きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

コーヒーが冷めないうちに

f:id:shimatte60:20181008200137j:plain

本屋大賞2017」にノミネートされた川口俊和の同名ベストセラー小説を、有村架純の主演で映画化。時田数が働く喫茶店「フニクリフニクラ」には、ある席に座ると望み通りの時間に戻れるという不思議な噂があった。過去に戻るには面倒なルールがいくつもあったが、その全てを守った時、優しい奇跡が舞い降りるのだという。今日も店には、噂を聞きつけてやって来たキャリアウーマンの清川二美子や、訳あり常連客の高竹佳代と房木康徳、なぜか妹から逃げ回っている平井八絵子ら、それぞれ事情を抱える人々が訪れてくる。タイムスリップの引き金になるコーヒーを淹れることのできる数も、近所の美大生・新谷亮介に導かれるように、自分自身の秘められた過去に向き合っていく。
(映画.comより)

ぶっちゃけて言うと僕はこの映画を見るまでは不安だったんですよ。
キャッチコピーが「4回泣けます」ですよ。
邦画にありがちな泣きのごり押しと言うんですかね。
「ほら、この映画めっちゃ泣けますよ。こういうの好きなんでしょ?」と言われてるみたいなね。
「そんなん言うてホンマに泣けるんやろな?泣けんかったらどうすんのや?」なんてひねくれ者の僕なんかは思っちゃうんです。
そもそもこういうコピーってハードル上げてるだけな気がするんだけどな。
「人の心に訴えかける感動作を目指して作りました。よかったらご鑑賞下さい」みたいなスタンスなら「ほぉ、どれどれ見てみようね」なんて思えるものなんですけどね。

あ、すいません。冒頭から愚痴っちゃいましたね。
なんて言いながら僕自身はあざといと思いながらもお涙頂戴物は割と好きです。
今年の作品で言えば『今夜、ロマンス劇場で』とか『50回目のファーストキス』みたいなヤツね。

更に本作は時間軸操作系のSF要素も入ります。
古くは『時をかける少女』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ですね。
ちなみに個人的に思うのですが、『ドラえもん』が何故長きに渡り愛されているかの理由ってこの時間軸が大いに関わっているからというのがあると思うのです。
実際問題、時間というのは逆戻り出来ないし、未来を覗く事も出来ない。
そこにロマンを感じるんだと思います。
時間軸にロマンを抱かせる作品というのは売れる為にはかなり効果があると思うんですよね。(この夏の細田守作品については突っ込まないで下さい。僕は好きですけど)
本作においては過去に戻る事が出来るのですが、それがあまりに限定的なんです。
コーヒーを煎れてそれが冷めきるまでのわずかな時間ですから。
しかも過去に戻って何かをしたところで実際の世界における結果は何も変わらない。
でも、それでいいんです。
過去に戻って歴史を変える様な大それた事なんかしなくていい。
例えば大切な人に何かを伝えたり、あるいは何を考えていたのか聞き出したり。
そしてそれによってその人の次なるステップに向けたきっかけになるかもしれないのです。

本作は4つのストーリーで構成されたオムニバス作品です。
例を挙げれば『ツナグ』とか『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の映画ですね。
ひとつひとつにおけるストーリーも確かにわかりやすかったです。
恋愛、介護、確執のあった家族との向き合い方等々。
実際うるっときた場面もあるし涙腺の弱い人ならば確かに泣けるでしょう。
とりわけ松重豊さんと薬師丸ひろ子さんの夫婦の話し、吉田羊さんの妹とのエピソードは個人的には本作におけるハイライトと呼べるシーンだったと思います。
このままのペースを最後まで保っていれば『今夜、ロマンス劇場で』、『50回目のファーストキス』、『SUNNY 強い気持ち 強い愛』に並ぶ今年の四大泣き邦画に名を連ねていたかもしれません。
しかし、ラストへの展開が急ぎすぎたのか残念な展開になってしまったのは否めません。

しかし、過去に向き合いそこから吸収した上で今の自分と対峙していく。
そして新たなステップを踏むためにそっと背中を押してくれる。
そんな前向きな映画でした。

泣きこそしませんでしたが、見終わった後にスッキリとした余韻も残してくれました。

ただ、100%満足出来る様な作品ではなく、残念な点は多々あったのでお伝えしておきます。
前述の様に後半のストーリー展開もそうなのですが、いちいち強引さが粗となって出てくるんですよ。

物語の舞台となる喫茶店「フニクリフニクラ」で働く有村架純演じる時田数という女性はこの店のアルバイト店員であると同時に本作におけるストーリーテラー的な役割をしていました。
ただ、後半になれば彼女そのものをクローズアップしていく様になります。
いや、それ自体は悪くはないんですよ。
ただ、あまりに唐突なんですよね、展開が。
何らかのクッションを入れて欲しかったですね。 

それから本作鑑賞前に感じていた不安点が的中してしまったのですが、どうしてもテレビドラマ的なんですよね。
主演の有村架純はじめ波瑠、松重豊薬師丸ひろ子、吉田羊等演技は素晴らしいのですが、その足を引っ張るかの様な演出やご都合主義感が頂けなかったし、役者の表情を撮りたいのはわかるけどアップにし過ぎてて背景がぼやけてしまっている。
後、タイムスリップする際の面倒なルールや制限があるのはわかるとして、過去から物を持って来れるって設定聞いてないんだけど?
それからこの不可思議なタイムスリップについて数は手品みたいなものなんて表現していましたね。
分かりやすく伝えたつもりかもしれないけど、何か腑に落ちないなぁ。
いや、よしんば手品だとしてもそれならそれで種明かししてくれよ~はぐらかされた感じだなぁ。
最後に出てきた女の子。(数との関係性はネタバレになるので言いませんが)
キャラ設定がイラっとしたなぁ。
何であんな不思議ちゃんみたいなキャラにしたのかなぁ。

なんて不満は枚挙に暇がない程あります。
途中までは良かっただけに惜しいんですよね~。
もったいないというのが個人的な印象でした。