きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

グレイテスト・ショーマン

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レ・ミゼラブル」でも華麗な歌声を披露したヒュー・ジャックマンの主演で、「地上でもっとも偉大なショーマン」と呼ばれた19世紀アメリカの実在の興行師P・T・バーナムの半生を描いたミュージカル。劇中で歌われるミュージカルナンバーを、「ラ・ラ・ランド」も手がけたベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当した。貧しい家に生まれ育ち、幼なじみの名家の令嬢チャリティと結婚したフィニアス。妻子を幸せにするため努力と挑戦を重ねるフィニアスはやがて、さまざまな個性をもちながらも日陰に生きてきた人々を集めた誰も見たことがないショーを作り上げ、大きな成功をつかむ。しかし、そんな彼の進む先には大きな波乱が待ち受けていた。主人公P・T・バーナムことフィニアス・テイラー・バーナムをジャックマンが演じ、バーナムのビジネスパートナーとなるフィリップ・カーライル役を「ハイスクール・ミュージカル」「ヘアスプレー」のザック・エフロン、バーナムの妻チャリティを「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のミシェル・ウィリアムズが演じる。
(映画・com より)

実はワタクシ、この映画の公開を非常に楽しみにしておりまして公開直後にまず鑑賞。
そして早くも二回目を鑑賞し、この映画の素晴らしさをより多くの人に知ってもらいたいと感じているまさに今なのであります!

というのも半年前から予告編を目にする度に流れる映像と音楽。
久しぶりにオーラのある作品である事をひしひしと感じていたのです。
ラ・ラ・ランド』の製作スタッフ再集結というコピーに胸が躍らないわけがありません。(実際は音楽面で再集結なのですが)

まず、本作の冒頭が素晴らしい!
予告編で度々目にした壮大な音楽と映像美。
本作最大のハイライトを冒頭に持ち込む大胆な演出。
そういえば『ラ・ラ・ランド』での渋滞するハイウェイで歌い踊るシーンも掴みに持ってきてましたね。
ただ正直言って『ラ・ラ・ランド』を初めに見た時って冒頭のシーンの印象が強すぎて後になればなるほど冷めてしまったんですよね、結果的に二回見て初めて良さを実感した映画でしたから。
しかし、本作はと言うと冒頭のシーンだけに止まらずその他にも見所がふんだんに盛り込まれており終始飽きさせない作りは見事でした!


とりわけバーカウンターでビジネスパートナーにすべくフィリップを説得するシーン。
酒場で口説き落とすなら小難しい言葉を並べて交渉をすればいいのです。
しかし、本作ではそれすらもミュージカルシーンとして取り込んでしまう。
あそこまで小気味良いお金の話しなんてそうそう見れませんよ(笑)

また、劇場を立ち上げた当初娘と一緒に町中でビラを撒いたり町の掲示板の様な場所にチラシをトンカチで打ち込むシーン。
チラシをトントンと打ち込むだけなのにそこもまたリズミカル。
思わず足でリズムを刻みたくなる様な演出には思わずニヤリとします。

映像的な部分ではバーナムがショーを成功させた後、オペラ歌手の女性に見いられ彼女の公演に入れ込む様になるのですが、同時にこれまでの彼を支えた家族やショーのメンバーとの距離が生まれます。
そこで流れる効果的な場面として拍手喝采を浴びるオペラのステージ、バーナムが抜け興行的に失敗するショーそして罵声を浴びせられるショーのメンバー達、娘が立つバレエの舞台を対比させるかの様に挿入した演出は印象深かったですね。


さて、本作のストーリー的には『シング/SING 』更に深い部分では『ズートピア』を感じさせます。
まず、ショービジネスでの成功を夢見ながら奮闘する支配人としてヒュー・ジャックマン演じるP.T.バーナムなる人物が奇抜なショーを展開します。
『シング/SING 』で言えば劇場再興を目指し歌のコンテストを開催するコアラのバスター・ムーンと相通ずるものがあります。
更に両名とも成功を夢見るピュアな面を持つ一方、成功の為なら時にはあざとくもなる性格。
このP.T. バーナムなんかは後半ショーで当てた後にそんな内面が如実に描かれていてリアルさを感じました。
でもその方がらしいんですよね。ショービジネスでの成功なんて綺麗事ばかりじゃないんですから。
また、一方でショーに登場する演者達も個性の塊の様な連中でして実社会では決して満足な生活が送れていない面々がアイデンティティーを確立させる為に自己表現をする。
彼らが興行主であるバーナムから距離を置かれた時、歌唱し踊った『This Is Me 』を見た時、少なからず胸を打たれそして涙すら流れそうになりました。
そしてこの彼ら。誰もが特異な体型や肌の色をしているので迫害を受けます。
それこそまさに『ズートピア』ですね。
マイノリティな存在に対しての差別をテーマに強く訴えかけるメッセージ性の強い作品となっていました。
彼らが存在意義を見出だし輝ける場所。
それがステージの上だったのですね。

気にならない点がないかといえば嘘になります。
しかし、それすらも凌駕するダイナミックな作風に感嘆する他ありませんでした!
いや~、今年に入ってからの映画はホント名作揃いだわ(笑)

春の到来を前に映画シーンに強い存在感を放つ『グレイテストショーマン』。
はっきり言って劇場で見なければ損します!
これはホンマでっせ~!

今夜、ロマンス劇場で

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綾瀬はるかと坂口健太郎が共演し、モノクロ映画の中のヒロインと現実世界の青年が織りなす切ない恋の行方を描いたファンタジックなラブストーリー。映画監督を目指す青年・健司はモノクロ映画のヒロインである美雪に心を奪われ、スクリーンの中の彼女に会うために映画館に通い続けていた。そんなある日、美雪が実体となって健司の前に現われる。モノクロ姿のままの彼女をカラフルな現実世界に案内するうち、健司と美雪は少しずつ惹かれ合っていく。しかし美雪には、人のぬくもりに触れると消えてしまうという秘密があった。「のだめカンタービレ」シリーズの武内英樹がメガホンをとり、「信長協奏曲」の宇山佳佑が脚本を担当。
(映画・com より)


正直、今ワタシはこの映画に熱烈的に感動しています!
『8年越しの花嫁』では涙が露程も落ちなかったというのに涙腺という名のダムから涙が大量に放水しました(笑)
というのも私が映画が好きだからこそこの映画が琴線に触れたのでしょうね。

本作鑑賞前の私自身の期待値はかなり低かったです。
綾瀬はるかが悪いわけではないですが、これまで綾瀬はるか主演映画ではかなり苦い思いをしてきましたからね。
ひみつのアッコちゃん』、『高台家の人々』など綾瀬爆弾によって粉砕されてしまった作品は枚挙にいとまがありません。
フジテレビ×綾瀬はるかといえば昨年はじめの『本能寺ホテル』があります。駄作ではないですが、人に勧めたくなる様な名作かといえばそうでもないですしね。
しかし、東宝→ワーナーへ配給会社を変えて挑んだ本作は私の予想の遥か上をいく素晴らしい作品でした!

恋愛映画には悲恋モノというカテゴリーがあります。
昨年公開された『昼顔』とか『ナラタージュ』の様な禁断の愛に待ち受ける悲劇もあれば死別する事によって生まれる悲恋などがあります。
また、最近では『ぼくは明日、昨日の君とデートする』に見られるファンタジー色を伴った作品も特徴的で本作も系統的にはファンタジー路線の悲恋モノと言えるでしょう。

さて、本作を鑑賞した上でまず感じたのは山崎貴作品を思わせる背景や手法が印象的でした。

本作の時代設定は昭和35年
ちょうど『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズと一致する時代とあってセットも昭和ノスタルジーを感じさせます。
とりわけ映画の撮影現場が舞台となってるだけあって京都の映画村の様なはたまた『蒲田行進曲』を思わせる様な作り込んだセットの数々にはとにかく目を奪われます。
また、周辺を通りすぎるエキストラの人々の衣装などもモダンで「色」を全面に押し出した作品らしく色彩豊かで視覚的にも楽しませてくれます。

そしてストーリーの展開の仕方として現代と当該の時代を結ぶ為に加藤剛演じるある老人が病室で石橋杏奈演じる看護師に当時の回想録を聞かせます。
この老人こそが本作の主人公・健司その人なのですが、最近では『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』でも見られた手法を取り入れています。
そしてこの現代から過去を回顧する手法。真っ先に浮かんだのは『永遠の0』でした。

続いて印象的だったのは綾瀬はるか演じるお姫様が登場した映画の扱い方でした。
全編モノクロで展開される旧き良き時代のコミカルタッチな映画。
当初は人々を楽しませてきたこの映画。
決して映画史に残る名作などではなく現代風に言えばB級映画として扱われる知る人ぞ知るマイナー作品でした。
やがて映写室の倉庫に眠り時が過ぎていきます。
その間に太平洋戦争を伝えるニュース音声が流れ、終戦~戦後~皇太子殿下ご成婚のニュースと時代の変遷を音声のみで伝えます。
そこからこの映画が1930年代~1940年代初頭に作られたものと予測させる演出は見事だなと感じました。

そして何と言ってもキャスト陣の見事な演技。
まず、綾瀬はるかの高飛車なお姫様。
綾瀬はるかといえば天然の不思議ちゃんなキャラがハマり役でこれまでもそんな彼女の魅力が存分に生かされる作品はありました。
しかし、本作ではお高く止まったお姫様。
高飛車なのに可愛らしい。
これまでと違うイメージですが、それが見事にぴったりで彼女の新境地を見た様な印象です。
本来の彼女が得意とするアクションシーンも見られます。

また、坂口健太郎といえば少し前ならスウィーツ映画の常連の様なイメージでしたが、より演技の引き出しを増やしたかの様な本作での役どころ。
奥手で純粋な映画の助監督を好演していました。
北村一輝演じる銀幕のスターが見事にコメディリリーフとして存在感を発揮。
華やかなスターなのにどこかマヌケでおいしい役どころ。
とりわけ歌舞伎スタイルで車を運転する姿のシュールさには吹いちゃいました(笑)

そんな笑いどころもきっちり押さえた本作最大の見せ場と言えば実在する人間と銀幕から表れた別次元の存在との間に立ちはだかる障害です。
好きなのに触れる事も出来ない二人。
超えたくても超えれない壁があるのです。
しかし、そのハードルを超えてしまったら最後、二人に待ち受けるのは永遠の別れなのです。
それが故に見ていてあまりにも切ないしやるせない気持ちになる。
ただただ胸が締め付けられ涙が止まりませんでした。

さて、本作は映画のヒロインに恋し続けた一人の青年の物語です。
自分の住む現実世界には彼に想いを寄せる女性だって居るのに(本田翼ちゃんの事です。)それでも尚、映画に登場するお姫様を一途に愛し続けるのです。
二次元のアニメキャラに萌えるオタクくんと本質的には何も変わりませんし、童貞のまま歳を重ねた男の悲話でもあります。
或いは本作に登場したお姫様そのものが彼の妄想だったのかもしれません。

しかし、そこに気持ち悪さはなく清々しいまでのピュアさに胸を打たれます。
前述の『ぼくは明日、昨日の君とデートする』にも似た青臭さ言い変えれば中二病的なものが瑞々しく見えるのかもしれません。
そういえば『君の名は。』もそうでしたね。
大人になり純粋さを失ってしまった人にこそ訴えかけるものがこの作品にはあります。
オススメです!(今年一番かも?)

不能犯

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集英社グランドジャンプ」連載中の人気コミックを、松坂桃李主演、沢尻エリカ共演で実写映画化し、思い込みやマインドコントロールでターゲットを殺害する「不能犯」の男と彼を追う女性刑事の対決を描いたサスペンススリラー。都会のど真ん中で連続変死事件が発生し、現場では必ず黒スーツの男が目撃されていた。その男・宇相吹正はSNSで「電話ボックスの男」と噂される人物で、とある電話ボックスに殺人の依頼を書いた紙を貼ると実行してくれるのだという。彼に狙われた者は確実に死亡するが、その死因は病死や自殺、事故など、いずれも殺人が立証できないものだった。警察はようやく宇相吹の身柄を確保して任意聴取を始める。宇相吹の能力にベテラン捜査官たちも翻弄される中、女性刑事・多田だけが彼にコントロールされないことが判明し……。共演にも「ちはやふる」の新田真剣佑や「帝一の國」の間宮祥太朗ら豪華キャストが集結。監督は「ある優しき殺人者の記録」の白石晃士

人間が持つ最も凶乱的かつ暴発的感情。
それは殺意。
溜め込んだ悪意が衝動的にあるいは暴走を始めた時、人は人を殺めてしまうのでしょう。

なんて冒頭から物騒な話しになりましたね。
本作『不能犯』はそんな人間の殺意から展開されていく悲喜劇を非常に印象的に展開していき息つくいとまも与えないスリリングな作品でした。

主演は松坂桃李沢尻エリカ
まず松坂桃李と言えば好青年的な役柄で人気を博してきたイメージがあります。
しかし、近年は様々な役に挑戦し少し前の妻夫木聡を思わせる様な演技の幅を身に付けてきている感があります。
本作でもサイコパスそのものなダークなキャラクターで松山ケンイチ藤原竜也といった面々が演じてきたダークヒーロー像を表現しています。

一方の沢尻エリカですが、復帰後は『ヘルタースケルター』(2012)、『新宿スワン』(2015)等でセクシャルな魅力を存分に発揮した様な演技で魅了してきました。
そして本作では一転。
どこかクールでありながらも根は熱血的な女性刑事を好演。
近年の上記2作と異なるタイプの役どころなので新鮮でもあり従来のエリカ様っぽさも覗かせ…。

さて、本作の様なシリアルキラー的な作品と言えば『悪の教典』、『ミュージアム』、『22年目の告白』等の作品が連想されます。
しかし、それ以上に私が感じたのは2012年の『ツナグ』でした。
亡くなった大切な人を蘇らせ夜の間だけ一緒に過ごしてもらうというあの感動作『ツナグ』とこの恐怖と絶望のスパイラルの様な本作がなぜ?というトコロですが、ひとつに殺人を依頼する人物がおり、松坂演じる宇相はそれを引き受けます。
そして対象となる人物を次々に殺していくのです。

依頼→受託→決行

の流れって『ツナグ』そのものなんですよね。

そして本作はオムニバス形式となっております。
『ツナグ』もまたオムニバスでストーリーが進行されておりました。
『ツナグ』で死者を蘇らせていた高校生を演じていたのはそう、松坂桃李
まさに本作は闇のツナグ、あるいはツナグ暗黒版と表現出来る様な作品だと思いました。

本作では登場人物が次々と非業の死を遂げていきます。
全編に渡ってただならぬ緊張感も生み出されており息をのむ描写の数々に絶望を感じる事でしょう。
そして総じて人間の愚かさ、醜悪さ等が抽出されているのですが、誰一人として救われません。
殺された人も報われなければ依頼をした人も報われない。
因果応報というメッセージも読み取れます。
人を恨み、憎しみ殺意に変わり宇相の手によって殺めてもらうも殺人に及んだ後は殺されるよりも残酷な現実。
人を呪わば穴二つという諺がある様に人を殺しても決して幸せになどならないのです。

後半はやや強引なまとめ方が残念でした。
間宮祥太郎演じる料理店の従業員がクローズアップされてからは話しにブレが生じてしまった感があり、どうもしっくり来ない。
宇相と多田の心理戦が面白かったのにそこに来て強引に絡めてしまった様で後味が悪いんですよね~。
ネタバレになるので詳細は割愛しますが。

しかし、全体を通して作り出されていた緊張感やおどろおどろしい描写などは見所だと思います。

グロテスクな作品に飢えていた方にはオススメです!

祈りの幕が下りる時

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阿部寛主演、東野圭吾原作による「新参者」シリーズの完結編。東野の人気ミステリー「加賀恭一郎シリーズ」第10作の映画化で、2010年に放送された連続ドラマ「新参者」、2本のスペシャルドラマ、映画「麒麟の翼 劇場版・新参者」に続き、阿部が主人公の刑事・加賀恭一郎を演じる。父との確執、母の失踪など、これまで明かされることがなかった加賀自身の謎が明らかとなる。東京都葛飾区小菅のアパートで滋賀県在住の押谷道子の絞殺死体が発見された。アパートの住人も姿を消し、住人と押谷の接点は見つからず、滋賀県在住の押谷が東京で殺された理由もわからず捜査は難航する。捜査を進める中で加賀は、押谷が中学の同級生で演出家の浅居博美をたずねて東京にやってきたことを突き止めるが……。演出家の浅居博美役を松嶋菜々子が演じるほか、山崎努及川光博溝端淳平田中麗奈伊藤蘭小日向文世らが顔をそろえる。監督は「半沢直樹」「下町ロケット」「3年B組金八先生」など数多くのヒットドラマを手がけた福澤克雄
映画・com より

にべもない事を言いますがTBSのドラマ映画というと個人的にはさほど良い印象がなく、これまでも数々のドラマの劇場版を見てはため息をついてしまったものです。
取り立てて名前を挙げる事はしませんが、おしなべてファン向けの内容で取り残される事がしばしば。
それだけなら私の予習不足と言えますが、映画と呼ぶにはあまりにも粗い内容だったものが多かったです。

それを踏まえて本作です。

ドラマ『新参者』自体は数回程度は見てます。
尚且つ前作の劇場版『麒麟の翼』は劇場鑑賞したのですが、6年前の作品という事もあって記憶にないんですよね。
ただ、ドラマ映画とは言えドラマ自体が一話完結なので一本の独立した映画として鑑賞に耐えうる作品でライトな層にも優しいという印象があります。

そして『新参者』最新作にして最終作となるこの『祈りの幕が下りる時』です。

正直、冒頭からは嫌な予感がしてたんですよ。
というのがテロップの多用。
妙に説明くさいテロップから始まる為、少なからず不安は感じました。

しかし、それを一蹴するかの様に脚本が素晴らしかったです。

本作を見た上でその印象を端的に表現するのであれば

エピソード・オブ・加賀恭一郎

でした。
阿部寛演じる加賀恭一郎という刑事のストーリーが見事なまでにブラッシュアップされていく彼の母親にまつわる出来事、そして本作の中心人物である松嶋菜々子演じる浅居博美と彼女を取り巻く謎の事件。
それが結び付いた時に明かされる本作のタイトル『祈りの幕が下りる時』の意味。
これを知ったら本作を涙なしでは見る事が出来ませんでした。

人気演出家として華やかな世界に身を置く浅居博美。
しかし、彼女には壮絶な過去があり、それを回想するシーンが本作の最大の見所となっています。
時は25年前。
失踪した母親が残した借金の取り立てに博美と父親は頭を悩ませた末、遂にある夜家を捨てて北陸へと向かう逃亡劇が始まります。
中学生時代の博美を桜田ひより、父親を小日向文世が演じるのですが、この二人の演技にとにかく心を捕まれます。
あまりに切なくあまりに悲劇性に満ちた親子の姿には涙なしでは語る事が出来ません。
コメディイメージの強い小日向さんにこんなに泣かされるなんて思いもしませんでした。
道中で訪れる能登での断崖絶壁の光景は視覚的にも荒々しくそして今にも破滅の選択を迫られたかの様な父親の心境とリンクしていたたまれなさを感じます。

しかし、一方で気になる点としては浅居親子が離別するシーン。
名を変え姿を変え再会を誓う父親がはじめに使った手紙上での偽名・近藤今日子という名前。
中学生の博美が近藤真彦小泉今日子が好きだからという事でした。
ただ、時代設定が1991年という事だったのですが、その頃のマッチやキョンキョンは中学生のアイドルって感じではなかったのですが?(ちなみに私は1991年当時中学一年でした)
むしろ宮沢栄作とか観月裕二とかの方がそれっぽいのでは?

とそれはさておきドラマ映画の域を超えた純然たる感動作品となっていたのは意外でした。

そしてエンディングでは杏、香川照之恵俊彰といった面々がカメオ出演
過去のドラマに登場したキャスト陣がその役で登場。
この辺りがドラマからのファンへ向けたサービスショットといったトコロでしょうね。

パディントン2

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1958年に第1作が出版されて以降、世界40カ国以上で翻訳され、3500万部以上を売り上げるイギリスの児童文学「パディントン」シリーズの実写映画化第2弾。ペルーのジャングルの奥地からはるばるイギリスのロンドンへやってきた、真っ赤な帽子をかぶった小さな熊のパディントン。親切なブラウンさん一家ウィンザーガーデンで幸せに暮らし、今ではコミュニティの人気者だ。大好きなルーシーおばさんの100歳の誕生日プレゼントを探していたパディントンは、グルーバーさんの骨董品屋でロンドンの街並みを再現した飛び出す絵本を見つけ、絵本を買うためパディントンは窓ふきなど人生初めてのアルバイトに精を出していた。しかしある日、その絵本が何者かに盗まれてしまう事件が発生し、警察の手違いでパディントンが逮捕されてしまい……。イギリスの人気俳優ヒュー・グラントが、新たな敵役フェリックス・ブキャナンを演じる。

超絶おバカ映画『テッド』~『テッド2』のヒットも記憶に新しかった2016年1月。
何とも愛らしくもマヌケなクマちゃんに出会いました。
その名もパディントン
テッドがお下劣でオッサンキャラであるのに対してこのパディントンは実にお上品。
英国紳士そのものな佇まいと語り口調。それでいて愚直な故に巻き起こす騒動の数々。
私はすっかりこのパディントンの虜になってしまいました。


あれから2年。
待望の続編が登場し、再び私は彼に萌えてしまいました(笑)
嗚呼、パディントン。君は何て可愛いんだ。
そして逞しいんだ。

という事で今回は『パディントン2』をチェックだぜ!!

さて、この新作に関して一言言うのであれば


騙されたと思って見て!!

です。

子供向けというイメージがありますが、なかなか深いメッセージ性もあり侮れない!
子供向けと子供騙しは似て非なるものでありましまて、本作の鑑賞ポイントを挙げれば挙げるほど凡庸な作品ではないとご理解頂けるのではないでしょうか?

すっかりロンドンの生活にも慣れたパディントンですが、本作はそんなパディントンにおいてもピンチが訪れます。
あらぬ濡れ衣を着せられ裁判にかけられてしまうパディントン
そこがこのパディントンというキャラクターにおける真価が問われるシーンでもありましてこれまで彼を受け入れていた街の人々の対応に変化が見られます。
パディントンと彼を巡る人間模様。
それをメタファーとして本作の本質的なものが浮かび上がってきます。

それは人種差別あるいは移民問題というテーマです。
思えば『テッド2』にも裁判のシーンがありました。
本来所有物であるテディベアが人間の女性と結婚をする事の是非を問う描写。
まさにあのシーンにも通じる非常に奥深い問題が潜んでおります。
例えるならイギリス版『ズートピア』といったところでしょうか。
単純明快なくまちゃんのドタバタコメディではないのです。

また、本作を見て感じたのはイルミネーションアニメに影響を受けたであろう描写の数々。
特に昨年大ヒットした『怪盗グルーのミニオン大脱走』からは相当なインスピレーションを受けたのではないでしょうか。

本作ではあらぬ疑いをかけられたパディントンは刑務所に送られてしまいます。
主要なアイコン的キャラクターが刑務所へ送られるくだり。
そう、去年のミニオンがまさにそれでした。
面白いのはミニオンが囚人達をパシリにしたり手下の様に従わせたのに対してパディントンは囚人達と友達になっちゃう辺り。
らしくていいなぁ!

また、本作の敵キャラ・フェリックス・ブキャナン。
元々売れっ子だったのが、仕事が激減し今は犬の着ぐるみを着たドッグフードのCM一本のみという落ち目の俳優。
このキャラ設定、元天才子役から日の目を見なくなり悪に手を染める様になった『怪盗グルー…』のバルタザールに相通ずるではないですか!

更にはアルバイトをするパディントンが自分の体をこすりつけて窓拭きをする辺りは『SING / シング』のコアラ・バスタームーンの洗車の発想ですよ(笑)

他名作群の良いところを巧みに取り入れる描写はいくつも見られますがそれが嫌味がなく盛り込まれているので映画ファンは思わずニヤリとしてしまうかもしれませんね。

また、ギャグパートは本作でもしっかり健在。
英国製スラップスティックコメディ特有のものですが、無作為で意図しないマヌケな行いがとんでもない事態を引き起こす展開。
かつてMr.ビーンが見せていた様なコメディパターンが真面目で無垢なパディントンによって引き起こされていきます。
とりわけ好きなのは理容店でバイトをするシーン。
そもそも理容店ではどんな雑用的な仕事も理容師免許を持った理髪師見習いがやるものではないの?という野暮なツッコミはこの際置いといてパディントンは人生(熊生?)初のバイトを理容店でします。
そしてやらかしてしまうとんでもない大失態。
風が吹けば桶屋が儲かるじゃないですが、ちょっとした失敗から次々にミスが重なり、お客の頭にバリカンを深く入れるわ店は無茶苦茶にするわ。
でも許せちゃうんです、パディントンが可愛いから(笑)

また、刑務所内で囚人服の洗濯を命じられたパディントンがやらかしてしまうシーンもたまりません。
ドジなのに萌えちゃうんです。

とにかく面白くその実内容は深い!
キングスマン』と言い今年の1月公開作は期待以上の作品が続き、個人的にも大満足です!
惜しむらくは日本ではパディントン知名度が弱いのか興収に結び付かないというところかなぁ…。

ジオストーム

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地球の気候をコントロールすることを可能にした人工衛星が暴走し、世界中が異常気象や大災害に見舞われるなかで、未曾有の危機に立ち向かう人々の姿を描いたディザスターパニックアクション大作。「インデペンデンス・デイ」の製作・脚本を手がけたディーン・デブリンが監督として初メガホンをとり、「エンド・オブ・キングダム」のジェラルド・バトラー、「クラウド アトラス」のジム・スタージェスをはじめ、アビー・コーニッシュエド・ハリスアンディ・ガルシアといった豪華キャストが出演している。世界各国の最新テクノロジーを集結し、天候を完璧に制御することを可能にした気候コントロール衛星の運営開始から3年。突如として衛星が暴走を始め、世界中で異常気象を発生させる。衛星の生みの親でもある科学者のジェイクは、衛星の暴走原因を突き止めるため宇宙へ向かうが……
(映画・com より)


帯に短し襷に長し

中途半端で役に立たないものの例えを現わすことわざです。

そんな言葉が本作ほどしっくりくるものはないのでは?という所からこの『ジオストーム』について語らせて頂きます。

本作を予告編で見た時かなり惹き付けられる物を感じました。
かつて90年代後半の終末感を煽る様に作られたディザスタームービー。
インデペンデンス・デイ』、『アルマゲドン』等大ヒット作も数知れず生み出されたのも今や昔。
久しく災害を扱ったディザスターものが影を潜めてしまった中、2018年早々にお目見えしたこの作品に対する期待は並々ならぬものがあったわけです。
東京に巨大な雹が降り逃げまとう人々を写したあの映像にスリリングな展開を期待した映画ファンはきっと私だけではないでしょう。
年末に放送された某映画紹介番組でも映画ファンで知られるキャイ~ンの天野さんが多大な期待を寄せてました。

そんなワクワク感を胸にいざ劇場へ。

しかし、蓋を開けてみたら。

ありゃりゃ、こりゃ何だい。ディザスタームービーじゃねぇだろっ!!

と思わぬ肩透かし。

総論として言えば

コンビニの幕の内弁当の様な内容でした。

味は悪くないしおかずの種類もあるが栄養面でよくない(スッキリしない)

まず、本作の主体となるべくディザスター要素が限りなく薄く、前半に少々登場した後、後半まで一切登場しません。

その間は何が展開されるかというとSFでありラブロマンスであり人間ドラマでありそれが何とも冗長的に行われるだけなのです。
災害に対峙する人類が主人公なのでラブロマンスや人間ドラマに関しては甘んじて良しとしましょう。
しかし、宇宙へ行くというSF要素があまりに蛇足なんですよ。
『オデッセイ』とか『インターステラー』みたいなハナから「これ、宇宙の話しですよ~」とわかってたらこちらの受け入れ体制バッチリですよ。
本作の場合、そうじゃないでしょ?
予告編では一切そんなシーンなかったやん?

また、予告編詐欺と言えばビーチでくつろいでた黒人カップル。
大写しで登場してたもんだから彼らが主要な人物となるかと思ったらほんの一瞬登場しただけ。
男性に至っては即効で氷付けにされてハイ、おしまい。だからね いちいち予告で出す必要もなかったでしょ。

一方、主要人物たちのやり取りに関しては悪くはなかったと思います。
まず、兄弟の描写。
異常気象を制止する装置(その名もダッチ・ボーイ!)を開発した研究者の兄と異端児ゆえ彼を追放した弟。
その後、非常時が訪れ袂を分かった兄の元を訪れ懇願する虫の良さはありますが、その後の兄弟間での心理面を抽出させていく過程には一定のメッセージ性もあり共感出来るものはありました。
もしかしたら災害映画にかこつけてその部分こそ最も描きたかったのかもしれません。

また、弟と恋人の関係性も良かったです。
彼女は大統領の警護をする要職に就いている為、同じく要職にある弟との交際は大々的に明かせないのです。
しかし、そんな二人がとある秘密を知ってしまった為、バディとなり秘密をつまびらかにし、危機に直面した大統領を救うのです。
そしてその大統領もまたなかなか良い味を出した好人物でした。
危機に瀕し派手なカーチェイスを伴うアクションにも巻き込まれながら彼ら二人によって助けられるのですが、絶妙なコンビネーションの二人に思わず大統領が発した言葉が

「お前達、結婚しろ」


なかなか粋じゃないですか。

思わず「よっ!大統領!」なんて言いたくなりました。

トランプ政権に以降後、映画でもトランプ大統領を皮肉る描写は数々見てきました。
この大統領も確かに強い個性はありますが、嫌いになれない人物像が印象深いです。

そしてメイン(?)となる災害シーン。
確かに見応えがあります。
特に香港では地熱が上昇し、そのマグマが大爆発。
人々を混乱に陥れます。
買い物帰りの青年がうっかり卵を落とし、それが瞬間的に目玉焼きになるのですが、この地熱が如何に上昇しているかを伝える上で非常に効果的なシーンだったと思います。
一方ではそこまで地上の温度が上がってるのに何故そこにいる人達はマグマが吹き上げるまで平静を保っているのだというツッコミはありますけどね(笑)
他予告編でも流れた東京での巨大な雹、リオデジャネイロでの人を氷付けにする大津浪(2011年だったら日本では公開されなかったでしょうね。)
と各地での災害を写すシーンは確かに迫力がありますが、全体的にはやっぱり中途半端。
あれこれ詰め込み過ぎなければもっとまとまった作品だったと思うのですが、そこが何とも勿体ない。

ちなみに日本版の主題歌はB'zとの事。
そういう攻めのスタンスは嫌いじゃないですよ。

キングスマン:ゴールデン・サークル

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世界的なヒットを記録したイギリス製スパイアクション「キングスマン」の続編。イギリスのスパイ機関キングスマンの拠点が、謎の組織ゴールデン・サークルの攻撃を受けて壊滅した。残されたのは、一流エージェントに成長したエグジーと教官兼メカ担当のマーリンのみ。2人は同盟関係にあるアメリカのスパイ機関ステイツマンに協力を求めるが、彼らは英国文化に強い影響を受けたキングスマンとは正反対の、コテコテにアメリカンなチームで……。主演のエガートンやマーリン役のマーク・ストロングら前作のキャストに加え、ステイツマンのメンバーにチャニング・テイタムジェフ・ブリッジスハル・ベリー、謎の組織ゴールデン・サークルのボスにジュリアン・ムーアら豪華キャストが新たに参加。さらに、前作で死んだと思われていたコリン・ファース扮するエグジーの師ハリーも再登場する。前作に続き、「キック・アス」のマシュー・ボーンがメガホンをとる。
(映画・com より)

2015年9月京都のシネコン・TOHOシネマズ二条で人生初の試写会にて鑑賞。
センセーショナルなカメラワークやアクションイメージのなかったコリン・ファースによるキレッキレのアクションシーン。
そして不謹慎という言葉を嘲笑うかの様な過激極まる演出に胸を躍らされたものです。
それから二年と数ヶ月。
待望の新作あって公開直後に鑑賞したのですが、いや~、さすがはキングスマン
期待を裏切らない極上のアクションエンターテイメントに仕上がってましたよ!

まずは流れる「カントリー・ロード」のメロディー。
「何故にカントリーロード?」なんて不思議に感じるのも束の間、タロン・エガートン演じるエグジーが登場します。
そして前作にも登場したあのヤローと繰り広げるカースタントを含めたアクションシーン。
キングスマン」ならではのガジェットも登場し、視覚的なエモーションを高めます。
面白かったのは車の中で取っ組み合いの攻防を展開するのですが、その衝撃からカーラジオに当り軽快なロックが流れます。
それをバックに二人のアクションシーンをより盛り上げていくのですが、なかなか効果的な音楽の挿入表現ではないでしょうか。

コリン・ファースも健在です。
前作ではサミュエル・L・ジャクソン演じる悪の実業家・バレンタインによって射殺されてしまったハリー。
昨年秋、本作のクレジットを初めて見た時に「あれ、コリン・ファース?前作で死んだのでは?」って。
本作ではそんなコリン・ファース演じるハリーがどんな形で登場するのか個人的には非常に興味深いポイントでした。
まさか、回想ジーンにちょっとだけって事はないよな?
なんて一抹の不安もありましたが、そんな不安は軽く一蹴されました。
う~ん、こんなやり方で持ってきたか~!
まぁ、多少のご都合主義はありましたが、いいんです。コリン・ファースが戻ってきてくれたら心の中で「お帰りなさい」と拍手を送りましたよ(笑)

前作のサミュエル・L・ジャクソンも然りですが、悪役が魅力的なのがこの「キングスマン」もポイントでありましてジュリアン・ムーア演じるポピー。
かわいい名前とは裏腹にとんでもないサイコパスなんです、こいつ。
麻薬を流布させる事で人々をパニックに陥れていくのですが、何より冷酷非道なのが人をミンチにしてしまうという昔中国の映画で見た様な胸糞悪い所業をケロッとやってのけるあの残忍さ。
本作をこれから鑑賞する皆さん、どうかハンバーガーやホットドッグを食べながら鑑賞しないで下さいね(笑)

そして本作ではアメリカ版キングスマンとも呼ぶべき組織が登場します。
その名もステイツマン。
米国・ケンタッキー州に拠点を構える機関でウエスタン調の衣装を身にまといカウボーイさながらのガンプレイとロープさばきで戦います。
メンバーの名前もウイスキー、バーボン、スコッチ、ジンジャーエール等『ドラゴンボール』や『ONE PIECE 』を思い出す様なネーミング方式にニンマリしてしまいます(笑)

キングスマン=英国紳士
ステイツマン=ウエスタン
ポピー=50’sアメリカン調

という本作は各陣営に明確な世界観があったのが面白かったなぁ。

さて、本作のMVPをあげるとするならば個人的には何と言ってもエルトン・ジョンですね。
あの世界的スーパースターエルトン・ジョンにあんな事やこんな事させちゃっていいの?なんてハラハラしながら見てましたが、最後はしっかりおいしいトコ持っていきましたからね。

それから冒頭の「カントリーロード」が意外なところで結びつきます。
これまで縁の下の力持ちだったマーク・ストロング演じるマーリンが遂に戦闘現場に降臨します!
スマートにスーツを纏いハリー、エグジーと共にポピーのアジトへ。
カントリーロード」を歌い上げ身を挺したアクション。
マーリン一世一代の大舞台が繰り広げられます。

でも敢えて苦言を言うならば主要キャラの復活は今作のハリーだけにしてほしいな。
今作では重要なキャラが犠牲になってましたけど、あまりやり過ぎると「次作で復活するんでしょ?」と冷めちゃうんですよね。

ちなみに本作で最も好きなスパイガジェットは

コンドーム型GPS

です(笑)女の子の⚪⚪に挿入し、体内に入り込んでいく描写はかなり生々しいです(笑)