きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム

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スパイダーマン ホームカミング」「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」に続く、マーベル・シネマティック・ユニバースMCU)に属する「スパイダーマン」シリーズの第3弾。MCU作品の「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」「アベンジャーズ エンドゲーム」でもスパイダーマンと共闘した、ベネディクト・カンバーバッチ演じるドクター・ストレンジが登場する。前作でホログラム技術を武器に操るミステリオを倒したピーターだったが、ミステリオが残した映像をタブロイド紙の「デイリー・ビューグル」が世界に公開したことでミステリオ殺害の容疑がかけられてしまったうえ、正体も暴かれてしまう。マスコミに騒ぎ立てられ、ピーターの生活は一変。身近な大切な人にも危険が及ぶことを恐れたピーターは、共にサノスと闘ったドクター・ストレンジに助力を求め、魔術の力で自分がスパイダーマンだと知られていない世界にしてほしいと頼むが……。サム・ライミ監督版「スパイダーマン」シリーズに登場したグリーン・ゴブリンやドック・オク、マーク・ウェブ監督版「アメイジングスパイダーマン」シリーズのエレクトロなど、過去のシリーズ作品から悪役たちが時空を超えて登場。それぞれウィレム・デフォー、アルフレッド・モリーナ、ジェイミー・フォックスら当時のキャストが再登板した。(映画・comより)

MCUが手掛ける『スパイダーマン』シリーズとしては本作が三作目。前作の『フォー・フロム・ホーム』のエンドクレジット後の映像で示されたストーリーから早速本編がスタートしていきます。これまでヒーローとして称えられていたスパイダーマンことピーター・パーカーが一転してミステリオ殺害の殺人犯として世間から大バッシングを受けます。そこには少し前までは英雄であっても状況が変わればすぐに手のひら返しをしてしまう人間の本質的な醜悪さをまざまざと見せている様であり。もしかしたら現代人への警鐘なのかもしれません。また、ピーター・パーカーもまたスパイダーマンとして戦う反面、一人の高校生です。ヒーローとしての自分といち少年としての自分。この二つの間で揺れる様はこれまでにも語られてきましたが、本作ではより顕著に浮かんできています。

そして『アベンジャーズ』シリーズでも共闘したドクター・ストレンジの元を頼るのですが、さすが大人ですね!彼は皆んなが自分を知らない世界にして欲しいその為のドクターストレンジの魔術なのですが、同時に友達やガールフレンドの為にある事をお願いするのですが、ストレンジはまず、行動を起こす事を指摘。要するに何もアクションを起こさない段階から俺の魔術を頼るな、まずは行動しなさいて事なんですが、的を得てますね。これは何もピーターだけに限らずあらゆる人のあらゆる場面でも同じ事が言えるのではないでしょうか。初めからドラえもんの秘密道具を頼るのではなく、一度はジャイアンにぶつかってから頼りなさいとのび太に言う様なもんですよ。

そしてこのアクションを起こしている渦中に本作の核となっていく事件が起きるわけですね。

それこそが過去の『スパイダーマン』シリーズの敵キャラ復活更には歴代スパイダーマン全員集合となるわけです。『スパイダーマン』シリーズと言えば現在はMCUのシリーズの一角を成しているのですが、以前は全く別のヒーロー作として製作されてきました。サム・ライミ監督版とマーク・ウェヴ監督による『アメイジングスパイダーマン』シリーズですね。じゃあこの全員集合に当たってどういう設定にしたのか?ということなんですが、全く別の世界線をひとつに集約させた。いわゆるパラレルワールドというヤツです。これによってそれぞれのスパイダーマンことピーター・パーカー更には彼らが戦ってきたヴィランもまた集結なんて事が出来たわけです。パラレルワールドの設定自体はさして特殊な発想でも何でもないのですが、設定の活かし方が上手いなと思いましたね。そして三人のピーターが揃っているからこそのチグハグさもコメディとしてうまく機能してましたし、『アベンジャーズ』シリーズには参加していない…というかMCUシリーズ化以前のシリーズに出ていた二人のピーターはアベンジャーズそのものを当然知らずそれをもメタ的なネタに変える辺りの描写が笑いを誘います。

そしてこのそれぞれのピーターには深い悲しみがある。一方で本作の主人公であるピーターにも詳しくは言えませんが、本作で深い悲しみが待ち受けている。空を颯爽と舞い、敵と戦うスパイダーマン。一方での心の傷を負うそれぞれのピーター・パーカーの悲しみを示す印象深いシーンが本作には潜んでいます。

しかし、三人のピーターが共闘するシーンはやはり心震えますね。そしてここでも過去作におけるピーターと現在のピーターでの戦闘シーンのスタンスの違いが明確に写し出されていました。過去作は当然アベンジャーズには参加していないので、戦う時は常に一人です。だから共闘する事に慣れていないんですね。しかし、アベンジャーズに参戦していた現在のピーターは共同での戦い方を知ってる。それを上手く活かして二人のピーターに指示を与えていくリーダー的な役割を果たすわけです。こうして見るとひとつひとつが非常に細かくそして巧みに過去シリーズの違いを打ち出しながら展開していってますよね。歴代シリーズ物大集合なんて触れ込みの作品って洋の東西問わずこれまでにも色々ありました。確かに人気シリーズ程引きが強いですし、ただその場に揃うだけで見栄えが良く華やかになります。だけど船頭多くして船山上るなんて言う様に、ストーリー的にはまとまりが悪くなりがちでもあります。だけど本作はそれがない。これは現シリーズが過去シリーズに愛情と敬意を持ちながら、過去作の設定と現シリーズのそれを上手く融合させながら作っている。そこには当然過去作の徹底した研究もあった事が伺える。だからこそ過去シリーズを見ていた人としては当然楽しめるし、仮に本作から『スパイダーマン』シリーズに触れたとしても、決して難解にはさせない。誰もが楽しめる作品になったのではないでしょうか。

そして本作はラストが泣ける。細かい事は言えませんが、そこにはドクター・ストレンジの魔術が絡んできます。ピーターとしての願望は成就出来るが、一方では決して小さくはない代償を払わなければならない。その代償の後の話しなんですよね。いや、これがあまりにも悲しい。だけど同時に前向きにさせる一筋の光の様なものを感じるシーンでもありました。思わずピーターを応援したくなるし、悪くはならないという予感も生まれる事でしょう。

そして例によってと言いましょうか。次作を示唆する映像が本作にもあります。「ホーム・カミング」〜「ファー・フロム・ホーム」〜「ノー・ウェイ・ホーム」とホームからどんどん遠ざかっていますが、次作はどうなるか?そこは今から楽しみにしている所です。