きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ

f:id:shimatte60:20180604203344j:plain

橋爪功吉行和子らが演じる平田家の人びとが直面する大騒動をユーモアにたっぷりに描いた山田洋次監督による喜劇映画シリーズ第3弾。熟年離婚無縁社会に続く今回のテーマは主婦への讃歌。平田家の長男・幸之助の妻・史枝がコツコツ貯めていたへそくりが何者かに盗まれてしまった。史枝が落胆する一方で、「俺の稼いだ金でへそくりをしていたのか!」と心ない言葉を口にする幸之助の姿に史枝の我慢が限界に達し、ついには家を飛び出してしまう。掃除、洗濯、朝昼晩の食事の準備など、これまで平田家の主婦として史枝がこなしてきた家事の数々をやるハメになった平田家の人びとは大混乱となるが……。橋爪、吉行、西村まさ彦、夏川結衣中嶋朋子林家正蔵妻夫木聡蒼井優らシリーズおなじみのメンバーが顔を揃える。
(映画.com より)

まずはじめに。
いつもこのブログをご愛顧頂いてる映画の皆さん。
今回は普段取り上げてる作品と比べ明らかに作品のテイストが違います。
『レディプレイヤー1』や『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』の様な作品が好きな御仁はまず見ないであろう古き良き松竹映画の色合いを今に残す巨匠・山田洋次監督の人気シリーズ『家族はつらいよ』の三作目です。

このシリーズは1作目からいずれも劇場鑑賞するほど好きなのですが、毎年現代の時代に沿ったテーマを取り扱ってるのが印象深いです。
1作目が熟年離婚、2作目が老人の孤独死と免許返納そして本作が主婦のあり方を全面に打ち出す一方、地方の過疎化などにも目が向けられています。
そして毎回の事ながらそれをあくまで喜劇の舞台上に盛り込むから重くならない。
笑いを取り混ぜながら諸々の問題に切り込んでいくという点では土曜日お昼にベテラン漫才師が視聴者からの相談事を漫才のネタに盛り込みながら面白おかしく展開する某長寿番組を彷彿とさせてくれます。

登場する平田家の面々はひとつ屋根の下に集まりながらもそれぞれ別に所帯を持って暮らす大人の家族です。
何か事が起これば家族が集合してああでもないこうでもないの家族会議を繰り広げるお約束の展開を見ると古くさいのは確かですが、同時に家族の姿を見つめ直す良い光景でもあります。
そしてこの古くさいという意味で言えば夫と妻の関係が封建的でそれ故に共感を持ちにくいという声はよくわかります。
ただ、そこに関しては山田洋次が描く家族像がどうしても昭和的に偏りがちというのは何もこの作品に限らずですからそこはあまり気になりません。
むしろ気になったのは登場人物ほぼ全てがスマホを使っていたり果ては吉行和子さん演じる富子が亡き弟の印税収入を管理するのにネットバンキングを使っていたりと登場人物のキャラクターや関係性のロールモデルが如何にもな昭和であるのに対して扱う道具類は全て現代のものであったり。
その辺りのミスマッチ感は何とかならなかったのでしょうか。
更に、今回に関して言えばややもすると冗長的で間延びしてしまった感もあります。
こちらがこのシリーズを見慣れてきたからというのもあるでしょう。
それに付随して期待値が高くなったのも事実です。
過去二作は喜劇映画特有の笑いが生まれるまでの間とかテンポが絶妙だったのに今作はその点が残念ではありました。

後、気になったのがこの作品の舞台が…厳密に言えば平田家の所在地がどこなのかハッキリしないんですよね。登場する車のナンバープレートは横浜なのですが、関西弁を使う若い警察官は「東京の女の人はかなわんわ~」なんて言ってるセリフがあったり。
西日本の人がよく言う「東京」。
すなわち千葉や埼玉や神奈川の事をまとめて呼ぶ「東京」という認識でいいのでしょうかね?


キャストについては過去二作に続いて出演されてる小林稔侍さん。
毎回違う名前の違う役柄で登場されてます。
もしそれを知らずに二作目で初めて見たという人が居たら「あれ、前作で孤独死したんじゃなかったの?」なんて思いそうなものですがいや、それでいいんですよ。
そういうシリーズですから(笑)
あくまで同じ小林稔侍さんであっても劇中に登場するのはシリーズ全作通して違う人物です。
同じく毎回出演していながら違う役どころで出られているのが笑福亭鶴瓶師匠。
毎回コメディリリーフとしておいしい登場しますが、本作でも思わぬところで鶴瓶師匠が現れそして笑いをさらっていきます。
期待を裏切りませんよ(笑)

そして本作のキャストでおいしい登場と言えば笹野高史さん。
一見紳士然とした格好ですが、この人物こそが平田家に空き巣に入った男。
笹野さんはその男を演じますがセリフはほとんどありません。
しかしそれでも抜群の存在感がありました。
さすがは名優ですね。

また、本作の冒頭とエンディングで使われた油絵タッチのタイトルバック。
妙に印象に残るタイトルでした。
しかし、どうにもわからなかったのがその平田家を描いた油絵。
平田家の周辺に打たれていた謎の番号。
あれは何を意味していたのでしょう。
オープニングでタイトルを見た時に明らかにされるかと思っていたのですが結局何もわからずでしたからね。
誰かおわかりの方は教えてください。

全体的に見てケチをつける所はケチをつけましたが、古き良き昭和の喜劇を見る様な温かさの様なものを感じる作品でした。

もちろんこんな作風ですから毎度の事ながらアダルトな客層に囲まれながらの鑑賞でした。
今年見た映画だと『北の桜守』と同じ客層です(笑)

次回はガラッと変わって若者受けバツグンのアメコミ映画『デッドプール2』をお届けします。
お楽しみに‼