きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ギャラクシー街道

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先日は大竹しのぶさんの怪演が光る『後妻業の女』を紹介しましたが、別の意味での怪演が見所の二年前の名(迷)作・『ギャラクシー街道』を今回は取り上げたいと思います。

そもそもこの映画、三谷幸喜史上最も悪評高く興行成績としても大コケしてしまった三谷さんのキャリアにおいて黒歴史となりそうな問題作でもあります。
しかし、私自身はこの映画をそこまでひどいとは思っておらずむしろ(良い意味での)バカバカしさに満ちていて、満足度はかなり高かった作品なんですけど、私の感性がおかしいのでしょうか?

まぁとは言えコケてしまった理由なんかもよくわかります。

設定がぶっ飛び過ぎてるんですよ。
宇宙空間にあるハンバーガーショップなんて。
それでいてスターウォーズとまでは言わなくもSFならではのスケールの大きな話しかと言えばそうでもなく、本部(本店?)への通信手段が手紙であったり(アナログ過ぎるだろ?)
また、話しの内容も妻の不倫疑惑だ恋人同士の痴話喧嘩だデリヘルだ(てかなんぼ宇宙でもハンバーガーショップでデリヘル嬢呼び出すなよ・笑)
ま、何て事ない話しなんですよ。

更に言えば登場する宇宙人いちいち気持ち悪いです。
優香演じる店長(香取慎吾)の元カノの旦那(梶原善)が長い舌をべろ~ンと出して顔を舐めるシーンとか(まぁ、その後の綾瀬はるかの奇行の前振りでもありますが)T.M.Revolution西川は身体中から水滴を出す緑色の宇宙人になっていたりとか極めつけは遠藤憲一演じるリフォーム会社の男(綾瀬はるかの不倫疑惑の相手でもある)は出産までするし。
いや~、なかなかひどいですよ。
これだけのキャストに何やらせてんだよ!
なのです。(件の大竹しのぶの放電やCGで顔だけ登場の西田敏行等もですね)

…とはたけばはたく程コケ要因やツッコミ所満載なんですが、それでもやっぱり嫌いになれません。

というのも荒唐無稽でぶっ飛んだ舞台設定と登場人物であっても根底は結局三谷ワールドなんですよ。
そもそも三谷幸喜は圧倒的な演出やスクリーン映えするカメラワーク等で映画を作ってきた人ではありません。
元々舞台の人ですし、映画はあくまで舞台で生み出した世界観をより拡大的に展開しているのに過ぎません。
更に言えば実在する舞台設定の上でハチャメチャなシチュエーションを盛り込む事によって老若男女が楽しめるコメディ作品として完成させてきた人です。
有頂天ホテル』でも『マジックアワー』でも『ステキな金縛り』でもリアリティの中のノンリアルとでも言うのか売れない役者にギャングの事務所に飛び込ませたり、法廷で落武者が証言したりとそういう設定が視覚的にも聴覚的にも分かりやすかったし面白かったのです。

それがこと本作に関して言えば視覚的なビジュアルが余りにも先を行き過ぎてたとでも言うのか、その結果見る人を取り残した、或いは引かせてしまったのではないかと思います。
でもやってる事自体はこれまでとさほど変わってないんですけどね。

結論として言えば三谷幸喜や若しくは三谷さんの脚本が好きかどうかでこの作品の評価が変わってくると思います。
三谷作品の踏み絵とでも言うべきかもですね。

ところでこの映画以来、映画では三谷さんの名前を聞かなくなりました。
三谷さん、舞台もドラマも大河もいいけどリベンジの意味でもエッジの効いた喜劇映画をまた作ってくださいね。