きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

えんとつ町のプペル

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お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣のプロデュースにより、イラスト、着色、デザインなど総勢33人のクリエイターによる分業体制、クラウドファンディングを使い資金を募って制作されたベストセラー絵本「えんとつ町のプペル」をアニメ映画化。煙突だらけの「えんとつ町」。そこかしこから煙が上がるその町は黒い煙に覆われ、住人たちは青い空や星が輝く夜空を知らずに生活していた。ハロウィンの夜、この町に生きる親を亡くした少年ルビッチの前にゴミ人間プペルが現れる。原作の西野が脚本、製作総指揮を務める。監督は伊藤計劃原作の「ハーモニー」で演出を務めた廣田裕介。アニメーション制作は「海獣の子供」「鉄コン筋クリート」などで高い評価を受けるSTUDIO4℃
(映画.comより)

2020年最後の話題作と言っても過言ではないのが本作でした。
お笑いコンビ・キングコング西野亮廣さんの大ヒット絵本である『えんとつ町のプペル』。
さて、その西野亮廣さんというとどんなイメージですか?
キングコングの突っ込みとして若くして大ブレイク。
人気番組『はねるのトビラ』等で人気を博した後、現在は本作に代表される絵本の執筆をはじめとしたクリエイティブな活動をし、更には今では当たり前となっているクラウドファンディングを広めた方でもあります。

実は批判を覚悟で言えばお笑い芸人としての西野さんの印象が薄くキングコングの漫才を笑って見た記憶が僕にはなくて。
『はねトビ』もインパルスやドランクドラゴンを軸に見ていました、ごめんなさい。
そして西野さんが絵本を手掛けられた後もよくあるお笑い芸人が本業以外のパフォーマンスをしている程度にしか見ていませんでした。

しかし、YouTube等を通じて西野さんの思いやこれまでのアクションを知った時に感じたのは如何に自分は表面的な浅い部分でしか物事を見ていなかったかを気付かされてしまいましたね。
西野さんご自身この8年間、理解を得られない世間と戦い、しかし信念を曲げずに貫き多くの人達を動かしてきたのか。
それを知らない人に言いたい。
今からでも遅くはない。
YouTube西野亮廣のスゴさがわかる動画をタダで見る事が出来るから是非ご覧頂きたい!
そしてそれらを見た後は本作の鑑賞を強くオススメします!

さて、今回は前置きがかなり熱くなりましたが、本作についてお話しさせて頂きます。
まずアニメーションなのでビジュアル的な面から伝えるととにかくスクリーンで見る映像が素晴らしい!
とりわけこの作品の場合、星の見えない闇夜の中の町が舞台になるわけですが、明と暗のバランスが絶妙なんですよね。
空のない町、漆黒の闇に包まれた空間から漂う絶望的なムードを漂わせる一方、町全体はネオンが煌々としていて明るい。
そこに生きる人々だって暗闇の中ではあるものの、それを当たり前のものとして日常の生活を送っている。
この辺の調整って難しいと思うんですよ。
明る過ぎても空のない閉塞感が伝わりずらくなるし、暗過ぎてもただ重いだけになる。
人間の性質だって一見明るく見えても心の内面に淀みがあるその様を伝えるのが本作の肝になっている部分があるんですね。
町の様子と人々の心境をシンクロさせる為の色使いとして絶妙なんですよね。
鉄コン筋クリート』・『海獣の子供』等で高い評価を得てきたSTUDIO4℃の手腕が遺憾なく発揮されてるなと感じました。

次にキャスト陣。
主人公の少年・ルビッチを芦田愛菜、ゴミ人間のプペルを窪田正孝その他豪華キャストが集結している事でも話題の本作ですが、まずは芦田愛菜さん。
天才子役からすっかり実力派女優へと変貌を遂げた彼女が本作で挑んだのはえんとつ掃除の仕事をするひとりぼっちの少年・ルビッチです。
空の存在を主張し続けた父は嘘つき呼ばわりされ、町中の人から嫌われ、そして息子・ルビッチも異端児扱いされ友達も居ない。
そんな孤独な少年の声が芦田愛菜さんにはピッタリとハマり、プロの声優顔負けの演技をされてました。
もっとも芦田愛菜さんはイルミネーションスタジオの『怪盗グルー』シリーズでも声優はされていますが、グルーでのそれとはまた違う良さがありましたね。
で、驚いたのがプペル役の窪田正孝さんですね。
はじめに本作のキャストを知ってたから窪田さんと理解した上で鑑賞していたものの、事前情報なしで見たら驚きかもしれません。
どこか情けないんだけど一方で純粋でまっすぐなそんなプペルを普段の窪田さんとはかけ離れた演技を見せ驚かせてくれました。
その他、小池栄子さんや宮根誠司さん、國村隼さん、藤森慎吾さん等がキャストとして名を連ねていますが、國村隼さんはすぐに「あっ、國村さんだ!」なんてすぐにわかりましたね。
でもそれがナチュラルでありながら言葉に含蓄があるし説得力がある。
なくてはならない存在でしたね。
また藤森さんもいつもの藤森さんテイスト全開でしたね!
ノリが軽くて口まで軽いちょっと困ったヤツなんですけど憎めないんですよ。
チャラ男でブレイクしていた時の様なチャラいけど嫌いになれない感が藤森さんのキャラクターと合ってましたよね。

さて、最後に本作最大のテーマについて。
それは夢をあざ笑うヤツと夢を追うヤツのひたむきさでしょうか。
件のYouTubeチャンネルにて西野さんがおっしゃってました。
とかく今の時代って夢を追う人を馬鹿にして夢を追う事に負い目を感じる人がいるって。
本作におけるルビッチの星を見るという事に対し、人々は嘲笑し、蔑み罵声を浴びせてました。
そしてそれは父もまた人々から嘘つき呼ばわりされ、迫害されながら亡くなっていきました。

作品は違いますが、『ONE PIECE』の一巻でルフィが海賊王になると宣言した時、村人は馬鹿にしながらルフィを笑い者にしました。

ルビッチやルフィの様に夢を語るだけで馬鹿にされるのが悲しいかな今の世の中ですよね。
「地に足をつけなさい」「世の中そんなに甘くはない」「お前みたいなヤツがなれるわけない」。
ラジオDJになろうと思った時、人に言えなかったんだよね。
だって「お前喋り上手くねぇじゃん!」て言われそうだったから(笑)
実際その時の俺ってただ音楽が好きだからって理由だけだったしね。
だから俺はトーク力磨いて何とか人に聞かせるくらいのトークスキルは身についたかなとは思っているけど。

なんて僕の話しはこの辺で。
そう、僕も昔は自分の夢を語る事に抵抗がありました。
でもね、夢を持てば必然と努力するし自分自身成長していきますよ。
だけどそんな姿を認めず嘲笑する層が一定数いるのは事実です。
西野さんは今の道を選択した時、理解しない人から「芸人が何をやってるんだ」とか「芸人なら本業のお笑いで人を笑わせろ」とか言われた様です。
そんな西野さんがルビッチの姿に自らを重ねて作り上げたストーリーですから僕みたいな人間に刺さらないわけがありません。

劇場内では人目を憚らず僕も涙と共に鑑賞しました。
そして誰一人席を立たないエンドロール後、館内から拍手が聞こえてきました。
映画を見てもなかなかこういう光景には出会いません!
つまりそれ程僕と同じ回に本作を見た人の琴線に触れたという事でしょう。