きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝



1992年のアニメ放送開始から30周年となる「クレヨンしんちゃん」の劇場版30作目。おなじみのギャグを満載しながら繰り広げられる忍者アクションと、しんのすけの出生にまつわる謎をテーマにした物語が展開する。5年前の雨の日、野原ひろしとみさえの間に赤ちゃんが生まれた。ひろしが考えた名前のメモは濡れてほとんど読めなくなっていたが、かろうじて読めた文字から「しんのすけ」になった。それから5年の歳月が流れたある日、野原家にちよめと名乗る女性が訪れ、自分がしんのすけの本当の親だと主張する。突然のことにひろしとみさえは戸惑うが、身ひとつでやってきたちよめを追い返すわけにもいかず、ひとまず彼女を家に泊めることに。するとその夜、謎の忍者軍団が野原家を襲い、ちよめとしんのすけが連れ去られてしまう。「映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃」「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし」などを手がけてきた監督の橋本昌和、脚本のうえのきみこら、これまでのシリーズを支えてきたスタッフが集う。(映画・comより)

クレヨンしんちゃんの映画がGWに帰ってきました!ここ二年は異例の9月公開、7月公開と変則的な公開スケジュールが続いてましたが、3年振りの4月公開。コナンくんがあってしんちゃんがあってとこれがGWの興行として定着してるわけですからやっぱりこうでないとですね。

さて、そんなしんちゃんの最新作の題材は忍者です。日本では昔から扱われてきた題材ですのでこれがクレヨンしんちゃんとどの様に融合するのか見所です!

忍者を題材にした脚本、とは言えいつものしんちゃんやカスカベ防衛隊の面々を忍者にした活劇を展開するという事であればよくあるパターンと言うか割とアイデアとしては安易だと思います。しかし、ここがうまいなと思ったのは脚本です。野原家と本作に登場する忍者一家その家族の物語として仕上げた辺りはよく出来ていたし、しかもストーリーとしてかなりの盛り上がりがありました。しんちゃん出世にまつわるエピソードだってこれまであまりよく知らなかったし、もし出生時のアクシデントから実はしんちゃんが…という発想は非常によく練られていたし、面白く作られているなと感心しました。しかも、ヒロシのうっかりエピソードでチラッと登場してくるキャラクターが本作で核となるわけですが、この見せ方だって初めは何て事ないいち登場人物からの…という展開は映画としても非常に盛り上がりを意識した作りとなっていました。

また、しんのすけ達が暮らすカスカベと掟に縛られる忍者の里の対比だってよく描かれていましたね。不自由なく子供達がのびのびと遊ぶカスカベそして長い歴史の中での因習と掟が中心となる忍びの里の窮屈な暮らし。だけどそこで暮らす人達にとってはそれが当たり前で誰もこれが不自然な事だとは思っていないんですよね。

で、これって映画を見てる僕たち、つまりは今当たり前の様に日本で暮らす我々を置き換えてみても成立する話しではないかなと思いました。今、我々の生活は当たり前の様に自由を謳歌しながら好きな事を出来る環境ではあります。でもその一方では見えないルール言い換えれば社会性と呼んでもいいかもしれませんが、何かに縛られてはいないかと言う事ですよね。人の顔色や体裁を気にする、空気を読む、目上の人に逆らってはいけない等等我々の暮らしでは至る所に見えない物に縛られていたりもします。当然破ってはいけない事もあるし、もっと緩和してもいいんじゃないの?という物だってある。だけどもっと本来の自分をさらけ出してもいいんじゃないの?というメッセージを感じました。

そしてこれを最もよく現したシーンというのが子供がダダをこねるというところでした。抑圧された環境の中で育った忍者の子供は子供らしいふるまいすらも許されません。幼い頃から忍術の鍛錬に明け暮れ、同年代の子供が好むハンバーグやウィンナーも食べれない環境に身を置いています。一見するとしっかりして利発そうに見える男の子が初めてダダをこねて見せた辺りは僕もたまらず涙が出ちゃいました。よく我慢したね、頑張ったねなんてもはや親の心境ですよ(笑)

そして親と言えば親御さん目線で家族について考える作りになってるんですね。生みの親と育ての親という普遍的なテーマもそうですし、もしも自分の子供が姿形変わっても変わらぬ愛情を注げるか等等。

クレヨンしんちゃんの映画が今や子供向けといういち方向でのアプローチではなくなっているというのは、これまでにも語ってきましたし、僕なんかが今更言う事でもないでしょう。しかし、本作でもやはり強いメッセージ性や深いテーマが盛り込まれていて唸らされましたね。

そして大人向けと言えば、随所に登場してくる昭和的ギャグがたまんないんですよね。ネタバレになるのでお伝えはしませんが、元ネタわかるの40代以上だろ?というレトロギャグが笑いを誘うと同時に親世代へのアプローチにも相変わらずぬかりがないしんちゃんの製作チームに今回もしてやられました(笑)

今回も満足な内容でした!エンドロール後には来年公開の新作を予兆させる映像がチラッと流れましたが、来年も期待しながら映画を楽しみにしたいと思います!

名探偵コナン ハロウィンの花嫁

青山剛昌原作の大ヒットシリーズ「名探偵コナン」の劇場版25作目。ハロウィンシーズンの東京・渋谷。コナンたち招待客に見守られながら、警視庁の佐藤刑事と高木刑事の結婚式が執り行われていたが、そこに暴漢が乱入。佐藤を守ろうとした高木がケガを負ってしまう。高木は無事だったが、佐藤には、3年前の連続爆破事件で思いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えた。一方、同じころ、その連続爆破事件の犯人が脱獄。公安警察の降谷零(安室透)が、同期である松田を葬った因縁の相手でもある相手を追い詰める。しかし、そこへ突然現れた謎の人物によって首輪型の爆弾をつけられてしまう。爆弾解除のため安室と会ったコナンは、今は亡き警察学校時代の同期メンバー達と、正体不明の仮装爆弾犯「プラーミャ」との間で起こった過去の事件の話を聞くが……。降谷零と、すでに殉職している松田陣平、萩原研二、伊達航、諸伏景光の4人を含めた、通称「警察学校組」と呼ばれる5人がストーリーの鍵を握る。(映画・comより)

ハイ、やって来ました!毎年恒例の『劇場版名探偵コナン』。25作目の作品になりますが、思えば私。この内の半分以上は劇場鑑賞しております。もっとも一作目から見続けている人だっているでしょうから大した自慢にはなりませんが…。で、この最新作も迷う事なく公開直後に鑑賞。4月16日土曜日午後の回。MOVIX日吉津はポップコーンの購入にも長蛇の列が出来る程賑わっておりました。

さて、ここ近年のコナン君と言えば興行収入もとてつもない数字を連発しており、すっかり春の風物詩として定着した感が非常に強いです。とりわけコナンくんプラスのメインキャラをフィーチャーした形を取っており、それがより人気を高めるのに功を奏しているのかななんて思います。今年は警察学校組と呼ばれる五人のストーリーを軸にコナンらお馴染みの面々が大活躍する流れになります。

特徴としては王道のサスペンス要素はもちろんのこと、アクション・ラブストーリー等が織り込まれている点。…なんて言えばあれやこれやを入れ過ぎて散漫になるきらいがありそうですが、そこはご心配なく。110分の尺にこれらが非常にバランス良く織り込まれている為、決して飽きさせない。つまりはテンポが良いんですよね。松田刑事を中心とした過去シーンと現在をクロスするシーンも非常にスムーズだし、正直近年のコナン映画の中でも個人的にはかなり好きな方かもしれません。

それから今回に関しては原点回帰の様なコナン君大活躍という辺りが光りますね!例えば赤井一家であったり安室さんであったり怪盗キッドであったりとここ近年の作品だとその映画の核となるキャラクターに見せ場があり、コナン君がやや控え目だった印象。もちろん本作では警察学校組を中心に据えながらもしっかりとコナンの見せ場も用意してあり、全方向に向けてのアプローチがしっかりなされていた印象ですね。

それからお馴染みの阿笠博士のクイズだってあるのですが、今回は忘れた頃にぬるっと登場。このパターンも新鮮でしたね。

本作には2年以上の製作期間があったので、製作側も全く意図しなかったであろうロシアとの関わり。これは公開延期となったドラえもん映画を扱った時に現在の国際情勢と思わぬ形でリンクしてしまったとお伝えしましたが、まさかのコナンでも…というのが正直、驚いたしハロウィンの渋谷であわや爆破事故?なんて辺りが昨年のハロウィンの日の夜からしばらく続いた場当たり的なジョーカー事件とも繋がる様でこれもまた偶然とは言え、驚きを得なかったところです。

核となるキャラクターがロシア人という事で今はデリケートになりがちなんですが、本作でお伝えしたい事があるので、そこに触れていきます。少しネタバレが含まれてしまいますので、これから鑑賞予定の方は一度引き返して頂いてよろしいですか?


ハイ、よろしいでしょうか?

爆破事件を食い止めるのは日本人とロシア人なんですね。ハロウィンの渋谷での事件を戦争に置き換えて考えるとこんな見方が出来ませんか?日本とロシアが戦争を食い止める為に奔走していると。

ウクライナの人もロシアの民間人もどちらも平和を願っている誰だって戦争なんかしたくない。早く終わってほしい。平和を誰もが願っている中でロシア人達が爆発を止める姿に胸を打たれた。

復讐に燃える人物だって復讐を誓うが故の動機はある。だけど暴力や破壊的衝動は何も生まないという事を暗に伝えているんですよね。

僕は今回の内容は『ドラえもん』の時がそうだった様に非常にタイムリーなテーマだと思いました。

それから人の死生観について見せてるのも印象的でした。松田刑事は3年前に殉職してこの世にはいない。しかし、降谷さん・警察学校組・佐藤刑事と松田とゆかりの深い面々の思い出で生き続けるそんなそれぞれの松田刑事のドラマを綺麗にまとめながら見せてくれていましたね。

また、BUMP OF CHICKENの主題歌『クロノスタシス』について。実はコナンのイメージと合わなくない?なんて意見がありまして、僕も確かに!なんて思っていたんですよ。ところが実際に映画で耳にすると印象が変わりましたね。なるほど曲だけ聴くといつものBUMPなんだけど、作品にこれ程寄り添った楽曲もないかなと感じました。これは是非映画を見た上で感じて頂きたいところです!

と、この様に見所満載な名探偵コナンの最新作。『ドラえもん』に続いて思わぬ形でロシア・ウクライナ情勢にリンクしてしまいましたが、こんな時だからこそ見て頂きたいですね!


ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密

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大ヒットファンタジーハリー・ポッター」シリーズの前日譚で、魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描く「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第3弾。魔法動物を愛するシャイでおっちょこちょいな魔法使いニュートが、恩師のアルバス・ダンブルドアや魔法使いの仲間たち、そして人間(マグル)と寄せ集めのチームを結成し、史上最悪の黒い魔法使いグリンデルバルドに立ち向かう。その中で、ダンブルドアと彼の一族に隠された秘密が明らかになる。ホグワーツ城ホグズミード村など、「ハリー・ポッター」シリーズでおなじみの場所も多数登場。原作者J・K・ローリングが引き続き自ら脚本を手がけ、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」以降の全シリーズ作品を手がけるデビッド・イェーツ監督がメガホンをとる。ニュート役のエディ・レッドメイン、若き日のダンブルドアを演じるジュード・ロウほか、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドル、エズラ・ミラー、カラム・ターナーら「ファンタビ」シリーズおなじみのキャストも集結。グリンデルバルド役は前作までのジョニー・デップに代わり、デンマークの名優マッツ・ミケルセンが新たに演じる。(映画・comより)

ハリーポッターシリーズのスピンオフとして制作されたファンタビこと『ファンタスティック・ビースト』全5作の内、遂に三作目が公開となりました!実を言うとこのワタクシ、『ハリーポッター』シリーズって見てないんですね。しかし、このファンタビに関しては2016年の1作目『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』続く2018年の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』とこれまで見て参りました。実はハリーポッターシリーズではあるものの、ファンタビに関しては別の世界線で描かれているので全く問題はありません。

監督は前作に引き続き、デヴィッド・イェーツ。『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』以降全ての作品を手掛けてきた監督。原作者のJ.K.ローリングと共に長きに渡ってシリーズの製作を手掛けてきたシリーズには欠かせない方ではありますが、前作の「黒い魔法使い」の評価が低く、本作の製作では脚本の見直し等かなりの時間を要したとの事。今後の続投に関しては、本作の評判次第という事も公言されてる様ですが、ここまで来たら最後まで手掛けて欲しいところですね。

さて、そんな本作は果たして如何なものでしょうか。特段魔法シリーズの大ファンなわけでもないですが、公開後、最初の日曜日。MOVIX日吉津にて字幕版を鑑賞して参りました。

1作目から見ていると登場するキャラクターにも馴染みがあるものでして、ニュート以下仲間のキャラクターと久しぶりに再会したかの様な感覚。そして今回もまた、魔法を操る際のCGやVFXもやっぱり見応えを感じます。魔法という共通点で言えばマーベルのドクターストレンジにも言えますが、ハリウッド映画はホントグラフィックの使い方がうまいなぁなんて関心しちゃいます。当たり前なんですが、僕らは実際に魔法を使う人に会った事なんてないし、無論魔法だって見た事がない。だけどもし本当に魔法というものが存在していたら…考えたらワクワクしちゃうかもしれませんが、あたかも目の前で魔法を目撃したら…そんな擬似体験を映画館だからこその表現で楽しませてくれるわけですね。デヴィッド・イェーツ監督の手腕が正に光ります!

いや〜、いい映画でした〜!

というわけで今回の「きんこんのシネマ放題」は『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』を紹介しました、以上「きんこんのシネマ放題」のコーナーでした!

…ってダメ?

いやね〜、この作品を心から楽しんだという方、それから『ファンタビ』ファンの皆さん、ごめんなさい!ここから正直辛口です!

実を言うとワタクシ、今回の『ファンタビ』楽しめなかったんですよ〜。何故?それを整理してお伝えしていきますね。

まず、グリンデルバルドよ、何故キャスト変わる問題ね。今回のマッツ・ミケルセンが悪いわけではないし、彼は彼で存在感を見せつける素晴らしい演技をされていたと思いますよ。でもね〜、せっかく前作でジョニーデップのグリンデルバルドが確立したというのに残念なんですよ。風格漂う悪役としての魅力で言えばやはりジョニーデップにどうしても軍配が上がってしまうし、僕個人の印象としてはやはりジョニーデップに続投していて欲しかった!

次にダンブルドアの秘密というサブタイトルを付けて煽りに煽った割には引き伸ばし過ぎなきらいが否めないし、肝心のその秘密というのも「えっ?それで?」と突っ込んじゃいそうなもの。前述の様に製作にあたって何度も脚本の手直ししたわけですよ。その結果としてはあまりにも薄味で正直楽しめなかったし、何日かしたら忘れてしまいそうな内容なんですよね。壮大なネタバレになりますから流石に内容にまでは触れませんが、それが僕が感じた事ですね。

で、これは本作だけに限らず最近のハリウッド映画でありがちなんですが、二時間半だとか三時間の様な長尺が当たり前になってきてますよね。それ自体が悪いとは思いませんが、尺を使う割には内容がさほど印象に残らない様な作品が多い気がするんですよね。むしろ二時間以下の短めの尺に内容を凝縮してくれた方が個人的には良いと思うんですけどね。

なんてダラダラ文句を並べて締めるのは後味悪いので最後に良い点をひとつ。ジェイコブはやっぱり憎めない(笑)今回はそんなジェイコブも遂に…!なんてシーンが用意されてます。ジェイコブに心が和んだそんなきんこんでございました!


CODA コーダ あいのうた

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家族の中でただひとり耳の聞こえる少女の勇気が、家族やさまざまな問題を力に変えていく姿を描いたヒューマンドラマ。2014年製作のフランス映画「エール!」のリメイク。海の町でやさしい両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。テレビシリーズ「ロック&キー」などで注目の集まるエミリア・ジョーンズがルビー役を演じ、「愛は静けさの中に」のオスカー女優マーリー・マトリンら、実際に聴覚障害のある俳優たちがルビーの家族を演じた。監督は「タルーラ 彼女たちの事情」のシアン・ヘダー。タイトルの「CODA(コーダ)」は、「Children of Deaf Adults=“耳の聴こえない両親に育てられた子ども”」のこと。2022年・第94回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞(トロイ・コッツァー)、脚色賞の3部門にノミネートされ、同3部門を受賞。ルビーの父親フランク役を務めたトロイ・コッツァーは、男性のろう者の俳優で初のオスカー受賞者になった。(映画・comより)

『ドライブ・マイ・カー』の国際長編映画賞受賞、そして大きな波紋を呼んだウィルスミスの一件。今年のアカデミー賞は普段映画を見ない層にも話題になった出来後があったわけですが、オスカー受賞となったなった作品を忘れちゃいけません。これが本作『コーダ   あいのうた』ですよ。日本での公開は今年の1月。ほとんどの劇場で上映が終了していたのですが、今回の受賞で再上映&全国300館を超える劇場で拡大上映。それを考えるとアカデミー効果の大きさが改めてわかりますね。

さて、ワタクシ。ミーハーなワタクシ。公開直後は全く見る作品の選択肢にも入っていなかったのですが、今回の公開拡大を機に4月のファーストデイを利用してT-JOY出雲にて鑑賞。春休み中とあって『シング』や『ドラえもん』を見に来たキッズや『余命10年』を見に来た若者を横目に劇場へ。見事に年齢層高めのしかも比較的一人客が多かった印象。長期休暇中にこういう客層だと心なしか安心感があります。

泣ける映画が良い映画だ!なんて陳腐な事を言うつもりは毛頭ありません。でもね、この作品は感受性の強い人程心に刺さるであろうし、僕も並びで見ていたお一人様のお姉様も感極まっていたんでしょうね。後半になればなる程涙をすする声が僕の耳にも入ってきました。

ろう者の中で一人健常者として家族の通訳となる一人の少女・ルビー。なんて言うと「障がいを題材にしたお涙頂戴系ね、」なんて冷ややかな事を言う御仁が居そうなんですが、まぁ待って待って。

確かに聴覚障がいを題材にはしています。でもこの作品ってそれだけではないんですよ。

自分以外の家族が皆ろう者という事で彼女は学校でも奇異な目で見られたり、心ない事を言われたり、はたまた彼女のボーイフレンドになりそうな男の子に学校で彼女の両親の◯◯をネタにされたりと辛い日々を過ごします。一方で漁業で生計を立てる家族に交じり自らも漁に出たり時には家族の通訳として会合に参加したり。思春期の女の子にとってはなかなかハードな日々です。

そんな彼女が歌を通して自らが成長し、そして人を幸せにしていくハートフルなストーリー。更には大切な家族との別れ。見えて来ましたよね。そうなんです。コーダであるルビーと家族のお話しなんです。

我々から見れば彼女は特殊な環境に身を置いているかもしれない。だけど彼女にとっての日常はそれであり、両親と兄は彼女にとっては大切な家族なんです。

しかし、彼女が歌と出会う事でその活動と家族の時間のバランスを取らないといけなくなる。彼女に指導する熱心な音楽教師とのレッスンだって遅刻になってしまわざるを得ない状況だし、事情を知らない先生からすれば自らが買ってるのに自主練もしないし、常に遅刻をする時間にルーズな子という見方になってしまう。そこに悩まされる彼女の葛藤がこのレッスンシーンと家でのシーンではっきりと写し出されています。

僕の好きな映画で『くちびるに歌を』という作品があります。新垣結衣演じる講師が中学の合唱部に指導をするのですが、その中で生徒の一人が知的障がいを持つ兄の世話をする為、練習に参加出来ないというシーンがあるんですね。まさしくこのルビーという少女の置かれた境遇というのがそれで障がい者と健常者の家族が何かに打ち込む事の難しさをはっきりと伝えてくれています。

それでも歌に打ち込み成長していく彼女の発表会のシーンは非常に心を打つものがありました。

両親と兄も彼女の発表会にはもちろん足を運びます。しかし、彼らにはルビーの歌声が聞こえません。繊細で透き通った歌声が会場を包みます。そして、ろう者である彼らの視点からの会場の様子が写し出されます。ルビーの歌声に聴き入る観客達、涙を流す人だっている。でも確実に人の心を捉えている娘・妹の姿は彼らの視界には入っているわけであり、彼らもまたその光景に感動を覚えるのです。

僕はこのシーンこそが本作最大のハイライトシーンだと思いますね!劇場内を包む静寂の時間、およそ二分はあったでしょうか。この場面を見た人はきっと強く胸を撃ち抜かれた事でしょう。少なくとも僕はそうでした。

そしてラストに待ち受ける名シーン。それは親離れ・子離れという普遍的なテーマです。これまでルビーと家族の歩みを見てきたからこそ強く心が揺り動かされる。それを決してくどくならずにナチュラルに見せてくれるからより味わい深い作りになってましたね。

それから本作は音楽を大々的に扱った作品でありながら、音楽の自己主張が控えめ。でもそれがかえって良かった。ストーリーの邪魔をしない程度の劇版にルビーの歌だって決してエモーショナルで過剰ではない。それでいて芯の強さは感じる歌声なんですよね。また、劇中の重要場面で使用される楽曲だって良いトコついてくるんだよね〜!選曲センスが光ります!

とこの様に見所満載な作品でした!アカデミー作品賞受賞も納得の素晴らしい出来!これを見ない手はありません!

是非ご覧下さい!

SING シング ネクストステージ

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ミニオンズ」のイルミネーション・エンターテインメントが手がけ、誰もが知る名曲やヒットソングを満載して描いたミュージカルコメディアニメ「SING シング」の続編。コアラのバスター・ムーンが再建に成功した「ニュー・ムーン・シアター」は地元で人気となり、連日満席の活気にあふれていた。しかし、バスターには、世界的なエンタテインメントの中心地レッド・ショア・シティにあるクリスタル・タワー・シアターで新しいショーを披露するという、さらなる夢があった。そのためには、クリスタル・エンターテインメント社の冷酷な経営者ジミーのオーディションに通過しなければならない。どうすればジミーの気を引くことができるか考えたバスターと仲間たちは、伝説のロック歌手で、今は隠遁生活を送っているクレイ・キャロウェイを自分たちのショーに出演させることを思いつくが……。声優にはマシュー・マコノヒースカーレット・ヨハンソンタロン・エガートンリース・ウィザースプーンら前作同様の豪華キャストが集い、伝説のロック歌手、ライオンのクレイ役は「U2」のボノが務めた。日本語吹き替え版もバスター役の内村光良をはじめ、坂本真綾斎藤司MISIA長澤まさみ大橋卓弥大地真央田中真弓と変わらず、クレイ役で「B'z」の稲葉浩志が声優初挑戦した。(映画・comより)

『怪盗グルー』、『ミニオンズ』、『ペット』等数々の大ヒット作を生み出してきたイルミネーション作品。中でもズバリ音楽を題材にし、日本でも興行収入51億円の大ヒットとなった『シング/SING』という作品には特別な感情を抱くのが私です。2017年の公開当時はフランクシナトラにビートルズ、クイーンといったレジェンドからカーリー・レイ・ジェプセンテイラー・スウィフト、レディーガガにきゃりーぱみゅぱみゅと幅広な選曲とそしてラストシーンの各キャラクターの歌唱シーンに圧倒!すっかりどハマりし、計5回劇場鑑賞しました。何なら「好きな映画は?」と聞かれたら真っ先に『シング』の名前を挙げる程好きな作品です。

そんな『シング』の続編とあれば見ないわけにはいかない!という事で公開直後の週末見て参りました!

前作は日々の生活でくすぶっていた各キャラクターがその殻を破り、圧巻のパフォーマンスを展開する辺りにカタルシスが生まれたのですが、果たして本作ではどういう作りとなっているのでしょうか?

ディズニーで言うならば『ズートピア』よろしく動物達が意志を持ち、行動をする。この世界線はもちろん本作でも変わる事なく登場するキャラクターは全て動物で統一されています。コアラのバスター・ムーン、ゴリラのジョニー、山アザラシのアッシュに像のミーナ、豚のロジータとグンター。彼らの姿は前作ですっかりお馴染みになったのですが、本作では彼らは更に活躍の場を広げるべく大都会の大きな劇場へ出ます。これも全てバスター・ムーンの野心によるものが当然大きいのですが、しかしこれが必ずしもうまくいくとは限らないわけですね。地元で人気のニュー・ムーン・シアターの噂を聞きつけてやってきた犬のスカウトマンスーキーからの評価も低いし、オーディション会場である劇場でも門前払いをされてしまう。この辺りに技芸に優れた人(本作では動物だけど・笑)に突きつけられる残酷さをはっきり写し出しているんですよね。地元で人気が高くて技芸に対する評価が高い人が居たとしてもそれが都会の、言い換えればメジャーなプロの世界で通用するとは限らない。しかし、転んでもタダでは起きないのがバスター・ムーン率いるお馴染みの面々。ビリーアイリッシュの『バッドガイ』をBGMに巧みに潜入に成功。その後の展開がイルミネーション作品ならではのドタバタぶりで決して飽きさせません。

サラッとビリーアイリッシュの近年の大ヒット曲が出てきましたが、本作の使用曲もやはりスゴイ!ザ・ウィークエンド、DNCE、BTS、テイラースウィフトにアリアナ・グランデエアロスミス、カミラ・カベロもあったし何なら冒頭からプリンスの『レッツ・ゴー・クレイジー』でガッツリハートを鷲掴みにされる。割と長めに使用されるものもあれば1シーンにフレーズが少し乗っかるというものまで相変わらず多彩な選曲です。中でもU2に関してはボノが声優を担当しているとあって良い場面で使われているんですよね。更には本作の為にU2が新曲を書き下ろしてもいるし。

本当は字幕版でも見たいところですが、近辺の劇場が吹替版のみの上映なので字幕はソフト化されてからのお楽しみとしてでも吹替版でも十分楽しめるのは前作も本作も変わりません!

MISIA、大橋卓也と言った本職のアーティストから長澤まさみの歌のうまさも改めて感じる事が出来るし、本作から登場のアイナ・ジ・エンドだって良かった!そして何と言ってもB'zの稲葉浩志さんですよね!稲葉さんの声を声優として映画で耳にする事自体貴重なのに歌声もバッチリ聴かせてくれる、音楽好きからするとこの贅沢な時間を心から良い知れる事が出来ますよ!ハイライトは山アザラシのアッシュと伝説のロックシンガークレイ・キャロウェイのデュエット。つまりは稲葉さんと長澤まさみさんがデュエットをしてるってところなんですよね。曲はU2の名曲!そこが何と言っても本作のハイライトシーンではないでしょうか。

後、歌唱はしませんが、個人的に好きなキャラクターとしてはバスター・ムーンの秘書であるワニのミス・クローリー。前作でも彼女のマヌケさが作品に良い感じのスパイスとして機能してたんですが、本作でも健在です。相変わらずなキャラではありますが、本作では頼れる現場監督っぷりを披露して実はこの人…じゃなかったワニかなりデキるタイプなんじゃないの?と思っちゃったくらい。

それから前作に出ていたネズミのマイク更にバスターの親友の羊のエディが居ないのが淋しかったですね。マイクって憎たらしいヤツなんだけど同時に音楽家としてはすごいストイック。才能と人間性は比例しないを地でいく様なキャラクターで僕は好きだったんですよ。一方、羊のエディはニートで金持ちなボンボンだったんだけどバスターの良き相談相手みたいな位置付けでバスターにとっても重要なキャラだと思うんですけどね、、ちなみにおばあちゃんのナナ・ヌードルマンは本作ではすっかりバスターのご意見番になってました。

尚、本作は前作での歌うというポイントだけではなく、ダンスにミュージカル更には前作にはなかった悪役キャラも登場する等よりエンターテイメントの精度が高まっていたと思います。

お伝えした様に前作は5回劇場鑑賞した私ですが、本作もやはりリピート必至かなと思っています。今回は何回見るのかな?

という事で配信やソフトで見るのも良いけど間違いなく映画館で見ないと損をするタイプの作品だと断言します!

強くオススメします!


THE BATMAN ザ・バットマン

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クリストファー・ノーランが手がけた「ダークナイト」トリロジーなどで知られる人気キャラクターのバットマンを主役に描くサスペンスアクション。青年ブルース・ウェインバットマンになろうとしていく姿と、社会に蔓延する嘘を暴いていく知能犯リドラーによってブルースの人間としての本性がむき出しにされていく様を描く。両親を殺された過去を持つ青年ブルースは復讐を誓い、夜になると黒いマスクで素顔を隠し、犯罪者を見つけては力でねじ伏せる「バットマン」となった。ブルースがバットマンとして悪と対峙するようになって2年目になったある日、権力者を標的とした連続殺人事件が発生。史上最狂の知能犯リドラーが犯人として名乗りを上げる。リドラーは犯行の際、必ず「なぞなぞ」を残し、警察やブルースを挑発する。やがて権力者たちの陰謀やブルースにまつわる過去、ブルースの亡き父が犯した罪が暴かれていく。「TENET テネット」のロバート・パティンソンが新たにブルース・ウェインバットマンを演じ、「猿の惑星:新世紀ライジング)」「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」のマット・リーブス監督がメガホンをとった。(映画・comより)

バットマンの映画って何回目?…なんて言いつつもやはり気になるそんなワタクシ。休日を利用してMOVIX日吉津にて鑑賞。上映時間三時間というのは『ドライブ・マイ・カー』で耐性はあるものの、万全の体勢で鑑賞に臨みたいと入場開始時間から本編が始まるまでに2回程トイレに行きましたよ(笑)

なんてどうでもいい話しはさておき、本編について踏み込んでいきましょう。クリストファー・ノーランが手掛けた『ダークナイト』三部作の完結から早10年バットマンの新シリーズのスタートです。ただ、その間にもDCEUのユニバース作として2016年には『バットマン VS スーパーマン』という作品もありました。て事は、マーベルやDCにありがちな何かの関連作品を見なければ理解出来ないのか?答えはノーです。2019年の『ジョーカー』もそうでしたが、『バットマン』誕生そこから二年後のバットマンブルース・ウェインの活躍を描いており、他のDCのヒーローも登場しないし、単体の作品として十分楽しむ事が出来ます。その辺りは正直自分としても有り難かったです。マーベルやDCのユニバースに少々しんどくなっているというのが本音でして、作品として万人に勧めにくいんですよね…。個人的に好きなスパイダーマンだって昔は単体でも楽しめたんですが、mcuに組み込まれてからは完全にユニバースの線上で展開されてますからね。まぁ、それでも最新作の『ノー・ウェイ・ホーム』は面白かったですが。

で、『バットマン』の方に話しを戻しますが、比較的初心者にも分かりやすい言い換えれば敷居が低くなったのは良いのですが、そうなってくるとコアな人向けには難しくなってくるのも事実です。というのがリブートとしての宿命として、その誕生からの語り直しが必要になります。これが初見だと良いですが、マニアになれば有名なエピソードだけに「こんなのもう知ってるよ」となりがち。そこでマット・リーブスが選択した時期が絶妙でして、バットマン誕生もサラッと写しつつ、バットマンになってから二年後をピックアップしてる点。まだ若く未熟な点もあり、迷いや葛藤も描き出し、更には揺らぎも多分に見えてくる。それでいてバットマンをやって二年後なりの経験値だってちゃんと伝わってくるんですよね。

更にこのバットマンを翻弄する悪役のリドリーが敵でありながら実は二年目バットマンへの成長の糧に繋がる様な宿題をしっかり投げかけてもきたり。それこそが彼が出すなぞなぞの数々なんですよね。なぞなぞ好きってお前は小学生か?ってツッコミはさておき(笑)彼の出すなぞなぞの中に本作を象徴するものがあるので、お伝えしますね。

「信じれば残酷になり、否定すれば凶暴になるものはな〜んだ?」

答えは作品の中で!…という事でここでは触れませんけど、このなぞなぞの答えとその謎に立ち向かうバットマンの姿が本作を見る上では非常に大きなポイントであるという事はお伝えしておきましょう。

…とこの様に出題されてくるリドリーのなぞなぞが非常に哲学的に本作には絡んできます。

さて、バットマン。このなぞなぞに絡む話しではありますが、自らの理念に苦しまされる描写が非常に印象深く描かれます。自分の出自や辛いトラウマ、実は浅はかで視野狭窄で彼の抱く正義と現実のそれとの乖離に苦しめられる描写が非常にのしかかります。そしてそれを見抜き、嘲笑うかの如く立ちはだかるリドリー。その描写は非常に重くそれでいて哲学的。

しかし、マット・リーブス監督はそれを抽象的にではなく具体的に更にはエンターテイメントとしての仕事を放棄する事なく探偵モノを見る様なクライム・サスペンス要素と手に汗握る爆破シーンや派手なカーチェイス等のアクション要素をうまく結びつけて作り上げました。だから重くて多少難解ではあっても決して飽きないし、作品世界に没入する事が出来る。次作への期待値が否応なく高まる様な作りとなっていました。

また、後のキャットウーマンになるであろう女性セリーヌとのロマンスもあります。それでも決して甘い雰囲気にはならず、重厚感のある作品世界は全くぶれません。緊張感が180分間に渡り持続されていくんですよね。でもそれでも疲れさせないのはスゴいところですよ。複雑で根深い犯罪形態をゴッサムシティという架空の街で雨と黒を基調にしたダークな色彩で世界を作り上げる。人によっては暗いという印象が前面に出がちなんでしょうが、僕は三時間があっと言う間に感じられました。歴代の『バットマン』映画の中でもかなり好きな方です。でも一方ではこんな事も思います。

バットマン』っていつからこんな重い作りになったんだろう?昔のバットマンってもっとキャッチーだった様な…。まぁ、言わずもがなですが、『ダークナイト』シリーズからではありますけど、昔の様な明るいテイストのバットマンもまた見たい気もします。



映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)2021

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国民的アニメ「ドラえもん」の長編映画41作目。1985年に公開されたシリーズ6作目「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」のリメイク。夏休みのある日、のび太が拾った小さなロケットの中から、手のひらサイズの宇宙人パピが現れる。パピは、宇宙の彼方の小さな星、ピリカ星の大統領で、反乱軍から逃れて地球にやってきたという。スモールライトで自分たちも小さくなり、パピと一緒に時間を過ごすのび太ドラえもんたち。しかし、パピを追って地球にやってきた宇宙戦艦が、パピを捕らえるためのび太たちにも攻撃を仕掛けてくる。責任を感じたパピは、ひとり反乱軍に立ち向かおうとするが……。監督は「ケロロ軍曹」劇場版シリーズなどを手がけ、「映画ドラえもん のび太の月面探査記」では演出を担当した山口晋。脚本に「さよなら、ティラノ」「サイダーのように言葉が湧き上がる」「交響詩篇エウレカセブン」などアニメ作品を多数手がける佐藤大。(映画・comより)

『映画ドラえもん』が春休みに帰って来ました!というのも2020年はコロナ禍にて通常3月公開が公開延期。結果、『のび太の新恐竜』は異例の8月公開となり、更には昨年も3月に緊急事態宣言と重なり、結果一年の延期そしてようやくこの3月5日に封切りとあいなりました。なので『ドラえもん』が春休み映画として公開されるのは2019年の『のび太の月面探査記』以来、3年振りとなるわけです。髭男の『Universe』も遂に『ドラえもん』映画の主題歌としての役割を果たす時が来ましたね!

で、一年の延期を受けての本作は1985年に公開された『のび太の宇宙小戦争』のリメイク。それに合わせるかの様にアマゾンプライムビデオで過去40作のドラえもん映画が配信となったのでまずは大山のぶ代時代のオリジナル更には子供の頃に読んでた『大長編ドラえもん』にも目を通した上、リメイク版を鑑賞しました。

平日のMOVIX日吉津。春休みが始まる前の3月7日に鑑賞しましたが、割と大人単独のお客さんも居ましたよ。

水田わさびドラえもんに代わり、これまでリメイク版とオリジナル脚本がバランスよく公開されてきました。リメイク版で言えば80年代のドラえもん映画初期作を中心に手掛けられてきました。オリジナル版を下敷きとしてその都度現代的な形でブラッシュアップされ、子供のみならず大人達のハートもキャッチしてきました。

そして本作はこれまでのリメイク版の頂点に達したかの如く映画としてのクオリティが高まっていたのが僕の印象としてはあります。というのが白熱するバトルシーン等がSFアニメとしての精度の高さを誇示するかの様なスケールでした!小さな惑星を舞台に繰り広げるスペイシーな世界観は決して子供向けであると侮ってはいけない完成度。『ガンダム』等で育った男の子的ハートをこの上なくキャッチしたものだったのではないでしょうか。

また、オリジナルと比べると改変ポイントがこれまで以上に多かったのが僕の印象。例えばスネ夫の自宅の庭で作るジオラマセットにはドラえもんも参加してるし、オリジナルでは後から加入する出来杉君が初めから参加している。オリジナルではジャイアンスネ夫から除け者にされたのび太ドラえもんに泣きついて秘密道具を使ったジオラマを作成、その際静香ちゃんを誘うのだが、のび太の目指すべき作品と全く異なり、意見の違いに翻弄されるなんてシーンもありましたが、そちらもなく更にはウサギのぬいぐるみにまたがってスネ夫組の撮影に写り込むパピというくだりもなかった更にはこれは時代の違いを最も表すものとして静香ちゃんの入浴シーンの生々しさでしょうかね。牛乳風呂の下りはありましたけどね(笑)更には一人のレジスタンスがギターを取り出し、武田鉄矢の名曲『少年期』を歌うのもなかったです。また、オリジナルには居なかったパピの姉も登場するしロコロコの饒舌多弁振りはオリジナルには劣ってしまう。

そういう点で言えばオリジナルに思い入れの強い人だと不満を漏らす人が多いのも事実でしょうか。特に『少年期』に関してはわからなくもないですね。

ただ、これらの改変点に関して言えば現代的な解釈で全く異なる『小宇宙戦争』像を作りたいという制作側の心意気を感じますし、何なら『少年期』が別の挿入歌になる辺りだって全くタイプの違うアーティストを起用するのではなく、武田鉄矢さんのイメージを崩し過ぎない程度のフォーキーな人選、ビリーバンバンにしていたのは案外悪くなかったという印象です。

さて、この作品。注目して頂きたいのがスネ夫の存在なんですよね。ひょんな事から巻き込まれた宇宙戦争において彼は他のメンバーと明らかに違う心情を吐露し、遂には置かれた局面から逃げ出すシーンがあります。でもこれってスネ夫が臆病なわけじゃなくて人間としていや、10歳の子供として当たり前なんですよね。秘密道具を駆使するドラえもん、普段はパッとしないけどいざと言う時には勇気を持って立ち向かうのび太、粗暴なイメージはあるけど仲間想いで熱い男のジャイアン、女子力高いのにアクティブに戦う静香ちゃんと比べるとスネ夫は至ってノーマルな思考を持った少年なんです。だからこそ戦争なんて怖いに決まってるし、逃げ出すのは当然。この辺り見ると『ONE PIECE』のウソップとキャラ的な位置付けが近いんですよね。そんなスネ夫の姿は自分と重ね合わせて応援したくなります。

それから本作は皮肉な事に世界的な激変を迎える今の状況にリアルな内容。それはロシアのウクライナ侵攻にそれなんですよね。ピリカ星で起こっている独裁者の侵略に連日ニュースで報道される情景が重なってしまうのは無理のない話しです。あくまで西側諸国の視点による戦争の捉え方ではあるものの、独裁者を倒すもの。それは民が団結し、行動を起こす事。ドラえもん達は彼らの為にきっかけを作る役割を果たします。現実の世界でも戦争は絶対にあってはならないと私も思いますし、この映画の様に勧善懲悪を理想的な形で実現させるには難しい問題もある事はわかっています。決してプロパガンダ的映画なのではありませんが、奇しくもこのタイミングで本作の公開が重なってしまった事は多くの人が本作を目に止め、意識を高めた上で行動を起こしていく契機になれば、なんて事を思いました。

恐らく本作公開が今回の世界的有事と重ならなければこの様な捉え方はしなかったかもしれませんが、今の状況と本作の内容があまりにもリンクしていると感じた所です。

親子で見て戦争について話し合うのも勿論、大人一人での鑑賞もきっと刺さるものがあるかと思います。

是非ご覧下さい!