きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

チア☆ダン 女子高生が全米制覇しちゃったホントの話

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2017年3月公開作。2009年3月、福井県福井商業高校チアダンス部JETSが全米チアダンス選手権大会で優勝。普通の女子高生だった部員達とひとりの教師の絆によってもたらされた栄光でした。そんな福井商業高校チアダンス部の実話を元にした青春ストーリーを『俺物語!!』の河合勇人監督の手により映画化されたのが本作です。


あらすじ
県立福井中央高校に入学した友永ひかり(広瀬すず)は中学からの同級でサッカー部に入部する孝介(真剣佑)を応援したいという思いからチアダンス部に入部します。
しかし、彼女を待ち受けていたのは顧問の女教師・早乙女薫子(天海祐希)によるスパルタ指導。チアダンスで全米を制覇するというとてつもない目標を掲げられ、ネイルもおしゃれも禁止、前髪を下ろさない、もちろん恋愛も禁止という厳しいものだった。チアダンス未経験で練習にもついていけないひかり。当初の思いとの大きなギャップに退部も考えるが、部長の彩乃(中条あやみ)らチームメイトの存在もあり、次第にチアダンスへ没頭していく様になる。


今年公開された邦画の中でも五本の指に入る程好きな作品です。もっともはじめは期待してなかったんですよ。予告編のつくりがスウィーツっぽかったし、『グッドモーニングショー』とか『恋妻家宮本』の様なくくりかと思ってまして。ところがふたを開けてみたらビックリ!めっちゃ良い映画じゃないですか!

広瀬すず中条あやみ、TOHOシネマズではお馴染みの山崎拡奈、福原遥等の若手女優達が本気で挑むチアダンス。それもかなり完成度が高いんですよ!
そしてそこに至までのストーリーもしっかりしていて元からチアダンス経験豊富なエリート・彩乃(中条あやみ)にヒップホップダンスをクールにきめる唯(山崎拡奈)などは習得も早い即戦力として期待される反面、他のメンバーはしっかり踊る事が出来ません。特にひかりはひどいものです。ストレッチの屈伸運動すら出来ないほどなので体も相当硬いのでしょう。
メンバー中、最も足を引っ張っていたと思われるひかり。しかし誰よりも笑顔が良かったので早乙女の目も変わります。

この様に決して元から優秀とは言えない面々がひたすら努力を積み重ね最後は大きな舞台で輝くというサクセスストーリーです。
「努力は人を裏切らない」とか「努力すればいつかきっと願いは叶う」というセリフを安易に吐くのではなく、その姿勢をうまく表現していたのが好印象です。
例えばはじめて出場した福井県大会。
県大会と言えば聞こえは良いのですが、競技人口の少なさゆえか4校しか出場しません。
その大会はひどいもので技術面も精神面でもバラバラで散々たる失態を客前で見せてしまいます。
チームメイトの心もまとまりはなく、退部する部員も現れます。
しかし、ひかりと彩乃が動き出します。
ショーウインドウの前で一人で黙々と踊る唯を見つけ、一緒にストリートダンスを踊ります。
笑顔を作るのが苦手だった唯もはじめて出来た仲間とのダンスを通じて自然な笑顔が生まれます。
その後、複雑な家庭環境の多恵子(富田望生)の家へ訪れ、問題ある母親に罵倒されたひかりら。その姿を見て、多恵子は母親に怒りをあらわにします。
こうして部員達の元を訪ね、結束を強めていきます。そしてメンバー横並びで勇ましく登校。早乙女を問題視する校長の元へと直談判しに行きます。そして勢い余ってひかりが口走った「チアダンスでアメリカへ行きます!」の宣言により、チームはいよいよ全米制覇の目標に向けて一丸となり、チーム「JETS」が誕生します。
そこからの描写が非常に良かったです!
大きな目標だからこその苦悩や挫折もしっかり描かれ、またひかり達部員の成長ぶりも伝わります。
そして全米チアダン選手権での圧巻のパフォーマンスへと繋がっていきます。

そのチアダンス選手権を迎える前に印象的だったのがスパルタ教師・早乙女薫子の生徒達には見せない内面の描写です。
生徒達に平然と「地獄に落ちなさい!」と言っちゃったり勝負の為には私情も温情も入れず一切妥協のない鬼コーチそのものな早乙女先生なのですが、実はこの人が一番繊細で何よりも生徒思いな教師です。
全米選手権決勝を控えた前日、早乙女の口からフォーメーションが発表されます。
それまでチームを牽引してきた彩乃からひかりにセンターを替えると告げられるのです。結果を出す為の決断なのですが、ひかりは納得出来ません。そして遂に「先生を軽蔑します!」と告げた後、コーチの大野(陽月華)からはじめて早乙女のエピソードが語られます。実は誰よりも生徒を認め、彼女達の才能を引き出す為に奔走していた早乙女先生。部員達の努力の裏には早乙女先生の苦悩と葛藤があったのですね。そんな早乙女先生の姿にワタクシボロボロと涙が止まりませんでした。

その過程があるからこそラストの全米選手権のステージがいきてくるのです。福井中央高校チアダンス部の先生や生徒達の青春の軌跡を見てきたからこそです!正直アメリカの男性アナの実況はウザいです。ただ、そんなイラッとする演出すらどうでもよく思える程躍動的なステージに胸が熱くなるでしょう。

『チア☆ダン』を見た後、私は思いました。年甲斐もなくそして陳腐な表現ですが、「青春はいいな」って。
全国の女子高生はこういう映画を見てほしいです。少女漫画原作のスウィーツ映画が悪いとは言いません。
だけどこの映画を見て、ひとつの事に青春をかけてみるのも悪くないなって気づいてほしい。イケメンと恋愛をするのを夢見るのも悪くはないですが、仲間達と大きな夢に挑戦し、それを達成させるために努力するのは素晴らしい事です。さぁ、今から夢ノートを書いて光り輝く未来を思い描いてみよう!若いのは今のうちだ!


なんて言う様になったらオッサンなのでしょうね…。