きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

カメラを止めるな!

f:id:shimatte60:20180924194414j:plain

映画専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾として製作された作品で、前半と後半で大きく赴きが異なる異色の構成や緻密な脚本、30分以上に及ぶ長回しなど、さまざまな挑戦に満ちた野心作。「37分ワンシーンワンカットのゾンビサバイバル映画」を撮った人々の姿を描く。監督はオムニバス映画「4/猫 ねこぶんのよん」などに参加してきた上田慎一郎。とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき……。2017年11月に「シネマプロジェクト」第7弾作品の「きみはなにも悪くないよ」とともに劇場で上映されて好評を博し、18年6月に単独で劇場公開。当初は都内2館の上映だったが口コミで評判が広まり、同年8月からアスミック・エースが共同配給につき全国で拡大公開。
(映画.comより)

いや~、難しい…。
ブログを初めて一年、ラジオで映画レビューコーナーを始めてからは11月で一年になりますが、この映画程伝えるのが難しい作品はありません。
だってこの映画を話す事自体ネタバレが避けられないですもん。
なので今回については敢えて言います。
予備知識なしでこの映画を見たいという方は速やかにお引き取り下さい。
そして鑑賞した後に改めて答え合わせ的にまたお立ち寄り下さい。




それでは大丈夫ですか?ここからはしっかりと本作について語らせて頂きますよ。

まず、本作についてはこの夏都市部で公開後、口コミでじわじわと広まり、全国的に拡大していったのは皆さんご存知の通りです。
近年で言えば『この世界の片隅に』という作品のヒットパターンに似ています。
本作の予告編を見て感じた印象としては和製ゾンビ映画、ホラー映画でありそれは誰もがイメージする事でしょう。
しかし、見事に予想が覆されましたが、その辺りについては後程触れていきたいと思います。

実は本編が始まってしばらくは正直しんどかったです。
ホラー映画やゾンビ映画が元々得意ではない事もありますが、ただただゾンビになった同じ映画の撮影スタッフから逃げまとうキャストやメイクスタッフという展開に次第に飽きてしまったというのが前半の印象です。
しかもシリアスなシチュエーションの中で明らかに不自然な会話も生まれる。
「このセリフいる?」なんて思うシーンもありますし。(後半部への伏線ですけどね )
確かに37分ワンカットの長回しは見応えもありましたし、インディーズ映画とは思えないクオリティの高さもありました。
しかし、自分の期待値が高かったのでしょう。
「何だ、話題のカメラを止めるな!ってこんなもんか。思ってた程でもなかったな」なんて思ってました。

しかし、これは大きな間違いでした。
本当の意味で面白くなるのは37分長回しの後、中盤そして後半の展開でした。
例えて言えばNGショットって見た事あるでしょう。
昔のジャッキー・チェンの映画ではエンドロールが流れる中、このNGショットを見た事がある。
そういう人も多いでしょう。
本作の前半部は『ONE CUT OF DEAD』というひとつの作品が上映されます。
廃墟の中で行われる映画の撮影。
その中で次々とクルーがゾンビ化していき、彼らの恐怖から逃げ続けるキャストとクルー。
そして衝撃のラストシーンが流れた後、件のNG カットよろしく始まっていくメイキングシーン。
この舞台裏こそが本作の胆となる部分であり、ここからの展開にはホントうまい事騙されました。
まさかこういう流れになるとは予想だにしませんでしたからね。
このゾンビ映画『ONE CUT OF DEAD 』の企画が浮上する段階から始まっていきますが、話しを持ちかける製作会社のプロデューサーというのが超~胡散臭いんですよ。
映画に一言格ある有名ラッパー曰くa社とY社のプロデューサーがモデルになっているのではという指摘がありましたが、正に言い得て妙。
そういう風にしか見えない胡散臭さ(笑)

そして様々な背景を含めて撮影はスタートするのですが、そこからはドタバタコメディのスタート。 
こちらは多くの人が言う様に三谷幸喜的なんですよね。
登場人物のキャラクターにしてもアル中の俳優、胃腸が弱く神経質な俳優、「おばちゃん」と呼ばれる終始表情を変えない中年AD等々。
やる気のない「よろしくで~す」が口癖のアイドル女優。
波を自然に流せないから目薬を使う、汚れ仕事は「私はいいけど事務所が~」とやんわり断る。
きっとこういうタイプの女優さんってこんな人なんだろなぁなんて想像してしまいます。
三谷作品にありがちな個性の固まりの様な連中が見事に作品内の住人として世界観を構築していく。
脚本に目を向けると奇妙な偶然が偶然を重ね、そして偶発的な笑いを呼び込む。
全てが繋がる事によって喜劇性が生まれていき、いつの間にか前半のハラハラ感はどこへやら。
久しぶりに劇場内で
声に出して笑ってしまいました。
私だけではなく劇場全体で。
脚本の妙とはこの事です。
畳み掛けられていく笑いが何とも心地良いし、テンポも素晴らしい!
そして前半のあのシーンはこんな風に結びついていくのかといちいち感心させられる伏線回収。
笑いながらもかなり度肝を抜かれてましたよ。
短編映画のメイキングというドキュメンタリー映像になるかと思いきやそこからコメディに昇華させ、サスペンス要素も加えていく。
脚本も良ければテンポも良い、出てる人達は現時点では無名のキャスト陣、しかしどの人も演技が素晴らしいし、ずっと見ていたくなる。
スタッフ、キャスト共にみんな本気で良い作品を作ろうという意識を感じさせるし、本気でバカをやっている姿に心が打たれる。


前半のれなかった私ですが、後半一気に持っていかれました。
何てこった!!
日本の映画だってまだまだ捨てたものではありません!
こんな巧妙な作りで笑いや感動を生み出してくれるんですから。
心行くまでの映像体験をした私、すっかり帰りにはパンフレットを手にしておりました。(パンフは基本気に入った映画しか買わない)