きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

カイジ ファイナルゲーム

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福本伸行の人気コミックを藤原竜也主演で実写映画化した「カイジ」シリーズの3作目。前作「カイジ2 人生奪回ゲーム」から9年ぶりの新作となり、原作者の福本が考案したオリジナルストーリーで、「バベルの塔」「最後の審判」「ドリームジャンプ」「ゴールドジャンケン」という4つの新しいゲームを描きながら、シリーズのフィナーレを飾る。2020年・東京オリンピックの終了を機に、国の景気は急激に失速。金のない弱者は簡単に踏み潰される世の中になっていった。派遣会社からバカにされ、少ない給料で自堕落な生活を送るカイジは、ある日、帝愛グループ企業の社長に出世した大槻と再会。大槻から、金を持て余した老人が主催する「バベルの塔」という、一獲千金のチャンスを含んだイベントの存在を知らされ……。福士蒼汰関水渚新田真剣佑吉田鋼太郎らがシリーズ初参戦し、過去作からも天海祐希松尾スズキ生瀬勝久らが再登場。監督は過去2作と同じ佐藤東弥
(映画.comより)

さ、今回は人気シリーズ『カイジ』の最新作であり、ラストを飾る『ファイナルゲーム』です。
実は私、過去二作は劇場公開当時にいずれも劇場鑑賞していますが、藤原竜也演じるカイジが地下帝国を脱出する為に挑むギャンブルの数々を手に汗握りながら見ていたものです。
で、この『カイジ』というシリーズなんですが、社会の不条理や不謹慎さをエンタメとして楽しむ側面のある映画だと思ってまして、言い換えれば非常に胸糞悪いんですが、その胸糞悪さ・腹立たしさがあるからこそカイジが敵役と戦い、そして苦しめられつつも勝利をおさめる辺りに清々しさ言い換えればカタルシスがあるんですよね。
そして本作でもそれが継承されておりまして、前半部は非常に不快極まりないが、ある意味人間の醜さであると知りつつその部分を憤りと共に楽しむ。
そしてその憤怒をカイジに託しながら作品へと没頭させていくわけです。
思えばこの『カイジ』。
平成という時代と非常にマッチした映画でした。
先行き不透明な社会情勢、非正規雇用が拡大し、勝ち組・負け組という言葉も生まれ、格差社会が生まれた時代でした。
バブル崩壊後の失われた20年という時代。
橋本体制下での金融政策の失敗から小泉・竹中政権下での派遣法規制緩和による非正規雇用の拡大。
混迷を続けた平成不況の中、更に日本経済を襲ったリーマンショックの翌年に本作の一作目が公開され、その時代性も相まって大ヒットしました。
氷河期世代でもある藤原竜也カイジを演じ、底辺社会と作中で表現される地下帝国で奴隷の様な重労働を強いられ、搾取されつつも「持つ者」と戦い、勝利する姿が見る人達に迎え入れられたのだと思います。
一作目公開当時、自分も先の見えないフリーター生活を送り、かなり窮乏した生活を送っていたのでかなりリアリティーと恐怖を感じながら映画を見ていました。
平成不況の影響はいまだに続き、少子化や未婚、年金問題生活保護の問題等が指摘される今ですが、本作の舞台となっているのは東京オリンピック後、不況に襲われる日本です。
缶ビール一本1000円という極端なインフレが進む中、更に格差社会が拡大し、持つ者と持たざる者の差が歴然としている社会です。
カイジは今回も独創的なゲームの数々に挑むのですが、本作ではこれまでの作品と大きく異なる点があります。
ひとつはカイジが主体的に強大な権力者と戦うこれまでの流れではなく、サポート役に回るという点。
次に過去作ではカイジのワンマンプレーもしくはカイジの行動に理解を示し、協力してくれる人との連係プレー言い換えればバディ的要素が非常に濃かったのが、本作ではシリーズ初のチームプレーを展開していきます。
まずひとつ目。
予告編では大々的に吉田鋼太郎が現れ、彼が悪役として登場する事を示唆するシーンを目にした人は多いと思います。
もちろん彼は本作における重要なウェイトを占める悪役には違いありません。
しかし、実際のところ彼と対峙するのは伊武雅刀演じる不動産王であり、実際ゲームは派遣王対不動産王の触れ込みでスタートします。
カイジがこの伊武雅刀の不動産王と手を組む流れは実際に見て頂くとして、カイジはひたすらこの対決を見守り、その流れに一喜一憂したり危機が生じると自らが動きただひたすら彼の為に動きます。
そしてもうひとつ、チームプレーについて。
実はこの作品はカイジ対誰かという構図ではなく、社会的弱者対社会的強者を描きたかったのではないかなと思いますが、同じ様な境遇を持つ者達を仲間にし、各自の得意分野を駆使しながら戦っていく。
各々の役割を分担しながらミッションを遂行させていくその展開は『オーシャンズ』シリーズを見ている様でなかなか楽しめました。
キャストの演技に関してですが、藤原竜也は流石ですね!
カイジ』の前作以降様々な役を演じてきていずれも見事にはまっていたのですが、カイジはやはり原点とも言うべきかもはや藤原竜也以外のカイジは認めないという領域です。
ヒロインとして登場した関水渚さん。
今回初めてお目にかかった女優さんでしたが、演技は良いと思いますが、キャラクターの蛇足感が否めなかったかな。
昨年扱った『ザ・ファブル』での木村文乃さんのポジションに通じるものがあり、どちらかと言うと男臭いテイストに紅一点として置く。言い方悪いですが、可愛い要因で終わった感が残念。
何より大阪でのゲームに参加していた彼女が関西弁を喋らない辺りに違和感を感じました。
吉田鋼太郎さんや伊武雅刀さん等は言うまでもないですが、光っていたのは福士蒼汰君でしょうか。
少し前までは好青年イメージが強かった彼ですが、前述の『ザ・ファブル』と言い本作と言い悪役に新境地を見いだしてる感がありますね。
今後もこういうキャラクターでの演技に期待出来そうですね。

そして突っ込み点もやはり例に漏れずありまして、前述のヒロインの関西弁問題もそうですが、前半部にカイジと同じ職場で理不尽な環境ながらも働いていた女性が登場します。実は彼女もまたカイジ側の協力な味方となります。
そんな彼女は幼い子供を持ち、両親の介護もあると訴えながら咳き込んでいるのですが、その後めちゃくちゃ元気なんですよね。
肺に病を抱えているかの様な咳き込み方なのにな~…。
まぁ何はともあれ久しぶりの『カイジ』。
やっぱり本作も楽しませて頂いたのは確かです。
シリーズ末見の人は過去作鑑賞の上、過去二作を楽しんできた人はきっと今回も満足出来る内容だと思います。
是非劇場でご覧下さい!