きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

THE BATMAN ザ・バットマン

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クリストファー・ノーランが手がけた「ダークナイト」トリロジーなどで知られる人気キャラクターのバットマンを主役に描くサスペンスアクション。青年ブルース・ウェインバットマンになろうとしていく姿と、社会に蔓延する嘘を暴いていく知能犯リドラーによってブルースの人間としての本性がむき出しにされていく様を描く。両親を殺された過去を持つ青年ブルースは復讐を誓い、夜になると黒いマスクで素顔を隠し、犯罪者を見つけては力でねじ伏せる「バットマン」となった。ブルースがバットマンとして悪と対峙するようになって2年目になったある日、権力者を標的とした連続殺人事件が発生。史上最狂の知能犯リドラーが犯人として名乗りを上げる。リドラーは犯行の際、必ず「なぞなぞ」を残し、警察やブルースを挑発する。やがて権力者たちの陰謀やブルースにまつわる過去、ブルースの亡き父が犯した罪が暴かれていく。「TENET テネット」のロバート・パティンソンが新たにブルース・ウェインバットマンを演じ、「猿の惑星:新世紀ライジング)」「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」のマット・リーブス監督がメガホンをとった。(映画・comより)

バットマンの映画って何回目?…なんて言いつつもやはり気になるそんなワタクシ。休日を利用してMOVIX日吉津にて鑑賞。上映時間三時間というのは『ドライブ・マイ・カー』で耐性はあるものの、万全の体勢で鑑賞に臨みたいと入場開始時間から本編が始まるまでに2回程トイレに行きましたよ(笑)

なんてどうでもいい話しはさておき、本編について踏み込んでいきましょう。クリストファー・ノーランが手掛けた『ダークナイト』三部作の完結から早10年バットマンの新シリーズのスタートです。ただ、その間にもDCEUのユニバース作として2016年には『バットマン VS スーパーマン』という作品もありました。て事は、マーベルやDCにありがちな何かの関連作品を見なければ理解出来ないのか?答えはノーです。2019年の『ジョーカー』もそうでしたが、『バットマン』誕生そこから二年後のバットマンブルース・ウェインの活躍を描いており、他のDCのヒーローも登場しないし、単体の作品として十分楽しむ事が出来ます。その辺りは正直自分としても有り難かったです。マーベルやDCのユニバースに少々しんどくなっているというのが本音でして、作品として万人に勧めにくいんですよね…。個人的に好きなスパイダーマンだって昔は単体でも楽しめたんですが、mcuに組み込まれてからは完全にユニバースの線上で展開されてますからね。まぁ、それでも最新作の『ノー・ウェイ・ホーム』は面白かったですが。

で、『バットマン』の方に話しを戻しますが、比較的初心者にも分かりやすい言い換えれば敷居が低くなったのは良いのですが、そうなってくるとコアな人向けには難しくなってくるのも事実です。というのがリブートとしての宿命として、その誕生からの語り直しが必要になります。これが初見だと良いですが、マニアになれば有名なエピソードだけに「こんなのもう知ってるよ」となりがち。そこでマット・リーブスが選択した時期が絶妙でして、バットマン誕生もサラッと写しつつ、バットマンになってから二年後をピックアップしてる点。まだ若く未熟な点もあり、迷いや葛藤も描き出し、更には揺らぎも多分に見えてくる。それでいてバットマンをやって二年後なりの経験値だってちゃんと伝わってくるんですよね。

更にこのバットマンを翻弄する悪役のリドリーが敵でありながら実は二年目バットマンへの成長の糧に繋がる様な宿題をしっかり投げかけてもきたり。それこそが彼が出すなぞなぞの数々なんですよね。なぞなぞ好きってお前は小学生か?ってツッコミはさておき(笑)彼の出すなぞなぞの中に本作を象徴するものがあるので、お伝えしますね。

「信じれば残酷になり、否定すれば凶暴になるものはな〜んだ?」

答えは作品の中で!…という事でここでは触れませんけど、このなぞなぞの答えとその謎に立ち向かうバットマンの姿が本作を見る上では非常に大きなポイントであるという事はお伝えしておきましょう。

…とこの様に出題されてくるリドリーのなぞなぞが非常に哲学的に本作には絡んできます。

さて、バットマン。このなぞなぞに絡む話しではありますが、自らの理念に苦しまされる描写が非常に印象深く描かれます。自分の出自や辛いトラウマ、実は浅はかで視野狭窄で彼の抱く正義と現実のそれとの乖離に苦しめられる描写が非常にのしかかります。そしてそれを見抜き、嘲笑うかの如く立ちはだかるリドリー。その描写は非常に重くそれでいて哲学的。

しかし、マット・リーブス監督はそれを抽象的にではなく具体的に更にはエンターテイメントとしての仕事を放棄する事なく探偵モノを見る様なクライム・サスペンス要素と手に汗握る爆破シーンや派手なカーチェイス等のアクション要素をうまく結びつけて作り上げました。だから重くて多少難解ではあっても決して飽きないし、作品世界に没入する事が出来る。次作への期待値が否応なく高まる様な作りとなっていました。

また、後のキャットウーマンになるであろう女性セリーヌとのロマンスもあります。それでも決して甘い雰囲気にはならず、重厚感のある作品世界は全くぶれません。緊張感が180分間に渡り持続されていくんですよね。でもそれでも疲れさせないのはスゴいところですよ。複雑で根深い犯罪形態をゴッサムシティという架空の街で雨と黒を基調にしたダークな色彩で世界を作り上げる。人によっては暗いという印象が前面に出がちなんでしょうが、僕は三時間があっと言う間に感じられました。歴代の『バットマン』映画の中でもかなり好きな方です。でも一方ではこんな事も思います。

バットマン』っていつからこんな重い作りになったんだろう?昔のバットマンってもっとキャッチーだった様な…。まぁ、言わずもがなですが、『ダークナイト』シリーズからではありますけど、昔の様な明るいテイストのバットマンもまた見たい気もします。