きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

るろうに剣心 最終章/The Beginning

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和月伸宏の人気コミックを佐藤健主演&大友啓史監督で実写映画化し大ヒットを記録した時代劇アクション「るろうに剣心」のシリーズ完結編となる2部作の第2弾。原作では緋村剣心が過去を語る形式で物語が進む「追憶編」をベースに、剣心が不殺の誓いを立てるに至るまでの物語と、彼の頬に刻まれた十字傷の謎に迫る。剣心に復讐するべく東京を総攻撃した上海マフィアの頭目・縁との壮絶な戦い。その理由は、剣心が「人斬り抜刀斎」と恐れられていた幕末へとさかのぼり、剣心が自らの手で斬殺してしまった妻・雪代巴の存在、そして十字傷の謎へと繋がっていく。かつての剣心の妻・巴を有村架純、シリーズ史上最恐の敵となる縁を新田真剣佑がそれぞれ演じる。緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優斎藤一役の江口洋介らおなじみのキャストも再結集。
(映画.comより)

はい、まずははじめにお詫びを申し上げます。
5月に『るろうに剣心最終章/The Final』を取り上げた時の僕のレビューにおいて、同作において次作にあたる『The Beginning』の映像使い過ぎじゃね?
なんて事を生意気にも指摘しました。
でね~、この『Beginning』を鑑賞した今。
私の心境は変わりました。
「あっ、あれで良かったのね」と。
要するに『The Final』で使ったBeginning映像は全く無駄な物じゃなかったんですよ。
むしろあれがあったからこそよりこのBeginningが際立つと言うかそれどころかBeginningを鑑賞する上で非常に効果的な意味があったんだなと本作を見て感じました。
『The Final』を見た直後の俺に言いたい!
「まぁまぁ、気持ちは分かるが、6月まで様子を見ろ」と。

で、本作は全ての『るろうに剣心』が始まる前の前日譚。
かつて人斬り抜刀斎と恐れられた剣心は何故人を守る為の刀へと切り替えたのかまた彼を象徴する頬に刻まれた十字傷の謎に迫るというもの。
時代も明治ではなく、幕末。
当然出会う前なので神谷薫等お馴染みの面々は一切登場しません。
で、最終章と銘打った二部作での上映の二作目ではあるものの、一作目の『The Final』とは全く別のストーリー。
なので本作『The beginning』を見てから『The Final』を見たとしてもストーリーの理解という面では全く問題がありません。
この辺りの鑑賞の順番云々に関しては各人にお任せはするものの、オススメの鑑賞方法がありますので、後述しますね。

さて、本作の内容に触れていきましょう。
まずは主人公・緋村剣心
実はこの剣心ですが、これまでの『るろ剣』シリーズと同一人物ではあるものの、全くキャラクターは別物と言っていいかもしれません。
というのも、明治に入って神谷道場にたどり着いてからの剣心というのは戦闘中こそはクールな表情が印象的ではあるものの、それ以外は飄々としていてともすればちょっぴりおとぼけな面もある憎めないキャラクター。
しかし、幕末期の剣心は「人斬り抜刀斎」という異名からも察する様にまさに冷徹そのもの。
明治期に薫達の前で見せる穏やかな表情はないんですよ。
とにかく寡黙でピリピリしている。
その佇まいからは殺気が溢れ、近づき難い雰囲気。
更に年齢も若いので、役者としての真価が問われる様なところもあるのですが、そこはさすがの佐藤健さん。
終始険しい表情で人を容赦なく切り刻んでいく鬼の形相は悪化の一言でした。
とにかく血が飛び散り阿鼻叫喚の光景が広がる中での佐藤健のこの佇まいがこの狂気をより息を飲むものにしていましたね。

そして巴役の有村架純さん。
うつむき加減の表情と儚げな雰囲気。
既に『The Final』でそのお姿を拝見していたとは言え、彼女が大々的に登場するこの『The Beginning』で改めてこの悲哀溢れる有村架純の存在感に圧倒されました。
『花束みたいな恋をした』の有村架純さんが記憶に新しいところですが、全く対極のキャラクターですからね。
しかもどちらも有村架純以外考えられないというキャスティング。
改めて彼女の女優としての偉大さを感じさせてくれました。

ちなみにこの二人の舞台挨拶での絡みが印象的でして、有村架純さんは原作・アニメ共にかなりお好きな佐藤健さんから「巴ならこんな時はこういう表情するんじゃないの?」なんてアドバイスを受けていたそうです。
で、有村さんは舞台挨拶で明かしたのが「実は私、アニメ見てないてお伝えしてましたが、実はめちゃくちゃ見てました。だって見てると言ったら見た上でこれか?って健さんに思われるじゃないですか?」なんてるろ剣オタの佐藤健を意識して実は『るろ剣』好きを明かさなかったなんて微笑ましいエピソードがありました。
いやいや、有村さん佐藤健さんも『るろ剣』ファンも大満足な演技だったと思いますよ。

さて、他に本作の見所と言えば幕末の歴史的事件や人物を絡ませながらのストーリーの運びでしょうか。
高杉晋作桂小五郎新撰組と幕末の歴史が大好きな人にとっては馴染み深い面々が登場し、池田屋事件禁門の変そして鳥羽・伏見の戦いと幕末の京都を舞台にすればまず欠かせないこれらの事象もうまく取り入れ、展開していきます。
純粋に時代劇ファンが見てもかなり楽しめる内容ではないでしょうか。
まぁ敢えて歴史好きな僕からすると龍馬暗殺も入れて欲しいところもあるのですが、原作にもないし、絡め様がないので仕方ないのかな?

また、これまでの『るろ剣』にもつまり明治以降にも登場する江口洋介演じる新撰組三番隊隊長・斎藤一との因縁も描かれているのでこれまでの作品から辿って本作を見るとより楽しめるのかもしれません。

さて、先ほど僕は最終章二部作のオススメの鑑賞方法があるとお伝えしました。
最後にそこに触れて今回はしめましょうかね。
まずは公開順に従って『The Final』を鑑賞。
キレッキレのアクションを心行くまで楽しみこれまでの登場人物達とのわちゃわちゃにほっこりし、劇中で挿入される巴とのエピソードをしっかりと脳内に刻みつけましょう。
その後に本作『The Beginning』を鑑賞。
『The Final』とはまた違う、緋村剣心の謎に迫りながら、『るろ剣』前日譚をしかと楽しんで下さい!
その上で再度『The Final』を鑑賞。
所見時に示された謎が解明されたり他にも所見時には気付けなかった色んな発見があります!

この鑑賞方法、強くオススメします!
尚、私は本作『The Beginning』を見てから、原作の一巻から読みたいと思いました。
つまり『るろ剣』入門編としても最適な一本かも知れません。
オススメです!

映画賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット

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月刊「ガンガンJOKER」連載の人気コミックを原作とするテレビドラマ「賭ケグルイ」をオリジナルストーリーで映画化した劇場版の第2弾。ギャンブルの強さで生徒の階級が決まる私立百花王学園。全校生徒を巻き込んだバトル「生徒代表指名選挙」を終え、学園は日常を取り戻したように見えたが、生徒会は圧倒的存在感を放つ蛇喰夢子に危機感を募らせていた。一方、学園内では生徒会への上納金を支払えない“家畜”の人数が増加。さらに家畜たちによる生徒会役員への公式戦ギャンブルが横行し、学園内は異様なムードに包まれる。そんな中、2年前にある事件を起こして学園を追われた男・視鬼神真玄が舞い戻る。彼は共感覚という特殊能力を持つ最凶のギャンブラーだった。夢子役の浜辺美波らおなじみのキャストに加え、新たな刺客・視鬼神を「ジャニーズWEST」の藤井流星が演じる。監督も前作から引き続き英勉が務めた。
(映画.comより)

当初は4月末に公開予定だった作品。
しかし新型コロナの影響から再三公開が延期され、6月1日にようやく公開スタートとなりました。
月曜日公開のエヴァが前例を作りましたね。
本作はこれまた異例の6月1日の火曜日公開。
コロナで休業を余儀なくされていた都市部の劇場の休業要請緩和に合わせるかの様な公開スタートとなりました。

さて、二年振りの『賭ケグルイ』の劇場版。
思えば前作は当初全く鑑賞予定がなかったものの、気まぐれで鑑賞したところ、これがめちゃくちゃ面白かったと僕は大絶賛しました!
とりわけ浜辺美波ちゃんが演じる蛇喰夢子にドハマリし、多彩なゲームの勝敗によって運命が左右されるそのスリリングさ、ともすれば悪趣味と捉えかねられない人が人を支配し、絶望の淵へ追いやるドラスティックな展開等々とにかく圧倒されたものです。

そんな『賭ケグルイ』の世界をとことん楽しみ尽くした私が本作を楽しみにしないわけがない!

いや~、それにしてもよく続編を作ってくれたなと感謝と同時に驚きがありまして、前作の興行収入が3.6億円と全くヒットとは呼べない数字なんですよ。
その結果であっても続編が製作された背景には私の様な映画ジャンキーが「賭ケグルイオモレ~!」という歓喜の声を挙げたからでは?なんて想像してみたり。
そういう意味では興行的にはヒットにはならなかったが、マニアには高い支持を得た『孤狼の血』も同様のケースなのかな?と思ってます。
ちなみに『孤狼の血』は8月20日公開。
楽しみにしています。

さて、楽しみにしていた『賭ケグルイ』。
前作同様にギャンブルの勝敗如何で天国か地獄か王様か奴隷かの究極のカーストが出来上がるぶっ飛んだ世界観。
相変わらずの心理的な攻防がスリルがあり、ギャンブルをしない僕なんかが見てもかなり楽しい!
「そうそう、これこれ。これこそが賭ケグルイだよ!」なんて鑑賞した日の睡眠時間が4時間足らずだった僕もかなりバイアスかかった状態で見入っておりました。
新キャラの藤井流星演じる視鬼神真玄も存在感ありましたし、敗者に仕向けられる理不尽な仕打ちだって胸糞悪い反面エンタメと割りきればついつい見入ってしまう。
前作のレビューでも名前を挙げましたけど、『カイジ』とか『闇金ウシジマくん』系なんですよね。
実社会ではまずやってはならない事であってもエンタメがかっているからその露悪的な描写を楽しんでしまう。
負けた生徒に二階の窓から飛び降りさせるシーンなんて見るに耐えないんだけど、見てしまう。
でもこれはあくまで映画の話し。
実生活では絶対にやるなよ!若い諸君!
いじめは犯罪です!

はい、青少年へ向けての呼び掛けをしたところで、話しを戻しますが、こういったシーンひとつ取ってもわかる様に前作より更に描写が過激になってるんですよね。
だからはっきり言えば倫理的に受け付けない人にはオススメしない作品です。
で、こういった傾向は主となるギャンブルにも持ち込まれておりまして、前作では確かに不条理な設定ではあるものの、ゲームの種類はまだかわいいもんでした。
トランプに紙相撲、カードじゃんけん等々賭け事はいかんけど、まだ高校生らしさがありましたよ。
しかし、本作の場合、実弾の入った拳銃が出てくるロシアンルーレットですからね。
賭けるものは命です。
う~ん、スケールアップを狙ったのか知りませんが、個人的にはこれがマイナスに動いちゃいましたね~。
確かにスリルはあるんだけど、キャラクターを見たら制服来てる高校生でしょ。
そのギャップに違和感が生じてどうにも乗りきれなかったですね。
こういうのはアウトロー系のガチなヤツでやってほしいんだよね~。
更に言うと前作は結構ゲームの種類も豊富でそれが楽しかった。
だけど本作はこのロシアンルーレットをメインに後はひとつふたつ森川葵演じるサブキャラ用に用意してるだけ。
後、『カイジ』の地下帝国よろしく敗者が連行され、強制労働をさせる下り。
ああいうタコ部屋的な描写を入れる事によって天国と地獄感を強調したかったのかもしれないけど、正直あのシーンに尺使いすぎなきらいもありましたね。

全編通して面白かったんだけど、これらの点が重なった結果、パワーダウンしてしまった感が否めませんでしたね。
更にラストでは三戸なつめちゃんが次作を示唆するシーンがありましたけど、『映画 賭ケグルイ』の一作目が好きだったからこそ期待はしたいんだけど、不安もあったりで…。
でも結局見るんだろうなぁ(笑)

なんて先を案じたところでまとめます。
確かに前作に比べると欲を出した結果、裏目に出たマイナス面もありました。
また、エンタメとしてではあるものの人によっては不快になる場面もあります。
しかし、目を引き付ける心理戦やスリリングな駆け引きの応酬そして浜辺美波ちゃんの可愛さは保証します(笑)
また、ドラマや原作は末見でも十分楽しめますが、なるべくなら劇場版1作目を見た上での鑑賞をオススメします!

是非ご覧下さい!

いのちの停車場

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作家としても活躍する現役医師・南杏子の同名小説を「八日目の蝉」の成島出監督が映画化し、吉永小百合が自身初となる医師役に挑んだ社会派ヒューマンドラマ。長年にわたり大学病院の救命救急医として働いてきた白石咲和子は、ある事情から父・達郎が暮らす石川県の実家に戻り、在宅医療を行う「まほろば診療所」に勤めることに。これまで自分が経験してきた医療とは違うかたちでの“いのち”との向き合い方に戸惑いを覚える咲和子だったが、院長の仙川をはじめ、診療所を支える訪問看護師の星野、咲和子を慕って診療所にやって来た元大学病院職員の野呂ら周囲の人々に支えられ、在宅医療だからこそできる患者やその家族との向き合い方を見いだしていく。咲和子を追って診療所で働き始める青年・野呂を松坂桃李訪問看護師・星野を広瀬すず、院長・仙川を西田敏行、咲和子を温かく見守る父・達郎を田中泯が演じる。
(映画.com)

コロナ禍によって、ここ一年以上医療に関するニュースは毎日の様に耳にしています。
医療現場の皆さんが如何に大変であるかは今更言うまでもありません。
さて、本作は医療は医療でも在宅医療をフォーカスした作品です。
現役医師で作家でもある南杏子さんによる原作で在宅医療患者の実態を描き出した小説の映画化。
主演は日本が誇る大女優・吉永小百合さん。
吉永さんはこれまで数々の映画にご出演されてきていますが、医師の役は本作が初という事ですね。

実を言うと本作鑑賞にあたってはやや身構えていたところがあります。
吉永小百合さん主演という事でどうしても年齢層は高めだし、果たして自分の感性にハマるのか?と。

結果から言えば全然そんな心配は不要でしたね。
何より在宅医療というテーマに大きく着目する事でそこから様々な事を映し、現代の医療における課題等々について考えさせられる非常に深い内容でした。

まず、本作が鑑賞する上でわかりやすかったのが、全編を通じて描かれる人間模様でした。
診療所の主要なキャストの奮闘を軸にしながら彼らが向き合う6人の患者とその家族のエピソードがまさに短編集の様に展開されていきます。
皆それぞれに違う環境に身を置く人達が在宅医療を通じての人間ドラマを構築していく。
そこには本人と家族の想いが盛り込まれ、時にうるっとする場面も。
詳細にはお伝えしませんが、女の子のエピソードは去年見た『浅田家!』にも通じる様な純粋だからこそより見ていて押し潰されそうな想いに涙が止まりませんでした。
また、余命いくばくもない父と息子のエピソードは自らを重ね合わせ、いつか来る父との別れ。
その時に互いに悔いを残さない様親父と向き合っていこうなんて考えたり。
そんな事を考えるとこれは映画だけのお話しではなく、見ている人それぞれの物語でもあるななんて感じました。

また、現代の医療においての課題を示唆する様な場面も印象的です。
治験の安全性を問う様な場面では、新型コロナのワクチンについてのそれに通じる様な内容にも思えました。
更には安楽死ですね。
安楽死に関しては古くからその議題として取り沙汰される様なテーマで、映画で言えば昨年取り上げた『ドクター・デスの遺産』なんかはまさにこれを大きく扱ってましたよね。
ただ、正直『ドクター・デス』の場合はエンタメ性にその比重の重きを置いていた為か、結局最終地点が非常に薄く伝わりずらかったのが、何とも残念な所でした。
しかし、本作の場合は田中泯さんが演じる父・達郎の闘病の様子があまりに辛く描かれている事もあってかリアルに伝わってきます。
安楽死の是非を巡っては是非この映画から真剣に考えて頂きたいと思います。
ちなみに余談ですが、田中泯さんは現在公開中の『HOKUSAI』で老年期の葛飾北斎を演じています。
この『いのちの停車場』でも元美術教師で自宅で油絵を描くシーンが登場します。
アーティストとしての田中泯さんを見比べるのも面白いかもしれませんね。

さて、この田中泯さんをはじめとして豪華俳優陣が集結している本作。
そんなキャスト陣に目を写していきましょう。
主演の吉永小百合さんをはじめ西田敏行さんや柳葉敏郎さん、南野陽子さん、石田ゆり子さん等のベテラン勢は言うまでもないですが、若い二人が非常に良かったですね。
松坂桃李さんと広瀬すずさんですね。
松坂さんの好青年でありながら心根はめっちゃ熱くて真っ直ぐな人物像はかなり好感が持てましたし、久しぶりの広瀬すずさんの等身大の演技がまた光る光る。
ちなみに久しぶりの、と言いましたが、すずちゃんと言えば『チア☆ダン』、『ちはやふる』、『一度死んでみた』等元気な女の子の役が多かったじゃないですか?
そういう意味でね(笑)
で、個人的なポイントとしてはこの二人、劇中でかなりいい感じの関係になるんですよね。
でもあえてそういう恋愛的な流れにしなかったのはかなり好印象ですね。
ちなみにすずちゃんと言えばお姉さんのアリスさんは前回紹介した『地獄の花園』に出演中ですね。
両作をはしごして広瀬姉妹の演技を堪能するなんてのもオススメです。


とここまで本作に関してはかなり好意的にお伝えしてきました。
しかし、どうしても勿体ないと思う部分があったので触れておきましょう。
まずは広瀬すず演じる訪問看護師の星野と松坂桃李演じる野呂が初めて顔を合わせるシーンね。
真っ赤なスポーツカーで診療所にやってきた野呂に対して「誰?あの車?私擦っちゃった」と自転車でやってきた彼女は悪びれる事なく言うわけですが、俺は思わず「いや、擦っちゃったじゃねぇだろ!まずは謝れよ!」なんて突っ込んじゃいましたよ。
これちょっと彼女のイメージとしてはマイナスじゃない?

後は色んな患者をピックアップした群像劇にしたのはいいけど、いずれのエピソードも駆け足過ぎて言葉は悪いけど死を迎える患者達の話しをベルトコンベアに乗せた流れ作業で見せられている様で何とも残念でした。
尺の都合と言うのももちろんあるでしょうが、ここ2~3エピソードを削ってコンパクトにまとめた方が良かった様な気がします。
何だったら前述の小さい女の子と父と息子の話しだけにしても良かったんじゃないかな?


と指摘すべき点は確かにありましたが、医療と人間という視点で見た場合、色々考えさせられる内容でした。
是非劇場でご覧下さい!

地獄の花園

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OLたちの華やかな職場の裏で、拳を戦わせる壮絶な派閥争いがおこなわれていたというバカリズムの奇想天外なオリジナル脚本を、Perfumeサカナクション星野源のMVを手がける関和亮監督のメガホン、永野芽郁主演で映画化。ごく普通のOL生活を送っているかのように見える直子。しかしその裏では社内の派閥争いをかけ、OLたちが日々ケンカに明け暮れていた。ある日、中途採用されたOL・蘭と直子は一緒にカフェめぐりをするなど友情を深めていくが、蘭の正体はスカジャンがトレードマークのカリスマヤンキーOLだった。蘭の入社をきっかけに、直子の会社が全国のOLたちのターゲットになってしまい……。主人公・直子役を永野、蘭役を広瀬アリスがそれぞれ演じ、菜々緒川栄李奈大島美幸森三中)、小池栄子に加え、勝村政信松尾諭丸山智己遠藤憲一らが全員OL役を演じている。
(映画.comより)

芸人さんの中でもとりわけ僕が好きなバカリズムさん。
かつては某ネタ番組で「お笑い四次元ポケット」という異名を取っていたバカリズムさんですが、とにかくその奇想天外な発想の数々にこれまでかなり楽しませて頂きました。
コントのDVDも持ってますし、YouTubeを通じてもよくネタの動画を拝見しています。
で、バカリズムさんのネタってとにかく何かと何かを組み合わせる事に長けてるんですよね。
患者にマイクを向け、さながらクイズ番組の司会者の様に診察をする医者・卒業式の壇上で生徒一人一人に誰もが知ってる当たり前な事を告げる先生から本能寺の変をテレビの寝起きどっきりの様なつくりにしたらという妄想をクソ真面目にプレゼンしたりととにかく何かと何かを繋げながら常人では発想出来ない思考で笑いを生み出す天才だと思ってます。

そんなバカリズムさんの脚本による映画。
バカリズム愛好家として兼ねてから見たい一本でした。
何かと何かを組み合わせる組み合わせの天才・バカリズムさんだけあって、本作の設定もぶっ飛んでます。
OL×ヤンキー。
かつては「架空OL日記」が話題となったバカリズムさんですが、OLを皮肉らせたら天下一品。
自身のコントでもこれまで数々のOLをおちょくってきていたわけですが、ヤンキーとOLという対極の設定をどの様に結びつけるかが注目です!

結論を言えばバカリズムさんにしか生み出せない独特の世界観。
これまでのバカリズムワールドの中に豪華俳優陣を巻き込んだ一級のコントに仕上がっています。
学校をオフィスに置き換えた女性版の『クローズ』や『今日俺』。
現に作中にも『クローズ』はもちろん、『BE-BOP-HIGH SCOOL』、『湘南爆走族』、『ろくでなしBLUES』と言ったヤンキー達のバイブルの様な漫画のオマージュは登場するし更にはこれらのヤンキー漫画をリスペクトを込めながらおちょくるというバカリズム節とも言うべき世界をとことん堪能出来ます。

キャストには主演の永野芽郁はじめ広瀬アリス菜々緒川栄李奈大島美幸遠藤憲一小池栄子等を配しながらオフィスでの頂上決戦が繰り広げられます。
コミカルなやり取りももちろん楽しいですが、アクションが力入ってるんですよ。
とりわけ永野芽郁広瀬アリスによる格闘シーンなんかは見所ですよ!
広瀬アリスさんのアクションやヤンキー風ビジュアルもバッチリハマるんですが、永野芽郁ちゃんですね!
アクションの立ち回りでかなり見せてくれるんですよ。
例えば僕がプッシュするアクション系女優さんで言えば土屋太鳳さんであったり、綾瀬はるかさんでも全然この役は治まると思うんですよ。
そして持ち前の身体能力を活かしたアクションを披露したらきっと「さすが~」と唸らせられる事でしょう。
でもそこを永野芽郁ちゃんにした辺りにキャスティングセンスが光りますよね!
彼女と言えばどちらかと言えばおっとりしたイメージが強く、アクションイメージってそこまで強くない女優さんですよね。
ところがそのイメージを覆す様なキレッキレのアクションとドスの効いたセリフ回しを見せてくれましたね!

また、本作を手掛けた関和亮監督の手腕が光ったなと感じたのはそのカラフルな映像美ですね!
これまで数々のアーティストのMVを手掛けてきたキャリアの方だけに音楽と映像の組み合わせが絶妙なんですよね!
とりわけタイトルバックの出し方により、一気に映像に引き込まれたし、エンドクレジットとLiSAの曲との組み合わせが最高にハマっていました!

それから本作はラストもスッキリさせてくれました。
まるでこれまでのぶっ飛んだストーリーをチャラにさせるかの様な壮大なコントのオチを見る様で笑っちゃいました。
また、その時の永野芽郁ちゃんの表情もいいんですよね~。

バカリズム大好きな方はもちろん、『翔んで埼玉』や『新解釈・三國志』の様な頭を空っぽにして楽しめるコメディが好きな方にもオススメ出来ます。
言い換えればそういうノリが苦手な人には合わないかもしれませんが…。

ファーザー

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名優アンソニー・ホプキンス認知症の父親役を演じ、「羊たちの沈黙」以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した人間ドラマ。日本を含め世界30カ国以上で上演された舞台「Le Pere 父」を基に、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していく父親の視点から描き出す。ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニー認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、アンソニーはある真実にたどり着く。アン役に「女王陛下のお気に入り」のオリビア・コールマン。原作者フロリアン・ゼレールが自らメガホンをとり、「危険な関係」の脚本家クリストファー・ハンプトンとゼレール監督が共同脚本を手がけた。第93回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演女優賞など計6部門にノミネート。ホプキンスの主演男優賞のほか、脚色賞を受賞した。
(映画.comより)

認知症を題材にした映画というのは古今東西あまたあるわけですが、おしなべて第三者の目線で客観的に描かれる作品が主流です。
もちろんそういった視点からも認知症を患う当事者と介護する家族の大変さ等は伝わり、一定以上の認知症への理解と対策に繋がる意義は大きいです。
しかし、本作の場合、これまでの認知症をテーマにした作品と大きく異なる点があります。
それが認知症を患う当人の視点でストーリーが展開されていくという所です。

まず、最低限本作を見る上でそこを理解しておかないと、ストーリーを追えずにひたすら脳内に「?」がつきまとってしまう事でしょう。
しかし、この視点での作品の描写が非常にリアリティーがあり、また認知症の恐怖を感じる上でかなりの説得力を生み出しています。  
娘だと思っていた人物が全く違う人であったり、娘の旦那の存在もわからなければ、その人物から虐待を受けていると思い込んだり、随分前に他界している次女の死をいまだに受け入れていなかったり。
こんな具合に認知症の人の見た世界や認識している事象が誤っていたりそしてそれを実際の映像で映し出しているので、見ているこちらとしてはどれが真でどれが嘘か頭の整理が追い付かなくなってしまう。
認知症を巡る家族の話しではあるものの、サスペンスはたまたホラーの様な恐ろしさを感じます。

でもこれは決して虚構の世界を描いているのではなく、実際の認知症の人にはこの様に見えているのです。
だからこそより認知症への恐怖を感じるし、身近に認知症の方が居る人への対策になったり、或いは自分自身が係るかもしれないという警告としても胸に突き刺さるものがあるわけです。

そもそも本作の主人公であるアンソニーはかつてはエンジニアとして社会の第一線で活躍して、二人の娘を育て上げた人物です。
元々は非常に優秀でユーモアもあり、クレバーな人。
娘のアンと共に外出する際にはスーツとコートを身にまとっているのですが、その姿は上品な老紳士そのもの。
そんな人物でも老いにより、認知症を患い家族達を困惑させているという残酷な現実が目の前にはあるわけですね。
そしてそんなアンソニーを演じたアンソニー・ホプキンス
言わずと知れた名優ですが、彼の演技がまた感情に訴えかける様な迫真の演技なんですよね。
穏やかに話していると思ったら激しく激昂したり、実の娘に心ない事を言ったり。
更には前述の虐待シーンにおける彼の表情と悲痛な声はホント見ていて辛くなります。
そんな演技が高い評価を受け、83歳の最高齢でアカデミー主演男優賞を受賞したのも頷けます。

一方、娘のアン役のオリビア・コールマン。
認知症の父と向き合い献身的な介護をする彼女の演技にも魅了されます。
とりわけ亡き妹の生存を信じる父・アンソニーとのやり取りは事実は受け入れている。
だけど父のあまりにも頑なに次女の生存を主張する姿にたまらなく涙を流す家族として特に辛い心情を訴えるにはあまりに心響く演技だったと思います。

尚、この映画ですが、軽い気持ちで鑑賞する事はオススメしません。
内容がヘビーだからと言う事ではなく、アンソニーの見た光景と現実の事象の乖離に対しての明確な答え合わせがないのでその意味では不親切なつくりです。
今、僕がお伝えした内容を踏まえた上である程度の作品の設定等を理解してからでないと終始何が何やらさっぱりわからないという感想で終わってしまうでしょう。

また、この映画においてのラストシーンが本作の最大のメッセージではないかと思います。
介護する女性がアンソニーに寄り添い太陽の動きや時間の流れを話し、アンソニーは一本の木に自らを例えその木の葉のひとつひとつが落ちていく様だと。
そして彼らの居る部屋の外には太陽を燦々と浴びた植物が青々とその葉を照らしています。

人の一生とは有限であり、葉を照らす時間はほんのわずかな時であると。
その間に我々はどの様に生き、どんな時間を過ごすか。
それを問いているかの様に僕には見えました。
認知症という病気は誰しも患う可能性があります。
自分の家族が認知症になる可能性もあるし、自らがかかるかもしれません。
認知症という病気への向き合い方そして人生とは一体何か自らに問い、日々を生きる事。
それこそがこの映画を見た上での最大の収穫です。
一人でも多くの方に見て頂きたい作品です!
是非劇場でご覧下さい!

ラーヤと龍の王国

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龍の王国を舞台に少女の戦いと成長を描くディズニーの長編アニメーション。聖なる龍たちに守られた王国。人びとが平和に暮らすその王国を邪悪な悪魔が襲った。龍たちは自らを犠牲に王国を守ったが、残された人びとは信じる心を失っていった。500年の時が経ち、王国をふたたび魔物が襲う。聖なる龍の力が宿るという「龍の石」の守護者一族の娘ラーヤは、王国に平和を取り戻すため、姿を消した最後の龍の力をよみがえらせる旅に出る。監督はアカデミー長編アニメーション賞を受賞したディズニーアニメ「ベイマックス」のドン・ホールと、実写映画「ブラインドスポッティング」のカルロス・ロペス・エストラーダ。2021年3月5日から劇場公開と同時にDisney+でも配信(追加料金が必要なプレミアアクセスで公開)。劇場では短編「あの頃をもう一度」が同時上映される。
(映画.comより)


今年一月に取り上げた『ソウルフル・ワールド』以来のDisney+からの配信鑑賞のレビューです。
ディズニーの待機作でも劇場公開と同時配信という形態がしばらくは続く様ですね。
本来の劇場鑑賞をしたいという思いはありつつも、しかし大好きなディズニーの作品とあれば今後も配信をチェックし続けるかと思います。

さて、『アナと雪の女王2』以来のディズニー長編アニメーションである本作。
遅ればせながら私もこのGW中に鑑賞しました。

映画を観ながら早々に感じた事をお伝えすれば、まずこれまでのディズニーアニメにあった物語の延長にあった音楽面の強調がない事。
ディズニーといえばファンタジー作であっても歌詞とストーリーを連動させた歌唱シーン、何ならミュージカルだっていう常識があるかと思いますが、本作では全くありません。
その代わり、主人公のラーヤが世界を順に巡っていく冒険の過程を主としています。
道中、仲間達を集めパーティーを組み、数々の試練を乗り越えていくという『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』等に見られる極めてRPG的な世界観に胸が踊ります。

また、ディズニーでよくある魔法等の特殊能力も、本作のプリンセスであるラーヤにはそもそも備わっておらず、伝説の剣の様なファンタジー的武器もない。
あくまで肉体の鍛練と技の修練が織り成す武道が戦闘の主となっているんですね。

更にこれまでのディズニープリンセスにはお決まりの恋愛要素もなく、ともすればイケメン男子だって登場しないんですよね。
仲間にするキャラクターだって少年に赤ちゃん・力自慢の大男等々ですよ。
キラキラのドレスとか女の子が憧れるアイテムだって一切登場しない。
そもそもラーヤは極めて人間的な造形となっていてむしろこれが最終的な物語のテーマへと繋がっていくんですね。
これまで見られた様な王族の娘等々プリンセスでも何でもなく一人の人間。
身分制度や階級の概念ではなくヒューマンテイストに比重を置いたという辺りは今っぽいのかもしれません。

とこうした辺りこれまでのディズニーイメージから脱却するかの様な試みを感じましたね。
とりわけ多様性を求められる時代だからこそそれを敏感に感じとり作品に落とし込んだ様な気がします。

で、これがかなり楽しいんですよ!
その最たる要因としてはやはり仲間の存在でしょうか。
最初に龍のシスーと出会うのですが、このシスーがまたいいんですよ。
龍=ドラゴンと言うと僕はどうしても『ドラゴンボール』の神龍の様なイメージを描くのですが、あんな仰々しいものではなく、メチャクチャかわいい。
ちょっぴりどんくさくてまぬけなんだけど愛嬌があるし憎めない。
それに何より人を信じる事に是とするピュアな心の持ち主なんですよね。
そこから個性豊かな仲間達と巻き起こす大冒険となるのですが、3DCGの描写には目を見張るそれは街の光景であったり人々の表情であったりするのですが、何と言っても水の流れですよね。
もはや実写ばりのレベルです!

テーマとしては分かりやすく言えば人との信用・信頼そこからの融和でしょうか。
主人公・ラーヤはあるきっかけから人を信用しない性格になります。
ところが龍のシスーは人の心へ一片もの猜疑心を抱かず、その結果大変な目にも遭ってしまいます。
それでもピュアなシスーは信じる事をやめない。
ラーヤはその信じる気持ちを取り戻せるか。
そのプロセスが描かれ、ラストのシーンへと導かれていきます。
人を信じる事が必ずしも正しいとは言えません。
作中においてもラーヤ・シスー共に信じて騙される描写はあるわけですし、現実世界はもっと複雑だし、信じる事によって人生を狂わせる人が居るのも事実。
それを考えると僕も100%この映画の主張が正しいものとも思えませんが、ただ疑い過ぎて自分の視野を狭めたり他者との交流を断絶してしまうのも悲しい事かもしれません。
この映画では信じる事の美しさを解くと同時に人々の心の在り方を問う様な内容でした。

そして僕は思いました。
確かに綺麗事かもしれないが、誰しもがピュアな心を思いだし、融和を図っていけば世の中もっと豊かになるのではないかと。
そして本作の主人公が特別秀でた能力があるわけでもなく、裕福な環境にあるわけでもない最大の理由。
それは世の中を変えるのは決して特別な力を有する人だけではないという事。
凡庸とされかねない人や動物にだって役割があって彼らが力を合わせれば大きな動きを起こせるのだ、と。
ディズニーが示した新しい時代へ投じる一本。
僕は自信を持ってオススメします!

劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班

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韓国ドラマ「シグナル」を日本でリメイクし、2018年に放送された坂口健太郎主演の連続サスペンスドラマ「シグナル 長期未解決事件捜査班」の劇場版。謎の無線機が現在と過去の2人の刑事をつなぎ未解決事件を解決していく姿を描く。2021年、高速道路でのハイヤー暴走により、政府高官が交通事故死した。三枝ら長期未解決事件捜査班は、この事故が仕組まれた事件の可能性があると疑う。一方、2009年の東京でも政務官が相次いで交通事故死していた。警察が事故として考える中、大山は一連の事故の事件性を疑っていた。23時23分、つながるはずのない無線機がふたたび鳴り出した。三枝役の坂口、大山役の北村一輝、未解決事件捜査班長・桜井役の吉瀬美智子らドラマ版のキャストに加え、伊原剛志鹿賀丈史杉本哲太奈緒田中哲司らが顔をそろえる。監督は「探偵はBARにいる」「相棒 劇場版IV」の橋本一
(映画.comより)

久しぶりのドラマの劇場版ですね。
正直ね~、このテの映画って避けてたんですよ。
こう言っちゃなんですが、ドラマで人気を博してさぁ、次は映画化だ~という勢いで製作された劇場版ってどうしてもそのドラマの枠を出ないし、更に言えばドラマ末鑑賞だと置いてきぼりを食うなんてざらでしょ?
だから僕も公開当初は鑑賞する候補には入らなかったんですよ。
そしてそのまま見る事もなく日々を過ごすというループは避けられなかったでしょう。

しかし、今回の緊急事態宣言下において当初公開が予定されていた映画が相次いで公開延期を発表。
鑑賞する作品が限定されていく中、敢えて本作をチョイスして鑑賞したという次第。

なので、僕のハードルがかなり下げられたからこそでしょうか、思いの外…と言っては失礼ですが、なかなか楽しめましたよ。

まず、前提として僕は全くドラマを見ません。
本作には通常のレギュラードラマと劇場版公開に合わせて放映されたスペシャルドラマがあるそうですが、一切見ていませんね。
にも関わらず、冒頭でこれまでのあらすじであったり、設定等も映像を通じて教えてくれるので、あっさりと理解が出来ます。
その後はいわゆる刑事モノを楽しめるフラットな感性とストーリーを追う事で一切のストレスなく、映画に没頭出来るでしょう。
その辺りは『探偵はBARにいる』や『相棒 劇場版Ⅳ』といったサスペンスもので鳴らしてきた橋本監督の手腕が光ります。
坂口健太郎北村一輝吉瀬美智子を中心にキャッチャーなキャスティングではなく、いぶし銀な魅力を凝縮したかの様なキャストの顔触れに安心感もあるわけです。
そして近年、よく見るタイムリープものでもあり、現在と過去を繋いでいくSF要素もごくごく自然でストーリーに没頭出来るんですよね。
それにしてもタイムリープもの多いですね。
王道の恋愛モノから最近ではヤンキーモノまで。
そんなタイムリープもののサスペンス代表に名前を挙げても良いのではないかななんて思いましたね。
原作は韓国のドラマと言う事ですが、近年韓国のカルチャーの成熟度が高まっているのは言うまでもありません。
僕は韓国版を当然ながら見ていないので、中には日本版の改変に苦言を呈したくなる様な人も居るのかもしれませんが、僕はひとつのエンタメ作品としては非常に楽しませて頂きましたね。

ただ、鑑賞中、全てを余すところなく楽しんだかと言うとそうでもないんですよ。
日本映画にありがちな残念な点としてまず見られたのが説明台詞がやたら多い点。
劇中の過程等を登場人物同士でやり取りする以上、説明場面が出てくるのは理解しますが、どうにもその辺りに尺を使いすぎなきらいがあるんですよ。
舞台ならともかく、映画更に言えばサスペンスものでの会話劇は最小限にしてほしいところ。
しかもその説明が事の次第を伝えるべきところ、かえってややこしくしてるからそれが何とも目も当てられない事になってしまってるんですよね。
それから奈緒さんが演じた一人の女性。
彼女は事件に巻き込まれてしまいます。
しかもその辺りはかなり過激なので責めてるな~とは思いました。
しかし、その後の扱いがどうにも不自然なんですよね。
むしろその辺りを説明してほしかったけど、それには全く触れられずに淡々とストーリーは進んでいく辺りに違和感をおぼえましたね。

それ以外にも色々言いたい事はありますが、この辺にしときますか(笑)
でも軽くいちゃもんは付けさせて頂きましたが、ドラマ末見でも楽しむ事は出来ました。
だけどドラマを見てからだとよりその世界に浸る事が出来たのかなとも思ってます。
ビデオオンデマンドでドラマを見よっかななんて思った次第です。