きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

先生!、、、好きになってもいいですか?

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青空エール」、「俺物語!!」などで知られる人気漫画家・河原和音の大ヒット少女コミックを、生田斗真広瀬すず共演で実写映画化。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」などのヒットアニメを手がけてきた岡田麿里が脚本を担当し、「僕等がいた」でも生田とタッグを組んだ三木孝浩監督がメガホンをとった。弓道部に所属する女子高生・島田響は、クールで生真面目だが実は生徒への愛に溢れる世界史教師・伊藤貢作に恋をする。生まれて初めて誰かを好きになった響は、伊藤に対し自分の気持ちを率直にぶつける。伊藤はそんな彼女に惹かれながらも、教師という立場から一歩を踏み出せずにいたが……。
キャスト(映画・comより)


さて、ここで本ブログをご覧の皆さまへお知らせでございます。
先週までは月~金で新作旧作問わず私が鑑賞した映画を紹介しておりましたが、今後は劇場鑑賞したもののみをピックアップしていこうと思っております。
理由としてはひとつに作品の鮮度の問題。
新作を毎日紹介していけば良いのですが、何分にも経済的にも時間的にも限度がございます。
そして時間的という意味ではブログ更新の時間にあてるまとまった時間が取れないという事情もあり従来の形態ではなかなか難しいかなと思いました。
よって今回からは鮮度を保ち尚且つ時間的に負担の掛からない様にさせて頂きたく思い、上記の形態での更新を致しますのでどうぞご理解の程よろしくお願い致します。


さて、今回お届けするのは『先生!』です。
生田斗真広瀬すず主演の恋愛映画ですが、興行的には奮わない様ですね。
私にとって少女漫画原作のいわゆるスイーツ映画は実に久しぶりでして、たまにはこんなのもいいかと軽い気持ちで本作を鑑賞しました。

とかく教師と生徒の恋愛物というと何かと嫌悪感を感じる方が多い様です。
不純とか不潔という一言で済ませそうではありますが、何より日本の道徳観に基づいて考えると到底考えられない逸脱した価値観と見なされるものなのでしょう。
しかし、年頃の女の子から見たら若くて格好いい年上の先生に憧れるというのは割と作りやすい題材なのか古くは『おくさまは18歳』や『お願いダーリン!』(懐かしい~!)とか『高校教師』等が比較的よく知られたトコロでしょうか?
作風としては『おくさまは~』や『お願い~』は吹っ切ったコメディとして作られ『高校教師』だとヘビーでダークな悲恋モノになっておりますが、
今作の場合はそのどちらに傾倒する事もなくいち恋愛映画として至ってシンプルに作られているのでそこは賢明だと思います。
例えば悲恋モノというと最近の映画だと『昼顔』とか『ナラタージュ』の様な作風ですよね、どちらかと言うと酸いも甘いも経験したお姉さま方が好むテイストじゃないですか?
一方、この『先生!』だと主人公と同世代の女子高生とかがメイン客層になります。
『昼顔』系のダークなテイストは好まないでしょうし、かといって一見不純な恋愛観を反映させた本作をおちゃらけたコメディにするのも今の時代と合わないでしょうし、作風的には良かったと思います。

主演はここ数年で急成長を見せてきた広瀬すず
今年は『チア☆ダン』、『三度目の殺人』とタイプの違う作品で魅了してきましたが、意外にもスイーツ系で見るのは初めてなのでその意味では新鮮でした。
ただ、生田斗真と並ぶとどうしても年の離れた兄妹下手すればロリコンぽく見えてしまったのでそこはどうかな?
と前半は感じてましたが、後半には完全に覆されました。
逆に良かったんですよ、すずちゃんで。
というのも本作は教師と生徒という障害と同時に大人と子供という年齢的ギャップもハードルになってるからです。
元々童顔というのもありますが、すずちゃんがめっちゃ子供っぽいんですよ。
それに対して生田斗真の隙のなさ。
そんな二人が並んだ時に生まれる絶妙な教師と生徒感あるいは大人と子供感。
そこを不快に感じるのはわからなくもないですが、あくまで教師と生徒の恋愛というテーマでのキャスティングとしてはうまいなと思いますね。

しかし、どうしてもこの映画、手放しで称賛するには引っ掛かるものがあるんです。
教師と生徒の恋愛が不純だから?
いやいや、違います。そんなものは割り切って見てますからww
では何か?

ストーリーの運びやテンポとか演出ですね。
まず、正直に言います。
前半はメチャクチャ退屈でした。
話しがあまりに淡々と進むし、盛り上がりもない。
弓道部で汗を流す広瀬すずを見て「いっそ『ちはやふる』とか『チア☆ダン』みたいに弓道を題材にした部活映画にした方がええのに?」なんて思ったくらいです。
ただ、中盤以降二人の関係が校内に知れ渡ってからはなかなか展開がテンポ良く進んだので楽しめましたが。
次に気になったのが、基本生徒は広瀬すず演じる響と森川葵演じる千草恵、竜星涼演じる川井浩介という三人が仲良しグループとして一緒に行動しています。構図としては『君の名は。』の三葉、さやちん、テッシーを連想させますね。
そこはいいのですが、取って付けた様な登場人物がちょくちょく現れるんですね。
響に合コンを誘うクラスメートとか繁華街の夜道を一人で歩く響に絡むサラリーマン風の酔っぱらいとか特に作中に重要なシーンではない中で現れては消えていくのですが正直この人達の不要感は拭えませんでしたね。
それからTBS製作とあってか(?)かつてのキラーコンテンツを二つも盛り込んでましたね。
ひとつは響と教師の伊藤貢作。
言うまでもなく往年のヒットドラマ『高校教師』です。
その一方、男子生徒・川井浩介が美術教師・中島幸子(比嘉愛末)に想いを寄せる辺りは『魔女の条件』を彷彿とさせたりと。
ただ、120分もない上映時間の中で盛り込み過ぎ感は否めなかったですね。
響と伊藤先生だけに集中させて欲しかったです。
後、時間の扱い方に違和感を感じ「おいおい」と思わず言いたくなったのですが、例えば響が誤って伊藤先生の眼鏡を割ってしまい、視力の弱い先生のサポートをしながら家まで送るシーン。
バスに乗る時なんて外はめっちゃ明るいんですよ、ところが先生の家に着く頃には夜。
「先生ん家どんだけ遠いんだよ!」とか
伊藤先生にショッキングな言葉を言われ落ち込む響。
校舎内と思われる場所で昼間に言われてるのですが、泣きじゃくって親友の千草の家に行くと風呂上がりで髪を乾かす千草登場!(推定時刻夜7~8時頃?)とかね。

そんな感じで色々と突っ込んでしまいましたが、映画自体は悪くはなかったですよ。
中盤以降の展開が良かったのと広瀬すず生田斗真の演技が良かった事、そしてスピッツのエンディング曲に救われたというトコロでしょうか?
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映画 キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!

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ストーリー
フランスで開催される世界パティシエ選手権に出場するためパリにやってきたいちかたちキラキラパティスリーの面々。しかし、突然シエルの調子が悪くなり、スイーツ作りも失敗ばかり、プリキュアへの変身もキラリンの姿でキュアパルフェになってしまい戦闘もできないなど、支障を来す状態となっていた。

そんな時、コンテスト前夜祭のパーティー会場でシエルのパリ時代の師匠だったジャン=ピエール・ジルベルスタインと、彼に付いている妖精に似た女の子クックに出会う。シエルとジャン=ピエールは久しぶりに再会するが、「頼れるのは自分の力のみ」という信念を持つジャン=ピエールは、キラパティの仲間たちと仲良くスイーツ作りをするシエルの姿に落胆する。かつての師匠からそのように言われたことでシエルは落ち込むが、いちかはシエルを元気づけるため、昔シエルがジャン=ピエールに作ってもらったことがあるという、ミルフィーユをコンテストで作れば、と提案する。

一方、パーティー会場にはスイーツを頬張るみらいたち『魔法つかいプリキュア!』の3人とモフルンの姿もあった。彼女たちは魔法の水晶(キャシー)のお告げにあった「降りかかる災い」から街を守るため、パリにやってきたのだという。

いちかやシエル達がミルフィーユをいざ作ろうとしようとした最中、パリの街中では次々とパティシエを襲う謎の巨大スイーツが出現、さらにパリの街並みも本物のスイーツに変えられてしまう事態が発生する。混乱する街を救うため、魔法つかいプリキュアの協力を得ながらキラキラ☆プリキュアアラモードの6人は敵と戦う事になる。




わたくし、人生初の『プリキュア』映画体験でした。
何となく日曜朝に『プリアラ』は見ているので軽い予備知識程度はありますが、週末動員ランキングでも一位を取り、ファンの間でもかなり好評との事なので「それならば」と駆り立てられる好奇心により、あえてこの映画をチョイスしてみました(笑)
余談ですが、本作鑑賞の直前に見たのが三回目の『アウトレイジ 最終章』どれだけ振り幅広いんだよて話しですな(笑)

ちょっとした好奇心での鑑賞とは言え、流石に作品が作品だけになかなかハードルは高いもの。
ただ最近は自動券売機なる便利なものがあるわけでして、受付のお姉さんに「プリキュア大人一枚」という何かの罰ゲームの様な仕打ちは受けない様に出来ております。そして迷わず後ろの左端の席をキープ決して目立たない様にそう、「お子さまの目の届かない場所に行ってください」です(笑)
そして上映時間5分後にシアターへゴー!
これは本編開始の約5分前。
館内が暗くなり、映画泥棒が流れるくらいの時間です。

と着席までにまるで隠れキリシタンの如く人目を忍んでの映画鑑賞。
それも『プリキュア』だからこそです。
ドラえもん』や『コナン』、『しんちゃん』辺りなら余裕綽々、行き付けの飲み屋にでも行くノリですよ(笑)

上映が開始されるとミラクルライトの使い方の説明が始まります。
これは劇中でプリキュアがピンチになるとみんなで照らして応援する為のものとの事。
中学生以下のお子様がもらえるそうでぶっちゃけ「俺にもくれよ!」と思ったり思わなかったり(笑)
その説明を聞いてる時の居心地の悪さときたらですよ、以前も言いましたが、ディズニー映画『インサイド・ヘッド』の上映前に流れたドリカムのテーマソングと笑顔のスナップ写真を思い出しましたね(笑)

5分程度の短編に続いて始まった本編。
ようやく落ち着いて『プリキュア』を見るに至ります。いや~、ここまで長かった!

毎週ではないですが、日曜朝のレギュラー放送はちょくちょく見てるので世界観とキャラクターには馴染みがありスッと入り込んでいけました。
東映アニメ王道の普段のテレビシリーズから発展させた劇場版ならではのスケールになっていたのでお子様もそのスペシャル感は楽しめるのではないでしょうか?
とりわけ前シリーズの『魔法つかいプリキュア』のキャラクターが登場したりするときっとテンション上がると思いますよ。(あ、そこはお子様もだし、プリキュアファンの大人もだと思いますよ)

今回は6人目のメンバーであるシェルをフィーチャーしています。
前述の様にTV ではちょくちょく見てますが、あくまで「ちょくちょく」なのでこのシェルはいつの間にか仲間になってたという感じでどういうキャラクターか知らなかったんですね。
しかし、今作ではそのシェルのルーツなどがきちんと描かれており、はじめてそのキャラクターを理解するに至りました。
そしてそのシェルの師匠であるジャン=ピエールというキャラクターが本作の軸となる人物でして、とにかくスウィーツの事ばかり考えるスウィーツバカなんですよ。
腕も確かでシェルが師事する様になったのは彼のスウィーツによって救われたからなのです。
ストイックで熱い奴なのですが、不器用な人なのでしょうね、仲間を作らずひたすら孤独にスウィーツ作りとその研究を続ける人物です。

敵キャラであるクック。元はジャン=ピエールの助手的な存在なのですが、彼女には心の闇があってその反動から腕の良いパティシエに呪いをかけたりパリの街をスウィーツまみれにしたりし、いちか達と戦います。
悲しい過去には同情出来る面もあります。

とこんなキャラクター達が魅力的な本作でしたが、いや~面白かった!

子供向けとは言え、結構内容が深いんですよ。
ジャン=ピエールは仲間を作る事なくひたすらスウィーツ作りに打ち込んできた職人肌のパティシエです。
そんな彼にしてみたら仲間とつるむのはスウィーツを作る上では邪魔という考えを持ちます。
その一方でシェルにとってはいちからキラパティメンバーに出会えた事によって自身のパティシエとしての腕も人間としても成長をしているわけです。
それをひとつのテーマとして盛り込みメッセージ性を生み出していたのは良かったです。 

また、クックはジャン=ピエールの腕に敬意を払いながらも散々自分の腕を否定してきた人間達に怨みを晴らすべくあらゆる手段でパリの街をスウィーツまみれにするという暴挙に出ます。
内面的な闇を抽出させる事によってこのキャラクターの悲劇性をクローズアップさせていました。
また、彼女が仕掛ける攻撃も見応えありましたね。
キラパティメンバーの特性を奪うために亀にしたり、パンダにしたり、ナマケモノにしたり。
それによってキラパティメンバーは苦戦を強いられるのですが、逆転の発想でその動物の特性を生かした反撃に出るくだりはお見事でした。

気になる点はあるにはあります。
プリキュア』なんだしもっと寛容に見ようとも思うのですが、敢えて言うならばクックの内面描写ですかね。
悲劇的要素を秘めたキャラクターなのにそれを具体的に現したエピソードが描ききれてないんですよ。
人間達に「まずいまずい」と言われた事がトラウマになってるのはわかりますが、その描写がまるまる描かれてないのが物足りないというかそこ重要だろ!と感じちゃいます。
更に言えばお子様の教育面で描くならこのクックにも仲間の大切さを伝えるでもいいし、まずいと言われて人間を恨むのではなく、改心してジャンの元で美味しいスウィーツを作るため勉強に励むという描写にした方が良かったのではないかな?
なんて思います。

それにしてもミラクルライトというアトラクション的要素は素晴らしいですね!
お子さんにとってもイベント感出て楽しいと思います。
映画自体も大人が見ても楽しめる良い内容だったと思います。オススメです!
オススメされてもハードル高くて躊躇してしまうという皆さん、怖いのは初めだけ!
私の鑑賞方法を参考に(笑)一回チャレンジしてみて下さい♪
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あやしい彼女

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2016年4月公開作。瀬山カツ(倍賞美津子)は現在73歳。娘(小林聡美)と孫(北村匠海)との三人暮らしで幼なじみの二郎(志賀廣太郎)の経営する銭湯でパートとして働いてる。貧しい境遇の中、女手ひとつで娘を育ててきたカツ。若い頃は何一つ自分の好きな事も出来ずただただ娘の為に費やしてきた。若さを取り戻したいと思っていたカツ。ある晩、古びた写真屋で撮影をしたところ、20歳の身体とスタイルになっていた。飛び入りで参加したのど自慢大会で優勝し、バンドをしている孫にボーカルをしてほしいと誘われ、加入する事に。人気音楽プロデューサー(要潤)の目にも留まり、メジャーデビューを果たす事になる。


元々は韓国で制作された作品の日本版リメイクです。
多部未華子ちゃんが見た目は20歳、中身は人生経験豊富なおばあちゃんという難役をこなし話題になりました。

さて、40歳前後の方だと『月曜ドラマランド』と聞いてイメージ出来る方多いのではないでしょうか?
アイドルが主演を努め、コミカルな内容で展開するどちらかと言えば低年齢対象のバラエティとドラマを融合した様なかつてのフジテレビ系列でのドラマ枠で系譜として90年代に制作された『ぼくたちのドラマシリーズ』などもありました。
日本映画は良くも悪くもこの『月曜ドラマランド』的なものが量産されます。
それを悪しき風潮と取る映画ファンは多いのですが、私自身は嫌いではありません、というかむしろ好きです。
お手軽に鑑賞出来て、それなりに楽しめるし、内容がわかりやすいというのも良いですね。
最近取り上げた『ミックス。』とか『斉木楠雄』なんかはその典型みたいな映画ですよね、「別に映画で見なくてもいいじゃん」なんですが、それでもついつい見たくなる。
洋画より邦画派な人はわかってもらえるのではないでしょうかww
典型的『月曜ドラマランド』風な本作『あやしい彼女』ですが、何と言っても多部未華子に尽きます。
「見た目は子供、中身は大人」なんていうコナン君のディテールですが、多部ちゃん演じる大鳥節子さんは「見た目は女子、中身はおばあちゃん」というエキセントリックなキャラクター。難役だと思いますが、実に違和感なく演じてらっしゃいました。
スーパーで泣きじゃくる子供をあやし、泣き止むと母親も励まし、思わず母親もその場で泣き出すというシーンがありましたが、人生積み重ねたおばあちゃんの様な包容力に満ちてましたよ。
また、見所として欠かせないのが歌唱シーン。
初めてその歌声を披露する町内ののど自慢大会では『見上げてごらん夜の星を』、孫のバンドに加入しバンドアレンジされた『真っ赤な太陽』(これがメチャクチャカッコいい!)、大ヒット映画『この世界の片隅に』ではコトリンゴが唄った『悲しくてやりきれない』(実はあやしい彼女の方が先ですよ)等どれも聞き応えがあります。
また、『他人の関係』のヒットで知られる金井克子さんが『恋の奴隷』(奥村チヨの大ヒット曲)を唄ってたりします。
昭和歌謡好きなら反応しちゃいます(笑)

他キャストでは孫役の北村匠海さん。
今やすっかり『キミの膵臓をたべたい』のイメージが強いのですが、この映画にも出てたんですね。
公開当時見てたのですが、『キミスイ』の時にはすっかり忘れてました、失礼…。
バンドマンでもあるのでこの作品の孫役はピッタリでした。

ちなみにこの映画の音楽は小林武史さんが担当してます。
ミスチルプロデューサーによって生まれ変わった昭和歌謡を聴くという意味でも楽しめる映画ですね。

と音楽の話しばかりになりましたが、音楽映画ではないというのが惜しいトコロ。
あくまで若返りというのが主題になるので話しの軸はそこなんですよ。
確かにストーリー自体は面白く出来てるし、テンポも悪くはない。
ただ、ひとつの映画にコメディは入れるは音楽は入れるはになるのでやや散漫になった感は否めません。
要因ははっきりしています。
要潤演じる音楽プロデューサーとの恋愛エピソードなんですよ。
最近の映画って恋愛絡めないと駄目という暗黙の掟でもあるのでしょうか?
念願の若返りをして泣かず飛ばずのバンドマンである孫とバンドを組んだらメジャーデビューしちゃっただけの話しじゃ駄目なのでしょうか?
それだけでも十分ストーリー的には面白いし、音楽映画好きは取り込めると思いますよ。
そもそも音楽プロデューサーは自分がプロデュースする若い女の子に手を出してもOKなのかと変な勘繰りをしちゃいますよ(笑)
いっそ恋愛モノでやるなら若返った二郎さんと一緒に憧れの『ローマの休日』よろしく青春取り戻しラブコメにしてもよかったくらいです。

でもそういう話しにするよりは多部ちゃんの歌声を聴きたいし、小林武史アレンジの昭和歌謡を満喫したい。という事でやっぱり嫌いになれない『あやしい彼女』でした。

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ビリギャル

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名古屋の女子高に通う高校二年生のさやか(有村架純)。
髪は金髪パーマでピアスを開けファッションと友人らとの夜遊びこそが彼女の世界。
エスカレーター式で大学までは進学出来る私立校ながらこのままでは内部進学すら出来ないという学力。
そんな彼女を案じた母親(吉田羊)はさやかに塾へ通う様勧める。
普段のギャルファッションのまま入塾面接を受けに行き、講師の坪田(伊藤淳史)と出会う。


実話を元にした感動作で2015年春~初夏にかけて大ヒット!有村架純の代表作ともなり、不動の地位を確立しました。
私は2015年5月にTOHO シネマズ二条で鑑賞し、あまりの名作だったのでしばらく余韻に浸っておりました。今や懐かしい話しです。

本作は言うまでもなく落ちこぼれの女子高生が偏差値を40以上上げて慶応大学へ合格するというサクセスストーリーです。
つまり結果は初めから分かってるのであって要はそこに至るまでのプロセスを如何にドラマチックに見せるかが重要です。
しかし、そこはバッチリで演出もストーリーの運びも実によく出来ていたと思います。
何と言っても登場人物が非常に魅力的でこの作品を大いに盛り上げていました。

まず、本作の主人公のさやか。それまで清純派のイメージが強かった有村架純によるギャルというのも
新鮮でしたし、それがまた見事にハマってました。
もしかしたら元ギャルだったのでは?なんて思わせる程の名演技。受験モード全開になると遊びも辞め、ネイルも辞め黒髪で清楚な姿に変わるのですが、見た目真面目そうなのに口調はギャルというギャップ萌えポイントもあります。
そもそもこのさやかちゃん。元々は内気で引っ込み思案、友達も居ない女の子なんですよね。
中学に入って初めて友達が出来、ギャル化していくという生い立ちの為か根っからの不良でもないんですよ。
髪を染める、ピアスを開ける、隠れてタバコを吸うくらい…母親や兄弟、友達への接し方を見るとかなり良い子だったりします。


そんなさやかを見守る予備校講師・坪田先生。チビノリダーで幼少期を過ごし電車男で青春期を送った伊藤淳史さんも30代。人を指導する役柄もピッタリハマるお年なわけですが、この先生の人物像が何とも魅力的。
生徒達と同じ目線に立ち、勉強嫌いな生徒へ生徒が好きな漫画やゲームに置き換えてわかりやすく指南するという指導方法を取り入れるのは生徒の心を掴めるでしょうし、何より勉強への理解度も高まると思います。
そして何よりも生徒を否定しない。
相手を受け入れ、その上で正論を提示する。
生徒のモチベーションを高め生徒の可能性を引き出す上で非常に効果的な指導方法だと思います。
この映画は教育に携わる人や部下を抱える管理職や経営者が見ても非常に参考になる作品だと思います。

小四レベルの学力で「聖徳太子」を「せいとくたこ」と読むヘキサゴン的な解答をしていたさやかが高校二年から勉強を始めて慶応に合格する程受験勉強は甘くありません。
事実、途中挫折しそうなシーンもあります。しかし、並々ならぬ努力を重ねさやかは慶応大学合格という大きな目標を達成します。
あれほど遊び歩いてたさやかがプロレタリア文学を語り、ニュースで問題となってるブラック企業への関心を深めていくなどの描写は彼女の成長を写す印象なシーンです。
努力というフィルターを通してさやかの成長が見られる一方、努力を続けるも実らなかったというシビアな描写も見られます。

父親(田中哲司)の若き日の夢はプロ野球選手になる事でした。
しかし、果たせなかった今、息子であるさやかの弟に託します。
父親の期待に応える様に弟は野球の練習に打ち込みます。
しかし、やがて限界が訪れます。
どれだけ練習を重ねても結果が出せない、上達しない。
やがて弟は野球を辞めます。
野球を辞めた弟はヤンキーのパシリをしたりと目に見えて堕落していくのですが、ここでは父親の心境をクローズアップします。
自分の私財のほとんどを息子の野球につぎ込み、付きっきりで指導をします。
しかし、反面ではさやかと妹の面倒を全て妻に任せっきりにし依怙贔屓を通り越した接し方で息子を指導してきました。
しかし、息子の心の声を汲み取ってやる事が出来なかったのです。
その結果、息子は野球を嫌う様になりました。
これは予備校の坪田と指導者としての比較という面で見ても印象深い描写だなと思いました。
かたや生徒の心を汲み生徒の可能性を引き出していく名講師・坪田。
一方の父親は自分の願望のみを息子に押し付け、スパルタ指導をするだけして息子の思いに耳を傾けようとしませんでした。
野球以外の面できちんと息子に向き合わなかったのです。
ましてやこの父親、自分の三人の子供に極端な格差をつけるという親としてあるまじき人物でもあります。
どちらが指導者として適格かは言うまでもないでしょう。

主人公・さやかのサクセスストーリーをメインにしてるのでそこにフォーカスされがちですが、指導者のあり方・支える家族の姿・目標を達成する為の努力等などあらゆる視点で見る事によって色々な発見が出来る良作です。こういう映画こそ全国の公民館や学校の映画鑑賞会などで見るべき作品だと思います。(実際やってるトコロ多そうですが)
エンドロールではサンボマスターの主題歌に合わせて登場人物たちが口パクしてます。
そこでの有村架純ちゃんがメチャクチャ可愛いのでそこも必見ですよ(笑)

斉木楠雄のψ難

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生まれながらにして超能力を与えられた高校生・斉木楠雄。しかし、彼はそんな能力を人前では隠しあくまで普通の高校生としての学園ライフを送っていた。そして迎える年に一度の学園祭。トラブルメイカー揃いのクラスメイト達があれやこれやとハプニングを起こすので超能力を回避できない状況に。そして気が付けば地球滅亡の危機が?斉木楠雄の運命やいかに?


原作は『週刊少年ジャンプ』で大人気連載中という本作ですが、もう随分と長く『ジャンプ』を読んでいない私にとっては予備知識なしの鑑賞となります。
むしろ最近好調の福田雄一作品としてかなりの期待を抱き劇場へ。
小中学生の子供も多く、ちょうど福田監督の『銀魂』や同じくジャンプ原作の『暗殺教室』を思い出す様な客層でした。

主演は山崎賢人。恋愛映画のイメージが強い若手俳優ですが、今年は『ジョジョの奇妙な冒険』に続き本作と「山崎賢人、実写やり過ぎじゃね?」とばかりにジャンプ原作映画の出演が続きます。
そんな山崎さん演じる斉木楠雄。正直期待してませんでした。
山崎賢人と言うと音楽業界で例えれば西野⚪ナの様なスウィーツイメージが付きすぎじゃないですか?
少女漫画原作のスウィーツ映画で壁ドンとかやってる女子高生にしか需要のない俳優というイメージでした。(失礼)
ところが意外にも(失礼ついでに)奇抜な制服姿と髪形、終始展開される心の声でのツッコミ芝居がピッタリハマっており山崎賢人の新境地を見せてくれた様です。
それにしてもいいですね、ピンクの髪型って。80sのニューウェーブバンドみたいで。

ヒロイン・照橋心美を演じたのは『銀魂』の神楽に続いて福田組参加の橋本環奈。
かつての仲間由紀恵、近年だと三谷映画常連の綾瀬はるか、『SPEC』での戸田恵梨香、『あやしい彼女』の多部未華子、『謝罪の王様』の井上真央、『ヒロイン失格』の桐谷美玲、つい先日見た『ミックス。』での新垣結衣永野芽郁等など数々の人気女優が潔いまでの演技でコメディエンヌっぷりを見せてくれました。
そして新たなコメディエンヌとして『銀魂』を機に一皮も二皮も抜けた感のあるのがハシカンこと橋本環奈ちゃん。
かつて「千年に一度の美少女」と言われ一躍人気アイドルとなった橋本環奈はこの福田組に入ると徹底してこれまでのイメージを覆す壊れっぷりを見せてくれます。
銀魂』での白目むいて鼻ほじほじしながらお下品な事言っちゃう姿があまりに記憶に新しいのですが、本作では顔面崩壊の顔芸に挑戦しています。
その顔の「腹立つわ~」と言わせてしまうハシカンの吹っ切れ具合はたまりません!

他キャストに目を移すと90年代に青春を過ごした身としては『ミックス。』の広末涼子に続いて内田有紀の起用が嬉しかったりします。
楠雄の母親役で田辺誠一演じる父親共々天然な役どころですが、ツッコミ所満載なキャラクターで愛らしいです。
また、『銀魂』ではクールな演技を見せた新井浩文も続投。
銀魂』とは打って変わって徹底的なおバカキャラ
39歳の高校生って高校生役最高齢なのでは?と思っちゃいますが、ハマってたら良いのです(笑)
新井さんも『銀魂』の時に福田組なのに笑い要素がない事を残念がってらっしゃいましたが、念願のコミカルキャラという事で楽しんで演じられてるのがよくわかりました。
他キャラの強い同級生を吉沢亮笠原秀幸賀来賢人らが好演。
福田組常連の佐藤二朗ムロツヨシも抜群の存在感でした。
とりわけムロツヨシさんのうさんくさいマジシャンが発する「イリュ~ジョ~ン」という決めゼリフも最高ですが、アシスタントをしていた母親(若い女の子のアシスタント見つけられなかったんだろうなぁという哀愁も感じさせる・笑)がツボでした。
『ガキ使』のキスおばちゃんみたいな出オチ的インパクトとシュールな存在感が絶妙です(笑)

また、ところどころで挿入される他漫画へのオマージュが面白かったですね(銀魂出もガンダムとかルパンとかあったけど)
ドラゴンボール』かと思えば教室内で生徒達が殺せんせーを暗殺してたり(言うまでもなく暗殺教室です)
はたまた心美の口から出てくる壁ドン要求シーン。
『ストロボエッジ』とか『アオハライド』、『ヒロイン失格』、『オオカミ少女と黒王子』等羅列してましたが、これ、山崎賢人が主戦場としてきた少女漫画原作の恋愛映画じゃん。(別名・スウィーツ映画とも言う)
オマージュなのかいじりなのか知りませんが、惜しむらくはハシカン主演の『ハルチカ』がなかった事でしょうか(最終的に興収いくらだったのかな~?)

はっきり言ってしまえば「何も映画館で見なくても?」な作品です。
ただ映画らしさを求めるならば『ブレイドランナー』とかを見た方が良いわけです。
しかし、福田雄一の作る徹底したおバカエンターテイメントが好きな人であればハマる作品だと思います。
欲を言えば次回は『女子ーズ』や『俺はまだ本気出してないだけ』の様なオリジナル作を見たいです♪
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モアナと伝説の海

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物語の舞台は南の島モトゥヌイ。一族と共に暮らす少女・モアナは海を愛し、その大いなる海への想いは膨れ上がるばかり。しかし、父からは海へ出る事を固く禁じられます。それは村の掟でもあり、かつて若き日の父もまたモアナと同じく海へ憧れ、海へ出たのですが、生死をさまよう危険な目に遭遇したからでもありました。
ところがある日モトゥヌイに異変が起こります。そこで立ち上がったのが海に選ばれた少女・モアナ。生まれて初めて大海原へと小舟をこぎだし、命の女神テ・フィフティの盗まれた心を取り戻す為の冒険に出掛けます。
道中出会ったのは伝説の英雄・マウイ。
二人で共に戦い目的を果たしていく海洋アドベンチャーです。


さて、季節外れの海を舞台にした作品ですが、元々アメリカでの公開は昨年11月、日本では今年の3月といういずれも季節感のない時期ですね。
主題歌『How Far I’ll Go』も大ヒットしたので皆さんもよく耳にした事かと思います。

そんな本作の最大のポイントは何と言ってもその映像美にあります。
まぁそこは天下のディズニーですから『アナ雪』だろうと『ズートピア』だろうと映像技術の素晴らしさは言わずもがなですが、本作についてはまるで生きているかの様な瑞々しい海の描写に尽きます。
冒頭で幼いモアナが海と戯れるシーンがありますが、まるで小さな波に魂が宿っているかの様な生命の息吹を感じさせてくれます。
旅に出てからもこの活きた海というのを目の当たりにしますが、同じディズニー制作の『パイレーツ・オブ・カリビアン』さながらの(実写ですけどね)見るだけで爽快で海洋へのロマンを感じさせる光彩の豊かさや躍動的な描写となっているので下手な水族館へ行くよりも遥かに見応えがあります。

また、マウイの胸に刻まれたタトゥーの使い方は面白かったです。
胸元のタトゥーには人を模したキャラクターが描かれているのですが、マウイは事あるとそのキャラクターに相談し、正しい道標を指南してもらいます。
いわば心の声とかもう一人の自分との対話としての描写ですが、斬新な手法だったと思います。
もちろん私はタトゥーを彫ってないですが、こういうタトゥーがあれば彫ってみたいなと思ったり思わなかったり(笑)


ただ、どうもこの映画とは相性があまり良くない様でして、公開当初に見に行ってガッカリしたんですよ。
映像や音楽は素晴らしいです!
上記のタトゥーの使い方に驚きも感じました。
日本のジブリ映画『もののけ姫』等にインスパイアされた神と自然・人間というテーマもよく描かれていたと思います。しかし、肝心のストーリーに乗りきれなかったんですよ。
何というか説明が弱いです。
さっきまでピンピンしてたばあちゃんが急に死んだりそもそもそのばあちゃんが死んだらエイになって現れるとかモアナは海に選ばれたのだとか民話とか説話に基づいてるというのはわかりますよ。
ただ、あまりに唐突過ぎるんですよね。
あと、敵キャラとして現れるココナッツの海賊・
カカモラですね。
その登場シーンから『マッドマックス 怒りのデスロード』と結びつけられるのですが、海=海賊という発想自体はわからなくもないのですが、人間を模したキャラクターじゃダメだったのかな?
それこそ「これ、明らかにジャック・スパロウだろ?」なんて海賊が敵キャラとして現れ戦う。その後はモアナ達の重要な指南役に…という展開の方がストーリー的にも厚みが生まれそうなんですけどね。
それからラスボスを倒した後現れる女神のテ・フィティが不気味です。
島そのものがテ・フィティで、島の木々に目、鼻、口がついてそれが動き出すんですよ。
それがまだ可愛らしければ良いのですが、顔中緑色で目もギョロついているから怖いです。
小さい子が見たらショックを受けないのかななんて気にしちゃいます。

世間の評価に反して私は楽しめませんでした。
でもそれはこの作品が駄作というわけではなく、単に私の感性と作品が合わなかったという事だと思います。
ただ、最先端の技術を駆使して一流のクリエイター達が作る映像美、随所随所で効果的に流れる素晴らしい楽曲の数々、作品の裏側に隠されたテーマやメッセージを読み取るなどの鑑賞する上でのポイントはあります。
アドベンチャー作品が好きならば純粋に楽しめる作品ではないでしょうか。

 

本能寺ホテル

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倉田繭子(綾瀬はるか)は会社の倒産を機に恋人の恭一(平山浩行)の実家がある京都へ行く。京都での宿泊先を求めるがどこも満室との事。途方に暮れる繭子がやっとの思いで見つけたのが本能寺ホテルだった。
道中買った金平糖を食べ、エレベーターを下りると見慣れない景色が広がっていた。
そこは1582年6月1日、本能寺の変が起こる前の日だった。
そして織田信長(堤真一)、森蘭丸(濱田岳)と出会う事に。


これ今年の作品になるんですね、もう随分前に見た様な印象です。
公開前には万城目学氏による騒動もあったりしましたが、それすらも遥か昔の様に感じてしまいます。
ちなみに私が今年に入って鑑賞した一本目の作品でもあります。
監督は数々のドラマを手掛けてきた鈴木雅之氏。(もちろんシャネルズの人ではありません・笑)
プリンセス・トヨトミ』(2011)の綾瀬はるか堤真一を配し本能寺の変前日と現代を結ぶ歴史系SFコメディを展開します。

この映画の舞台となっているのは京都。
京都観光のPR動画か?と思わせる程京都の名所が登場します。
東福寺、八坂神社、渡月橋、鴨川、先斗町等など。
去年まで京都に住んでた私にとって「鴨川のあの辺オレも座ったぞ」とか「おっ!八坂神社前のローソンだ」なんて馴染み深い場所が出る度に反応しちゃいました(笑)
二条のTOHO シネマズとか河原町のMOVIXの動員多かったんだろなぁ。(桂川イオンシネマ八条口のT-ジョイとかね・メッチャローカルですいません。)

今作のキャストは綾瀬はるか堤真一の他、濱田岳近藤正臣風間俊介高嶋政伸などの個性派が揃います。
近藤正臣さんや風間俊介さんなどの大ベテランも健在ですし、森蘭丸濱田岳さんなども良い感じです。(美少年と謳われた森蘭丸濱田岳?なんて思っておりましたが)高嶋政伸さんの演じた明智光秀
も本格的な時代劇さながらの熱演でした!
しかし、何と言っても主演の綾瀬はるかさんですね!
本作の繭子という女性はこれまでの人生をただただ流されるままに生きてきて決してアクティブとは言えない性格。
天然な綾瀬さんにははまり役で演技ではなく地の綾瀬はるかじゃない?と思わせてくれました。
特に印象深いのは信長が豪商から茶器を献上させようとするシーン。
命よりも大事な茶器なので例え信長の頼みとは言え、渡すわけにはいかないと拒む豪商から信長は力ずくで献上させます。
それを見ていた繭子が許せないとばかりに信長の手から奪い取り豪商へ返すのですが、戦国時代の暗黙の掟なんて現代人の繭子には到底理解出来ないですからね。無理もないのですが、綾瀬はるかのキャラクターだからこそマッチするんですよ。
「この人天然だけど正義感は強いんだろうなぁ」と納得させてくれますね。
ちなみにここで登場した茶器。今の価値で数億円の代物だそうで信長は権力者の象徴としてこの茶器が欲しかった様です。

その信長を演じた堤真一さん。堤さんってこの時期三つの映画とドラマに出てたんですね。
海賊とよばれた男』での硬派な船長、『土竜の唄 香港協奏曲』でのアクションもバッチリ決めるヤクザ、そして本作の信長、更にはドラマ『スーパーサラリーマン 左江内氏』でのぱっとしないサラリーマン兼スーパーマン
四者四様のキャラクターを巧みに演じ分ける引き出しの多さはさすがですね!
シリアスな作品の撮影現場にコメディのノリが出てしまったりしなかったのかななんて素人の浅はかな疑問が湧きそうですが(そもそも撮影時期が同じとは限らないか)

この信長ですが、前半は冷酷非道で鬼の様な人(森蘭丸の評)として描かれます。
しかし、繭子との交流を通して本来の自分が描く身分にとらわれない誰もが笑って暮らせる天下泰平の世を築きたいという理念を思い出すと人間味のある描写に変わっていきます。
繭子と家臣らが京の町で子供達の間で流行っている遊びに興じていると「ワシもやるぞ!」と家臣達に交じりその遊びに参加する光景は前半の冷酷非道な人物像から家臣達と同じ目線で接する信長本来の優しさを描くものとして印象深いです。
理想と高い志を胸に数々の偉業を成し遂げた織田信長
その根底には人と国の幸福を願う思いがあった様ですね。
これは「戦国時代のヒーロー・織田信長はこうであってほしい」という我々の願望も込められてる様な気がしますが、こんな信長の人物像を見れば見るほど燃え盛る本能寺の炎の中、その最後を迎える時にこみ上げてくるものがあるでしょう。

さて、この映画にはテーマがあります。
「自分探し」更に突き詰めて言えば「出来る事をやるのではなくしたい事をやる」です。
元々繭子は失業を機に彼氏との婚約も重なって京都へ来ました。
その前に東京のハローワークへ行き、就職活動をしますが、すっきりしません。
やりたい事がないのです。
厳密に言えばやりたい事を探すのではなく出来る事を探そうとする、つまり仕事をする上でやりたい事をやるという選択肢がないのです。
しかし、京都へ行き婚約者の父と会います。
京都でも人気の料亭。そこの経営者なのですが、ある決断をします。
今でこそ一流料亭へと成長した自身の店だが、料理人人生で最も充実していたのはお金のない学生達に安く料理を提供して満足してもらっていた時であると。そしてその原点に回帰し、大衆食堂に転身したいと自身のパーティーで公言します。
また、信長は天下泰平の世を築くという理念に揺るぎはありません。非業の死を遂げる時でも自らの意思を継ぎ、世を治めてもらいたいと秀吉に託します。死を迎えるその時まで、いや死してもなお、平和の為の天下統一という大願を抱き続けたのが信長なのです。
そんな信長の姿を見た繭子も最後は自分の道を見つける事になります。
やりたい事をようやく見つけた繭子が鴨川沿いで信長の幻影と共に飛来する蝶を目で追うシーンが印象的です。


京都に実家のある彼氏やその友人達が何故京都弁を使わないのかとか詰めの甘いタイムスリップの描写とかいくつか気になる点はあります。
しかし、キャスティングの妙と明確なテーマ、更にストーリー展開自体は悪くないので年代問わず楽しめる作品ではないかなと思います。
ただ、フジテレビさん。来年の年明けは信長モノやらないですよね?
信長協奏曲』、『本能寺ホテル』と二年連続ですのでさすがにお腹いっぱいです(笑)