きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

余命10年

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SNSを中心に反響を呼んだ小坂流加の同名恋愛小説を、小松菜奈と坂口健太郎の主演、「新聞記者」の藤井道人監督がメガホンで映画化。数万人に1人という不治の病に冒され余命10年を宣告された20歳の茉莉は、生きることに執着しないよう、恋だけはしないことを心に決めていた。ところがある日、地元の同窓会で和人と出会い恋に落ちたことで、彼女の最後の10年は大きく変わっていく。脚本は「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の岡田惠和と「凛 りん」の渡邉真子。「君の名は。」「天気の子」など新海誠監督のアニメーション映画で音楽を手がけてきた人気ロックバンドの「RADWIMPS」が、実写映画で初めて劇伴音楽を担当。(映画・comより)

余命幾ばくもないヒロインによる悲恋モノ。日本の映画ではこのタイプの作品はよく作られ、大ヒットする傾向があります。古くは『世界の中心で愛を叫ぶ』、『余命一ヶ月の花嫁』、『君の膵臓をたべたい』、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』、『雪の華』等等枚挙にいとまがありません。ただ、こういった作品がヒットしたのはコロナ禍前。コロナ禍更には不穏な国際情勢の今、果たして悲恋モノは受けるのか?と公開前は余計なお世話ながらその動向を見守っていたのがこの私です。恋愛映画という視点で言えば『花束みたいな恋をした』は確かに大ヒットした。でもあれは難病を患って云々ではなくどこにでも居そうなごくごく一般的なカップルの日常を扱った作品であり、落涙前提の感度ストーリーではないですからね。

ところがですよ、こんな私のいらぬ老婆心なんぞどこ吹く風で現在大ヒット中!更には評判も良いとあって私も見て参りました。3月9日の松江東宝5。

平日ではありましたが、若い女性を中心に割と入っていましたよ。

さて、私はさして気にしませんが、このテのタイプの映画を僕みたいなオッサンの一人鑑賞はハードルが高いのでは?と思われそう。そう、正直言うと僕もいわゆるお涙頂戴的な恋愛映画は苦手な部類なんですよ。如何にも制作側の泣かせよう泣かせようというあざとさが垣間見られてしまった時点で萎えちゃうんですよね。ただ、本作に関して言えば監督で見ないわけにはいかないと思いました。そう、藤井道人監督ですね。

2019年の『新聞記者』、そして昨年の『ヤクザと家族 The Family』ですね。いずれも社会派映画としてかなり踏み込んだ内容となっていて非常に見応えがありました。事実、映画ファンからの高い評価も受けています。

そんな藤井監督と恋愛映画というのが結びつかないイメージがありましたが、監督としては違うタイプの作品を作っていきたいと原作の小説に惚れ込み、撮影期間一年を条件に本作のオファーを受けたそうです。藤井監督が手掛けた恋愛映画というのが個人的に惹かれた最大のポイントです。

さて、あなたは余命一年と宣告されたら何をしますか?悔いのない様に好きな物を食べたり、旅行に出掛けたり、家族や友人・恋人との時間を大切にしたりとにかくこの世に未練を残さない様な時間の使い方をするかもしれません。

ところがどうでしょう?余命10年であれば?10年という期間は過ぎてしまえばあっという間かもしれませんが、これから先の10年を想像すると全く見当がつかないかもしれません。

本作のヒロインである小松菜奈演じる茉莉はこの10年間を生き抜き、天に召されていきます。この期間を時系列毎にその時々の世相も絡めながら坂口健太郎演じる和人との日々を写し出していきます。自らの死が分かっているからこそ恋愛には慎重だった茉莉と人生に悲観し自ら命を絶つ事も考えていた和人が茉莉の存在によって人生を肯定的に生き、男としても成長していく過程がストーリーの軸となっています。

死という名の終着点が見える中で恋愛から距離を置き続けていた茉莉の変化を見る事で我々の感情が揺り動かされる事は確かです。そして恋が如何に人に与える影響が強いかという事も。

それにしても藤井監督の作品は映像が本当に美しい!撮影は藤井監督の大学時代からの盟友・今村圭佑さんが手掛けられているのですが、桜の春・夏の海に花火等季節の光景もさる事ながら『新聞記者』や『ヤクザと家族』で多用されていた俯瞰ショットも非常に作品に説得力を持たせている。例えば和人が自室から人生に悲観して飛び降りるシーン、病と闘いながら就職活動に臨むも結果に恵まれない茉莉を上空から捉えたシーン。これを俯瞰的に写し出す事で彼らの置かれた状況を観客に強く訴えかけている事に成功しています。これは藤井組ならではの持ち味でもあるので今後の作品でも継承して頂きたいところです。

と、ここまでは藤井監督へのリスペクトも含めて好意的にお伝えして参りました。きっとこの作品で多くの人が涙を流した事でしょうし、RADWIMPSの劇版も相まって高いクオリティの商業映画になったのは間違いありません。

しかし、個人的には100%の満足感が得られたかというと実はそこまででもなかったんですよ。というのが10年間を二時間の尺で収める難しさもあるのでしょうが、一年一年が駆け足になってしまい、ダイジェスト感が否めなかった点でしょうか。そもそもなんですが、恋愛に奥手な和人と恋愛に消極的な茉莉。そんな二人ですから、恋愛に発展するまでが長いんですよ。原作の改変になるかもですが、そこは出会いから恋愛として成立するまでをテンポよく展開し、恋愛パートからをじっくり追っていった方がより恋愛映画としての精度が高まっていたのではないかと思うんですよね。それからラストのシーンで茉莉が和人と歩むべきだった人生を夢に見るくだり。ここは本作においてのハイライトシーンだと思うんですが、この辺りは多少過剰であってもいいからドラマチックな劇版で煽るなり伏線的にその夢を和人に語るシーンなりがあった方がより涙腺を刺激する作りになっていたんじゃないかななんて僕は思いましたね。

何度も言う様に本作は既に大ヒットとなりそうだし、決して駄作ではありません。だけど個人的には『新聞記者』や『ヤクザと家族』の様な泥臭さのある社会派映画の方が藤井監督向きかななんて思いました。ま、あくまで僕の印象としてのお話しなので皆さんはまた違った感想をお持ちになるかと思います。

感情に訴えかける良作であった事は保証します!

是非ご覧下さい!

ナイル殺人事件

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ミステリーの女王アガサ・クリスティによる名作「ナイルに死す」を、同じくクリスティ原作の「オリエント急行殺人事件」を手がけたケネス・ブラナーの監督・製作・主演で映画化。エジプトのナイル川をめぐる豪華客船の中で、美しき大富豪の娘リネットが何者かに殺害される事件が発生。容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員だった。名探偵エルキュール・ポアロは“灰色の脳細胞”を働かせて事件の真相に迫っていくが、この事件がこれまで数々の難事件を解決してきたポアロの人生をも大きく変えることになる。ベルギー訛りの英語と口ひげがトレードマークの探偵ポアロ役を、前作「オリエント急行殺人事件」同様にブラナーが自ら演じた。そのほか、第一の被害者であるリネット役に「ワンダーウーマン」のガル・ギャドット、その夫サイモン役に「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマーなど豪華キャストが集結。(映画・comより)

日本でも人気の高いジャンルのひとつ、それはミステリー。かつては『古畑任三郎』に「じっちゃんの何かけて!」なんて流行語もありましたし、毎年公開される劇場版は興行収入80億以上は固いキラーコンテンツ名探偵コナン』等。更には『相棒』も『科捜研の女』も20年を超える長寿シリーズ。更にここ近年は謎解きブーム。このコーナーでも扱った『あなたの番です』の劇場版がヒットしたのも記憶に新しいですね。

この様にミステリーというジャンルは日本人とも非常に相性が良い。皆ストーリーを追いながら謎を解いていくのが大好きなんですね。

で、本作『ナイル殺人事件』の前作にあたる『オリエント急行殺人事件』も2017年の年末に公開され、正月映画としてヒットとなりました。アガサ・クリスティが書いた推理小説の古典的作品をリメイク。豪華俳優陣が扮する容疑者の存在も光るものがありました。

そして長らく延期に次ぐ演技で公開が待たれていた『ナイル殺人事件』が遂に公開となりました。『オリエント急行殺人事件』に続いて本作の製作を手掛けたのは俳優として監督として絶好調のケネス・ブラナー。もちろん主人公・ポアロも彼が演じています。舞台出身ならではの演出で妖しげなしかしその変人ぽさと完璧主義な人物像が何ともハマり役です。最近では2020年の『テネット/TENET』で演じた悪役が印象的ではありますが、今やポアロ役がすっかり板についた感があります。

さて、前作『オリエント急行殺人事件』でも思いましたが、風景の撮影が魅力的です。『オリエント』では列車の走る雪原を捕らえたアングルがあたかも旅をさせてくれるかの様なショットで個人的にも大好きでした。一転して本作の舞台はエジプトとあり、ピラミッドや砂漠更にはクルージングをするナイル川の光景等ひとつひとつに観光映画かの様な見せ方をしてくれます。そのあたりですが、鑑賞者に対してのストーリー以外の映像美を楽しんでもらおうと言う監督なりの気遣いが感じられ、非常に気持ちの良いものでした。

そんな中でどの様に事件が起こり、ポアロの推理劇が展開されるのか期待値も上がります。そんな中に出てくる豪華キャスト陣。ガル・ガドットアーミー・ハマー等のハリウッドの第一線で活躍する面々に若手からベテランまでのキャストが華やかに集結します。前作同様、ハリウッドの一流の布陣が作品をガッチリと固めてくれます。とりわけガル・ガドットの存在は目を奪われましたね。そう、あのワンダーウーマンですよ!当然ワンダーウーマンでもあのセクシーな容貌が目を引くわけですが、本作ではまたガラッと変わり、セレブリティなドレスをまといより妖艶に存在感を放つ。オジサンすっかり虜になっちゃいました(笑)また、1937年が舞台となっており、その時代ならではのモダンなジャズが起用され、作品を彩ってくれていましたね。

と、この様にストーリーを盛り上げる為の御膳立てはバッチリ!肝心のストーリーはどうだったのか?

結論から言いますね。豪華客船のクルージング中に起こる連続殺人。凡庸なミステリーに終始するのではなく、愛するが故に犯す過ちというテーマを取り入れる事でドラマチックにそしてスリリングに展開される内容は面白かったです。

ネタバレになるので詳細は控えますが、本作の核な部分って愛と殺意なんですね。男女の恋愛感情のもつれからやがて殺人にまで発展するというのは決してない話しではありません。元の交際相手から新たな恋人を作りやがて結婚へ。一見すると結婚したカップルは幸せに満ちている様に見える。だけどその裏では傷つく人も居て100人居て100人全てに祝福される結婚なんてもしかしたらないのかもしれません。好きだった相手が結婚してしまった…そんな絶望感がやがて殺意に変わり…恐ろしいけど人と人の間であれば決して非現実的な話しなんかじゃないんですよね。愛と狂気は隣り合わせにある事を提示させながら普遍的なテーマでもある事を我々は胸に刻まれていくのです。更には昨今の状況も踏まえての多様性に関する問題提起も盛り込まれていました。

と、この様にテーマの着眼点は非常に良かった一方、不満点もあります。全編通して決して退屈はしなかった。正直言うと『オリエント急行殺人事件』の時はテンポが合わず、劇中に睡魔に襲われてうとうとしてしまいました。それに比べると本作はストーリーのテンポは良かったし、前述の様に音楽ありエジプトの風景もよしと見所が充実していて決して飽きさせない作りではありました。ただね〜…。事件が発生するまでが長いんですよね。何なら途中までサスペンスである事を忘れそうなくらいでしたもん。更に事件が起こってからの伏線回収が駆け足になってしまい、やや強引である感が否めませんでしたよ。全体的には楽しめていた分そこが勿体なかったですね。

まぁ、最後は不満を挙げましたが、サスペンス好きな方にはオススメします!

ドライブ・マイ・カー

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村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、「偶然と想像」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した濱口竜介監督・脚本により映画化。舞台俳優で演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく。主人公・家福を西島秀俊、ヒロインのみさきを三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音を霧島れいかがそれぞれ演じる。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画では初となる脚本賞を受賞したほか、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞。また、2022年・第94回アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞にノミネートされたほか、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせて4部門でノミネートとなる快挙を達成。第79回ゴールデングローブ賞の最優秀非英語映画賞受賞や、アジア人男性初の全米批評家協会賞主演男優賞受賞など、全米の各映画賞でも大きく注目を集めた。(映画・comより)

世界で勝負する日本映画!これは是が非でも見なければ!ミーハーな映画ファンである私は遅ればせながらではありますが、遂にこの話題の作品『ドライブ・マイ・カー』を鑑賞しました。レンタルや配信も始まってはいますが、当然ながらと劇場鑑賞。T-JOY出雲で平日にゆったりと…と思いきや想像以上に入っていましたね。さすがアカデミーノミネート効果といったところ。上映時間が三時間という事で念の為入口付近の座席をキープしましたが、私の膀胱はこの長尺を耐え抜き、一度も席を立つ事なく、鑑賞する事が出来ました。それどころかこれ程三時間が早く感じた事はなかったですね。では僭越ながら私なりに語らせて頂きます。

世界的に評価を受けた日本映画という文脈で言えば是枝監督の『万引き家族』が記憶に新しいところでしょう。社会問題を取り扱いながらストーリー自体は比較的分かりやすく誰が見ても理解出来る様な内容でした。では一方で『ドライブ・マイ・カー』という作品は?これが内容としては非常に難解で決して万人向けではない。だけど見た人の心には確実に何かを残してくれる。そんな作品でした。

村上春樹の短編集を繋ぎ、更にオリジナルの脚本も加えて出来上がったのが本作。その結果、前述の様な長尺になったのですが、その時間の一分一秒たりとも全く無駄がないというのが率直な印象です。ひとつひとつの描写が非常に美しくまたストーリーだって文学的。これは原作が村上春樹だからという事ではなく、濱口竜介監督が写し出す世界線が決して派手なものではなく、だけど奥深い映画的説得力が反映されていた故にであると思います。東京・広島・北海道と3つの舞台を設け、その場所場所での人間ドラマと風景を重ね合わせてストーリーが展開されるのですが、一方では舞台劇そして車内での会話等を本作のコアな場面として物語を紡いでいきます。そしてそれがやがて西島秀俊演じる家福と三浦透子演じるみさきの心をクロスさせていくまでの過程が実に自然にかつ見ている側を引き込んでいきます。正直、僕は三浦透子さんに関しては『天気の子』でRADWIMPSと共演していた繊細で透き通った声が印象的な歌い手さんといったイメージが強く、女優としての彼女に馴染みがなかったのですが、本作でガッツリと心を掴まれましたね。

また、冒頭のシーンから40分経過して初めて現れる本作のタイトル。ここまでタイトルバックという概念すら忘れるくらいストーリーに没頭していたので、ハッと目が覚める様な感覚(あ、決して眠かったわけではないですよ!)。この手法はこれまでの映画でまず見た事がないのでそこにも驚きましたね。

随所随所に出てくる意識をしなければ見落としてしまいがちなメタファーが考察欲を掻き立ててくれますし、映画的なエンターテイメント性をこの上なく高めてくれる。何なら誰かと一緒に見に行ったら見終わった後に語り合いたいたくなるかと思います。その意味ではわかりやすくはない。だけど謎を多く残すからこそこの映画の魅力を高めてくれてる様な気がします。

また、本作においては性的表現が多分に含まれていますが、いわゆる性行為という人間の本能的行為の中で生まれる会話、家福と霧島れいか演じる妻の音が冒頭で語るのは舞台の脚本なのですが、これがストーリーで重要な意味を持ちます。更には岡田将生演じる俳優・高槻という人物のプレイボーイが故の性的苦悩が決して生々しく卑猥なものではなく、重要なアイテムとして機能していたのが印象的でした。と、こういった性を扱う描写ですが、これが実にスマートなんですよね。

それからロードムービーとしてのポイントとして、家福とみさきの移動シーンは押さえておきたいところ。これは撮影方法にも注目です。濱口監督は全体的にカメラを無駄に動かさないだけにカット割りも実にスマート。例えば長いトンネル内での家福とみさきの会話シーン。フロントガラス越しに前を写すというのが割とありがちな気がするのですが、後ろの景色を捕らえながら車が走行してるんですね。それが二人の先を暗示するものとしてこの手法が取られています。

それからタバコですよね。当初は車内では禁煙と強いていた家福がみさきと心を通わせる内に遂には解禁。サンルーフから二人の手とタバコが飛び出すシーンなんて本作のハイライトシーンだと思いますが、これにもしっかりと意味があるんですよね。

とまだまだ語り尽くせない映画『ドライブ・マイ・カー』は間違いないなく名作です!海外での評価も納得!劇中劇の戯曲と物語のシンクロ性、9つの言語が入り乱れる多国籍劇である必要性、妻・音の語る脚本が本作で持つ意味、車の移動と共に生まれる二人の心理的機微等等人によって見る視点も変わるでしょうが、間違いなく言える事。それは…

見た後、誰かに話さずにはいられないという事でしょうか。

強くオススメします!

ウエスト・サイド・ストーリー

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スティーブン・スピルバーグ監督が、1961年にも映画化された名作ブロードウェイミュージカル「ウエスト・サイド物語」を再び映画化。1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドには、夢や成功を求めて世界中から多くの移民が集まっていた。社会の分断の中で差別や貧困に直面した若者たちは同胞の仲間と集団をつくり、各グループは対立しあう。特にポーランド系移民の「ジェッツ」とプエルトリコ系移民の「シャークス」は激しく敵対していた。そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニーは、シャークスのリーダーの妹マリアと運命的な恋に落ちる。ふたりの禁断の愛は、多くの人々の運命を変えていく。「ベイビー・ドライバー」のアンセル・エルゴートがトニー、オーディションで約3万人の中から選ばれた新星レイチェル・ゼグラーがマリアを演じ、61年版でアニタ役を演じたリタ・モレノも出演。「リンカーン」のトニー・クシュナーが脚本、現代アメリカのダンス界を牽引するジャスティン・ペックが振付を担当。2022年・第94回アカデミー賞では作品、監督賞ほか計7部門にノミネートされた。(映画・comより)

映画史に残る数々の名作を生んできたスティーブン・スピルバーグ監督。普段映画を見ない人であっても知らないという人はまず居ないのではないでしょうか。そんなスピルバーグが手掛けたブロードウェイ・ミュージカルの名作『ウエスト・サイド・ストーリー』は果たして?私は首を長くして公開を待っておりました。それだけに一度昨年末公開予定が更に延期となってしまった際は落胆しましたよ。

そして遂に2022年2月11日に公開となり、見て参りました。尚、本作鑑賞にあたっては事前にU-NEXTで1961年版を視聴。ストーリー等等あらかた頭に入れて鑑賞に臨みました。

『ウエスト・サイド・ストーリー』の誕生自体は古く1957年との事。その時代のアメリカへのプエルトリコ系とポーランド系移民更にはネイティブ・アメリカンとのぶつかり合い等を描いた作品です。そしてこれはあくまで私の勝手なイメージであり、コアなファンからはお叱りを受けそうな表現ではありますが、日本で言えば『クローズ』最近で言えば『東京リベンジャーズ』の様な不良達のぶつかり合い、更に人種問題というセンシティブな視点で言えば在日韓国人を扱った『パッチギ!』に近いのかもしれません。更に対抗勢力側の異性と恋に落ちる辺りはクドカンの『池袋ウエストゲートパーク』っぽいし、何だったらタイトル的にも『池袋〜』って『ウエストサイド〜』のオマージュなんじゃないかと思っていたりもします。

ま、雑に言えば元祖アウトロー系であり、そこに優美な名曲の数々が乗っかるミュージカル更には一筋縄ではいかない『ロミオとジュリエット』の様な悲恋が組合さって…という感じでしょうか、ホント雑な説明ですいません(笑)

で内容に触れていきますが、これは61年版を見たからこそかもしれませんが、とにかくスクリーンいっぱいに繰り広げられる歌唱&ダンスのシーンは圧巻です。とりわけトニーとマリアが出会うきっかけでもあるダンスパーティーは見応え満載であり、これは映画館でこそ味わって頂きたいと思います。それから名曲『アメリカ』の歌唱シーンでしょうか。この曲に関しては歌詞に注目して頂きたいところ。男女それぞれのアメリカという土地への明確な違いが打ち出されておりまして、この時代の移民のアメリカ観を知る上で非常にリアルな感情を知る事が出来ます。

また、スピルバーグならではのアップデートが61年版を見た上で鑑賞するとはっきり分かります。それは細かい設定であり、背景更には登場人物に至るまで。これこそがスピルバーグの新しいスタイルの『ウエスト・サイド・ストーリー』の提唱つまりはただ同じ物の焼き直しをするのではなく、スピルバーグアイデンティティを明確に打ち出しつつ、時代に即した形で作り上げた改変という事でしょう。実際、ジェンダーの問題を意識してか61年版のとある女性キャラクターの扱いも変わっていましたし、61年版では1幕目と2幕目を表す様に比較的長い時間、静止画の上に劇版を流すという場面がありました。僕はあれが実際の舞台を見ている様な気がして好きなんですが、スピルバーグ版ではありません。60年前に比べ人の感情の速度も変わり、ストーリーの先を急ぐ現代人には合わないからなのかなと勝手に思ったり。また、61年版の冒頭でNYブロードウェイの街並みを上空から捉えるシーンがありましたが、そちらもなかった。個人的にこれは入れて欲しかったですね。60年の変化を感じたかったのもあるし。

さて、この『ウエスト・サイド・ストーリー』は移民の問題をテーマにしています。他者を受け入れない分断という普遍的なテーマですよね。1950年代〜1960年代という時代から見て果たして現代はどうなのか?スピルバーグが本作を手掛けた最大のテーマはここなのではないでしょうか?舞台となっているアメリカだって表面的な人種差別はないと謳いつつも移民の問題は依然として続く。

本作の移民達は貧困にあえぐ故郷を捨て、自由の国・アメリカへ渡るも白人達から白い目を向けられ、扱いの酷さや差別を受けてきました。前述の『アメリカ』を始め、様々な楽曲で彼らの境遇や心情を表しています。アルコール・ドラッグ・売春それが日常的な中にある境遇で非行に走るのは当然かもしれないし、例え彼らが正しくとも信用して耳を貸してもらう事もなく差別と暴力の連鎖は続く。これがどれだけ人を苦しめるかですよね。それを踏まえた上でスピルバーグは本作を手掛けるにあたってあの時代と何も変わっていない現代へ問題提起をしたかったのでは?と僕は感じました。

と、重い内容ばかりではありません。スピルバーグがこれまで手掛けてきた作品同様人を楽しませる為のエンターテイメント性はもちろん本作でも健在です!ミュージカルパート、ロマンスパートからアクションパートまで。やはりこの人は偉大だ!

余韻と共に気持ち良く劇場を後にしました。

ゴーストバスターズ/アフター・ライフ

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幽霊退治に挑む冴えない科学者たちの奮闘をユーモラスに描き、1980年代に世界的ブームを巻き起こした「ゴーストバスターズ」「ゴーストバスターズ2」の続編。前2作の監督アイバン・ライトマンの息子で、「JUNO ジュノ」などで知られるジェイソン・ライトマンがメガホンをとり、ゴーストバスターズのメンバーの孫娘の活躍を描く。少女フィービーは母や兄とともに、祖父が遺した田舎の古い屋敷に引っ越して来る。この街では30年間にわたり、原因不明の地震が頻発していた。ある日フィービーは地下研究室でハイテク装備の数々を発見し、祖父がかつてニューヨークを救ったゴーストバスターズの一員だったことを知る。そんな中、フィービーは床下にあった装置「ゴーストトラップ」を誤って開封してしまう。すると不気味な緑色の光が解き放たれ、さらなる異変が街を襲いはじめる。フィービーを「gifted ギフテッド」のマッケンナ・グレイス、兄を「IT イット」シリーズのフィン・ウルフハードが演じる(映画・comより)

この所続く80年代や90年代に大ヒットした映画のリメイクや続編。ビッグタイトルだけに往年の映画ファンを取り込み易いとか狙いはあるのでしょうが、逆説的に言えば新たなシリーズ作を生み出しにくいのかなというのも危惧したり。何だかんだでヒットするのはMCU等のアメコミ系だったり…なんて事も考えます。

ただ、今回に関しては鑑賞前からかなり期待値は高かったですよ。というのも何を隠そう私、子供の頃はあまり映画を見なかったんですね。だけどこの『ゴーストバスターズ』と『インディジョーンズ』は好きだったんですよ。洋画であってもストーリーは至ってシンプル。何よりマシュマロマンが可愛かったのがポイントかもしれません。ファミコンのソフトもあったもんね、内容は全く覚えてないけど(笑)

さて、30数年振りに帰ってきた『ゴーストバスターズ』。子供の頃見ていたとは言え、内容がうろ覚えだっりするもので、ならばと本作鑑賞前に過去作をチェック。アマプラで『ゴーストバスターズ』(1984)、『ゴーストバスターズ2』(1989)をまとめて視聴の上、劇場へ。尚、2016年には女性版の『ゴーストバスターズ』というリブートがありますが、そちらは本作には絡んでこないという事で見ておりません。

新作のポイントを整理してお伝えします。

まずはかつての『ゴーストバスターズ』メンバーの孫の代という事。たしかに30年経過し、時代も変わり、ゴーストバスターズを取り巻く環境だって大きく変わったわけです。劇中にこの30年の変遷がサラッと触れられているのですが、メンバーだって社会的な立ち位置から何まで変化する。そして孫がいても何らおかしくはないんですよ。そんな孫が祖父のDNAを受け継ぎゴースト達と戦うシーンは旧作を見ていたらまるで自分の孫を見る様な目線で彼らを追う事になるでしょう。そんな本作のメガホンを取ったのが旧作の監督アイバン・ライトマンの子息ジェイソン・ライトマン。かつて父が撮り、世界的な大ヒットとなったシリーズを正に父から継承し、手掛けたわけです。それだけに登場するキャラクターへの強い投入感が説得力を生んでるんですよね。つまり本作は30年越しの継承の物語であるとお伝えしておきます。

次にそんなライトマンジュニアが手掛けた『ゴーストバスターズ』が父をオマージュしながら、新たな息吹を吹き込み、魅力を高めていた事。80年代に全世界で流行した同シリーズ。現代的にブラッシュアップさせるという点ではかなりの苦悩があったと思うんですよ。かつてのイメージを崩してもいけないし、自分の色をつけ過ぎてもいけない。結果的に選択したのがコミカルでキャッチーだった父の『ゴーストバスターズ』に対して割とシリアス目にしたところ。オールドファンが見た時にもしかしたら多少の戸惑いはあるかもですが、僕は良い方向に向かったと思います。その答えが次です。

前半部。昔の『ゴーストバスターズ』の様なキャッチーさは陰を潜め、割と重厚な作りになっていました。しかし、それが後半になると全く変わってくる。懐かしいアイテムや車にスーツ更にはマシュマロマンも出るし、遂にかつてのメンバーにもコンタクト。そして身近な人がゴーストに憑依されるとなると『ゴーストバスターズ』の世界そのものなんですね。そんな所へ現れたすっかりお爺ちゃんになったかつてのメンバー達。2014年に他界したハロルド・ライミスを除くメンバー勢揃いはオールドファンは感涙モノでは?それでいてハロルド・ライミスが演じていたイゴンも現れるんです。そして生前わだかまりのあった娘や成長した孫更には確執のあった元メンバーとの交流。ここは泣きました。というのがストーリー内の話しだけでなく、キャスト同士のサイドストーリーもピーターを演じたビル・マーレイとハロルド・ライミスには不仲説が長らくありました。ハロルドが亡くなる直前に和解はしたそうですが、彼への想いがビル・マーレイの演技からも伝わってくる様でこみ上げるものがありました。そう、本作最大の見所ポイント。それは旧作へのリスペクトそしてハロルド・ライミスへの言葉には表せられない無上の愛と敬意と感謝なんですね!正直、『ゴーストバスターズ』でここまで泣くとは思いませんでした。ラストにかけては涙が止まりませんでしたね。

更にエンドロールも見逃せない!旧作を知っていたら間違いなく楽しめる仕掛け的な映像が織り込まれています。更には次回作も?尚、エンドテーマは勿論あの曲です。しかもちゃんと原曲のままというのが嬉しい!いや、現代風にEDM調にするとかラップを入れるとかありそうじゃない?それをせず、オリジナルを使う辺り「わかってるな〜!」と感心しちゃいました。

そんなこんなで個人的には大満足です!

尚、本作鑑賞に当たっては過去作鑑賞は必須とお伝えします!ストーリー単体では所見でも理解は出来ますが、細かい設定とか随所随所の小ネタ等は過去作を見ていないと楽しめないでしょう。

その上での鑑賞を強くオススメします!

ノイズ

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筒井哲也の同名コミックを、「デスノート」シリーズで共演した藤原竜也松山ケンイチの主演で実写映画化したサスペンス。時代に取り残され過疎化に苦しむ孤島・猪狩島。島の青年・泉圭太が生産を始めた黒イチジクが高く評価されたことで、島には地方創生推進特別交付金5億円の支給がほぼ決まり、島民たちに希望の兆しが見えていた。しかし、小御坂睦雄という男の登場によって、島の平和な日常が一変する。小御坂の不審な言動に違和感を覚えた圭太と幼なじみの猟師・田辺純、新米警察官の守屋真一郎の3人は小御坂を追い詰めていくが、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう。3人はこの殺人を隠すことを決意するが、実は小御坂は元受刑者のサイコキラーであり、小御坂の足取りを追って警察がやってきたことで、静かな島は騒然とする。泉圭太役を藤原、田辺純役を松山がそれぞれ演じる。監督は「ヴァイヴレータ」の廣木隆一。(映画・comより)

デスノート』の二人が15年振りに共演!…とここが大きな話題になっていますが、予告編で見た時からゾワゾワッと怖そうだけど面白そうと私はかなり期待してました。そして2月2日。FMいずもでの担当番組を終えた後、T-JOY出雲へ車を走らせ鑑賞。昨年末から始まった水曜のサービスデーの恩恵を受け、割安で見て来ましたよ!

さて、『デスノート』のキラこと藤原竜也さんとLこと松山ケンイチさん。かつてはライバルだった二人が今回は殺人事件の共犯者に。更にこの二人に加え、神木隆之介さんが加わり、スリリングなクライムサスペンスが展開されるわけです。他藤原竜也演じる和泉圭太の妻を演じるのは黒木華さん更には永瀬正敏さん、柄本明さん、鶴田真由さん、余貴美子さん等等がキャストに名を連ねます。

まず、冒頭。穏やかな島のシーンから始まります。島中に流れる有線放送とイチジク畑、島民皆が顔見知りという小さな島ならではののどかな光景が画面に広がります。しかし、これがやがてノイズの挿入により、均衡が大きく崩れていきます。このノイズというのが一人の青年であり、件の三人が殺めてしまう人物。

この何が恐ろしいかって当該の三人の生活のみならずあらゆる場面でその醜悪な部分が浮き彫りになってしまうんですよね。それは島民の生活、島民達のパーソナルな部分から町長の心の闇等。軽い犯罪ひとつ起きなかった平和でのんびりした島を一夜にして一変させてしまうその過程があまりに恐ろしくリアリティたっぷりに映し出されていました。

また、主要な三人の心理的描写も三者三様であり、見応えがありました。まず、和圭太。彼の育てるイチジクはテレビ等でも取り上げられ、猪狩島の特産品として注目を集めます。そして圭太は島の希望の光。誰もが彼に期待し、島では常に話題の中心。そんな彼は警察の捜査が入っても毅然とした振る舞い。刑事にご自慢のイチジクを差し出す余裕ぶりです。続いて松山ケンイチ演じる田辺純。圭太とは幼馴染で大人になっても近所に住む飲み友達として交友。彼もまた、警察なんて何のその。二人とも事件の首謀者とは思えない程の落ち着きっぷりですよ。まるでかつての『デスノート』でのキラとLそのものです。

ただ、神木くんの演じた真一郎は違うんですよね。彼が他の二人と立場が違うのは警察官である事。子供の頃から島の駐在所で治安を守るのに憧れ、先輩の駐在さんからの引き継ぎでも重要な事を言われてたんですよ。そんな彼だからこその使命感や正義感がある。しかし、その一方では殺人を犯した友達を守る為に事件に加担もしてしまう。良心の呵責と正義感のせめぎ合いが彼を追い詰めていく過程が神木くんの真に迫る演技で見ている人の感情も揺さぶられていきます。だからこそ彼が最後に取る行動に胸が詰まる思いを誰もがするのではないでしょうか。

他、本作の面白さと言えばサスペンスのスリリングさをカメラの長回しによってうまく引き出していた点でしょうか。肝心なシーンでは思わず引き込まれ、先の展開を焦ってしまうもの。しかし、これが撮影技法が攻を奏してよりスリリングによりインパクトを与える展開に引きずり込んでいき映画としての面白さをより高めていたと思います。

また、ところどころでのちょっとしたシーンも良かったです。割と前半の方ですが、圭太が妻と娘と一緒におにぎりを食べるシーンがあるんですね。口に物をほおばりながら喋るのはお行儀が良くないし、今の時勢だとナイーブになるかもしれませんが、おにぎりを口に会話をするシーンがあるんですよ。喋ってるニュアンスは伝わるけど言語化すると何言ってるのかわからないんですね。これは物語としてはよろしくないのかもしれませんが、個人的には好印象な場面です。作業をした後に妻と娘がおにぎりを持って来てくれたら嬉しいもんですよ。思わず会話をしたくなるというもの。だけど何言ってるかわからないなんてのは当たり前の話しであってこのシーンはその意味ではめちゃ自然でリアリティがあるんですよ。ストーリーとして綺麗にまとめたいのであればこういうシーンは入れないと思うんですが、敢えて挿入するという辺りに監督のこだわりかななんて思いましたね。

また、圭太が育てるイチジクに関してですが、中を割ると見た目がグロテスク。これを強調する場面もありましたが、実はこのイチジクこそが本作のストーリー全体の核となってる部分でして、一見平和そうな島。そこで起こった殺人事件・排他的な島民・数年前に世間を騒がせた某議員を思わせるパワハラ町長・利権を得る為には平然と他人を売る同町長の醜悪さ等等本作で描かれる暗部こそまさにこのイチジクが象徴している様です。

そしてラスト。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、『コンフィデンスマンJP』を思わせる様なトリッキーなシーンも惹きつけられました。ただ、正直言うと読めた所もあるんですけどね…。

とまだまだ語りたい所はありますが、お時間です。非常に見応えのある面白い作品でした!

オススメです!

コンフィデンスマンJP 英雄編

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長澤まさみ東出昌大小日向文世が共演した人気テレビドラマ「コンフィデンスマンJP」の劇場版第3作。かつて悪しき富豪たちから美術品を騙し取り、貧しい人々に分け与えた「ツチノコ」という名の英雄がいた。それ以来、当代随一の腕を持つコンフィデンスマンが受け継いできた「ツチノコ」の称号をかけ、ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人がついに激突することに。地中海に浮かぶマルタ島の首都で、街全体が世界遺産に登録されているバレッタへやって来た彼らは、マフィアが所有する幻の古代ギリシャ彫刻「踊るビーナス」を手に入れるべく、それぞれの方法でターゲットに接近。そんな彼らに、警察やインターポールの捜査の手が迫る。江口洋介広末涼子らシリーズでおなじみのキャストに加え、松重豊瀬戸康史真木よう子城田優生田絵梨花らが新たに参戦。 

(映画・comより)

ハイ、今回のオサカナ発表ど〜ん!という事ですっかり人気シリーズとなった『コンフィデンスマンJP』の最新作でございます。これまでロマンス編(2019)、『プリンセス編』(2020)と製作され、いずれも大ヒット!そして今回の三作目『英雄編』へと繋がるわけですが、僕はこの『コンフィデンスマンJP』が大好きなんですね!元々ドラマで放映されていた時は見ていなかったのですが、劇場版1作目公開時に予習を兼ねてドラマを全て視聴。毎回繰り広げられるコンゲームのシナリオの面白さやうっかり騙されてしまう映像的な仕掛けや豪華俳優陣による演技合戦等等見所がとにかく尽きずそれを機にすっかり大ファンになりました!

そんな僕ですから今回の新作も公開直後に鑑賞。既に二回程見ております。

さて、先にお伝えした様にこの『コンフィデンスマンJP』シリーズと言えばとにかくシナリオが秀逸で毎回飽きさせないストーリー展開に没入しちゃうわけですが、それはご多分に漏れず本作でも然り。英雄編にちなんだ名言から挿入され、ダー子・ボクちゃん・リチャードのお馴染みの三人の前口上ももちろん健在。それと同時にタイトルが大きく表示されると本作への高揚する期待感が一気に高まっていきます!

そして本作では伝説の義賊・ツチノコの称号を巡る騙し合いが繰り広げられるわけですが、本作最大の特徴を挙げるとすれば、遂に三人のガチンコのぶつかり合いが展開されるというところ。これまで手を組み合いながら巨悪を上手く騙し、化けの皮を剥がしてきた言わば仲間?と思われてきたダー子達。彼らがそれぞれの手法でもって互いに騙し合い踊るビーナスを手中に収めんと白熱するコンゲームはとにかく楽しい!ダー子はダー子のボクちゃんはボクちゃんのリチャードはリチャードのといった具合にそれぞれが戦略を立てて豪華俳優陣が演じる子猫ちゃんと共謀するバトルは決して飽きさせる事はありません!

また、これまで語られる事がなかった三人のルーツを垣間見るシーンも盛り込まれており、これは『コンフィデンスマンJP』シリーズが好きな人であれば思わず食い入って見る事になるのではないでしょうか。

そして本作の面白ポイントとしては江口洋介演じる赤星のポジションなんですよ!これまで悪役として存在感を放ってきた赤星が本作では意外な形で登場!まぁ、ラストはいつものオヤクソクでしたけどね(笑)それにしてもこの赤星なんですが、とあるシーンのブチギレる辺りは迫力がありましたね!青筋立てながらの憤怒の表情は普段の江口洋介さんからは想像出来ないくらいの殺気に満ちたものがありましたね!個人的には本作で最も印象に残った場面でもありました。

また、本作で初登場の豪華な面々がすっかり『コンフィデンスマンJP』の住人として活き活きした演技をされてましたね。瀬戸康史さん、松重豊さん、真木よう子さん、城田優さん、生田絵梨花さん等等しかも揃って当初のイメージから後半ではガラッと覆る様な見ているこちらを上手く騙して下さいました。

そしてこの『コンフィデンスJP』ならではのウリとなってるのが、この騙しポイントなんですよね。これは毎回そうなんですが、劇中の至る所に伏線を張り巡らせてラストでそれを結びつけて一気に畳みかける様に鮮やかに騙してくれる。本作でもワタクシ全てにおいて騙されっぱなしでございました(笑)

そしてその上でのオススメの鑑賞方法をお伝えしますね。先程私、二回鑑賞したとお伝えしました。そう、それなんです!まず一回目は全体を通して敢えて何も考えずに見る。ストーリーの流れを理解する為の一回目鑑賞ですね。そして二回目は一回目に見た内容を脳内で整理しながら、ストーリーを追う。「あっ、ここでこの流れが繋がるのね〜」なんて冷静に鑑賞してそして種明かしがされた後の爽快感。これは一回目と全く違う心象が残るんですよ!この鑑賞方法強く推奨します!

さて、『コンフィデンスJP』の劇場版では三浦春馬さんと竹内結子さんもご出演されていました。もちろん本作にはお二人の姿はありません。しかし、三浦春馬さんが演じていたジェシー竹内結子さんが演じていたスターの存在はあるんですよ。姿は見せませんが、『コンフィデンスJP』の世界では二人は今も世界のどこかに生息してコンフィデンスしてるんです。正直、この設定泣けましたね。今はこの世に居ないお二人の存在をしっかり残して劇中に上手く存在しているかの様に描いている。お二人への想いがこのシーンだけでめっちゃ伝わりましたよ。

更なる続編も期待したいところなんですが、古沢良太さんが来年は大河ドラマに当たられる事でしょうし、後は敢えて触れませんが、諸問題がありそうなので当面はない…もしかしたら今回がラストになるかもしれませんよね。でもいつかまたダー子達をスクリーンで見る事があれば次回も華麗に騙してほしいものですね!長澤まさみさんがコメディエンヌとして大化けする契機にもなった同シリーズに敬意を込めて今回は終了です。

シリーズが大好きな人もこれまでシリーズに触れた事のない人も楽しめる事間違いなし!

オススメです!