きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇

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太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視点を交えたスクリューボールコメディとして「グッドバイ」のタイトルで戯曲化、演出した舞台を大泉洋小池栄子主演で映画化。戦後の復興期、文芸雑誌の編集長・田島周二は何人もの愛人を抱えていた。さすがにこのままではまずいと思った田島は彼女たちと別れる決心を固めるが、愛人たちを前にすると優柔不断な性格が災いし、別れを切り出すことが出来ずにいた。困り果てた田島は、ガサツで金に金にがめつい担ぎ屋・キヌ子に女房を演じてくれと頼み込む。しかし、泥だらけの顔を洗ったキヌ子は誰もが振り返る美しい女性だった。大泉が田島役を、小池が舞台版でも演じたキヌ子役をそれぞれ演じるほか、水川あさみ橋本愛緒川たまき木村多江濱田岳松重豊らが顔をそろえる。監督は「八日目の蝉」「ソロモンの偽証」の成島出
(映画.comより)

さて、今回は文豪・太宰治未完の遺作『グッド・バイ』を戯曲化した作品の映画版『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』です。
昨年公開された『人間失格 太宰治と3人の女たち』と言い、このところ映画界ではちょっとした太宰治ブームの様相を呈してる感がありますね。
実は私、昨年の太宰治映画を見た後、『人間失格』を読んだんですよ。
面白いと表現するのはちょっと違うかもしれませんが、人間の内面をえぐり出す様な文章表現等今読んでも心に突き刺さるその内容で一気に作品に引き込まれていきました。
人間の本質に感じるものはまさに普遍的であると感じた次第です。
そして本作です。
人間失格』とか太宰治のイメージとはかけ離れた様な喜劇。
しかし、確実に人間臭く、笑いながらも考えさせられる様な良作。
まず、本作の舞台となっているのは終戦直後の東京。
まさに太宰が生きた時代なのですが、その街並みの再現が見事!
焼け野原でのバラック闇市も見られれば夜の繁華街はきらびやかで早くも戦後の復興を感じさせてくれる。
そんな中に生きた男と女の愛憎劇といったところなのでしょうが、大泉洋の優柔不断な編集長が見事に板についてるわけですよ。
何人もの愛人が居て…なんて辺りが如何にも太宰らしいなと思いつつも大泉洋さんがそんな太宰ワールドの登場人物として昨年の『人間失格』における小栗旬とまた違うキャラクター像で楽しませてくれるんですよね。
で、一方の小池栄子演じるキヌ子が良いんですよ!
小池栄子さんが出た映画はこれまでに何作か扱ってはきましたけど、ここまで小池栄子さんが魅力的に映える作品は本作が初めてかもしれません。
このキヌ子なんですが、戦後の混乱期身寄りもなく逞しく生きる女性。
身なりも決して綺麗だとは言えず行商で身を立てる人です。
しかし、ひとたび身なりを変えれば上品な貴婦人へと変貌を遂げる。
まぁ、割とよくあるパターンだとは思いますが、ひとつの作品でこの両面を見せ、そのどちらもピタリとハマるんですよ。
これは小池栄子さんの女優としての魅力あってこそだと思います。
他、田島と関係を持つ女性達も魅力的なんですよ。
緒川たまきさん、水川あさみさん、橋本愛さん等々三者三様で個性を放っていますが、とりわけ緒川たまきさんの幸薄そうな感じとかたまりませんね!
すぐに自殺行為に走ろうとするくだりなんかは如何にもな太宰的な展開ですが。
男性陣も松重豊濱田岳等ひと癖もふた癖もある名脇役達が作品を彩ります。
共通して「良い人そう」だけど…てところがポイントです(笑)
で、とにかく田島とキヌ子のバディっぷりが見ていて楽しいんですよ。
お互いの利害関係がはっきりしてるからこそのハラハラ感もあるし、見ていて飽きません。
しかし、中盤~後半がやや中弛み感が出てしまったのは少々勿体ないところ。
脚本の都合上、仕方のないところかとは思いますが、ひと工夫あれば良かったかな?
後、個人的にはこういうキャラクターだと割りきってたからあまり気になりませんでしたが、(というか気にしない様にしてたと言うべきか)小池栄子のダミ声は好き嫌いが出るかもしれませんね。
それから本作が元々は舞台演劇だからでしょう。
舞台として見たらいいんだろうけど、映画だとどうなの?なんて箇所はありました。
なんて気になる点をいくつか挙げましたが、後半の流れは良かったです。
太宰治原作というと難しそうというイメージはありそうですが、軽快なコメディとして非常に楽しめる作品です。
是非劇場でご覧下さい!