜査にあたるが、この失踪事件を契機に尾谷組と加古村組の抗争が激化していく。ベテランのマル暴刑事・大上役を役所、日岡刑事役を松坂、尾谷組の若頭役を江口が演じるほか、真木よう子中村獅童ピエール瀧竹野内豊石橋蓮司ら豪華キャスト陣が脇を固める。
(映画.com より)

昨年の『アウトレイジ』シリーズ完結以来、このテのヤクザ映画は久しく登場しないのかななんて思ってましたが、きましたね~!
アウトレイジ』に負けず劣らずの暴力合戦、過激な描写、そして豪華俳優陣によるドスの効いた演技の応酬とどれを取っても見応えがありました!

客層の中心は高齢の男性ばかり。
かつて東映と言えば『仁義なき戦い』等のヤクザ映画で興隆を極めた配給会社。
きっとこの方々には往時の名作を重ねながら鑑賞していた事でしょう。

この作品において言えばまず役者陣の演技合戦。
役所広司による刑事・大上については警察の人間とは思えない程の豪快さ。
捜査の為なら放火もするしヤクザとも繋がる。
なかなかのクズ刑事っぽいのですが、ラストにその意とするものが浮かび上がってくると彼の内面的な魅力も含め一気に持っていかれます。

松阪桃李の新人刑事・日岡の演技も光ります。
どす黒さに満ちた登場人物達にあって彼が唯一の良識人でもあり最も見ている我々に近い視点を持つのがこの人物です。
一見正義感に満ちた好青年である反面それが仇となる脆さもあり。
その瑞々しさから大上に揉まれながらの成長していく過程を好演しています。

江口洋介竹野内豊といったヤクザイメージの薄い俳優陣が演じるヤクザ。
アウトレイジ』の山王会若頭・水野を演じた椎名桔平などもそうですが、これがまた何とも色気があり、人間としてのカリスマ性も感じさせる。
本作一番のキャスティングと言えるかもしれません。

アウトレイジ』シリーズでもお馴染みの石橋蓮司ピエール瀧
アウトレイジ』で見せたコワモテなのにどこかマヌケなキャラクターがここでも健在です。
このお二人のキャスティングにおいてはやはり『アウトレイジ』シリーズを意識したのでは?と感じさせました。

ヤクザ映画特有の残虐な描写は本作にももちろんあります。
度々引き合いに出しますが『アウトレイジ』は残虐な中にもどこかユーモラスでそれが不謹慎にも笑いに繋がっていきます。
それは元来はコメディアンである北野武監督流の遊び心も加えられてる所以だと思いますがことほどさように本作の場合、それがガチだから笑えない。
あまりにグロテスクだったので目を覆いたくなる様なシーンはよく登場します。
これから鑑賞される方はどうぞご注意下さい。

また、本作の時代背景としての昭和63年の雰囲気は非常によく演出されていたと思います。
街中の風景、警察署の雰囲気等など。
実際に当時の雰囲気を演出する為のフィルム撮影などは相当なこだわりがあった事でしょう。

同様に舞台となっている広島県呉市(作中では呉原市ですが)の風景も印象的です。
白石和彌監督は本作の撮影においてあえてセットは作らなかったそうです。
映画のセット以上に映画に映えるという事を感じられたそうで呉市の街並みをそのまま使う事にこだわったそうです。
監督のインスピレーションはまさに的中した様でしてより魅力的に映る呉の街が本作を盛り上げてくれます。
この世界の片隅に』にも登場した軍港も絶妙なロケーションで撮影されてますよ。

この様に映像的にも非常に優れた作品ではあるのですが、その一方では個人的にのれなかった部分があります。
ストーリー展開がヤクザ視点ではなく警察視点になる為か後半の展開が二時間のサスペンスドラマにありがちなヒューマンドラマ要素を醸し出してきます。
あくまでも個人的な好みの問題ですが、この流れにはしてほしくなかったかなぁ。
ヤクザ映画特有の胸糞の悪さ、いたたまれなさ、不条理極まりないやりきれなさ。
そんなものを余韻として残してくれた方が作品的には良かったのですけどね。

しかし個人的にはこの映画。
是非次作も見てみたい。
そんな気にさせてくれました。
何なら『アウトレイジ』に変わるアウトロー映画の新シリーズとして定着してくれたらと期待しています。
その為には本作の興行収入が大事になってくるのですが、果たしてどうでしょう?
ヤクザの醜悪さを描いた上で人間の本質にもクローズアップした究極のエンターテイメント作品です!
日本の映画ファンよ、刮目せよ! 

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー

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「アイマンマン」「キャプテン・アメリカ」「マイティ・ソー」などマーベルコミック原作で、世界観を共有する「マーベル・シネマティック・ユニバース」に属する各作品からヒーローが集結するアクション大作「アベンジャーズ」シリーズの第3作。アイマンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクといったシリーズ当初からのヒーローたちに加え、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「ドクター・ストレンジ」「スパイダーマン ホームカミング」「ブラックパンサー」からも主要ヒーローが参戦。6つ集めれば世界を滅ぼす無限の力を手にすると言われる「インフィニティ・ストーン」を狙い地球に襲来した宇宙最強の敵サノスに対し、アベンジャーズが全滅の危機に陥るほどの激しい戦いを強いられる。監督は「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」を手がけたアンソニージョー・ルッソ兄弟。
(映画・com より)

いや~スゴイもん見た!
これは今年見た映画作品の中でもかなり衝撃的な作品でした!

とは言ってもこれはこれまでの『アベンジャーズ』シリーズはもとよりMCU作品を適度に触れ、世界観をある程度理解した上での感想です。

そもそもMCU ひいてはアメコミ映画そのものを全く見ない、興味がない人にはオススメ出来ない作品だと思います。

アクション映画としての一定以上のクオリティは保証します。
なので内容をいちいち気にしない、圧倒的スケールの映像そのものを楽しみたければそれも良しです。
しかし内容をしっかりと理解したければある程度の予習が必要。
ま、『アベンジャーズ』に限らずMCU 映画は大体そうなんですけどね。

で、その本作なんですが『マイティ・ソー バトルロイヤル』で見たエンドロール後に流れたシーンの続きから始まります。
ソーとロキがとある強敵との戦いに苦しめられています。
そして目を疑う様な展開に。
まさかソーが…ロキが…あんな事になるなんて~!!

冒頭からこれまでのMCU作品でのセオリーが通用しない事を目の当たりにさせられるのですが、これこそが本作の性質を端的に顕している場面と言えるでしょう。

そして本作の敵キャラであるサノスの絶対的強さを如実に証明するシーンであるとも言えます。

そのサノス。
まさにこの『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』において主役と呼んでも過言ではない存在感を見せつけておりました。
これまでのヒーロー物の悪役と言えば非情極まりないサイコパスなキャラクターというデフォがありますがこと本作におけるサノスは簡単には語れないところがあります。
集結したヒーロー達を徹底的に苦しめる強さを持ちながらも彼の目的や野望には一貫して濁りがない。
同情出来るか出来ないかはともかく彼なりの義というものがあり筋が通っているんですよね。
その辺りが悪役という概念を通り越し魅力的にさえ映る。
サノスを大きくフォーカスする事によって生まれた作品の深みは少なからずあると思います。

ドクターストレンジ、スパイダーマンブラックパンサーガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々が新たに加わりMCU ファンの注目ポイントがあったと思います。
それは各キャラクターがどの様に作中で絡んでいくか。
いずれもここ近年に単独作が製作された布陣なので旧来のキャラクターとの絡みにも期待が集まったと思います。
そしてその期待は決して裏切らないものとなっていました。
そりゃ傲慢なドクターストレンジとアイアンマンが絡んだらこうなるわな(笑)と思ったらソーとガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの連中が意外と相性良かったりとかこれまでの各キャラクターの性質等に理解があればあるほど楽しめるポイントかと思います。
とりわけ窮地に追われたソーのサポートをしたのがガーディアンズあいつだったり。
そして復活したソーが『マイティ・ソー バトルロイヤル』で見せた無双っぷりを見せる辺りは思わずバックに『移民の唄』を流したくなるほどです(笑)

日本では3月に公開されまだまだ記憶に新しい『ブラックパンサー』。
ブラックパンサーが治めるウガンダ王国が登場するとやはりその世界に心が誘われていきます。
そして本作でもあります。
あのだだっ広い大草原でのバトルシーンが。
時期的にもそんなに被らないですからね、もしかしたら同時期に撮影したのかななんておもっちゃいました(笑)

この様に本作に登場するキャラクターそれぞれの単独作で作られた世界観を盛り込みつつそれでいてどのキャラにも見せ場がきちんと用意されている。
個人的なご贔屓キャラクターはドクターストレンジなのですがしかとあの魔術の能力も遺憾なく発揮されるので満足でした。
しかし、出来れば2D以外の鑑賞方法で楽しみたかったのに地方のシネコンの弱いところで字幕2D以外の選択肢がなかったのが何とも残念なところでした。もっと頑張れ、地方のシネコン(笑)

さて、本作ですが全編を通して絶望的な閉塞感に満ちています。
とりわけサノスの絶大な強さに打ちのめされるアベンジャーズの姿を見るに付けただただ絶望の闇に支配される心境になってしまいます。
その中にガーディアンズ・オブ・ギャラクシーメンバーの存在が和ませてくれました。
中学生の修学旅行の様なおばかっぷりが良いアクセントになっております。
アイアンマンが真面目に作戦会議をする中、あくびをする様な緊張感のなさですからね。
ガーディアンズが居なければかなりダークで重い作風になっていた事でしょう。

ドクターストレンジの取った行動も波紋を呼んでる様ですね。
「一体何故ドクターストレンジはサノスに…」
これは明らかに次作への布石です。
次作ではどの様に回収されていくのか注目したいところです。

そして次作と言えば衝撃のラストシーンです。
まさかまさかの展開には驚くばかりでした。
振り替えれば冒頭のソーとロキのシーンから全てはこのシーンに至るまでの前フリだったのです。
ドクターストレンジが、スパイダーマンが、ブラックパンサーが、果てはエンドロール流れた後にはあの人までが?
この展開はさすがに予想だにしなかった。
近年見た映画の中でもトップレベルのエンディングでしたよ。
来年続編の公開が決定していますが、この展開で一年以上も待たされるなんてどんな罰ゲームだよ、明日にでも続きみたいよなんて思っちゃいます。
正直『スターウォーズ』の続編より気になる。
まぁ、『最後のジェダイ』の出来がアレだったからというのもあるけど…。

とにもかくにも圧倒された『アベンジャーズ』最新作。
MCUファンなら大満足!MCU作品末見なら『マイティ・ソー バトルロイヤル』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』2作、『スパイダーマン ホームカミング』、『ドクターストレンジ』、『シビルウォー キャプテン・アメリカ』辺りを押さえておく事をオススメします。
更に言えば『ブラックパンサー』もですが3月公開でまだソフト化されていないのでしばし待ちましょう!

ラプラスの魔女

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東野圭吾のベストセラー小説を三池崇史監督のメガホンで実写映画化し、櫻井翔広瀬すず福士蒼汰が初共演を果たしたサスペンスミステリー。妻と温泉地を訪れた初老男性が硫化水素中毒で死亡する事件が発生した。捜査を担当する刑事・中岡は妻による遺産目当ての計画殺人を疑うが、事件現場の調査を行った地球化学専門家・青江修介は、気象条件の安定しない屋外で計画を実行するのは不可能として事件性を否定。しかし数日後、被害者男性の知人が別の地方都市で硫化水素中毒により死亡する事故が起きる。新たな事故現場の調査に当たる青江だったが、やはり事件性は見受けられない。もし2つの事故を連続殺人事件と仮定するのであれば、犯人はその場所で起こる自然現象を正確に予測していたことになる。行き詰まる青江の前に謎の女・羽原円華が現われ、これから起こる自然現象を見事に言い当てる。彼女は事件の秘密を知る青年・甘粕謙人を探しており、青江に協力を頼むが……。
(映画・com より)

新作映画を月5~6本平均で見ているとたまに鑑賞後めっちゃ後悔するという作品にぶち当たってしまう事があります。
それを私は事故案件として扱い年間ワースト候補にもれなくノミネートしてしまうのですが、この『ラプラスの魔女』なんかはまさにその事故案件でした。
思えば最近駄作続きの三池崇史によるサスペンス作品という時点で手を引くべきでしたね。

というのも原作こそ読んでいませんが東野圭吾原作として『祈りの幕が下りる時』という個人的な大ヒットと今年遭遇していたのでそこに対しての期待から鑑賞に踏み切ったという次第です。

まず本作のキャスト陣について。
主演の櫻井翔の必要性があまりに希薄でした。
若くて有能な大学教授という事でしたが、ストーリーの中心として目立つのは広瀬すず演じる羽原円華と福士蒼汰演じる甘粕謙人という特殊な能力を持つ二人。
櫻井くんに関してはひたすら事件を追いかけ回してすずちゃんのアッシーになるというくらいしか存在意義がありませんでした。

また、円華の父親役であったリリー・フランキーに関しても今回はよくわからなかったですね。
役者としてのリリーさんは個人的にはすごい好きです。
当ブログで扱った作品で言えば『探偵はBARにいる3』でも評した様に善人から悪人までどれを取ってもサマになり本職の俳優さんでないにも関わらずそ演技の幅が非常に広いと感心します。
しかし本作ではキャスティングのミスマッチが生じたのかリリーさんの良さを活かしきれてない様な気がします。
ただ淡々としており眠気を誘う様てました。

豊川悦司による映画監督役は見事でした。
トヨエツと言えば近年の作品だと『後妻業の女』での怪演が個人的には好きなのですが、それに劣らずなイカれた人物を演じていました。
本作におけるMVPをあげるならこの豊川悦司さんになるのではないかなと思いました。

役者の演技については以上ですが、映画全体としては非常に理解に苦しむものでした。
サスペンスとして内容が難しかったのかというとそういうわけではありません。
容疑者Xの献身』や『真夏の方程式』といった『ガリレオ』のシリーズものが楽しめれば理解出来る程度の内容です。

脚本や演出の問題です。
本来説明が必要な箇所に何の説明もないし時系列の追い方ひとつ取ってもテロップの挿入がなかったり(テロップの多用はよろしくないが要する場面でないのは頂けない)、次の展開に向かうまでその展開を示唆する描写が欠落していたりするのであまりに唐突なストーリー展開に見る側が置いてきぼりを食らう事になります。
つまり鑑賞者に優しくない作りなんですよね。

例えば広瀬すず演じる円華を櫻井翔演じる青江修介が車に乗せ逃走するシーン。
カーチェイスを繰り広げるのですがそのシーンだって『名探偵コナン ゼロの執行人』のカーアクションシーンを見た後だと何とも見劣りするんです。(アニメと実写の違いがあるとは言え)
で、追ってきた連中とバトルを繰り広げるのですが高嶋政伸演じる刑事が居るんです。
円華がその刑事の名前を呼ぶシーンがあるのですが、さも知ってる事前提の刑事の名前。
元々この刑事は前のシーンでも登場してたのですが名前は名乗ってないんですよね。
「えっ?この人そんな名前なの?」と戸惑うばかり。

それからネタバレになるので特定の名前は控えますが事件の犯人である人物の犯行動機がいまいち理解に苦しむ。
「えっ?そんな事で犯行に及ぶの?」なんて引っ掛かります。
いや、百歩譲ってそれを犯行動機にするならするでもう少しそれに付随する様なストーリー上の盛り上がりが欲しかったですね。

それからその人物が立て籠る廃墟について。
あの廃墟自体は趣があって良かったですよ。
ただ、何であの場所まで行かないかんかったのかな、てかどこだよ、あそこ?

…なんて不満しか口に出てこないです。

ただ、エンディングテーマを嵐の楽曲を起用しなかったのは良かったかな。
曲がりなりにも重厚なサスペンス映画である以上、キャッチーな曲を使わない姿勢は評価出来る点だと
思います。

名探偵コナン ゼロの執行人

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青山剛昌原作の人気アニメ「名探偵コナン」の劇場版22作目。サミット会場を狙った大規模爆破事件を発端に、コナンと公安警察が衝突するストーリーが展開し、劇場版20作目「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」に続き、謎の男・安室透がメインキャラクターとして登場する。東京で開かれるサミットの会場となる東京湾の巨大施設「エッジ・オブ・オーシャン」で、大規模爆破事件が発生。事件の裏には、全国の公安警察を操る警察庁の秘密組織・通称「ゼロ」に所属する安室透の影があった。サミット当日ではなく事前に起こされた爆破事件と、安室の行動に違和感を抱くコナン。そんな折、爆破事件の現場から毛利小五郎のものと一致する指紋が発見され……。監督は前作まで計7作の劇場版「コナン」を手がけた静野孔文から、新たに「モブサイコ100」「デス・パレード」の立川護にバトンタッチ。
(映画・com より)

さてさて、コナンファンの皆様お待たせ致しました。
劇場版最新作『ゼロの執行人』ですよ~。
4月13日の公開以来絶好調!
あの『アベンジャーズ』最新作をも抑えて首位を独走中でコナン映画史上初の興収70億円以上突破も見えてきております。

思えば2016年の『純黒の悪夢』以来毎年右肩上がりで興収を伸ばしてきています。
少し前ならこの『コナン』もGW 期間の風物詩とでも言うべきか『クレしん』と並ぶキッズに向けた娯楽映画という印象でしたが、今や大人も無視出来ないエンタメ大作として注目度が高まってきてます。

そして本作はまさに大人に向けたサスペンス要素を非常に強めてきており、逆にお子さんが取り残されやしないかと心配になる様なつくり。
それもそのハズ、今作の脚本を手掛けたのは櫻井武晴氏。
『相棒』シリーズをはじめ数々のサスペンスの脚本を担当されてきた方で『コナン』の劇場版では『絶海の探偵』(2013)、『業火の向日葵』(2015)、『純黒の悪夢』(2016)に続き4作目となります。


いやはや驚きました!内容が非常に難解。
キッズ向けアニメとは思えない様な単語の羅列。
子供のみならず大人でも正確に理解出来た人はどれほどいた事でしょう。
二回、三回とリピートしなければならないかもしれません。

なんて言うと身構えてしまう人がいるかもしれません。
しかし、ご安心下さい。
ストーリー展開自体は内容を正しく理解せずとも楽しめます。
あくまで大人へ向けつつも本来の客層たるキッズも無視させない為の配慮はなされておりますので警察や検察の組織図が理解出来ない場合は「容疑者・毛利小五郎」、「安室透ストーリー」等の視点で作品に向き合う事をオススメします。

阿笠博士のクイズや少年探偵団と彼らをまとめる灰原哀というお馴染みのシーンももちろん用意されています。
しかし、本作で注目したいのはいつもはシリアスな様相を含んだコナンという作品の中でコメディ要員或いは和みキャラとして存在する少年探偵団が今回は大活躍を見せます。
そしてそれは本作のメッセージにも繋がっていきます。
ドローンの登場共々見逃せません。

本作オリジナルの登場人物として印象的なのは、
逮捕された毛利小五郎を担当する事になる橘境子という女性弁護士。
事務所を構えずフリーランスで活動するケータイ弁護士・ケー弁というのが今の時代らしくて良いのだが、当初は負け続きのダメダメ弁護士というキャラクター付けをされていたのが、彼女の人物やバックボーンを知れば知るほど浮かび上がってくる秘密の数々。
脚本の妙と言いましょうかストーリー上においても非常に深みを生んでいたと思います。
上戸彩の演技も良かったです。

そして本作でフィーチャーされている安室徹について。
絶大な腐女子人気を誇るというこの安室さんが本作においては敵か味方か謎を孕ませた登場をし、見る者の目を引かせます。
そして彼の取る行動から本作の重要なテーマが浮き彫りに。
それはズバリ正義という観念の意味。
先日取り上げた『クレヨンしんちゃん』劇場版でも同様のテーマが定義されていましたね。
詳しくは『クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』に譲るとして共通して正義という名の下であれば何をしても良いのか?という普遍的なテーマが掲げられていました。
本作の主題歌でもある福山雅治の『零-ZERO-』で歌われている内容はまさにこのテーマと連動させる歌詞となっているので本編はもとより歌詞にも注目
して頂きたいところです。

また、本作で爆破される舞台となる東京サミット。
これはまさに2020年の東京オリンピックをイメージしたもの。
二年後に迫った国際的祭典での「もしも…」を念頭に据えながら警察らの取る対応等社会的事象をメタファーにしながら進行される会話劇を見てとある作品を連想させてくれました。

その作品こそ2016年の大ヒット映画『シン・ゴジラ』。
今更語るまでもなくあの作品はゴジラ襲来をメタファーにして東日本大震災と政府の対応を映像にのせて展開されていきました。
本作『ゼロの執行人』を見ているとまさに『シン・ゴジラ』を意識させるかの様なやり取りが見られます。
シン・ゴジラ』は少なからず本作に影響を与えていたであろう事が想像出来ます。

後半の見所と言えば安室透のカーアクション。
華麗なるハンドルさばきで縦横無尽なカースタントを繰り広げる安室さん。
ワイルドスピード』だとか『ミッション・インポッシブル』とか海外のアクション大作ならいざ知らず日本の邦画実写では実現が難しいであろう同様のシーン。
しかし、そこはアニメーションの強みとばかりにこれでもかの豪快なカーアクションが展開されます。
ユーロビートでも流れようもんなら『頭文字D』ですよ(笑)

鑑賞後はパンフレットでも買おうかと思い窓口へ行くも完売でした。
そんな所からも今のコナン人気がうかがえますね。

レディ・プレイヤー1

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スティーブン・スピルバーグ監督が、アーネスト・クラインによる小説「ゲームウォーズ」を映画化したSFアクション。貧富の格差が激化し、多くの人々が荒廃した街に暮らす2045年。世界中の人々がアクセスするVRの世界「OASIS(オアシス)」に入り、理想の人生を楽しむことが若者たちの唯一の希望だった。そんなある日、オアシスの開発によって巨万の富を築いた大富豪のジェームズ・ハリデーが死去し、オアシスの隠された3つの謎を解明した者に、莫大な遺産とオアシスの運営権を明け渡すというメッセージが発信される。それ以降、世界中の人々が謎解きに躍起になり、17歳の孤独な青年ウェイドもそれに参加していた。そしてある時、謎めいた美女アルテミスと出会ったウェイドは、1つ目の謎を解き明かすことに成功。一躍オアシスの有名人となるが、ハリデーの遺産を狙う巨大企業IOI社の魔の手が迫り……。作中のゲーム世界には、アメリカはもとより日本のアニメやゲームに由来するキャラクターやアイテムなどが多数登場する。
(映画・com より)

キングコングバットマンメカゴジラガンダムハローキティストリートファイターetc
一体版権だけでいくらなんだよ?
そんな事を気にしつつも少年時代の妄想を思い出してしまいました。
「もしウルトラマン仮面ライダーが戦ったらどっちが強ぇんだろ?更にそこにゴジラもやって来たらすげぇよな~」なんて事を。
しかし、それは版権という名の大人の事情を知らない子供だからこそ出来る自由な発想であり妄想なんです。
だが、そこは流石のスティーブン・スピルバーグ

そんな子供時代の妄想を現実に…いや、それを上回る様な圧倒的スケールで作り上げたのがこの『レディ・プレイヤー1』です!

実はこの映画は既に二回鑑賞しておりまして一度目は2D字幕版で見ました。
しかし、圧倒的な映像美に感嘆するあまり是非3Dで鑑賞したいと思い、3Dメガネをオアシスに繋ぐゴーグルよろしく装着。
私の目に狂いはないとばかりに3Dによる最先端の映像世界を堪能して参りました!

内容に触れていきますが、現実世界ではパッとしない登場人物がオアシスの中に入れば容姿も能力も自分のなりたいキャラクターそのものになれる。
そこで繰り広げられる冒険劇なのですが、最近取り上げた『ジュマンジ/ウエルカム・トゥ・ジャングル』に見られた日常と違うキャラクターになりゲームの中でRPGさながらのアドベンチャーを繰り広げるという設定に共通するものがありますね。
しかし、『ジュマンジ』が90年代的な半ハイテク半アナログなベースを下地にしていたのに対し、本作は完全に21世紀型のVR。
更に最近見た作品で言えば『パシフィックリム:アップライジング』の『ガンダム』とも『ヱヴァンゲリヲン』とも取れるロボットファンタジー観を内包しつつもありゆるサブカルチャーの要素を巧みにブレンドして作り上げた本作の構築はただただ天晴の一語に尽きます。

しかし、某映画評論家の言葉を借りれば違う監督、例えばマイケル・ベイ監督(トランスフォーマーシリーズ)だったら目も当てられない事になっていたでしょう。
スピルバーグだからこそ幕の内弁当の様にありとあらゆるおかずを詰め込んでもしっかり味わえ一級のエンタメ作品に仕上がったのだと思います。

さて、本作の特長としては随所随所に盛り込まれた80sのポップカルチャーオマージュが見逃せません。
登場してくるキャラクター等もそうですが、音楽などはその最たるものでしてVAN HALENの『JUMP』(1984)を起用するオープニング等は高揚感を高めます。
更に印象的だったのが、オアシス内に作られたクラブのシーン。
NEW ORDER の『BLUE MONDAY 』(1983)が心地よく流れるかと思えばウェイドとアルテミスが踊るのはBEE GEESの『STAYN’ ALIVE』(1977)。
これは1977年に全世界で大ヒットした『SATURDAY NIGHT FEVER 』からのナンバーですが、それを最先端のVRの映像に合わせてグルーヴィーに踊ります。
約40年前にこの曲をこんな先鋭的な映像に乗せて踊る映画が作られるなんて当時では想像だにしなかった事でしょう。

ちなみにこの映画ですが、ポップカルチャー大好きで尚且つオタク気質な人であればあるほど楽しめる内容ではないかと思います。
と言うのも前述の登場してくるガンダムやキティちゃん等のキャラクターが誰の目から見てもわかる登場もすれば懐かしの『ウォーリーをさがせ!よろしくじっくり目で追わないとわからないであろう非常に細かいところで登場してきたりするのです。
ア⚪ラのバイクなんかは説明があったのでともかくとして大勢のキャラクターが向き合うバトルシーンなんかはどれだけのキャラクターが紛れ込んでるか友達や恋人と探しあっても良いかもしれません。
ちなみに私は『スト2』の春麗を見つけました(笑)

本作の持つメッセージ性も非常に訴えかけるものがありました。
とかく現実の生活に不満があると日常を離れ違う自分になりたいと思う、それは誰しも大なり小なり感じる事でしょう。
度々引き合いに出すドラえもん映画で例えれば『のび太の宇宙開拓史』におけるのび太くんの様に非日常の世界にいけば自分がヒーローになれるかもしれない、そんな事を考えた経験が誰かしらあるかと思います。
本作におけるオアシスとはまさにそれでその世界に入れば誰しもが理想の自分になれます。
しかし、最終的においしい物を食べたり人の温もりに触れたりリアルな経験はリアルな生活でしか得られる事は出来ません。
現実世界とどう向き合いどう生きていくか答えは自分で作り上げていくしかないでしょう。

そしてオアシスの創始者であるジェームズ・ハリデーなる人物。
スティーブ・ジョブズともビル・ゲイツとも相通じるものを感じますが!スティーブン・スピルバーグその人がモデルイメージなのではないかと思いました。
作中では内向的でゲームとのみ向き合ってきたハリデーの少年時代も登場しますが、映画に魅了された少年時代のスピルバーグと重ねつつ、そして映画の技術に革新を生んだ自身を投影させながらハリデーによって投げ掛けられるメッセージ。
それこそが今のスピルバーグが私達に提唱するそれと捉える事が出来るのではないかと感じ劇場を後にしました。

映画の可能性を追求し続け生み出された極上の映像美と巨匠・スピルバーグの魂のメッセージ。
このGW 、あなたの目で感じてください。

映画クレヨンしんちゃん 爆盛り!カンフーボーイズ~拉麺大乱~

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クレヨンしんちゃん」の劇場版アニメシリーズ26作目。マサオの誘いで伝説のカンフー「ぷにぷに拳」を習うことになった、しんのすけたちカスカベ防衛隊は、カンフー娘の玉蘭(タマ・ラン)とともに修行に励む。その頃、春日部にある中華街「アイヤータウン」では、「ブラックパンダラーメン」なる謎のラーメンが大流行。それは、一度食べると病みつきになり、凶暴化してしまうという恐ろしいラーメンだった。突然のラーメンパニックに対し、街の平和を守るためカスカベ防衛隊が立ち上がる。監督は「映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」「映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃」を手がけた高橋渉
(映画・com より)


この時期公開の『クレヨンしんちゃん』の劇場版は今や子供のみならず大人からも支持を得ている人気シリーズです。
私も過去何作かで好きな作品はいくつかあるのですが、実は劇場で鑑賞するのは本作が初めてです。

初めての劇場版『クレヨンしんちゃん』鑑賞。
果たして如何なものだったのでしょうか。

行ってみよ~!!

公開数日後の某平日。
メインの客層のお子様の姿はなく皆大人ばかり。
ドラえもん』もそうなんですが、皆さん鑑賞するタイミングは心得たものなんですね(笑)

オープニングでは劇場版のクレヨンしんちゃんには欠かせないクレイアニメきゃりーぱみゅぱみゅによるお馴染みのテーマ曲。
「あ~、しんちゃんが始まったな~」なんて年甲斐もなくワクワクするものです(笑)

そして登場するしんちゃんらカスカベ防衛隊の面々。

そう、あくまでいつものしんちゃんの延長線上の世界なのです。

しかし、マサオくんが何やらおかしい?

なんてところからストーリーが広がっていき、劇場版ならではのクレしんワールドが幕を開けていくのです。

本作はタイトルからもイメージ出来る様に香港映画にインスパイアされたカンフー映画となっています。
ジャッキー・チェンブルース・リーの要素もあれば『ドラゴンボール』、『北斗の拳』といった少年漫画オマージュもあったりします。
カスカベ防衛隊が習うぷにぷに拳なる拳法はジャッキー・チェン酔拳を彷彿とさせるし敵のアジトがラーメン屋なんて言うのは『死亡遊戯』を思わせてくれます。
更に本作のボス敵はケンシロウよろしくひこう(変換出来ない・・・)をつくという攻撃方法。
もっともひこうを突かれた方は「あべし!」「ひでぶ!」と顔や体が粉砕されるなんて事はなくクレしんらしく「パンツ~まる見え~」を言い続けるとか昔流行った一発ギャグをひたすら言い続けるなんていうしょうもないものなんですけどね(笑)

そしてところどころで挿入される昭和臭さが何とも良い味になってまして、しんちゃんらが『ジェンカ』を踊るという場面があります。
その『ジェンカ』も広く知られた坂本九のバージョンではなく1963年に発表された橋幸夫バージョンという目のつけどころに昭和フェチな私は思わずニンマリしてしまいましたよ(笑)
しかも『ジェンカ』が流れるラジカセがまた古臭いんですよ。
先日『ボスベイビー』を評した時にカセットテープで録音するという手法について言及しましたが、ここでもまた古き良き録音手法を目の当たりにする事になろうとは思いもしませんでした(笑)
そもそも『ジェンカ』なんて親世代にも通じるネタなんでしょうか?

また、敵の組織がラーメンを使って大衆を洗脳する展開については無知な一般人が流行に躍らされる様を皮肉ると同時にそこから取り返しのつかない事態に及びかねないという視点で流されやすい民衆への警鐘とも取れる描写になっておりました。

本作のヒロインとして登場する玉蘭についての描かれ方は非常に衝撃的なものでした。
この玉蘭はしんのすけらと共にぷにぷに拳を習う少女なのですが、良く言えば真面目で一本筋が通っている、悪く言えば愚直ゆえに融通が効かないという性格です。
そんな彼女が力を身につけた後、暴発する誤った正義感が見る側への問題提起として突きつけられます。
本人は決して間違った事はしていない。
むしろ社会的、常識的に見れば間違った人間を正しているのだ

そんな考えが突っ走ってしまうとむしろそれは害悪なものになる。
玉蘭という少女を通して真摯に突きつけられるのですが、私達大人にとっても非常にメッセージ性の強いテーマなのではないでしょうか?

また、本作において注目しておきたいのはマサオくんという存在です。
元々カスカベ防衛隊メンバーに先駆けてぷにぷに拳を習い始めたらマサオくん。
兄弟子として先輩風を吹かせるあたりねねちゃんじゃなくてもイラッとしますよ。
しかし、呑み込みの良い他のカスカベ防衛隊メンバーに先を越されてしまいます。
その時に見せるマサオくんの心の葛藤そして心の成長。
それは「持たざる者」へのエールでもあり、本作の持つもうひとつのテーマと言えるでしょう。

と本作も非常に内容も濃くストーリー展開なども良かったのですが、ラストについては賛否両論ある様です。
クレしん映画なんだからああいうユルいオチで良かったんじゃない?という意見。
せっかく後半まで盛り上がっていたのにラストで拍子抜けした、ガッカリという意見。

どちらもよ~くわかります。
しかし、あくまで私の感想ですが、緊張と緩和のバランスが取れていましたし、メッセージ性もありました。
ラストは少々マヌケな展開になったのは事実ですがそれでも許せちゃうんですよ。


それが『クレヨンしんちゃん』だから。

パシフィック・リム:アップライジング

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人が乗り込み操縦する巨大ロボットのイェーガーと「KAIJU」と呼ばれる巨大モンスターの戦いを描いて話題となったSFアクション大作「パシフィック・リム」の続編。前作を手がけたギレルモ・デル・トロは製作にまわり、テレビシリーズ「Marvel デアデビル」などで知られるスティーブン・S・デナイトが長編映画初監督を務めた。前作でイドリス・エルバが演じたスタッカーの息子ジェイクが新たな主人公となり、前作から10年後、平穏が訪れたと思われた地球に再びKAIJUが現れたことをきっかけに、新世代のイェーガーに乗り込む若きパイロットたちの戦いを描いた。ジェイク役は「スター・ウォーズ フォースの覚醒」で一躍世界的に知られる存在となったジョン・ボイエガ。共演にスコット・イーストウッドジン・ティエン、前作から続投のチャーリー・デイ菊地凛子ら。日本からは菊地のほか、新田真剣佑パイロット訓練生のひとりとして登場する。自らの命と引き換えに人類を救った英雄スタッカーを父に持つジェイクは、父とは別の道を歩んでいたが、KAIJUに復讐心を燃やす少女アマーラと出会ったことをきっかけに、義姉である森マコと再会。マコの説得により、一度は辞めたイェーガーのパイロットに復帰することになるが……。
(映画・comより)

日本のお家芸とも言えるロボット、怪獣という特撮を見事ハリウッド流にブラッシュアップさせ映画ファンからも高い評価を得た前作『パシフィック・リム』。
あれから5年の時を経て公開された最新作『パシフィック・リム:アップライジング』。
前作で監督を努めたギレルモ・デル・トロは『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー作品賞を獲得したのも記憶に新しいですね。
デル・トロ自身はこの続編には意欲的だったそうですが、何やら大人の事情が絡み本作はスティーブン・S・デナイトにバトンタッチ。
デナイトは前作の踏襲という選択を外し、主要な登場人物も映像的な手法も変え、デナイト流にアップライジングしてアプローチしてきました。
その結果が前作のファンからは否定的に捉えられている様です。
果たしてどうなのでしょう?

2013年と言うと日本において言えばロボットや怪獣が登場する特撮的なアクション映画から距離のある時期だと思います。
昨年の『キングコング』や来月公開される『ランペイジ』など今でこそよく見られるジャンルではありますけどね。
2016年の『シン・ゴジラ』の大ヒットがいわゆる特撮系映画の分岐点になったと思います。

5年前後前だと安定したヒットとなっていたのはせいぜい『トランスフォーマー』シリーズくらいなものです。
しかし、ハリウッドで言えばこの『パシフィックリム』が劇的な変化を生み出したと言っても過言ではないでしょう。
イェーガーとKAIJUが対決という至ってシンプルな構造。
その上に『アルマゲドン』的な自己犠牲のスピリッツに登場人物が作り出すヒロイズム等などカタルシスが生まれるあらゆる要素が一本の作品に凝縮されておりました。
それが映画ファンの胸を打ったのは言うまでもないでしょう。

しかし、続編である本作はその世界観に捕らわれない自由な作りとなり、それに挑んだスピリッツは評価の出来るところではないでしょうか。

まず主要な人物をガラッと変え、若い世代をフォーカスした点。
それ自体は良いと思います。
ただ、スタッガーの息子・ジェイクという本作の主人公について。
前作でスタッガーの息子についての描写は一切ありません。
それが本作で降って沸いて出てきた様に現れ、ちゃっかり主人公になっちゃってるんです。
更に菊地凛子演じるマコ。
彼女は前作において非常に存在感がありました。
パシフィック・リム』という作品においては彼女の存在を抜きにして語れない。
それほど魅力的なキャラクターでした。
そのマコはジェイクの義姉として登場するのです。
これまた説明もない唐突な設定。
前作でスタッガー、ジェイク、マコを結ぶエピソードがあれば良かったのですが。
あるいはせめて本作冒頭において三人のエピソードシーンを挿入しておけば違和感はなかったと思います。

更に勇敢な父を持つジェイクなのですが、冒頭では悪に手を染めるゴロツキと登場します。
それ自体は悪くないのですが、一連のワルエピソードには尺を使いすぎな感が否めないんですよね。

それから比較的前半ですが、とある人物を乗せたヘリコプターが落下するシーンについて。
ジェイクの乗ったイェーガーが助けだそうとするのですが、悲壮的な音楽を流すタイミング早すぎ(笑)
あれだとすぐ結末がわかってしまうじゃ~ん


次に富士山を目指し、日本へ上陸したKAIJUとイェーガーが格闘するシーン。
本作のハイライトでもあり最もエキサイトした場面でもあります。
ただ、この映画に限らずですがハリウッドにおける東京の描写ってどうにも紛い物くさくなるんですよね~。
最近の作品だと『ジオストーム』。
あれもなかなかひどかったですが、本作もまた然りです。
新宿の街に襲来したKAIJUに逃げまとう人々。
その様子がどこか滑稽に見えてしまう。
更に言えばその街の光景にも「日本舐めてんのか」と突っ込みたくなる描写がいくつか見られます。
浅草の雷門を思わせる様な提灯がビル街にデカデカと吊られていたりとか露骨に目につく「パチンコ」と書かれた大きな看板とか。
この人から見た日本とか東京ってそんなイメージなのですか?

本作は中国人キャストも存在感を発揮するし日本からも新田真剣佑がキャスティングされていたりガンダムも登場するなど東洋色が色濃く反映された作品ではあるのですが、描写の粗さが何とも残念でしたね。

それから前述のマコ然りですが、前作からの続投組の扱い方にも言及しておきたいです。
前作のイメージを崩し新しいものを生み出したいというのはわかりますが、前作からの登場人物のキャラクターや位置付けを崩し過ぎでした。
もちろん悪い意味で。

この様に前作が好きであればあるほどつつきたくなる様な続編でした。

しかし、イェーガー VS イェーガーという試みは斬新でなおかつ面白かった!
しかも対決したイェーガーの中味が⚪⚪というのも。
ネタバレになりますのでこの辺で。